転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「やってくれたな・・・このクソ野郎が・・・」
俺はフィレオンティーナに向かって剣を振り下ろそうとした男の右手首をつかむ。
大至急王都に残した転移用ボス(分身)に向かって転移した俺だが、ヒヨコが転移用ボスを担いでその現場を飛んでくれていたのか、ちょうど大ピンチの現場にギリギリのタイミングで間に合ったようだ。
「だ、旦那様・・・」
フィレオンティーナが脂汗を流しながらも俺が現れたことに安堵した表情を浮かべる。
右手は肩から切り落とされ、出血がひどい。
ドシャア!
大きく建物が揺れたかと思うと、奥さんたちの前にローガが建物の外から飛び込んできた。
大けがをしているフィレオンティーナ、がれきに埋まる風牙を見て、ローガがパワーを上げていく。
体がさらに大きくなり、角が三本に分かれ、魔力が渦巻き、体から赤いスパークが放たれる。
俺と同じく、魔力が体からあふれ出ている。ローガも俺と同じく怒りまくっているようだ。
「ゲスがぁ・・・よくも我が部下だけでなくボスの奥方様をも傷つけてくれたな・・・楽に死ねると思うなよ!!」
凄まじい怒りの表情を浮かべ、牙を剥くローガ。
「なんだこのデケェ獣は!」
俺はわめく男の手首をつかんだまま、ローガに伝える。
「ローガよ、すまんがこのクズの処理は俺がやる。お前はイリーナたちを守ってやってくれ」
「ははっ!ボスの奥方様方にはこれ以上傷一つつけさせませぬ!」
ローガにイリーナたちを守ってもらえれば間違いなく大丈夫だ。
シンプルにこのクズ野郎をぶちのめすことに専念しよう。
「ハハッ! なんだこの女どもはテメーの女か? じゃあこの後テメーをぶち倒して、テメエの目の前で女どもを犯しまくってやるよ!」
首だけ振り向いて俺にそんな言葉を投げつけたクズ男。
「お前ダセーなぁ。出来もしねー事をベラベラしゃべるのは小物の証拠だぞ。雑魚臭が漂ってんぞ?」
「ざけんなっ! くたばりやがれ!」
体ごと振り向いて左手で殴り掛かってくるクズ男。
俺が右手をつかんだままなので、無理な体勢から左ストレートを放ってきた。
俺は左ストレートを左手でつかみ左下へ強く引く。
前のめりに体が崩れたところへ、左ひざで顔面を打ち抜く。
「ゴハッ!」
体が浮いたところへ、右足で思いっきり回し蹴りを放つ。
体ごと吹き飛ばされるクズ男だが、俺がつかんだ右手を離さなかったため、右肩から右腕がちぎれて、俺の手に右手を残したまま吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。
「ハッ! 汚ねぇ右手だ」
俺はそう言うとちぎれた右手をポイッと後ろに捨てると、フィレオンティーナの元へ駆けつける。
落ちていたフィレオンティーナの右腕をそっと愛おしむように拾うと、フィレオンティーナの前に跪いた。
「フィレオンティーナ、遅くなってすまない。だけど、君のおかげでイリーナたちが無事で助かったよ」
「旦那様・・・」
俺は自分の右手から少しスライム細胞を出すと、フィレオンティーナの右肩にくっつけて、その上から右腕を押し付ける。
「スライム細胞よ、同化せよ」
シュウウウウと光り輝き、傷口がわからなくなるようにくっついたのをみて、スライム細胞のつながりをプチンと切る。これで右手がつながって元通りかな。
「どうだ? 右手は」
クイックイッと試すように右手を動かすフィレオンティーナ。
「大丈夫ですわ・・・さすがは旦那様、切れてしまった右手も元通りなんて・・・」
そう言って立ち上がるフィレオンティーナだが、立ち眩みがしたのかふらついてしまう、
「おっと・・・、大丈夫か? 流した血は元に戻っていないからな、しっかり休んで、栄養も取らないとな」
ふらついたフィレオンティーナの肩を抱きとめて、やさしく微笑む。
目に涙をためるフィレオンティーナ。イリーナたちも起き上がってこちらに来ようとしている、その空気を読まないゲスが立ち上がってくる。ゾンビか。
「ガァァァァァ!!」
ぶっちぎれた右手がもりもりと生えてきて、やがて元通りになる。
一瞬で再生させるピッ〇ロ大魔王やリ〇ル大魔王の完全下位互換なスキルだな。
「てんめぇぇぇぇ! もう容赦しねぇ! ブッ殺してやる!!」
「はははっ! お前今まで容赦してたのか? そんなことできるほど賢くないだろう?なあゲス野郎?」
「クソガァァァァ!! 俺は勇者だぞ! 勇者白長洲久志羅様だ! そこんトコわかってんだろうなァァァァ!!」
「はあ? 知るかよボケ」
やっぱりコイツが勇者か。異世界転移ってやつだな。どうしてこの世界の女神様とやらはこんなクズをわざわざこの異世界に呼び出して、しかもチートなスキルを与えたんだ。マジで責任とれよな。
治った右手で白く輝く剣を握り直し、俺に向かって足を進める勇者。
「殺す!!」
俺は勇者白長洲とやらを仕留めるべく、超強力な風の精霊魔法を準備する。
キィィィィィン!
小さなエリアで極端に気圧差が生まれる。
「な、なんだっ!?」
風にからめとられて動きが鈍くなる勇者。
「風牙よ、見よ、ボスの魔法を。あれほど強力な風の魔法をこの小さなエリアに凝縮している」
瓦礫から風牙を掘り出し、アンリちゃんに回復させてもらっていた風牙に声をかけるローガ。
「す、凄まじいコントロールです・・・」
風牙が息をのみ、俺を凝視していた。
そして、勇者の周りの空気が一気に圧縮され、支配された真空の刃は瞬時に竜巻となり、勇者を包み込んだ。
「<
ギャァァァァァン!!
甲高い音がして風がやむ。だが、そこには光輝く鎧に身を包む勇者白長洲が無傷のまま立っていた。
「ボケが! 勇者の鎧に呪文が通じるかよォォォ!!」
そう言って白く輝く剣を振り下ろしてきた勇者。
俺は瞬時に懐に入り込むと、振り下ろしてきた右手をつかみ、手首をへし折る。
「グオッ!」
落とした白く輝く剣を俺は拾うと、柄と刃を両手で持つ。
「こんなおもちゃを持って振り回しているから、人を傷つけても平気になるのか?」
そう言って俺は魔力ぐるぐるパワーを全力で高めていく。魔力ぐるぐるパワーが体からあふれ、外に漏れた分が赤くスパークし始める。
「はあああああっ!」
バキィィィィィン!!
「お、折ったァァァァァ! 聖剣エクスカリバーを折ったァ!!」
勇者白長洲が折って捨てた剣を拾ってわめき散らす。
「ま、魔王を倒すための三本の聖剣のうちの一本である聖剣エクスカリバーが・・・」
セルジア国王もぼーぜんとしている。
「じゃあ、もう魔王は倒せない・・・?」
セルシオ王太子が首をひねる。
「ま、大丈夫ではないですか?」
国王と王太子の心配をよそにカッシーナがあっけらかんと話した。
「ど、どうして・・・?」
「まあ、魔王がでたらヤーベ様にまたお願いしましょう」
完全にヤーベに押し付ける案をさらりと宣うカッシーナ。
国王と王太子は二の句が継げない。
「魔法が効かないなら、ぶん殴るまでだ」
俺はズイッと白長洲とやらの前に立つ。
「ざけんなッッッ!」
右手で殴り掛かってきた白長洲の攻撃をかわすと、全力で腹パンをかます。
「ゴブゥゥゥゥゥ!!」
ゴパァっと吐血しながら宙に浮く白長洲。
「<
さらに掌底で全力の<
ドバァァァァン!!
吐血し、全身から黒い煙をあげる勇者白長洲。
「が、ガハッ! て、テメエバケモンかよ・・・」
超速再生?のようなスキルでも持っているのだろうか。ボロボロの体がだんだんと自動で治っていく。
「ハハハッ! テメーがたとえ魔王だろうと、勇者である俺は殺せねえよ! 残念だったなぁ!」
少しずつ傷が治って動けるようになりそうな白長洲。
「・・・それにしても、白長洲久志羅(しろながすくじら)って、どんなキラキラネームだよ。ダセーにもほどがあるだろ? 海で塩でも吹いてろ、バーカ」
俺の煽りを聞いた白長洲がぽかんとした顔をして一時停止した。
「くじらで海って・・・テメーも転生者かぁぁぁぁ!!」
いきなりいきり立った白長洲は右手に光のエネルギーを溜める。
「<
「<
魔力パワーを上げての<
「なッッッ!?」
あっさり自分の一撃を防がれて驚愕する白長洲。
棒立ちの状態に再度全力の<
「ゴハアッ!」
再び黒い煙を上げて倒れる自称勇者の白長洲。
だが、三度傷がふさがっていき、ゾンビのように立ち上がる白長洲。
「ギャハハハ! ゆ、勇者は倒せねーんだよォォォ!」
「ははっ、最近はゾンビの事を勇者と呼ぶんだ。知らなかったね」
俺は肩をすくめてため息を吐く。
ぜーぜー息を切らして血を吐きながらも俺に向かってこようとする白長洲。
「いやあ、何事も念のために準備することって大事だよね」
「?」
俺が独り言?をつぶやいたのでその場の全員が頭に「?」を浮かべる。
俺は眷属とも言うべき存在を召喚するべく右手を掲げ魔力を高めていく。
体から再び赤く光る魔力がスパークし始める。
いやはや、本当に念のために事前にいろいろと聞いておいてよかった。
さあ、このクズを仕留めて、騒動を終結するとしようか。
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