転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第37話 お代官サマーにも相談しよう

 

「で、どうなんだ? ホントのところ」

 

ギルドマスター・ゾリアの視線が厳しい。

 

「どうって?」

 

「<迷宮氾濫(スタンピード)>だよ! どれくらい余裕ありそうだ?」

 

「ほとんどないかな?」

 

「うお~~~~~!なんでだよ!」

 

「何でって言われてもね・・・」

 

「そんなに確実なのか? だいたいお前<迷宮氾濫(スタンピード)>見た事ないだろ」

 

「そりゃアンタもそうじゃないのか? 一応カソの村にも危険を伝えるために出向いたんだが、村長がひいひいひいひいひい爺さんの知り合いが書き残した文献で見たことがあるらしいぞ。なんでもガーリー・クッソーさん(108)が書き残した内容によると、やはり鳴動のような細かな地震が続き、大きく揺れたかと思うと大量の魔物が押し寄せて来たとのことだ」

 

「なんだよ、そのひいひいひいひいひい爺さんの知り合いって」

 

「ガーリー・クッソーさん(108)の事だな」

 

「知らねーよ!」

 

ドンドンドンッ!

急に扉が叩かれる。

 

「何だ!」

 

ガチャッ!扉が乱暴に開かれたと思うと、ギルド職員が入ってくる。

 

「ギルドマスター大変です!Cランクパーティ<呪島の解放者>が迷宮で大けがをして戻って来ました!」

 

「なんだと!」

 

ゾリアが血相を変えて立ち上がる。

 

「<呪島の解放者>って?」

 

「この辺境の冒険者ギルドじゃトップクラスのパーティだ。剣士のバーン、戦士のギイム、神官戦士のエイト、精霊使いのディードリヒ、盗賊のツリージッパー、魔術師のスーレンの6人で構成されていてな。パーティバランスが高く、高難度の依頼もミスなくこなす実力者達なんだ」

 

「え~~~~? じゃあもしかして、パーティ名の「じゅとう」ってもしかして「呪われた島」って書く?」

 

「そうだ、よくわかったな」

 

「でもって、このあたりに呪われた島があるのか?」

 

「いや、島どころか海も湖もねーよ」

 

「じゃあ何で呪島なんだよ!?」

 

「わからん。リーダーのバーンがある日、神から天啓を受けたとかで」

 

一体どちら様でしょうか? まさかの転生者がらみか?

悪ふざけだとしたら版権の問題もあるから、5寸釘くらいのぶっとい釘を刺しとかないと。

 

「で、怪我は大丈夫なのか?」

 

ゾリアが状態を心配する。

 

「とりあえず診療所に運ばれました。バーンとギイムが重傷です。魔術師のスーレンの話だと、迷宮の奥で爆発的に魔物が発生して、退却もままならないほどの激戦に見舞われたと・・・」

 

「前衛が重傷だと、<迷宮氾濫(スタンピード)>時の防御対応には戦力に計算できねーな。それで、迷宮に出た魔物の種類は!」

 

「オークやゴブリンが大半だったとのことですが、まずもってその数が尋常じゃないとのことです。そして中にはオーガの姿もあったと・・・」

 

「オーガ!」

 

ギルドマスター・ゾリアが驚愕の表情を浮かべる。

 

「オーガってヤバイのか?」

 

確か大半のラノベではオーガは「鬼」って感じで、ゴブリンやオークよりも体が大きく、強い上位な魔物に分類されることが多いのだが、果たしてこの世界ではどうか?

 

「単体でゴブリンがEランク、オークがDランクだが、オーガは単体でもCランクだ。これが複数出ると、それぞれワンランクアップの危険度になる」

 

ああ、思った通りのランク付けだな。

 

ゴブリン < オーク < オーガ

 

となるわけだ。種族も違うし、同系列ってわけでもないけど、この3種はイメージが似通るよね。一応人型っポイし。

 

「・・・あれ? そういや、狼牙たちはCランクって言われてたか?」

 

衛兵たちが言ってたよな、確か。

 

「・・・そうだな。狼牙は単体でもCランク認定だ。お前は軍団で率いているから、Bランク脅威認定だな」

 

「勝手に脅威認定しないでくれ」

 

「だが、今はこれほど力強い味方はいねーと思ってるよ」

 

ニヤリと凶悪な笑みを浮かべるゾリア。

 

「どれほど期待に応えられるかはわからんがな」

 

トントン。

 

そこへノックの音がした。

 

「入れ!」

 

ギルドマスターの横柄な返事に、ドアを開けた副ギルドマスターのサリーナが少し顔を顰めながら入って来た。

 

「失礼致します。代官のナイセー様をお連れ致しました」

 

「失礼するよ」

 

そう言ってサリーナの後に入って来たのは比較的高価に見える衣服に身を包んだ若い男だった。

 

「ナイセー殿。ご足労を掛けてすまんな」

 

本当にすまないと思っているのかわからないような挨拶で返すギルドマスター・ゾリア。軽く会釈程度に頭を下げているようにも見えるが、これもそんなにすまなそうには見えない。もっともゾリアの人となりがそうさせているのかもしれないが。

 

「代官?随分と若いんだな」

 

俺は思ったことをサラッと言ってしまった。

この世界のお偉いさんがどんな感じか全く情報を持っていないのだから、もっと慎重に口をきくべきかと思ったが、もう手遅れだな。

 

「まあね。辺境だから人手不足ってのもあると思うけどね。それで、君が噂の大魔導士さんかい?」

 

「ああ、大魔導士のヤーベだ・・・噂になってる?」

 

「うん、ギルドマスターからも町の屋台街からも君の情報は挙がってるよ。未知数の実力者で、分かってることは屋台街の料理を買い占めるほどの食べ物好きの大金持ちで、今日は<調教師(テイマー)>としての実力も超一流で狼牙を61匹も使役してるって話も来たよ。冒険者としての能力は規格外という判断だね」

 

「はっはっは(まあ、スライムって種族からして規格外ですけどねっ!)」

 

「そうなのだ!ヤーベ殿は素晴らしいのだ!」

 

目をキラキラさせてグーを握り力説するイリーナ。まあ、説得力ゼロですけどね!

この町の実績は屋台の買い占めと使役のペンダント61個所持だけだしね。

 

「それで? <迷宮氾濫(スタンピード)>とのことですが、本当に起こりえるのでしょうか?」

 

ゾリアに真剣な目を向け、確認するナイセー。

 

「サリーナ。その他の対応はどうなっている?」

 

「はい、衛兵の交代には人数を増員してもらって、時間を早めてすでに出発してもらっています。それ以外では迷宮から帰って来たCランクパーティ<呪島の解放者>及び、その他の冒険者たちからの聞き取り調査を行っております。いずれも、迷宮の魔物が異常に増力している事、迷宮自体が鳴動を行っていることなどが報告されました」

 

「そうか・・・」

 

腕を組み、難しい顔をするゾリア。

 

「間違いないのかい?」

 

心配そうに問いかけるナイセーにゾリアは重い口を開く。

 

「ああ、もう間違いないな。後はどのタイミングでどれだけの魔物が迷宮から溢れるかだ」

 

「そうなのか・・・」

 

ナイセーも表情が暗くなる。

迷宮氾濫(スタンピード)>が間違いないとなると、必ず魔物が溢れて外に出てくる。この魔物を野放しにすることは出来ない。

問題は、いつ出て来るか。どれだけの魔物が出て来るか。そして出て来た魔物がどこへ向かうかだ。

 

「迷宮の入口を塞いじゃえばいいんじゃね?」

 

俺は素直に思った事を言う。

 

「迷宮の入口はかなりデカいんだ。それをモンスターの氾濫を防ぐような強度の扉というか、蓋を製作することはまず無理だろう。それに過去の資料によれば、<迷宮氾濫(スタンピード)>の魔物はかなり精神が異常のようで、猪突猛進に突き進む傾向にある。入り口付近に兵を集め、出てきたところを叩くのが戦術としては定石だが、戦力を広く展開できないのはこちらも同じだ。一点突破で魔物に押し切られる可能性が高い」

 

「それではどうすると?」

 

ナイセーは歴戦のギルドマスター・ゾリアが無策であるとは思えなかったので、その後の言葉を待った。

 

「この町には外壁がある。外壁前にもう一段柵を講じてこの町で迎え撃ちます」

 

「やはり、この町でないといけませんか・・・」

 

出来ればこの町に接近する前に仕留められないか・・・存外にそんな希望を滲ませながら呟くナイセー。だが、平原で<迷宮氾濫(スタンピード)>の魔物を真正面から受け止めるだけの軍隊がこの町にはない。まして冒険者ギルドの所属冒険者たちもトップランカーが大けがを負う程の状況である。柵と外壁で魔物を受け止めながら遠距離で攻撃して行く以外に方法が無かった。

 

「王都には救援の急使を出しましょう。出来れば正確な<迷宮氾濫(スタンピード)>の規模を報告したいところですが、それまで待てません。まずは状況だけ報告出来るよう・・・」

 

そう打ち合わせをしていたところで、ギルド内が何かざわついていることに気が付いた。

そしてトントンとノックされる。

 

「はい」

 

誰だろう?と皆が首を傾げながらも、副ギルドマスターのサリーナが席を立ちドアを開ける。

 

「きゃっ!」

 

そこには頭にヒヨコ隊長を乗せたローガがいた。

というか、ローガよ、よくここにいると分かったな。そしてノックうまいね。

 

「おいおい、ギルド内に使役獣を入れるのは禁止されているんだがな」

 

ジロッと俺を睨んで来るゾリア。だが、よほどのことがない限りローガは言われたことを守るはずだ。であれば、この状況は緊急性が高いということだ。

 

「そうなんです、ローガちゃん。建物内には入ってはだめなのですよ・・・」

 

そう言いながら跪いてローガの首に手を回し顔を埋めるサリーナ嬢。

ここでモフッてはいけません。

 

「こ、これが使役獣の狼牙? なんと立派な・・・」

 

代官のナイセーも初めて見るローガに驚いている。

ふっふっふ、うちのローガはそんじょそこらの狼牙族とはわけが違いますからね!

 

堂々と開けてもらったドアをくぐり部屋に入ってくるローガ。

 

『ボス!ヒヨコ隊長より重大な報告があるとのことですので、緊急を要すると判断し参上致しました』

 

「わかった。ゾリア、ナイセー。どうも重要な情報のようだ。このまま報告を聞いていいか?」

 

「ぜひお願いしますよ」

「俺たちにも教えてくれよ」

 

二人が許可を出したのでヒヨコ隊長を促す。

 

『<迷宮氾濫(スタンピード)>が始まりました! 迷宮より魔物が溢れ出ています!』

 

「えっ?」

 

俺が絶句したので、他の二人が俺をせかすように声を上げる。

 

「どうした!」

「何があったのです?」

 

「<迷宮氾濫(スタンピード)>が始まって、迷宮から魔物が溢れ出たって」

 

「「えええーーーーーーー!!」」

 

ソレナリーニの町防衛の戦略は風雲急を告げるのだった。




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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