転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第278話 四聖獣を打ち破ろう

「グアア――――!!」

 

 

 

いきなり朱雀が大きく羽ばたくと凄まじい火炎を吐き出す。

 

 

 

『チッ・・・! 範囲が広い!』

 

 

 

ローガは足を踏みしめると大きく息を吸い込む。

 

 

 

『<竜咆哮(ドラゴニックロア)>!!』

 

 

 

ローガの放つ凄まじい咆哮が朱雀の放つファイアブレスをかき消す。

 

 

 

『これ以上王都に近づくと被害が及びかねん・・・』

 

 

 

ローガは朱雀を少しでも王都から離すべく、魔法を準備する。

 

 

 

『引き裂け!大気に宿る真空の刃!<真空断頭刃(スライズン)>!』

 

 

 

 

キュバァァァ!!

 

 

 

ローガより放たれる真空の刃が朱雀を襲う。だが、

 

 

 

「キュアアアア!!」

 

 

 

 

朱雀が大きく羽ばたくと、その羽ばたきから強烈な風が巻き起こり、<真空断頭刃(スライズン)>の威力を相殺する。

 

 

 

『な、なにっ!?』

 

 

 

ローガの魔法を相殺した朱雀が再び翼を広げると、今度は翼に炎が宿る。

 

 

 

『チッ・・・、風と炎を融合させる気か!』

 

 

 

厄介な攻撃だ・・・そう思ったローガだが、王城の一角に爆発のような衝撃が走る。

 

 

 

『なっ、なんだっ!?』

 

 

 

その強烈な魔力と荒れ狂う力。この朱雀など相手にもならぬような膨大な力を纏った存在が王城に現れたのをローガは感じ取る。

 

 

 

『しまった! コイツらは陽動か! 本命は王族・・・しかしこれほどの魔力を操る相手・・・風牙では荷が重いか・・・』

 

 

 

ローガは歯噛みする。現れた存在は先に現れた魔獣とは比べ物にならないほどの強さを感じる。まさしく自分も全力で行って対応できるかどうか。

 

だが、目の前の朱雀を放置していくわけにはいかない。ここで魔力を消耗し、消耗した状態で相手をしなければならなくなるとしても、だ。王都の住民たちを危険にさらすことは認められていないのだ。

 

 

 

『ならば・・・大魔法を打ち込むチャンスを探るしかあるまい』

 

 

 

ローガはそう言うと空中をかけるように空に舞う。

 

 

 

『スキル<天歩>!』

 

 

 

まるで空中に階段でもあるかの如く空を縦横無尽に駆け回るローガ。

 

 

 

「キュエエエエ!」

 

 

 

風を起こし、炎を纏わせ近くに寄せないように羽ばたく朱雀。

 

だが、それらをかいくぐり肉薄すると風の刃を纏わせた前足の一撃を見舞う。

 

 

 

「キュエエエエ!!」

 

 

 

傷を負うたび、めちゃくちゃに羽ばたく朱雀。

 

だが、それらを悉くかわしながら朱雀の周りを飛び回るローガ。

 

 

 

『ルミナ・バロール・エクステント! 精霊の御名において、数多の子らに告ぐ!』

 

 

 

ローガが呪文の詠唱を始めると、その上空には魔法陣が一つ、また一つと浮かび上がり、その魔法陣に大きな火炎球が宿る。

 

 

 

『火炎界の階層におけるその理を外れ、我が手に集え。ゲヘーナの業火よ、我が敵を焼き尽くせ!!<業火焦熱地獄(エグゾ・レガリア)>!!』

 

 

 

巨大な十二もの火炎球が渦を巻くように回りながら落ちてくる。

 

別名を<鳳凰(フェニックス)>と呼ばれ、炎から生まれる不死鳥とも言われる朱雀。

 

その朱雀をより強力な炎で焼き尽くすローガ。

 

 

 

『一片の肉片すら残さずに燃え尽きるがいい』

 

 

 

その様子をほんの少しだけ見届けると、ローガはこの場を部下に任せ急いで王城の最上階へ駆けて行った。

 

ちなみに、朱雀はその羽一つ、肉のひとかけらも千金の値を持ち、その血すら黄金の価値を持つと言われ、まさに全身が超希少な素材の塊であるのだが、今回はローガの放った<業火焦熱地獄(エグゾ・レガリア)>によって、完膚なきまでに焼き尽くされているため、素材は何一つ取れていない・・・。尤も警護対象が大ピンチであるからして、素材にかまってなどいられなかったという実情ではあるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、他の四聖獣を迎撃に出た四天王たちも戦闘に入っていた。

 

 

 

天空竜スカイドラゴン「青龍」に対峙したのは雷牙。

 

その名にふさわしく、青く美しい長い体を優雅に空中に漂わせ空に浮いている。

 

 

 

「ガアアア!」

 

 

 

青龍がファイアブレスを放つが、それを避けながら距離を測る雷牙。

 

 

 

『天空にあまねく精霊たちよ、我が声に応じ、彼方よりその力を解き放て!<雷撃牢獄(サンダープリズン)>』

 

 

 

「ギャオオオオ!!」

 

 

 

空中に浮いたまま<雷撃牢獄(サンダープリズン)>の雷撃に捕らえられる青龍。空から墜落して、目の前に落ちる。のたうち回るその姿は巨大な蛇のようにも見える。

 

痛みからか、体をくねらせながら咆哮し炎を吐く青龍。

 

 

 

『見苦しいな』

 

 

 

炎を躱わしながら雷撃を纏わせた前足で一撃を加えていく雷牙。

 

 

 

『ギエル・シ・アール・キース!古の契約に基づき、神霊の祭壇に今力よ満ちよ!数多の精霊たちよ、天空よりその断罪の剣を解き放て! <轟雷(テスラメント)>!』

 

 

 

ドゴォォォォォン!

 

 

 

轟雷(テスラメント)>によって引き起こされる超巨大な雷撃が青龍の体を貫く。

 

体の内外を<轟雷(テスラメント)>による雷撃で焼かれ苦悶の咆哮を上げる青龍。

 

 

 

『ふむ・・・、焼けたドラゴンというのはうまいのか・・・?』

 

 

 

一瞬食欲をそそられた雷牙だが、問題は去っていないことを思い出し、即移動を開始した。

 

 

 

同様に巨大虎(ベノムタイガー)「白虎」に相対した氷牙、巨大な大岩亀(ロックタートル)「玄武」に相対したガルボもそれぞれを撃破する。

 

伝説の四聖獣もローガ率いる狼牙族四天王で撃破してしまった。王都ログリアに大きな被害を出すことなく比較的あっさり四聖獣を撃破できたことに安堵するローガたちだが、異常なほどの力を感じる存在が王城の最上階に現れている今、まだ何も問題は解決していないのと同じことだった。

 

 




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