転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第273話 大神官ヤーベンを登場させよう

 

時は少し遡る―――――

 

 

 

 

 

 

 

「さて、無事に三万からの軍兵を回収できたな」

 

 

 

亜空間圧縮収納に回収した兵士たち。

 

全て魔力枯渇による気絶スタン状態の者達ばかり。

 

そして、鑑定の機能が働き、名前や種族、性別年齢の他、所属やスキルまで分かった。

 

・・・やっぱりスキルってあるのね、この異世界。

 

ええ、スキルなんてひとっつもありませんけど、何か?

 

亜空間圧縮収納もスライムボディ変化も、自分の努力で才能を開花させたんだもんね!

 

女神に貰ったチートなんかじゃないんだからね!

 

 

 

「さて・・・どうしよう」

 

 

 

俺が悩んでいる理由。

 

それは、この人を収納した能力が俺、つまりヤーベ・フォン・スライム伯爵の能力だと認識されるのはマズイのでは・・・という事だ。イマイチどころか、イマニ、イマサンも良くない気がする。

 

チートがねーって叫んでいる俺だが、所謂異空間収納インベントリという能力において、生きた人間を条件が限定されているとはいえ収納できるなんて、結構ラノベを読み込んできたけど、そんな能力ちょっと無い気がする。この能力はちょっとヤバイ。うん、ちょっとだけどね。でも、誘拐事件とか発生するたびに絶対俺が疑われそうだ。

 

だから、一工夫しよう。

 

 

 

そういって俺は亜空間圧縮収納から白い豪華なローブとゴツイ装飾の神杖、それから銀色の仮面を取り出す。

 

白い豪華なローブとゴツイ杖は以前城塞都市フェルベーンにてフェンベルク卿から頂いたものだ。そう、女神様白いおパンツ騒動のあった町で、顔を隠して教会を回るために用意して貰ったものだ。

 

そして、銀色の仮面は、以前カッシーナが顔の半分を隠すために着けていた仮面を参考にドワーフの腕利き鍛冶師であるゴルディン殿に製作して貰ったものだ。

 

カッシーナを殺し屋から守るため、この仮面をつけてダークナイトと名乗って戦ったんだよな。もう懐かしく感じるよ。

 

 

 

そんなわけで、このローブに銀の仮面を被って、俺ではない別の人が凄い秘術を使ったんだよ、と説明しよう。

 

俺は一人納得して<高速飛翔(フライハイ)>を唱えると空を飛んで王都ログリアへ向かった。

 

・・・帰りは転移で帰った方が楽なのだが、急に奥さんズの近くに現れると驚かれるだろうし、何より王都の門から出ているからな。戻って来たという情報が必要だろう。

 

出来る限り俺が転移できるという情報は他国の人にはバレないほうがいい気がするしな。

 

・・・まあ、ピンチになったらそんなことを気にしている余裕もなくなるのだろうが、そのようなことが起こらない様に立ち回らないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

 

 

「お帰り!ヤーベ!」

 

 

 

そう言ってイリーナが抱きついてくる。

 

 

 

「ヤーベ様お帰りなさい!」

 

「ヤーベさん待ってたよ!」

 

「旦那様、無事で何よりです」

 

 

 

ルシーナ、サリーナ、フィレオンティーナが俺を笑顔で出迎えてくれる。

 

 

 

「あなた・・・お帰りなさい」

 

 

 

「え!?」

 

 

 

少し目に涙を溜めて俺の手を取るカッシーナ。

 

 

 

「あ、あなた!?」

 

 

 

「むうっ!カッシーナが正妻力を発揮している!」

 

「さすがカッシーナですね!」

 

 

 

イリーナとサリーナが解説している。

 

急にあなた呼ばわりされると、半端なくテレますけど。

 

 

 

ちなみに、リーナは爆睡している。

 

神獣たちをお腹に乗せて。うん、まだ朝早いから。

 

 

 

「それであなた、敵軍は無事撃破出来ましたの?」

 

 

 

カッシーナが結構物騒な事を聞いてくる。

 

 

 

「いや、撃破って・・・。みんな捕虜にしたよ」

 

 

 

「そうですか・・・それはなにより・・・えっ!?捕虜?」

 

 

 

カッシーナがホッとしたような表情を一瞬見せた後、怪訝な顔をしてクワッと目を見開いた。

 

 

 

「ほ・・・捕虜?」

 

 

 

「そう、捕虜」

 

 

 

「さ、三万からの敵兵がいたはずですが・・・」

 

 

 

「正確には32,357名いたね」

 

 

 

亜空間圧縮収納に放り込んだら、カウンターがついて収納した人たちの総計が簡単に分かったよ。便利だね。

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

カッシーナがポカーン顔になる。

 

 

 

「どういうことだろう?」

 

「・・・さあ、私にはわかりません」

 

 

 

イリーナとルシーナが顔を見合わせて首を傾げる。

 

 

 

「どこかに捕まえて隠しているのかな?」

 

「三万からの兵ですよ?いくら旦那様が凄くても、さすがにそんな大勢の敵兵を捕虜として捕まえておくなんてことは・・・」

 

 

 

サリーナとフィレオンティーナ俺を見ながら意見を交換している。

 

 

 

そこへドバンと扉を開けて入って来た人物がいた。

 

 

 

「ヤーベ殿! 戻られたか!」

 

 

 

ガーデンバール王国のセルジア国王だった。

 

 

 

「ヤーベ様! ご無事で何よりです!」

 

 

 

セルシオ王太子もやって来た。

 

 

 

「どうも、とりあえず合従軍の三万は処理しました。王都での籠城も不要ですが、ラードスリブ王国から出撃している後詰の軍に対応するために、王都の軍を動かす準備はしてくださいね」

 

 

 

「あ、それは良いのだが・・・三万もの合従軍は一体どうなったのだ?」

 

 

 

「そうですね・・・、斥候からは敵軍の進軍無しとの報告が来ています・・・まさか皆殺し!?」

 

 

 

「物騒だな!?」

 

 

 

国王と王太子があれこれ詮索してくる。そりゃ気になるか。

 

早速ヤツを呼んで来る事にしよう。

 

 

 

「それでは、捕縛の秘術の使い手を呼んで来る事にしよう」

 

 

 

そう言って俺は小部屋に移って白い豪華なローブとゴツイ神杖、銀の仮面を装着し、戻って来る。

 

 

 

「我われが大精霊スライム神様を崇めるスライム教の最高責任者、大神官ヤーベンであーる」

 

 

 

 

 

ピシリ。空気に亀裂が入ったような雰囲気に。

 

 

 

 

 

「・・・ヤーベ? 何してる?」

 

 

 

イリーナが首を傾げる。

 

 

 

「ヤーベ様?遊んでいる場合ではありませんよ?」

 

 

 

ルシーナに怒られた。解せぬ。

 

 

 

サリーナとフィレオンティーナがポカーン顔だ。

 

セルジア国王とセルシオ王太子も怪訝な表情を浮かべる。

 

 

 

「我はスライム教、大神官ヤーベンであーる。我が親友ヤーベ殿より依頼を受け、敵軍の捕縛に力を貸したのであーる」

 

 

 

俺は神杖をシャランと振ると、亜空間圧縮収納から一人を解放する。

 

 

 

ドサリ。

 

 

 

一番話が通じそうな、ソネットというバドルシアの副官を選んでみた。

 

触手で魔力を充填するわけには行かないからな。神杖をソネットに触れさせると魔力を少しだけ送り込む。

 

 

 

「う・・・ううん・・・」

 

 

 

ソネットは頭を振って上半身を起こす。

 

 

 

「え・・・? こ、ここは・・・?」

 

 

 

「初めまして。我はスライム教、大神官を司るヤーベンであーる」

 

 

 

「は、はあ・・・?」

 

 

 

全くといって現状が把握できないソネット。

 

 

 

「こちらはガーデンバール王国のセルジア国王とセルシオ王太子にあらせられーる」

 

 

 

「はあっ!?」

 

 

 

目を白黒させて周りを見回す女騎士ソネット。

 

 

 

「くっ」

 

 

 

剣を抜こうとするソネットの右手を神杖で叩く。

 

 

 

「うぐっ!」

 

 

 

「すでにお前はガーデンバール王国の捕虜という立場であーる。大人しくしないと即刻打ち首になるのであーる」

 

 

 

「ヤーベよ、その語尾何とかならんのか?」

 

 

 

「我は大神官ヤーベンであーる」

 

 

 

俺はイリーナのツッコミに名乗り返す。

 

 

 

「バドルシア軍副官の地位にいるソネットよ。これから質問する事に正確に答えるのであーる。嘘を吐くと、スライム神様の天罰が下り、暗く深い異次元のはざまに再び封印されるのであーる」

 

 

 

「ヒイイイイッ!!」

 

 

 

どうやらソネットは自分が亜空間圧縮収納へ取り込まれる直前の記憶があるようでことのほか異次元への封印を恐れた。そのため、その後の質問には震えながらも拒否することなく話してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・やはり、ラードスリブ王国黒衣の宰相、レオナルド・カルバドリーの描いた筋書きか」

 

 

 

ソネットの説明によれば、バドルシアにレオナルドがやって来て、話し合いを持った。その時にバドル三国の連合軍をまとめ上げガーデンバール王国への侵攻を行うという戦略を提案してきた。

 

ラードスリブ王国軍が到着するまでの分捕り品は全て各国が自由にしてよいという条件、ガーデンバール王国の王都を陥落させた後はバドル三国の隣接部にそってガーデンバール王国の東をバドル三国へ併合、ラードスリブ王国は王都ログリアで王族を処刑後、新たにラードスリブ王国の属国として別の人物を立てて政治を行う予定な事。

 

断った場合、召喚した勇者の戦闘訓練にバドル三国が巻き込まれる可能性もあり得ることなどを告げてきたという。

 

ほぼ脅しのような気がするが、分捕り品が自分たちの物になり、ガーデンバール王国の東を奪えるなら、それも悪くないと考えたとの事だが、それも仕方のない事か。勇者をけしかけるぞ、というのは人類にとってかなりの殺し文句というか、逆らえない脅しというか、ずいぶんと質の悪い戦略のような気がする。そんな存在自体がチートな勇者をけしかけられた日にゃたまったもんじゃないわな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王の間に移動した俺たち一行はガーデンバール王国の多くの貴族たちや近衛兵を集めて人垣を準備したところで、大神官ヤーベンが三人の男を亜空間圧縮収納から放り出す。

 

 

 

ドサドサドサッ!

 

 

 

もちろんバドル三国の各将軍たちである。

 

 

 

バドルシアの将軍、セガール。

 

バドルローレンの将軍、シルベスタ。

 

バドルウルブスの将軍、アーノルド。

 

 

 

その三人が槍を構えた近衛兵たちに囲まれている。

 

 

 

「ななな!なんじゃ!」

 

「ここはどこだ!」

 

「何が起こった!?城攻めをしていたはず・・・?」

 

 

 

「ここはガーデンバール王国の王都ログリア。こちらはセルジア国王とセルシオ王太子であーる。今からお前たちの戦争責任を問うのであーる」

 

 

 

困惑する三将軍に俺はさらりと説明をする。

 

 

 

「はえっ!?」

 

「何を!?」

 

「そんなっ!?」

 

 

 

さらに困惑が深まる三将軍。

 

 

 

「質の悪い侵攻軍は即刻打ち首なのであーる」

 

 

 

さらにさらりと説明する俺。

 

その場に悲鳴が上がる。

 

 

 

「ぎゃ――――!?お、俺のせいじゃねーよ?なんたって攻めろと言われただけだし!」

 

「いや、ふざけんなよお前!攻めろって言われて攻めて来たら戦争だろうが!」

 

「あ、俺はついて来ただけだから」

 

「今更逃げんなよ!」

 

 

 

3将軍が責任をなすりつけ合っている。見苦しい。

 

 

 

「どちらにしても、バドル三国の各将軍及び各軍の主力はこうして捕縛したのであーる。今ならバドル三国へ攻め込んで切り取り放題なのであーる」

 

 

 

「な、何だとっ!」

 

「テメエ!ふざけんな!」

 

「許さんぞ!」

 

 

 

「許さんのはコッチの方なのであーる。貴様らは勝手にガーデンバール王国へ侵攻して来て東の村々を焼き払ったのであーる。その所業、許される物ではないのであーる。打ち首間違いなしなのであーる」

 

 

 

仮面だから、余計無慈悲に見えるのか、三将軍は怒りから徐々に怯え打ち首が現実のものととらえ始めている。

 

 

 

「ふむ、君たちはこのガーデンバール王国に攻め入った事を深く後悔しているのかね?」

 

 

 

無慈悲な大神官ヤーベンの横に立って優し気な声を掛けるセルジア国王。

 

 

 

「そ、そうなのだ!申し訳なかったのだ」

 

「すまない・・・レオナルドにそそのかされてしまった」

 

「お、俺達が悪いんじゃないんだ!」

 

 

 

必死に自己弁護をする3将軍。ホント見苦しい。

 

 

 

「そうかそうか・・・ラードスリブ王国の黒衣の宰相に唆されただけか・・・。だが、このガーデンバール王国に攻め込んで村々を焼き払ったことは事実。しっかりと補償の話をしようではないか、うん?」

 

 

 

実に優しそうな声でにっこりと笑うセルジア国王。

 

実に恐ろしい笑顔だ。

 

 

 

見苦しい三将軍はどのような条件を突きつけられるのか、戦慄した。




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