転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第35話 ギルドマスターに相談しよう

「おーい、大変だぞー!」

 

とカソの村に到着したは良いが、あまり騒ぐと子供たちに悪影響が出てもいけないので、村に入ると騒ぐのをやめて、村長の家に直接向かった。

 

「おお、これは精霊様。先日の開村祭では大変お世話になりました。これもひとえに・・・」

 

「ゴメン、挨拶は省略で。大変な事が起こっている事が分かったんだ。ソレナリーニの町の北にある迷宮がかなり短い間隔で鳴動を繰り返しているらしい。これは迷宮が<迷宮氾濫(スタンピード)>する兆候に間違いないらしいんだ。ウチの部下からの報告だが、どうやらその鳴動がかなり激しく危険な状態らしい。それも氾濫まであまり時間がないらしいのよ」

 

「な、なんですとぉ! <迷宮氾濫(スタンピード)>ですとぉ!」

 

驚愕の表情を浮かべる村長。

 

「村長、知っているのか?」

 

「<迷宮氾濫(スタンピード)>については、ワシのひいひいひいひいひい爺さんの知り合いが書き残した文献で見たことがあるんですじゃ。このあたり一帯を治めておったガーリー・クッソーさん(108)が書き残した内容によりますと、やはり鳴動のような細かな地震が続き、大きく揺れたかと思うと大量の魔物が押し寄せて来た、とありましたのじゃ」

 

「じゃあ間違いないな。ひいひいひいひいひい爺さんの知り合いって何百年前かわからんけど。後、ガーリー・クッソーさん(108)すげー長生きだったんだな」

 

俺は考える。このカソの村の防衛能力と<迷宮氾濫(スタンピード)>による魔物の攻撃力の比較。

 

カソの村防御力・・・3 (村の周りに多少柵がある。村全体を覆い切れていない)

 

迷宮氾濫(スタンピード)>による村への攻撃力・・・2000 (魔物が1匹攻撃力1とした場合の換算。約2000匹が氾濫した場合)

 

うん、無理。大体、カソの村には魔物と戦える冒険者がいない。せいぜい獣を狩猟する狩人たちだけだ。

 

「どう考えてもカソの村は魔物の氾濫でペッシャンコだなぁ」

 

「精霊様、ヒドイ!」

 

うぉーんと泣きながらヒドイと文句を言う村長。

 

「だが、どう頑張ってもこの村の防衛能力では魔物を防ぐことは出来ん。何ともならない」

 

「この村を捨てるのは忍びないですのぅ」

 

さめざめと泣きながら肩を落とす村長。

 

「だから、この村で防衛できないんだから、村に接近する前に魔物を殲滅すれば大丈夫だな」

 

「・・・へっ!?」

 

「だから、魔物1匹この村には近寄らせないって言ってるの。あんまり言わせないでよ。恥ずかしいから」

 

人助けやヒーローなんて柄じゃない。俺はもっと利己的な人間だ・・・今は人間でもないけど。ただただ仲間を守りたい、世話になった人たちの笑顔を消したくない、それだけだ。

 

「迷宮はあくまでソレナリーニの町の北にある。ソレナリーニの町で防衛し切れば、カソの村まで魔物が来ることはないはずだ。俺はこれからソレナリーニの町の冒険者ギルドに出向いてギルドマスターにこのことを相談してくる。どうやって守り切るかギルドマスターと対策を練って来るよ」

 

「おおっ・・・! やはりあなたはこのカソの村の救世主であられましたな! いや、もうこの村だけでなく辺境全体の救世主に間違いなくおなりになりますな!」

 

嬉しそうに村長が俺の肩を叩く。・・・肩の辺だね。辺。

 

「とにかく、騒動が落ち着くまで全員自宅に籠っていてくれ。外出は禁止だ。子供たちにもよく言い聞かせてくれ。言う事聞かないと精霊様の唐揚げ祭りは今後無くなるってな」

 

「はっはっは、それは言う事を聞かない者など誰もおらんでしょうな」

 

村長は髭を擦りながら笑った。

俺は早速亜空間収納からイリーナに選んでもらったローブと魔導士の杖を装備する。

 

「さて、これからは大魔導士ヤーベが出陣するとしよう」

 

そう言って村長の家を後にしてローガに跨り、ソレナリーニの町へ大至急出発する。

・・・イリーナよ、なぜ俺の背中にくっついている?

 

「例え役に立てなくても、ヤーベのそばにいたいのだ・・・」

 

そう言われちゃ断れないか。振り落とされるなと伝えて、ローガにダッシュさせる。もっとももちろんのことだがイリーナが落ちないよう触手でガッチリサポートしてますけどね。

 

 

 

そんなわけであっという間にソレナリーニの町に到着する。

そう言えば、以前ギルドに登録した際に「使役獣には使役者の魔力を登録するペンダントを付ける様に」と言われていたな。何でも町に入る門で申請すればくれるとか。それを覚えていた俺様は全60匹のローガの部下を先行でソレナリーニの町に行って町の近くで待機するよう指示を出していた。

 

町の門の手前街道から少し外れた場所にずらりと並ぶ狼牙達。一糸乱れぬままお座りして待つ姿に街道から少し離れているとはいえ騒然となった。衛兵たちも集まってくるが、襲ってくる気配はないため、どうするか冒険者ギルドのギルドマスターに連絡を入れていた。

 

「おーい」

 

そこへ俺様登場。衛兵たちが街道に集まっている。

 

「何だ、どうした?」

 

「見ろよ、強力なCランクモンスターの狼牙があんなに・・・ってもしかして?」

 

「うん、俺の使役獣。ホラ」

 

ギルド発行のギルドカードには魔力を流すと俺の名前とランク、職業が。そこには<調教師(テイマー)>の文字が。

 

「脅かすなよ!」

 

衛兵にキレられた。

 

「悪い悪い。町に連れて来たのは初めてだったしね。ところで使役獣の証ちょーだい」

 

「ちょーだいって、お前なあ・・・、まあ首にペンダント巻いてもらわないと使役獣ってわからないから・・・てか、あれ全部か!?」

 

「そうだよ、今乗ってるヤツ含めて61匹」

 

「ろっ・・・61匹!?」

 

「そう」

 

「ねーよ!そんなにペンダントが! あれ、冒険者ギルドが無料で供給しているとはいえ、魔導具だぞ・・・、ギルドマスターまたキレなきゃいいけど・・・」

 

頭痛いと手をおでこに当てて天を仰ぐ衛兵。

俺、何かおかしな事したかな?

使役獣に証のペンダントが必要だから頼む・・・至極まっとうだな、うん。

 

「この西門には10個のペンダントしかないんだ。他の3か所の10個を合わせても足りないか。おい、馬を出せ。各門のペンダントを回収してくる者と、冒険者ギルドに足りない21個を補填してもらう者それぞれ1名を選出して向かわせろ!」

 

「はっ!」

 

とりあえず先の10個を受け取り、首につけて行ってやろう。

おおう、ローガよ、いの一番に並んで尻尾をブンブン振らない様に。周りの人が驚くからね。その後ろにはローガの直属の部下である三騎士+ガルボで狼牙族四天王を名乗らせている。ちなみにガルボだけ後から来たのに名前があったので、三騎士が名前を羨ましがったから、ローガに確認した上で3匹に名前を付けている。「風牙(ふうが)」「雷牙(らいが)」「氷牙(ひょうが)」。それぞれ、風系の魔法、雷系の魔法、氷系の魔法およびスキルを使用できる、狼牙族の中でもとびっきりの戦闘力を誇る奴らだ(ローガはさらに別格)。それに風来坊なガルボ。それぞれ役割を任せられる頼もしい連中がローガの下に付く。

 

まずはローガの首にペンダントを掛ける。

 

『ボス!光栄です!一層の忠義を誓います!』

 

ローガが力強く吠える。頼もしい限りだが、ここでは落ち着こうな。周りに一般人がいっぱいいるから。その後も首に使役のペンダントを掛けて行ってやる。

そうこうしていると他の門にあったペンダントが届けられる。

俺はペンダントに魔力を通してからどんどんペンダントを狼牙達にかけて行く。

 

「ヤーベ様、お久しぶりです」

 

「んっ?どちらさまでしたか?」

 

「冒険者ギルド、副ギルドマスターのサリーナと申します。ギルドに冒険者登録を行って頂いた時にギルドマスターの横に控えておりました」

 

「ああ、これはどうも」

 

こんな美人の副ギルドマスターがいたんだね。ギルドマスターのゾリアの趣味だな。完全に。

 

「それにしても、圧巻の使役獣でございますね。全部で61匹とか?」

 

「そうですね。いい奴らばかりですよ」

 

「確かにそれは肌で感じることが出来ます。ただ、お伝えしておきますが、使役獣の起こした問題は全て使役者に責任が還元されます。魔力を通した使役のペンダントで使役者が分かる様になりますので、十分にお気を付けください」

 

「なるほど、よくわかりました。コイツらは自分たちが攻撃されない限り人を襲ったりしませんよ。とても賢いから」

 

「そうですか・・・、よろしければ少し撫でさせて頂いても?」

 

副ギルドマスターのサリーナの目がキラリンと妖しく光ったように見えた。

 

「どうぞどうぞ。どうせなら狼牙族最強のローガをモフモフしてやってください」

 

にっこり笑って伝えてみる。最もローブをすっぽりかぶっているけどね。

 

「ローガ、少しサリーナさんにモフらせてやってくれ」

 

『了解です! ドーンと来てください!』

 

「お、おっきい・・・、いいのですか・・・?」

 

サリーナさんは恍惚の表情でローガを見つめる。

 

「さあ、触ってみて」

 

俺はサリーナさんの背中を軽く押してやる。

 

ふわっ!

 

「な、なんて柔らかい毛・・・、ふわふわです!」

 

といいつつ、顔を埋めて体全体でモフモフし始めるサリーナさん。

ふっ、これでまた一人ローガの虜になってしまったか。

 

「サリーナさん、最後の1つを作って持ってきましたよ・・・って何してるんですか?」

 

ローガの体に半分くらい埋まったままモフモフし続けているサリーナさんは、ローブ姿でやって来た男が声を掛けても反応しない。

 

「ふわわ~幸せです~」

 

「そちらはどちらさま?」

 

とりあえず代わりに俺が聞いてみよう。

 

「ああ、これは申し遅れました。私は錬金術師のランデルと申します。実は冒険者ギルドから、在庫の使役獣のペンダントが足りなくなってしまったので、大至急1つ作って西門に届けるよう依頼を頂きまして」

 

「ああ、そうなんだ。それ俺のせいだな」

 

はっはっはと笑って誤魔化す。

 

「あ、あなたが使役獣を61匹も持つ大魔導士ヤーベさんですか?」

 

「そう。迷惑かけたね」

 

「とんでもない!ここ2年ほど<調教師(テイマー)>の方が訪れず、使役獣のペンダントを使用する機会が無くて、ついさきほどまでギルドマスターよりペンダントの納品を打ち切られる直前だったのですよ。これで仕事が無くなると落胆した時にサリーナさんの元へ西門の衛兵さんが来て使役獣のペンダントが足りないと報告が入りましてね。逆に打ち切りどころか、特急で1つ仕上げる様に注文を頂くことが出来ましたよ」

 

「あ、そうなんだ。じゃあ俺のおかげで仕事がつながったんだ。そりゃよかった」

 

「ホントです。ヤーベさんは私にとって神様みたいなものですよ」

 

快活に笑うランデル。いい人っぽいな~。こんないい人の仕事を打ち切ろうとは、ギルドマスターのゾリアの野郎トンデモねーな! 俺様が使役獣を増やしまくってやるか!ウッシッシ。

 

「副ギルドマスター殿!大丈夫ですか?手続きを進めないとまずいのでは?」

 

「はっ!?」

 

ランデルの声掛けに我に帰る副ギルドマスターのサリーナ。

 

「これが最後の一つです。どうぞお使いください」

 

「ありがとうございます。さあ、ヤーベ殿これで61個すべてお渡しできました。使役獣のペンダントが揃いましたら、町への入門受付を完了してください」

 

「了解だ。じゃあお前達。規則正しく行進して行くぞ!」

 

「「「わおーん」」」

 

さあ、冒険者ギルドまで行進だ!

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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