転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
いい感じに焼けたな~、ワイルドボア。
ヒヨコ軍団よ、いい仕事してますね~
「さあみんな~、ワイルドボアが焼けたぞ~、今から切り分けるから食べるから食べたい人は並ぶんだぞ~、ちゃーんとルールを守って並ばない子には美味しいお肉をあげないぞ~」
俺は触手を振るってアピールする。
「「「「わああ~!!」」」」
子供が走って集まってくる。
「さあ、並べ並べ~」
俺はワイルドボアの肉を削ぐように切る。
どうやって切るかって?
もちろん万能スライム触手でですよ!
触手の先端のスライム細胞をぐるぐるエネルギーで硬く薄くすることによって刃物みたいにしているのだ!
さらにエネルギーを保持したままにしているので、多分魔力で切れ味を増してる?感じかな。ワイルドボアの肉をスパスパ切ってます。
肉だけでもいいんだけど、この村で取れたキュキュウリ(きゅうりそっくりだけど、ずっと大きかった)の千切りとトマトマ(トマトそっくりだった、これも大きい)のスライスを村で焼いてもらった焼き立てのパンに切れ込みを入れて挟む。サンドイッチ?ケバブ的な何か?だな。うん。
「おいしー!」
「うまうま!」
子供たちに大人気だ。となると大人もやって来るよね。
「おおっ!これは絶品だ!」
「おいしいわね!」
でもって、村人の絶賛を浴びると、その次にあの方たちもやって来るわな。
「おおおっ!ワイルドボアの肉汁とキャベキャベの千切りの触感とトマトマのみずみずしさ!」
「これはうまいっ!」
「王都でも売れますよ、これは!」
「販売許可お願いします!」
商人が群がって来た。村長が俺の方を見る。
いや、自由にしていーよ。俺が考えたわけじゃないし。
村長は商人たちを集めていろいろと相談しているようだ。
「それで、この料理は何という名前なのですか?」
えっ!? 名前・・・?ケバブでいいのか? それともパンで具を挟んでいるのだからサンドイッチ・・・?
ここで俺は何故かイタズラ心が出てしまう。
「これぞうまいものを纏めて挟んで一気に食べる! スライム流食事術『スラ・スタイル』!」
「ほほう!スラ・スタイルというのですか」
「いろんなおいしい物を挟んで一気に食べる・・・」
「それがスラ・スタイル!」
やっべー!やべちゃんヤッベー!
急に調子に乗ってスラ・スタ~イルなんて恰好つけちまったぜ!サンドイッチ伯爵すいやせん!
「早速王都で流行らせましょう!」
「いやいや、ソレナリーニの町が一番最初に流行りますよ!」
商人たちが盛り上がっている。スラ・スタイルが本当に流行ったらどうしよう?
だいぶ恥ずかしい気がするぞ。
まあ、いいか。それより次はお待ちかね、俺様の出し物だ。
「カソの村歴史ク~イズ!」
舞台に上がって叫ぶ。その後ろでは大きな木の
ローガ達がロープを引っ張って木の盥を持ち上げて行く。それにしても、このからくりもヒヨコ軍団が作ってたけど、ヒヨコたちってホントに器用だよな。というわけで、クイズに間違えるとそのスライムボディがデローンと回答者にぶっかかるという日本で時たまあったバラエティ番組をイメージしたイベントだ!
・・・体をちぎる時は勇気がいったな~。もちろん俺様の大好きラノベにある「スラ〇ム転生。大賢者が〇女エルフに抱きしめられてます」月〇 涙大先生の傑作小説にもあるように、分離したスライムボディーが「分身」でありながら意思を持って個別に大活躍したら嬉しいが、俺のようなノーチート野郎が意思を持った分身を生み出した場合、俺様本体が逆にボコボコにされて吸収されて消えてしまう可能性だってありうるだろう。月夜〇大先生の作品の様に、分身たちが「スラ〇ム・フォー」なんて大活躍してくれるならこれほど頼りになる事はない。だがそれも大賢者たる実力が本体にあってこそだろう。俺のようなノーチート野郎が無理をするとどうなるかまったくわからないのが怖いところだ。
・・・プルプルプルッ! おっと恐怖のあまりスラプルプル(スライムによる高速貧乏揺すりの意)してしまったぜ。チクショー!俺だって「スラ〇ム・フォー」とかやらしてみたいのに!非才の身が恨めしい!
だが、怪我を治すときにスライム触手の先端をちぎって相手にくっつける作業をしても問題なかった。そういうわけでちょっとちぎっては自分に再度吸収、ということを繰り返した結果、自分の3分の1位までを切り離しても問題ないことが分かったのだ。切り離した分離側は特に動かない。切り離し後に動けっと命令してもウンともスンとも言わなかったので、とりあえず俺に分身を操る能力はない・・・わかっていたが、自分がノーチートのスライム野郎だってことを改めて実感・・・オノレカミメガ!
それはさておき、クイズ大会を進めよう。
まずは子供たちに参加させる。「この村の名前は?」「この国の名前は?」「この村の村長の名前は?」など、誰でも正解できるカンタンな問題で正解させ、喜ばしてやる。正解者へのプレゼントは町のお母さん方の協力による手作りお菓子プレゼントだ。
次にお年寄りの参加で、村にあった過去のトラブルネタやお祝いネタを事前にインタービューしておいた内容でクイズ形式に質問して行く。大半のお年寄りが正解して、お菓子を手にできた。また、たまに間違えるおじいちゃんに若手からツッコミが入ったりして盛り上がった。
さて、俺様の本命を呼ぼうではないか。
「最後にウーザ君、こちらへ」
「へっ・・・オレですか・・・?」
「そう、君だよ君、ウーザ君」
と言って俺は触手を勢いよく伸ばし、くるくるっとウーザに巻き付けて引っ張る。
「わったった・・・」
舞台に半強制的に引っ張り出し、木の盥の下に立たせる。
ローガとその部下が
ヒヨコ隊長の合図でローガ達が紐を引っ張れば、
「あ、あの、その、一体これは・・・?」
「最終クーイズ! カンタとチコちゃんに文句を言っていたウーザ君に対して、私ヤーベは・・・怒っている!マルかバツか!」
「えーーーーー!! いや、あれは、その・・・」
「怒っていると思えば、マル! 怒っていないと思えばバツ!」
「ええっ!、あ、いや・・・」
しどろもどろなウーザ君。はっはっは、しっかり答えてもらおうか。
「回答をどうぞ!」
村人が固唾を飲んで?(大半は酒を飲んで笑ってるけど)見守る中、ウーザ君の答えは・・・
「えっと・・・怒っていらっしゃる・・・とか・・・」
「ウーゴ君の答えはマル! さて正解は・・・ドゥルルルルルルゥゥゥゥ」
口でドラムロールは難しいな。
「
「わああっ!?」
「ピヨピー!」
グイッ!ロープが引かれ、木の
「ギョバギョバ!」
ウーザがスライムボディでぬちょぬちょになってヒーヒー言っている。
よしよし、これでオシオキ完了だ。ちなみに怒ってないと言った場合、あの時は怒ってましたーと言って不正解だ。どちらにしてもウーザはスライム塗れの運命にあった。フッ!
ヒヨコ軍団がバケツを持ってウーザに頭から今度は水をぶっかける。そのすきに触手を伸ばして分離したスライムボディを吸収。
「まあこれでスッキリ全て水に流して綺麗さっぱりだよ、ウーザ君」
「はははっ・・・」
苦笑いのウーザ。まあ、これで反省してくれればよいのだ、うん。
びしょびしょのウーザが舞台を降りて行って、代わりに村長が舞台に立つ。
「皆の者!開村祭は大変盛況に行うことが出来た。これも村人全員の協力といつもお世話になっている商者殿のご協力、そして何より大変面白い催しと美味しい御馳走を振る舞ってくれた精霊ヤーベ殿のご尽力によるものである。改めて皆に感謝を申し上げる。ヤーベ殿最後に何か一言お願いできるじゃろうか?」
おいおい!急な無茶ぶりだな!そーいうのは事前に根回ししてくれよぉ。
大勢の前で話すなんて、大学院で研究発表のプレゼンやった時以来だよ。社会人時代はブラックだったから、そんな機会なかったし。
舞台の中央に来て、深呼吸・・・俺、呼吸してねーわ。
「みんなー、楽しかったかー!」
大声で叫ぶ。
「「「わああ~!」」」
盛り上がってくれたみたいだ。
「来年はもっと盛り上がろうぜ!」
触手を振り上げて大声を張り上げる。
「「「うおおおおーーーー!!」」」
みんなで盛り上がった開村祭になったかな。大満足。
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!