転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第266話 緊急事態に一丸となって対応しよう

 

 

「合従軍・・・?」

 

 

 

俺の呟きを聞き逃さなかったセルジア国王が俺へと視線を向ける。

 

だが、空気が読めないと言うか、読まないと言うか、もはや読む気が無い大臣が大声を張り上げた。

 

 

 

「バドルウルブスの兵力は!!」

 

 

 

「はっ・・・その数約一万との連絡にございます!」

 

 

 

「なっ・・・なっ・・・」

 

 

 

ついに会場が静まり返る。

 

 

 

「ば・・・ばかな・・・我が国は全軍合わせても二万五千だぞ・・・」

 

 

 

「我らを上回る勢力で攻めてきたと申すかッッッ」

 

 

 

「これほどの国難がかつてあっただろうか・・・」

 

 

 

怒鳴り声を上げる者、呆然とする者、悲観する者。

 

ガーデンバール王国の重鎮たちは少なくとも混乱の極みにあると言っていいだろう。

 

 

 

「ヤ、ヤーベ様!」

 

 

 

セルシオ王太子が俺の元へ走って来る。

 

 

 

「ぜひ!ぜひこの未曽有の有事にそのお力を」

 

 

 

俺の手を取って声を張り上げるセルシオ王太子。

 

だが、その続きをセルジア国王が言わせなかった。

 

 

 

「ならんッッッ!」

 

 

 

「ち、父上!?」

 

 

 

「ヤーベ卿は国賓待遇の特使である!その身はバルバロイ王国の王国代理にであり、真っ先にその身を案じねばならぬお相手なのだ!」

 

 

 

「で、ですが・・・」

 

 

 

セルジア国王のいう事がわかるのだろう、セルシオ王太子も言葉を詰まらせる。

 

 

 

「ヤーベ卿。貴方という英雄に出会えて話が出来たことは大変有意義であった。出来ればこの先もバルバロイ王国とこのガーデンバール王国の懸け橋となって頂き、ヤーベ卿の知識を学ばせてもらえればと思ってたが、その前に降りかかる火の粉を払わなければならないらしい」

 

 

 

真剣な表情を俺に向けるセルジア国王は、ぐっと拳を握った。

 

 

 

「なーに、やすやすとやられはせんよ。この国も歴史は長い。幾度となく滅亡の危機があったのを悉く乗り越えてきたのだ。今度もまた同じこと」

 

 

 

そう言うとセルジア国王は会場をぐるりと見渡す。

 

 

 

「よいか皆の者!バドル三国が足並みをそろえこのガーデンバール王国へ向けて出兵した!我々は王国国民の安全と生活を、いわば人生を背負う立場にあるのだ!絶対に負けるわけにはいかぬ!!」

 

 

 

「「「「「オ、オオオオオオッ!!」」」」」

 

 

 

セルジア国王の檄に会場中の大臣や貴族たちが呼応する。

 

 

 

「ガレン軍務将軍!軍議を開く。各隊長を集め準備せよっ!」

 

 

 

「ははっ!」

 

 

 

そしてセルジア国王は俺の方へ向き直る。

 

 

 

「ヤーベ卿。大至急この国を離れてバルバロイ王国へ帰国されよ。そして東よりバドル三国の来襲を伝えてくれ。出来ればこれまでのよしみで援軍を出してくれるとありがたい。万一この国が破れる事があれば、その次は貴国が狙われる可能性もあるのでな」

 

 

 

俺はわずかの間、セルジア国王の瞳を見つめた。

 

 

 

「・・・承知しました」

 

 

 

「ヤーベ!?」

 

 

 

俺がセルジア国王の言に了承の意を伝え頭を下げたのでイリーナが驚いて声を上げる。だが、俺はそれを後ろ手で制した。

 

 

 

「・・・コーデリアよ」

 

 

 

セルジア国王はセルシオ王太子の横にいる妻であるコーデリアに目を向けた。

 

 

 

「そなたはヤーベ卿と共にバルバロイ王国に向かいなさい」

 

 

 

「い、イヤです! 私もここに残ります!」

 

 

 

そう言ってセルシオ王太子の袖を掴むコーデリア王女。

 

 

 

「そなたに万が一のことがあってはワーレンハイド国王に顔向けできぬ。それにまだ、セルシオとの子も生まれておらぬ。ここで無理をする必要はない」

 

 

 

自国を上回る戦力が攻めて来ているこの現状、セルジア国王の頭の中には最悪の結果になるシミュレーションも出来ているのか、最悪の状況を回避する手を打とうとしているようだった。

 

 

 

「・・・そうだな、それがいい」

 

 

 

「そんなっ!!」

 

 

 

自分の夫でもあるセルシオ王太子までもがバルバロイ王国に避難する事に賛成したことがよほど信じられなかったのか、絶望の表情を浮かべるコーデリア王女。

 

 

 

「姉上・・・」

 

 

 

「カッシーナ。貴女ならこんな時にどうしますか? 自分の夫であるヤーベ様を置いて自分だけ安全な場所に逃げたりするのですか?」

 

 

 

 

 

見かねてカッシーナが声を掛けるが、逆にコーデリア王女に自分ならどうするのかとツッコまれてしまう。

 

カッシーナは自分の姉であるコーデリアから怒気を張らむ声を掛けられ、困惑した。

 

 

 

「わ、私は・・・」

 

 

 

だが、俺はカッシーナの言葉を手で遮った。

 

ここでカッシーナが自分は俺を見捨てて逃げないなんて言ってくれたら、嬉しいが問題がややこしくなるだけだ。

 

 

 

「今は攻めて来る敵への対処を一刻も早く準備しましょう。敵は今もこの王都ログリアを目指して進軍して来ているのでしょう?一刻の猶予もないはずです」

 

 

 

「おお、そうであった! ガレン将軍が軍議の準備に出ているはずじゃ、早速軍議を開くとしよう」

 

 

 

「どちらにしてもコーデリア王女には支度の準備が必要でしょうから、それなりにお時間がかかるでしょう」

 

 

 

「わ、私はバルバロイ王国に戻りませぬ!」

 

 

 

俺の言葉に過剰に反応するコーデリア王女。

 

 

 

「いえ、バルバロイ王国に限らず、この王都ログリアが戦場になる可能性もあります。王族の皆様は一時この王都ログリアを離れて近隣のどこかに避難する必要があるやもしれません。それを考えても移動の準備を行う事は必要なはずです」

 

 

 

「・・・わかりました」

 

 

 

俺の説明に渋々と言った感じだが、コーデリア王女が頷く。

 

即座に侍女たちがコーデリア王女を連れて会場を出て行った。

 

 

 

「ヤーベさん、ありがとうございますね」

 

 

 

見ればセルジア国王の正妻でセルシオ王太子の母親でもある王妃が俺に声を掛けてきた。

 

 

 

「いえ」

 

 

 

「・・・もし、この国に何かあれば、コーデリアの事、お願い致しますね?」

 

 

 

優雅に腰を折り、礼をすると別の后妃たちを連れて会場を後にする。

 

 

 

「さて、俺たちも準備をしようか」

 

 

 

そう言って奥さんズを連れてあてがわれた客室にいったん戻る事にする。

 

 

 

「・・・ヤーベ、どうするつもりなのだ?」

 

「きっと、もう何か企んでいると思いますわ」

 

 

 

イリーナがジロッと俺を睨む。

 

俺がガーデンバール王国の危機に力を貸すと言わなかったことが不満なようだ。

 

ルシーナは俺が何か企んでいると断言する。何ゆえ?解せぬ。

 

 

 

「うーん、きっととんでもないことするとボクのカンが告げている!」

 

「そうですわねぇ、わたくしもそう思いますが、でも魔物と違って兵士ですから・・・」

 

 

 

サリーナが何故かドヤ顔で明後日の方向へ指をビシッと指している。

 

フィレオンティーナは今回、魔獣ではなく人間の兵士たちが相手という事を不安視している。

 

・・・まあ、その通りだが。

 

 

 

「ふおおっ!ご主人しゃまに任せておけばダイジョーブなのでしゅ!」

 

 

 

リーナが両手を振って歩いている。

 

何だか大丈夫の発音が怪しい。もう俺なら何でも大丈夫とか言いかねないな。

 

 

 

とりあえず俺たちは客間に戻ってこれからの対応について確認することにした。

 

 




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