転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「すまねぇ!助かった!」
ブラックリングカーウの群れからダッシュで逃げていた冒険者たちのリーダーらしき男がこちらに挨拶に来る。
ちなみに俺たちの馬車は前後をバルバロイ王国の王国騎士団の精鋭が固めているため、冒険者たちが近寄って来た時、騎士が威嚇のために前に出たのだが、俺が馬車を止めて外に出て直接対応した。
この騎士団を率いる隊長が最初俺を止めたが、この辺の魔物達の情報も欲しかったので俺が直接話したいと退けた。もちろん奥さんズは馬車に乗ったままだ。
「いやいや、無事で何よりだ」
「・・・というか、アンタもしかして偉い貴族か何かか? とんでもない騎士の列と豪華な馬車なんだが・・・もしかして騒がせたから不敬罪とか・・・ないよな?」
ブラックリングカーウの群れから逃げていた時とは違った汗を流し出す男。
「いやいや、不敬罪とか無いから。君たちが無事で何よりだが、ケガ人はいるか?こちらは回復魔法の使い手もいるぞ」
「ま、マジか! 実はうちの神官が魔力尽きちまって・・・。近接戦闘担当の一人が腕を折っちまってな、困っていたところなんだが・・・」
頭を掻く男。やがて男の後ろには四人の仲間が集まって来る。
リーダーらしき赤毛のシュっとした青年。
腕を負傷しているらしい筋肉質の斧使いの男。
斥候らしき皮鎧を着た軽装の女。
メイスを持った神官ローブを着た女。
魔術師らしき杖とローブを羽織った男。
うーん、なんだろ?デジャヴ?
タルバリ領タルバーン近くで助けた冒険者パーティ<
それにしても、心のバイブルである転〇ラのイメージがあるからか、冒険者パーティというとスチャラカ三人組しか出て来ない。
だが、よくよく考えれば三人は構成として少ないわな。アレは実力を封印されていたという設定だった気がするし。
タンクである前衛、機敏に動けるアタッカー、罠や索敵を担当する斥候役、回復担当と魔術担当。
うん、普通に五人いるな。
ドラ〇エとか、前衛一人に負担掛け過ぎじゃね?
ホ〇ミとかあるからいけるんだろうな、きっと。
現実世界では五人から六人のパーティが理想だな。
それくらいの人数でやっとバランスが取れているといえるだろう。これ以上多ければ報酬分配時に一人頭の稼ぎ分が減るから、仕事をたくさんしなくてはいけないだろうし、少なければ取り分は多くなるもののリスクが高まる。
・・・そう考えると、ケモミーズの面々はもう少しメンバー増やしてもいいのか。
というか、あいつらどんな能力があるのか知らないな。マズいぞ、教官失格とか言われそうだ。ヴォーラは武道家?だとしても、後の連中、魔法とか使えるのかな?いろいろ聞いてみないといけないな。ミミはたぶん斥候役だと思うんだが。
「すまない、本当に助かるよ。俺はCランクパーティの<
うーん、<
後、赤毛の青年リドル君ね。
お連れ様はレアとかフィーナとかリリアとか言わないだろうな?
とりあえず馬車からあの人を呼ぼう。
コンコン。
「すまない、アンリちゃん。ケガ人がいるんだが、回復魔法を頼めるかな?」
「まあ、それはいけませんね。ご案内お願い致します」
そう言って馬車から出て来てもらったのはアンリ枢機卿。
何でかしらないけど、表敬訪問団に組み込まれてた。
ガーデンバール王国に用でもあるのか聞いてみたら、「わたくしを置いて遠くへ行ってしまうというのですか!? およよ・・・」と泣かれた。解せぬ。
アンリちゃんがケガ人の腕を見る。
「それでは早速回復魔法で負傷を治しましょうか。光にありし神々の御手よ。御身の慈悲に縋りて、この者を癒し給う。<
柔らかな光に包まれると、折れていた腕が傷も無く元通りになる。
破れた服は戻らないので、それこそ傷を負った証明ではあるのだが。
「すげえ! 全く傷も無く治っちまった!」
「マミの回復魔法なら痛みは引くが一発では治らないレベルのケガだぞ?」
男たちが治った腕を見ながらワイワイとはしゃいでいる。
「申し訳ありません、わたくしの魔力が尽きてしまったため、お手間をとらせまして・・・」
そう言って頭を下げてきた女性神官の目が見開く。
「そ・・・そのローブ・・・ま、まさか・・・す、枢機卿様・・・では・・・」
顔を青くしてプルプル震えだす女性神官。
「お、おい、どうしたんだマミ?」
様子がおかしい事に気づいたリドルがマミの肩を叩く。
「は、ははあ! まさか枢機卿様にお助け頂けるなど、この身に余る光栄!」
そう言って跪く女性神官。
「ちょ、ちょっとちょっと! 大袈裟ですよ?」
「そ、そんな! まさかこのようなところで枢機卿様にお助け頂けるなんて・・・」
いまだ跪いたままプルプルしている女性神官。
「枢機卿ってそんなに偉いんだね」
俺が人ごとの様に呟くと、アンリちゃんがジトッとこちらを睨む。
「誰かさんのせいで祭り上げられてしまいましたからね!」
ぷりぷりしているアンリちゃん。
まだ根に持っているようだ。
「それにしても、ローブでわかるんだね」
「ええ、聖堂教会は役職によってローブの裾と襟に専用の刺繍が入りますから・・・」
そう言えば枢機卿に就任した後のアンリちゃんの神官着は確かにちょっと豪勢だったな。襟もとなんか複雑な金の刺繍が入ってるし。
「枢機卿って教会の偉い人なのか?」
リドルもあまり詳しくないのか、マミに問いかけている。
「バカッ! 枢機卿に回復魔法なんて通常唱えてもらえないのよ! 教会だって枢機卿でないと扱えない上級回復魔法を唱えてもらうのに金貨何十枚もお布施しないといけないんだから!」
「ゲッ!」
おいおい、ゲッて。まあ気持ちはわかるけど。
「あの、今回は通りすがりの事ですし、お布施は不要です。それでもというなら、街にお戻りになった時に教会にお気持ちの寄進をお願い致します」
そう言ってにっこりと微笑むアンリちゃん。やっぱええ娘や~。
「ほ、本当にそれでよろしいのですか・・・?」
半信半疑なのか、顔を上げても跪いたままのマミの手を取るアンリちゃん。
「ええ、ここを通りかかったのもたまたま。貴女の仲間の方がケガをしていたのもたまたまです。きっと神様のお導きでしょう」
そう言ってそのまま手を引いて立ち上がらせる。
「貴女に神のお導きがありますよう・・・」
そう言ってスッと手で印を組み祈るアンリちゃん。
「・・・・・・」
マミちゃんは感動したのかぽろぽろ涙を零した。
すごいな、アンリちゃんの徳が高すぎる件について。
まあ困らないからいいか。
「あ、王都の冒険者ギルド本部ってどこにあるんだ?」
丁度いいからリドルに場所を教えて貰っておこう。
俺は冒険者ギルドの大体の場所を聞くと馬車に乗る。
「じゃあな、こちらは馬車なので先に行くから」
「すまない! 本当に助かった! 時間があればぜひ王都の冒険者ギルドによって俺達を訪ねてくれ! お礼をさせて欲しい」
そう言って頭を下げるリドルたちに、気にするなと声を掛けて出発する。
本当にこういうのってタイミングというか運命だよね。
まあ多少力を使えるようになった今、助けられる命を助けないって選択は正直無いしな。
「・・・助けられない命が出ないことを祈るばかりだな」
何故かそんな言葉を俺は呟いた。
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