転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第270話 風雲!ヤーベ城を起動しよう

 

バドル三国連合軍―――――

 

 

 

連合軍と呼ばれてはいるが、実のところ、各々の国が指示された同じタイミングで出兵しただけのことであり、その戦略はそれぞれの国が電光石火でガーデンバール王国の王都ログリアを攻め落とすという指示のみによって動いていた。

 

 

 

現在、三国の各総大将である将軍たちが丁度集まっていた。

 

 

 

「ふふ、やはりこの位置で一度合流となったか」

 

「まあ、しかたあるまい、ここは地形的に狭い。それぞれの大軍が王都ログリアに向かう進軍経路において、重なるのは当然の事だ」

 

「おかげで、こうして顔を合わせることが出来たのだ、それも僥倖であろう」

 

 

 

バドル三国の各国が誇る最強の将軍。

 

 

 

バドルシアの将軍、セガール。

 

バドルローレンの将軍、シルベスタ。

 

バドルウルブスの将軍、アーノルド。

 

極めてイカツイ体格をした男たちがガチガチの鎧を着込んで騎乗したまま喋っていた。

 

 

 

その三人を一歩下がった位置から見守っている存在がいた。バドルシアの副官、ソネットである。女性ながらキレる判断とアドバイスで副官の地位まで昇りつめた有能な女性で会った。

 

 

 

(此度の戦、()()()()からの提案であったが、恐ろしいまでの交渉力だっ・・・。戦の絶えない三国をまとめ上げて、ただ一国の大国へ矛先を向けさせるとは・・・)

 

 

 

ソネットは唸った。元々、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

必ず、裏に何かある。だが、その裏を説明できず、各国はあの御方の思惑に乗った・・・)

 

 

 

「さあ、出立の準備を済ませて先を急ぐとしよう」

 

「む、抜け駆けか?感心せんな」

 

「まあまあ、あの御方の率いる本隊が到着する前に手に入れたモノは全て自分たちのモノにしてよい、という協定が出来ているのだからな」

 

「そうそう、本隊が来る前に王都ログリアを攻め落とさねばな」

 

「そう言えば、ここに着く前の村々には人っ子一人いなかったな」

 

「そっちもか、村には住んでいた形跡はあったが、こっちも人はいなかったんだ」

 

「我らの進軍に恐れをなして慌てて逃げたか」

 

「ガーデンバールの村人はネズミの様に逃げ足が速いようだな!」

 

「だが、王都ログリアには間違いなく人がいるだろうよ」

 

「そうだな、ワシは王女をもらうとするか」

 

「ならばこっちは金だな」

 

「どちらにしても早い者勝ちですぞ?」

 

「「違いない!」」

 

「「「わぁ~っはっはっは」」」

 

 

 

馬鹿笑いする三将軍を見ながらソネットは些か心配していた。

 

 

 

(あまりにも我らへの条件が優位だ・・・。()()()()は何を考えている? それに・・・今までの村々になぜ誰もいない?進軍を恐れたとはいえ、村の全員が姿が見えないほど遠くへ逃げるためには、こちらの進軍を事前に察知しなければならないはず・・・一体何が起こっている?)

 

 

 

ソネットは考えを巡らすが、その不安はぬぐえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三国連合軍が日の出を待たずに出立。僅か四時間の睡眠で軍を動かして少し。

 

ポルポタの丘へ全軍が到着する。

 

 

 

「・・・なんだ、あれは・・・?」

 

 

 

バドルシアの将軍セガールが進軍を止め、その異形な姿を見て言葉を漏らした。

 

 

 

「ば、バカな!」

 

「し、城が!城が出来ている!」

 

 

 

「斥候!」

 

 

 

バドルローレンの将軍シルベスタは斥候を呼びつける。

 

 

 

「は、はっ!」

 

 

 

「貴様!昨日の夜の報告ではポルポタの丘に敵軍は無く、進軍には何の問題も無い、と報告したではないか!」

 

 

 

激怒するシルベスタ将軍。それはそうだろう。

 

丘には敵軍の姿は無く、進軍に問題なしと報告してきたのだ。それなのに実際はどうか?

 

ポルポタの丘には()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

城を迂回すれば、横から間違いなく迎撃されるだろう。

 

この狭い地形で進軍するためには、どうしてもあの異形の城を攻め落とさねばならなくなったのだ。

 

 

 

「き、昨日の夜にはあのような城は姿形も無く・・・」

 

「貴様の目は節穴か!どう見ても巨大な城が建っているではないか!」

 

「は、ははっ・・・」

 

 

 

激怒する将軍に項垂れる斥候。

 

だか、その横でも同じような責め苦を受けている斥候がいた。

 

 

 

ソネットがセガール将軍に声を掛ける。

 

 

 

「どうやら、他の国の斥候たちも昨日の夜偵察に出た時は城を見ていないようです。どうやら()()()()()()()()()()()()ようですが・・・」

 

 

 

「馬鹿な!そんなことがあるわけないだろうがッ!」

 

 

 

セガール将軍に怒鳴られるソネット。怒鳴られるのはいつもの事だが、この不可思議な状況は整理しないと敵の思うつぼになる。

 

 

 

「将軍の言うとおり、あれほの巨大な城を一夜にして造り上げるなど不可能でしょう。ならば、()()()()()()()()()()なのではと愚考致します。視覚で驚かせておき、我らの進軍スピードを落とすことが敵の狙いなのではと」

 

 

 

「むうっ!流石ソネットだ!ならば、すぐにでも進軍し、突撃をかけてあの幻術を打ち破ってくれる!横でゴチャゴチャやっている他の国の連中を出し抜けるわ!」

 

 

 

「お、お待ちください!幻術と合わせて落とし穴など、物理的罠を仕掛けている可能性もあります!」

 

 

 

「むう・・・それではどうするのだ」

 

「はっ、この見解を他の二国の将軍にも話して、三軍で同時に攻撃すべきです。多少の物理的罠の影響があるかも知れませんが、罠があった場合は我らだけで突入して我らだけが被害を受ける可能性があります。その可能性よりはずっとマシかと」

 

 

 

「ふむ・・・抜け駆けできると思ったが、罠があると確かにヤバいな・・・。それで行こう。お前が説明して来い」

 

「・・・は」

 

 

 

メンドクサイ事は全て自分に丸投げするセガールに辟易するソネットだが、突っ走られて自国の兵だけが損失する事だけは避けなければならない。ソネットは他の二国の将軍にも話を付けに行くことにした。

 

 

 

(それにしても・・・あの城に書かれた文字・・・『風雲!ヤーベ城』とは、一体・・・?)

 

 

 

ソネットは首を捻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、ヤーベ城内。

 

城の一番高い天守閣に陣取るヤーベは敵の姿を捕らえていた。

 

 

 

「やっと来たね・・・戦闘開始の準備をしないとね」

 

 

 

そう言って亜空間圧縮収納から小さめの樽と木のジョッキを取り出す。

 

樽からジョッキに真っ白なミルクが注がれていく。

 

 

 

「ヤーベ、何ソレ?」

 

 

 

水の精霊ウィンティアはヤーベが飲もうとしている白い液体に首を捻る。

 

 

 

「これは、ミノ娘のミルクだよ。俺専用に絞ってもらったものなんだ」

 

 

 

そう言って俺は一気に注いだミルクを飲み干す。

 

 

 

「・・・ウマイッ!」

 

 

 

これはミノ娘のチェーダに手渡しで貰ったものだ。

 

 

 

 

 

 

 

「コレはオレが朝絞った搾りたてのミルクだゾ・・・。ヤ、ヤーベが無事に帰って来れるように祈りながら絞ったから、戦いの前に飲んでくれよな」

 

 

 

顔を真っ赤にしながら俺に小ぶりの樽を渡してくれたチェーダ。

 

俺はチェーダの頭を撫でて・・・撫で・・・背が高いな、オイ!

 

右手を触手の如く伸ばしてチェーダの頭を撫でてやる。

 

 

 

「もちろん無事に帰って来るさ・・・その時はお代わりを頼むぞ?」

 

「おうっ!任しとけよな!」

 

 

 

そんなわけで戦の前にチェーダのミルクで戦勝祈願と言ったところだ。

 

 

 

 

 

 

 

「わー、ボクも飲みたいなぁ」

 

「わたくしも飲みたいわねぇ」

 

 

 

ウィンティアにベルヒアがジロジロと俺を見る。

 

 

 

「はいはい、コッチならいいよ」

 

 

 

そう言ってチェーダに貰った小樽より一回り大きい中樽を出す。

 

パナメーラから搾乳作業の内の一樽を分けてもらったものだ。

 

 

 

ずらりと並ぶ六大精霊たちに木のジョッキを渡してミノ娘のミルクを注いでいく。

 

多分この中樽はミノ娘たちのミルクをブレンドしたものだ。

 

娘たちによって多少味に違いがあるとかで、ある程度混ぜて均一にすることで品質を一定に保つと話していたな。

 

・・・今度ヴィレッジヤーベのミルク工場見学に行こう。転移のために分身体も置いてあるしな・・・搾乳が目的ではないぞ?ミルクだからな!ミルク!大事な事だから二度言おう。

 

 

 

「勝利を祈願して、カンパ―――――イ!」

 

「「「「「「カンパ~イ!」」」」」」

 

 

 

ゴキュゴキュとミルクを飲み干す精霊たち。

 

 

 

「ウマ~~~イ!」

 

 

 

みんなが喜んでいる中、風の精霊シルフィーが俺に問いかけた。

 

 

 

「お兄様、城に書いてある『風雲!ヤーベ城』というのはどういう意味ですか?」

 

 

 

おおう、ソコに気づいてしまったのね。

 

 

 

「それはね、俺の意気込みだよ」

 

 

 

鬼才、世界のた〇しがバラエティに打ち立てた恐るべきコンテンツ!

 

今は無き、古き良き昭和の時代だからこそ許された恐るべき番組であった。

 

だが、俺はそのバラエティになぞらえて連中を屠るつもりはない。

 

ゆらゆら揺れるジブラルタルの橋とか吊り橋を渡って来る兵士をバレーボールで撃ち落とすとか、三万人もいる敵にやってられないわな。

 

 

 

これは、映画ドラ〇もんの『風雲!ドラ〇もん城』をリスペクトしている。兵団の侵攻を食い止めるために用意した城だ。正にその名にふさわしいし、天下のドラ〇もんがパク・・・いや、取り入れているのだ、俺様も取り入れても文句は出ないだろう。何と言ってもドラ〇もんが先に取り入れているんだからな、はっはっは!

 

 

 

ほぼ三列になって攻めて来る敵軍を見ながら、俺様は迎撃準備を行うべく、隅々までスライム細胞に魔力ぐるぐるパワーを通していく。

 

 

 

さあ、開戦だ!!

 

 




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