転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
停戦条件の話し合いはポルポタの丘にて行う。
双方手勢は二十名までとする。
武力行使を行う場合は停戦協議を破棄し、戦争を続行するものとみなす。
あの場で決めたことはこの程度。
さっさと後ろを向いてあの黒衣の宰相レオナルド・カルバドリーは去りやがった。
確か地球時代、中国大陸の歴史の中で、負け続けた劉邦は最後の戦いにおいてお互い停戦をしておきながら、全兵力をもって楚国へ帰る項羽を討った・・・そんな話ではなかったか。
勝てる時に全力で勝ちを奪いに行かなければならない・・・そんな気もしてくる今、レオナルドの軍勢一万五千を無傷で帰国させたのはまずかったかもしれない。
尤もバドル三国を無力化した今、ラードスリブ王国はこのガーデンバール王国へ攻め入るだけの戦力を整えられないはずだ。
まずは目の前の脅威が去ったことを喜ぶとするか。
とりあえず今日は休んで明日朝ポルポタの丘へ出立すればいいだろう。
ヤツに一日くらいポルポタの丘での打ち合わせ場所を準備する時間をやろうではないか。
ちなみに奥さんズの面々には停戦協議の会談に俺と手勢だけで会うと言ったら大反対された。まあ、あの黒衣の宰相がおとなしく会談に応じてくれるかという問題もあるしな。
だが仕方がない、ヤツがどんな手を打ってくるかわからない以上、会談の場に奥さんズを引き連れていくわけにはいかないのだ。
セルジア国王やセルシオ王太子なども停戦協議の会談に同席を求めてきたが、協議の場は遠慮してもらった。互いの国の責任者による調印時には出席してもらうことで納得してもらった。
尤も、国王のサインとかどうせ協議後の締結の場では必要になるだろうし、それまで出番待っててね、と納得してもらった。
だがしかし、ゆだんは禁物。出兵準備は解かずに待機してもらって、王都防衛の体制は維持してもらっている。
そんなわけで俺一人、別の部屋で出立の計画を練っていたのだが、
『ピピピピィ!(ボス!あの男が自分の天幕の女中を暴行し、意識不明の重体です!)』
いきなり飛び込んでくるヒヨコ軍団からのろくでもない連絡。
それにしても最悪だな、アイツ。
『助けられるか?』
『ピピィ!(出張用ボスを預かっております。意識がないようですのでそちらへ収納します)』
あらやだ、ヒヨコさんマジ完璧判断。
そう言えば、俺様の亜空間圧縮収納は気絶した人間放り込めるんだったわ。
なんせ三万以上の兵士たちを気絶のまま放り込んだままだからな。はっはっは。
あれ?これもしかしてすごくない?
俺の亜空間圧縮収納は時間の経過がない。どんなピンチな重傷者も収納してしまえば時が止まり死なずに済むかも。それに治らない病気とか、収納したまま病状の進行を止めておき、その間に解毒薬や特効薬を準備すれば、死を回避できるかもしれない。
もしかして、これチートなんじゃね?
ついに俺様にもチート能力が!?
・・・イヤイヤ、落ち着け俺。これは俺が努力して作り上げた能力だ。
決して女神とかから授かったチート能力ではない!
さすが俺! さすオレと自分で自分をほめてやりたいが、決して油断してはいけない。俺はしょせん女神から何ももらえなかったノーチート野郎なのだ!
どこぞの勇者とかとは違うのだ!努力あるのみ!
フンスッと力を入れると、停戦会談へ向かうための準備を始める。
『ピピピィ!(ボス!重体患者の女中を収納しました!)』
『ご苦労さん。この後もしっかりと見張ってくれ』
『ピピィ!(了解です!)』
俺はヒヨコとの長距離念話を終了すると、城内のヒヨコにアンリちゃんを呼んでくるように念話を送る。
その間に最低限の治療はしておかないとな。
ひどいけがの女中を目の前に出すと、すぐに<生命力回復ヒーリング>を唱える。
ゆっくりだが血が止まり折れた骨がくっつき傷もふさがっていく。
これで少なくとも命に別状はないところまで回復しただろう。
このあとアンリちゃんの回復魔法をかけてもらえば全快するはずだ。
「ヤーベ様一体どうし・・・キャア!どどど・・・どうしたのですかこのひどいけがの女性は! はっ!?・・・まさか、ヤーベ様イケナイ趣味に目覚めて!?」
「目覚めてない! というか、こんなひどいことするのは犯罪だし!」
俺はぷんすかアンリちゃんに文句を言う。
「そ、そうでした・・・、ヤーベさんがそんなことするわけありませんものね。どうしてもの時は私に相談してくださいね?」
落ち着いたアンリちゃんに<
後、どうしてもの時ってどんな時にアンリちゃんに相談すればいいんだよ!?
「うん、これで完全回復だ」
とりあえず女中さんの傷がなくなって元気そうになる。
多分、最初から<
「う・・・うう・・・」
お、女中さんが目を覚ましたぞ。
「ヒッ! ゆ、許してください許してください!!」
ありゃ、パニック状態だな。どうしよう。
「もう、大丈夫ですよ」
そういってアンリちゃんがギュッと女中さんを抱きしめる。
「もう、貴女を傷つけるような人はここにはいません。もう心配は不要です」
そっと抱きしめる腕を緩め、笑顔を見せてあげるアンリちゃん。
「うわああああああ!」
女中さんはアンリちゃんの胸に抱かれて号泣した。
俺もアンリちゃんにちょっとだけ抱かれたいと思ったのは内緒だ。
「・・・ふむ。あの男、早馬で何か王都に連絡を入れたか」
女中からの話では、天幕を張り、休むのかと思いきや、書きなぐるように手紙を書いて大至急王都に届けるよう指示したという。
「ラードスリブ王国王都へ手紙が届くよりは、少なくとも俺がポルポタの丘へ到着する方が早いだろう」
腕を組みながら俺は考える。停戦条件の確認を王都にいるであろう王へ行うつもりなら、明らかに時間がかかりすぎる。俺がポルポタの丘へ到着した時には返事はまだ来ずに、ヤツが指定した停戦協議の会談に間に合わない。
「何か魔導具でもあるのでしょうか?」
確かに早馬を出立させたとはいえそのままずっと馬で手紙を運ぶというわけでもない。
途中から何か別の便利な魔導具を持つ部隊が潜伏しているかもしれないしな。
「まあ、どちらにしても何かしかけてくるならポルポタの丘へ俺が到着する寸前だろう。気を付けて行ってくるよ」
「はい、無事をお祈りしております」
アンリちゃんは優雅にお辞儀をしてくれる。さすが枢機卿だね!
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