転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第265話 ありえない現実に耳を傾けよう

 

「改めて、よくぞ我が国にまいった。バルバロイの英雄よ!」

 

 

 

俺の手をブンブンと振っていたセルシオ王太子も国王のいる上段へ連れ戻され、元の場所に戻っている。

 

 

 

「今後ともガーデンバール王国とバルバロイ王国の協力関係を維持して行く事にしよう」

 

 

 

ガーデンバール王国の現国王セルジア・ヴァン・ガーデンバール王は玉座から立ち上がるとそう宣言した。

 

 

 

その後は粛々と進み、俺もバルバロイ王国の特使として、運んで来た貢ぎ物の進呈を行ったり、目録読み上げたりとなんやかんや堅苦しい謁見の儀を乗り切った。

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、本当にめでたいですね!」

 

 

 

謁見の儀が終わって一息つけるのかと思いきや、少し時間を置いて晩餐会が開かれることになっていた。もちろん、俺達はホテルに帰りますから、みたいな反応でスルーする事はできず、カッチリとした服に着替えさせられてホールに案内された。

 

 

 

「ここも立食パーティみたいになってるな・・・」

 

 

 

どうも、席を用意すると動きにくいし、それだけ場所も取る。

 

そんなわけで大勢が集まって食事しながらトークできるような環境を作るために、立食パーティが好まれるようだ。

 

 

 

俺の周りにもガーデンバール王国の重鎮やお偉い貴族様たちが俺と話をしようと群がって来る。

 

当たり障りのない話をしてのらりくらりしているが、バルバロイ王国のアローベ商会の情報が入っているらしくハチミツや竜の武具の融通を希望されることが多かった。

 

いや、バルバロイ王国の特使に個人商店の話されてもどうなのって気がしないでもないが、この人たちからすれば、俺と話せるチャンスは生かしたいというところだろうか。

 

 

 

見れば、奥さんズの面々も多くの女性に囲まれている。

 

その美しさの維持をどうしているのか、その秘訣は?とかグイグイ来る貴族のご令嬢とか。

 

俺との馴れ初めがどんなものか根掘り葉掘り聞いてくる貴族の奥様オバチャンとか。

 

後、下世話に夜の方も英雄なのかしら?とか聞いてくる行き遅れてる感じ満載の30過ぎてるであろうネーチャン。マジで勘弁してくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご注進!ご注進!」

 

 

 

いきなりドバンと大扉を開けて兵士が転がり入って来る。

 

大きなケガはない様だが、泥だらけの汗だく、糞尿の臭いすら纏っているところを見ると、本気で昼夜を駆けてきたのだろう。そう、トイレに寄ることすら拒否した伝令。つまりはそれほど緊急性の高い情報を持ってきたという事だろう。

 

 

 

「何だ貴様!」

 

「汚らしい!」

 

「ヘンな臭いがしますわ!」

 

「ソイツを早く摘まみ出せ!」

 

 

 

着飾った貴族たちが騒ぎ出す。

 

おいおい、この伝令の重要さをわかっていないのか?

 

 

 

「よい、何があった」

 

 

 

そう言って側近を連れて近づいて行くのはセルジア国王であった。

 

 

 

「東のバドル三国が一つ、バドルシアがこのガーデンバール王国へ向けて挙兵いたしました!その数一万二千!」

 

 

 

「なんだとっ!」

 

「馬鹿な!」

 

「そんなことがあるはずがない!」

 

 

 

騒然となる会場。そりゃそうか。バドル三国は三すくみの状態であったため、このガーデンバール王国へ兵を向ける事は不可能だったはずだ。一国が抜け駆けしてガーデンバール王国という大国を攻めようとすれば、残りの二国が空になった自国本土を攻めて来るからだ。

 

 

 

「むうっ・・・一万二千だと・・・?」

 

「その兵力はバドルシアのほぼ全軍に当たると思われますが」

 

「自国を空にして攻めてきたというのか!」

 

 

 

セルジア国王の疑問に側近たちも首を傾げるが、周りの貴族たちが騒ぎ出す。

 

 

 

「ならば他の二国と兵を合わせて打ち破ってやればよい!」

 

「そうだそうだ!この際バドル三国の一角を切り取ってみては?」

 

 

 

勝手に盛り上がる貴族たち。反対に国王の表情はまだ晴れない。なぜ挙兵されたのか、()()()()()()()()()()()()() その疑問が解消されていないのだからな。

 

 

 

「それで、バドルシアの兵は今どのあたりだ?」

 

 

 

「は! バドルシアの軍はすでに我が国の領土内に侵入!すでに国境近くの村は攻め落とされているものと・・・」

 

 

 

「な、なんだとっ!?」

 

 

 

あまりの侵攻の速さに大臣の声が裏返る。

 

 

 

「しかも、村を攻め落としても、村の略奪などを行わず、村自体を素通りして、真っ直ぐこの王都ログリアへ向かっております!」

 

 

 

「な、なんじゃとお!」

 

 

 

ついにセルジア国王も怒声を上げる。

 

あまりにも早い、異常ともいえる侵攻であった。

 

 

 

「ご注進ご注進!」

 

 

 

ざわつく会場にさらなる声が響く。

 

大扉を通って会場に入って来たのは、先ほどの伝令と同じような姿の兵士だった。

 

 

 

「どうしたっ!何があった!」

 

「バドルシア軍の続報か?」

 

 

 

だが、その伝令の兵士から出た言葉は想像を絶していた。

 

 

 

「バ、バドル三国が一つ、バドルローレンが越境して我が国へ侵攻してまいりました!その数約一万!」

 

 

 

「な、ななななんだとお!?」

 

 

 

顎を外しそうになる大臣。

 

 

 

「・・・バドルシアではなく、バルドローレンで間違いないのか?」

 

 

 

呻くようにセルジア国王が声を絞り出す。

 

 

 

「はっ!間違いなくバドルシアではなく、バルドローレンの軍になります! 越境したバルドローレン軍は国境近くの村に火を放ちながら、そのまま前進! その速度を落とすことなくこの王都ログリアを目指しております!」

 

 

 

「ば・・・ばかな・・・」

 

 

 

さすがの国王様も呆然としている。

 

そりゃそうか、隣国で揉めていた三国中の二国がまるで足並みをそろえてより大国であるこのガーデンバール王国へ攻め入って来たんだからな。それも占領しながらではない。電光石火の王都侵略を目指しているようだしな。しかも・・・これはもしかすると・・・。

 

 

 

「ご注進ご注進―――――!!」

 

 

 

やはり、また来たか。

 

 

 

「今度は何じゃ――――!!」

 

 

 

もうやけくそ気味に大臣が声を張り上げた。

 

 

 

「ご報告申し上げます!! バドル三国が一国、バドルウルブスが我が国に向けて挙兵いたしました!!」

 

 

 

「な、な、な・・・」

 

 

 

大臣が両膝をついて崩れ落ちた。

 

これで東に隣接する三国全てがこの国に攻めてきたわけだ。

 

 

 

「・・・合従軍だ」

 

 

 

俺はその場でぽつりとつぶやいた。




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