転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第282話 対勇者最強の切り札を切ろう

 

「いでよ!眷属召喚!」

 

 

 

俺は右手に魔力(ぐるぐるパワー)を集める。

 

右こぶしから魔力があふれ赤いスパークが飛び散る。

 

 

 

「け・・・眷属召喚だと・・・!?」

 

 

 

イリーナの目が見開かれる。

 

俺の眷属なんて、たぶん見たことないだろう。

 

 

 

バチバチバチッ!

 

 

 

赤くスパークする魔力が一段と強く輝き、その場の全員がまぶしく目を開けられなくなる。

 

 

 

 

 

次の瞬間―――――

 

 

 

 

 

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 愛と勇気とちょっぴりエッチな恋心を応援するマジカル美少女、サキュバスミーナが登場だゾ!」

 

 

 

ポンッ! と音がしたかのような錯覚すら覚えるほど赤いスパークが収まった瞬間唐突に現れたのはサキュバスのミーナであった。

 

 

 

「女の子の大切な恋心を踏み躙る極悪非道な存在はご主人様に代わってお仕置きだゾ!」

 

 

 

華麗にごっつい魔石がついたマジカルステッキをくるくると回したかと思うと、紫色のマントを翻し、トンガリ帽子をゆらゆらさせながらくるりとターン。しかしながらきわどいミニスカートは見えそうで見えないギリギリを抑えている!

 

 

 

パクパクパク。

 

 

 

イリーナがミーナを指さしながら口をパクパクさせている。どうやら驚きすぎて声も出ないようだ。フィレオンティーナもルシーナもサリーナもボーゼンとしている。

 

カッシーナは目をぱちくりさせている。あのサキュバスがなぜここに? といった表情だ。

 

 

 

あまりにシーンとした現場に、真っ先に耐えられなくなったのはサキュバスのミーナ自身であった。

 

 

 

「ちょっとー! ヤーベさん話が違うじゃないですかー!! このひらひら衣装でステッキ振り回してターン決めれば称賛の嵐だって言ってたのに!」

 

 

 

どうやらヤーベはだいぶコアな目線でミーナに話をしていたようだった。

 

 

 

「あれー、おかしいな? 十分可愛いぞ?」

 

 

 

「えへへ、ヤーベさんに可愛いって言われちゃった・・・じゃなくてぇ! 皆さん完全に不審者を見る目でコッチを見てるじゃないですか! なんですか! これがヤーベさんの仕打ちですか!私がこれまで65535個もヤーベ人形ストラップ作ったというのに! しかも1000個に1個は<魅了(チャーム)>のスキルでヤーベさんへの愛を込めて作るほど頑張ったのに!」

 

 

 

「お前か! お前のせいか! たまに明らかに金儲け主義まっしぐらそうな商人が『素晴らしきヤーベ様! 全財産を寄付させてください!!』とか、どこかの貴族の鼻持ちならない令嬢が『きゃー! ヤーベ様! 私の全てをささげますわ! 身も心をお受け取りくださいましー!』とか言って突撃してきたのはお前のせいかぁ!!」

 

 

 

俺はぷんすか憤った。たまに神殿(マイホーム)におかしなヤツが突撃してくると思ったが、ミーナのせいかよ。

 

 

 

「なんですかぁ! ヤーベさんのことを思って頑張ったのに!」

 

「<魅了(チャーム)>なんてヤバそうなスキル使うんじゃありません!」

 

 

 

俺が自分で呼び出したサキュバスのミーナと言い合いしていると、どよどよと不穏なオーラが立ち込めた。

 

 

 

「ヤーベ様・・・一体いつミーナさんがヤーベ様の眷属に・・・?」

 

 

 

ミーナの後ろにゆらりと歩み寄っていたのはカッシーナだった。

 

 

 

「いや・・・その・・・何と言いますか・・・」

 

 

 

俺とミーナはだらだらと脂汗を流す。カッシーナの迫力に押され言葉が出てこない。

 

俺たちがまるで漫才の掛け合いのごとくしゃべっていると、完全に蚊帳の外に置かれていた勇者が暴れだした。

 

 

 

「ざけんなッ!ブッ殺してやる!」

 

 

 

さっきから何度も同じセリフを吐くゾンビ勇者。ほかにセリフないのかよ。

 

勇者コイツの脳みそ8ビットくらいしか容量ないんだろうか。昔のファミコンカセット並みだな。

 

 

 

「うるさいよ、ちょっと静かにしてろ」

 

 

 

そう言うと俺は右手を触手に戻し、勇者をぐるぐる巻きにする。

 

まるで見た目はスプリ〇グマンに捕らえられた超人みたいだな。

 

 

 

「<電撃(サンダーボルト)>、神雷電流撃500万ボルト!」

 

 

 

調子に乗って神の雷を名乗ってみる。

 

文句があるなら直接俺に言え、女神とやらよ。

 

 

 

バリバリバリバリッ!!

 

 

 

ぐるぐるに巻き付かれた触手から500万ボルトもの電流が発せられ、勇者白長洲の体を高電圧の電流が駆け巡る。

 

 

 

「グギャギャギャギャ!!」

 

 

 

もはやゴブリンと区別がつかないような叫び声をあげているな、勇者コイツ。

 

 

 

そして、全身から黒い煙が立ち上り目や耳、鼻からは赤黒い液体が流れだす。

 

 

 

「おお・・・もはやR15を超えているような情景だな。説明は差し控えよう」

 

 

 

誰に? と疑問に思わなくもないが、俺は一人ぼやく。

 

もしかしてさすがに死んだかも・・・。

 

 

 

「グ・・・ガガ・・・」

 

 

 

「キャア!」

 

 

 

え、私呼んどいて勇者殺しちゃうの? という顔をしていたミーナが驚いて俺に抱き着く。

 

勇者がまるでゾンビ。

 

なんと、まだ動く勇者。ここまでくるとチートというより呪い(カース)なんじゃないかとさえ思うな。コイツ、自殺しても死ねないんじゃ?

 

 

 

「ふええ~、さすが勇者です、たちが悪いうえにキモチワルイ! ですがご安心を! こういった時のために魔族は長年対勇者研究を進めてきたのです!」

 

 

 

説明だけ受けたら、完全に俺が悪者役の側になってる気がするな。大丈夫なんだろうか、俺のスラ生(じんせい)

 

 

 

「私自身の対勇者に対する魔力不足は、このマジカルステッキとヤーベさんのパワーで補います! さあ、行きますよ!」

 

 

 

実は、ガーデンバール王国に来る前からミーナには勇者について聞いていた。勇者が魔王を殺す存在なら、魔族の一人であるサキュバスのミーナは勇者に対して何か知識を持っているのでは・・・と思ったのだが。まさかのそれがビンゴだった。

 

サキュバスのミーナは魔界ではとてもえらい侯爵ランクの家柄らしく、勇者についても知識があり、対勇者のための呪法も伝わっていたのだ。

 

 

 

そして、詳しく説明することもなくマジカルステッキを勇者白長洲の胸に当てる。

 

その先端には昔ローガが狩ってきたAランクの魔獣であるマンティコアの魔石を使用している。最初Sランクオーバーのギガンテスの魔石でステッキを作ろうとしたのだが、魔石が直径1メートルもあったので杖が持てないといわれてしまった。

 

 

 

「発動!<呪術魔法(カースマジック)>!」

 

 

 

先ほど俺が放った電撃とは違い、赤い光がスパークする。

 

 

 

「ヤーベ様! マジカルステッキにブーストを!」

 

 

 

ミーナの言葉に従い、ミーナがステッキを持つ左手に自分の左手を重ねる。

 

 

 

「むうっ!」

 

 

 

カッシーナの表情が険しくなる。カッシーナはミーナに厳しいなあ。

 

 

 

「おりゃ!」

 

 

 

俺は魔力ぐるぐるパワーの出力を上げてミーナの呪文の生成に力を貸す。

 

 

 

「グオオオオオッ!?」

 

 

 

勇者白長洲が痛みに顔を歪め叫び声をあげる。

 

 

 

「<無限縛鎖(チェイン・カーネーション)>!!」

 

 

 

ミーナが俺から流し込まれた魔力を使い魔法を完成させる。

 

再びバリバリと赤い稲妻がスパークすると勇者白長洲の胸に【呪いの六芒星(カースペンタグラム)】が刻まれた。

 

 

 

「勇者が無敵なのは常に女神からエネルギーを流し込まれているからです。その供給パイプを断つことはできませんが、<呪術魔法(カースマジック)>により、勇者が体を動かしたり思考したりする際に、こちらの意図を汲まずに反発するような行動を起こした場合は体内エネルギーが逆流し、とてつもない負荷がかかるようになるのです」

 

 

 

なんと、勇者のチートな無敵能力は女神からエネルギーを常に供給されていたからなのか。

 

なんてチート野郎なんだ。俺には何もくれなかったくせに。女神許すまじ! オノレカミメガ!

 

 

 

「つまり、こちらの言うことを聞かないとヒドイ目に合うと」

 

 

 

俺は自分のノーチートをとりあえず横に置いて勇者にかかった<呪術魔法(カースマジック)>について考える。

 

 

 

「多分、抗い続けると肉体自体が崩壊します」

 

 

 

わお、案外残酷。

 

だが、これは便利だ。勇者白長洲(しろながす)はクソみたいな人間だしな。

 

こっちの言うことは聞かないだろうし、<呪術魔法(カースマジック)>でいう事を聞かせて操った方が便利だな。今度どこかで<迷宮氾濫(スタンピード)>が起きたら白長洲を一人で向かわせよう。どうせ死なないだろうし。

 

 

 

「ふ・・・ふざんなよ! こんな程度でこの俺様を縛れると思うなよっ!」

 

 

 

見れば、<呪術魔法(カースマジック)>に抗うように勇者白長洲が脂汗を流しながらも歩み寄ろうとする。

 

 

 

「だから、後107個の呪印を刻みますよ? 合計108個の呪印がすべてつながるとき、圧倒的な封印力と強制力を発揮します。それが<呪術魔法(カースマジック)>、<無限縛鎖(チェィン・カーネーション)>です」」

 

 

 

ものすごく爽やかな笑顔で説明するミーナ。

 

 

 

「ひゃ・・・108個も・・・?」

 

 

 

ミーナの説明にポカーンと驚いた顔をして口を開いたのはイリーナだった。

 

 

 

「なるほど、108の経絡秘孔に【呪いの六芒星(カースペンタグラム)】を刻むのか。お前の命は後3秒ってか?」

 

 

 

俺がヘラヘラと笑いながら勇者白長洲に声をかけると、まるで信じられないといった表情で俺を見る。

 

 

 

「さあ次です。後107回も刻まないといけないので、サクサク行きましょー!」

 

 

 

「あいよー」

 

 

 

ミーナの掛け声にいかにも軽いノリで俺は返事をする。

 

 

 

「ギ・・・ギャアアアアアアッッッ!!!!!」

 

 

 

勇者の絶望に沈む慟哭が響き渡った。

 

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
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