転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第271話 激闘!風雲ヤーベ城をフルドライヴさせよう

 

時は少し遡る―――――

 

 

 

『ボス!北エリアの村、全ての村人は脱出完了しました。山裾のエリアで待機中です』

 

 

 

ヒヨコ十将軍、序列二位のクルセーダーが俺に報告をする。

 

 

 

「よし、よくやった。出張用ボスに食料が入れてあるから、随時取り出して村人たちへ配布してくれ」

 

 

 

『了解です』

 

 

 

『ボス、中央エリアも敵進軍経路から外れた位置まで村人の脱出に成功しました。現在待機中です』

 

 

 

ヒヨコ十将軍序列三位、クロムウェルも報告に来る。

 

 

 

「よし、そちらにも出張用ボスを回すので、村人たちが飢えない様に食料を出してやってくれ」

 

 

 

『ははっ!』

 

 

 

そして、序列四位のセンチュリオンも報告に来た。

 

 

 

『ボス、南エリアの村人も南の森林地帯への退避が完了しました』

 

 

 

「お疲れさん、出張用ボスから食料を出して村人たちに十分振る舞ってやってくれ」

 

 

 

『ははっ!』

 

 

 

俺はラードスリブ王国が黒幕の合従軍編成について事前に情報を掴んでいた。

 

ガーデンバール王国に向かうと決まった時に、ヒヨコ達に事前に東の国の情報を掴むよう指示を出しておいた。

 

 

 

バドル三国のバドルシア、バドルローレン、バドルウルブスの他、さらに東にあるラードスリブ王国までヒヨコ達を飛ばして情報収集に努めた。

 

そこで掴んだのがラードスリブ王国の通称「黒衣の宰相」と呼ばれる切れ者がいるという情報を掴んだ。そして、このラードスリブ王国、さらに東に大帝国がいる事もあり、かなり外圧を受けている国であった。そのプレッシャーを跳ね返すための切り札に、『勇者召喚』を行ったというトンデモない情報が飛び込んできたのである。

 

 

 

てっきり合従軍を企てた黒衣の宰相とやらが異世界から召喚された勇者で、軍師チート系のヤツかと思ったのだが、どうも違うらしかった。

 

勇者という切り札が手に入ったから合従軍に踏み切ったのか、そのあたりはわからないが、これで厄介な事に合従軍をまとめた黒衣の宰相の知識と、「勇者」という戦力の二枚看板がラードスリブ王国には存在しているという事になる。

 

 

 

ヒヨコ達の情報によると、元々美しい王女姉妹がいたのだが、大帝国への政略結婚を検討し出した際に、失踪。外交の切り札になりえた美人王女姉妹を失ったラードスリブ王国は大きく揺れ、父親であった国王を隠居させ、叔父の立場であった男が王位に就いたらしい。

 

その後黒衣の宰相と呼ばれる切れ者が宰相の座についてから、国外へちょっかいをかけ始めているようだ。

 

 

 

「キナ臭い国だよね~」

 

 

 

俺はぼやきながらも、とにかく村々が合従軍に襲われた際に村人に被害が出ないよう、進軍経路から外れた位置に脱出させた。ヒヨコにガーデンバール王国の印の入った紙で作った指示書を見せて説明させたのだが、言う事を聞かない村人にはヒヨコと共についていった狼牙族が脅してでも脱出させている。

 

多少文句もあるだろうが、命には代えられないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・、進軍してきた連中を仕留めるとしようか」

 

 

 

俺は天守閣の位置から進軍してきた敵を見降ろす。

 

巨大な城に化けている俺様だが、隅々まで魔力ぐるぐるパワーを張り巡らせているため、隅々まで詳細に把握できる。

 

敵が城に入って来たのだが、手足の末端に触れられているかのように敵の動きを感じられる。

 

 

 

「突っ込めぇ!敵を打ち取り、城を占拠せよ!」

 

「「「「わああああ!」」」」

 

 

 

城の中に入った敵軍。

 

最初の長い廊下を走って来るが、あっさり足元の床が無くなり、何十人もの兵士が消え去る。

 

 

 

「わ、罠だ!」

 

 

 

だが遅い。

 

すでに入って来た廊下の後ろは壁がせり上がり戻る事は出来ない。

 

というか、全てスライムボディで出来ているのだから、入って来さえすればもはや自由自在。

 

やりたい放題だ。

 

 

 

「上に続く階段を見つけたぞ!上がれ!」

 

「「「「わああああ!」」」」

 

 

 

だが、多くの兵士が階段を登って行くが、途中で階段の段がバタンと倒れ、滑り台の如く綺麗に斜めになってしまう。

 

 

 

「「「「うわわわわっ!」」」」

 

 

 

そして階段下にはぽっかりと落とし穴が。

 

そのままずぞぞぞぞっ!と滑り落ちていく兵士たち。

 

 

 

「いや~、ヤーベさん容赦ないね」

 

 

 

笑いながら水の精霊ウィンティアが俺を見る。

 

 

 

「いやいや、これからこれから。ウィンティア、水の魔法お願い、あそこね」

 

 

 

「あ~、あそこね。了解!」

 

 

 

そして、通路の階段を駆け上がって来る兵士たちに大量の水が上から押し寄せていく。

 

 

 

「な、み、水がっ!」

 

「「「「うわわわわ!」」」」

 

 

 

多くの兵士が水に押し流され、まるでダストボックスのように空いた床に吸い込まれていく。

 

 

 

「ヤーベちゃん、私も力になりたいわ~」

 

 

 

「もちろんだよ、ベルヒアねーさん。あそこに例のヤツ、お願いね」

 

 

 

「うふ、任せて~」

 

 

 

一直線の長い廊下を進む兵士たちの前に大きな丸い岩が転がり落ちて来る。

 

 

 

「た、退避――――!」

 

「「「「「ぎゃああああ!」」」」

 

 

 

もちろん大岩に押されたり潰された連中はダストボックスの穴に収納される。

 

 

 

その後も壁を登って来る連中にはシルフィの風魔法で吹き飛ばしたり、フレイアの火魔法でロープを燃やしたりして落としたところを回収する。

 

その後も光の精霊ライティールや闇の精霊ダータレラの力で眩しくしたり、真っ暗にしたりして混乱させて落とし穴に回収だ。

 

 

 

「ところで、この兵士たち、スライムボディの中に取り込んでるの?これ、溶かして吸収しちゃう感じ?」

 

 

 

ボクっ娘ウィンティアが結構恐ろしい事を笑顔で聞いてくる。

 

いやいや、人間なんて吸収したら夢に出そうで怖いから。

 

・・・そういや殺し屋ベルツリーの野郎はキレイさっぱり溶かして消そうと思ったけど。

 

 

 

「実はね、この前いろいろと実験した結果、凄い事が分かってね」

 

 

 

俺はこの前の実験を説明する。

 

俺の亜空間圧縮収納は、生きた生き物を収納したことは無い。

 

なぜなら、怖いから。

 

生きたままの生き物を亜空間圧縮収納に収納してエライ事になったら目も当てられないし。

 

だけど、先日偶然こんなことがあった。

 

バトルホークという巨大な大鷲のような魔獣を仕留める際に、はく製にしたいから出来るだけ傷がない方がありがたいという依頼が冒険者ギルドにあった。

 

そんなわけで、弓矢や魔法では無く、直接触手で接触し、魔力を吸い取ってスタン状態、いわゆる魔力枯渇状態に追い込んだ。

 

魔力枯渇すると生物は気絶状態になる。それを狙ったのだが、気絶したバトルホークがあらぬ方へ墜落しかけたので、俺は慌てて亜空間圧縮収納へ収納してしまったのだ。

 

 

 

「・・・おいおい、生きたまま生物を亜空間圧縮収納へ収納出来ちまったぞ・・・」

 

 

 

通常ラノベではこういった無限収納的な能力の場合、生きた生物は収納できないというお約束がある。だが、気絶状態のバトルホークを俺は収納出来てしまった。

 

 

 

ちなみに、この後適当な生き物ネズミやウサギをそのまま収納してみようとしたが、収納できなかった。この事から、生物を収納する場合、魔力枯渇状態か、意識がない(気絶、もしくは仮死状態)になれば可能になるのでは、と仮説を立てた。

 

さすがに人間でテストするのは問題が・・・と思ったのだが、丁度良く村を襲っている盗賊たちがいたので、早速実地テストを行ってみた。

 

結果は良好。魔力が枯渇して気絶した状態の人間を亜空間圧縮収納へ収納出来たのだ。

 

これはデカイ。要人を亜空間圧縮収納へ収納して隠すことも出来るのだ。

 

・・・尤も魔力枯渇させて気絶状態にするという若干むごい状況になるのだが。

 

 

 

そんなわけで、スライムボディ内に人を格納するなどという無茶をする必要は無くなり、敵兵士の悉くを魔力枯渇するまで魔力を吸い取り、気絶状態に追い込んだら亜空間圧縮収納へ収納して行く。

 

 

 

かなり軍を指揮する将軍がアホなのか、全軍で城へ突撃してきたので何の障害も無くほぼ全軍を亜空間圧縮収納へ収納出来たのだが・・・。

 

 

 

「一人、城の外に待機しているな」

 

 

 

俺は視力を高めて、踏み込まなかったその騎士を見る。

 

女性のようだ。

 

 

 

「くっ・・・、やはりおかしい。この城は魔法による幻術などではない! だが、一体どうやって一夜で・・・。しかも、各国が全軍で攻めたのに、今は戦闘の音すらしていない・・・」

 

 

 

冷汗を流し、風雲!ヤーベ城と書かれた巨大な城を見上げる女騎士。

 

 

 

「これは・・・私だけでも一度下がって、あの御方に報告した方がよいかもしれぬ・・・」

 

 

 

そう言って馬の踵を返し、来た道を戻ろうとする。

 

 

 

「そうはイカン」

 

 

 

城から触手を発射。女騎士の首に巻き付ける。

 

 

 

「ぐわっ!な、なんだ!?」

 

 

 

ひょいっとな。

 

俺は触手を引いて女騎士を宙に舞わせる。

 

 

 

「なあっ!?」

 

 

 

城に引っ張られる女騎士。落ち際を見ようと首を回したその視界に捕らえたものは、怪しく黒く歪む空間だった。

 

 

 

「ひいいっ!」

 

 

 

だが、女騎士に意識はそこで途切れる。触手から魔力を吸われた女騎士は魔力が枯渇して気絶スタン状態に陥っていたからだ。

 

 

 

あっという間に亜空間圧縮収納へ収納されて消える女騎士。

 

 

 

「よし、これで合従軍は消滅だ」

 

 

 

俺は城に化けた体を一気に元に戻し、ポルポタの丘に降り立った。

 

昇り切った朝日を浴びてポルポタの丘から、ガーデンバール王国を見下ろす。

 

 

 

広がる美しい緑の平野が朝日に煌めく。

 

 

 

「この自然美しいガーデンバール王国が戦場にならなくてよかった」

 

 

 

俺はホッと一息吐くのだった。




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