転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第46話 テロ対策を始めよう

「おーい、ナイセー」

 

代官屋敷の朝。

その屋敷の主たる代官であるナイセーを緊張感のない声で呼ぶ。

メイドたちが驚く。

主を呼び捨てにする怪しげな男。

そう、俺様。

 

「おはようございます。朝食の用意はもう出来ておりますよ」

 

そうにこやかに声を掛けてくる。

普通屋敷の主を呼び捨てにするものなど皆無である。

なのに、その事を咎めもしない。

急に屋敷へ招待された怪しげな客と使役獣。

だが屋敷の主であるナイセーの態度が、どれほど重要な客を連れて来たのかを物語っている。

 

「ナイセー、おはようさん。実はヤバいネタをヒヨコたちが掴んできてね。至急耳に入れておきたいんだが?」

 

何でもない事の様に伝える俺。

なんだが出来る探偵みたい?

 

「・・・それは、早くお聞きした方がいいのでしょうね。バーバラ、お客人との朝食は執務室で取ります。軽く摘まめる物と飲み物だけ準備してください」

 

「!・・・畏まりました」

 

一瞬驚いたものの、即座に礼をしてテキパキと準備を進めて行くバーバラと呼ばれたメイドさん。ちらりと横にいるイリーナを見る・・・俺もこんな出来るメイドさんが欲しい。

 

ぎゅぎゅぎゅ!

 

「おうふっ!」

 

イリーナさん、昨日から手を握る力加減おかしくないですかね!?

 

「さあ、こちらへどうぞ」

 

執務室の扉を開け、中に入るよう促すナイセー。

失礼しまーす。

 

おお、ザ・執務室! 奥のデスクにはきちんと整理されてはいるものの、うず高く積まれた書類の山が。

だが、打ち合わせは執務デスクではなく、その前にある高そうなテーブルを挟んだソファーに座って行えそうだ。

 

「お座りください」

 

ナイセーの言葉に従って俺とイリーナ、そして俺の頭に乗ったヒヨコがいる。ちなみにヒヨコ隊長は屋敷の外の厩舎で寝ているローガの所に居たのだが、部下の緊急報告で付いてきているのでイリーナの肩に止まっている。ヒヨコ隊長が俺の頭に乗っていないのは、緊急の情報を持ち帰ったヒヨコが説明を行うため、その場所を譲っているのだ。

 

ちなみに、ヒヨコたちにとって俺の頭に止まる事は相当な誉れらしい。一種のあこがれ、ステータスのようなものだとヒヨコ隊長が言っていた。この報告を持ってきたヒヨコも、『ボスの頭に止まらせて頂けるのですか!感激であります!』って言ってたし。

 

「早速だがナイセー、部下のヒヨコがとんでもない情報を掴んできた」

 

俺は寄り道無しの直球で話した。

 

「どのような情報でしょうか?」

 

「北のスラム街で、数人の人間がこの町でテロ行為を働こうとしている相談をウチのヒヨコが聞きつけて来た」

 

「・・・テロ行為! 一体どのような行為かわかりますでしょうか?」

 

「どうだ?」

 

『ぴよぴよぴぴー!』

 

「なんでも、毒を撒いて大勢の人間を苦しめるそうだ」

 

「なんてことだ・・・。それはいつどこで?」

 

『ぴよぴよー!』

 

「今、別の部下が数羽で監視中のようだ。動き出せば報告がある」

 

「では動き出して、奴らが毒を使おうとした瞬間を狙って捕縛するわけですな!」

 

「そうだな、それが一番確実だろう。今仕留めても毒の保持くらいでしか罪に問えないだろうしな」

 

そこへヒヨコがさらに戻ってくる。

 

『ピピピー!(奴らが動き始めました!)』

 

「よし、敵が動いたみたいだ。俺は先に出て奴らの決定的瞬間を抑える。ナイセーは衛兵に連絡して衛兵隊を連れて来てくれ。場所はヒヨコたちの連絡で案内できるようにする」

 

そう言って俺は屋敷を出る。

 

「ローガ!」

 

『ははっ!ここに!』

 

傅くローガ。

 

「緊急事態だ。お前はイリーナを乗せ、ヒヨコの部下から場所を確認しつつナイセーを案内してこい。俺は空から先に行く」

 

しまったな、こんなことなら狼牙族みんな町に入れておけばよかった。連中がいればスラム街など、すぐに制圧できそうなのに。

まあいい、急ぐか。

 

「ヒヨコ隊長、部下とともに案内を頼むぞ。シルフィー、力を借りるぞ!<高速飛翔(フライハイ)>」

 

ヤーベの体が風を纏い宙に浮く。

 

「案内しろ!」

 

『ピピー!(こちらです!)』

 

猛スピードでヒヨコと謎の物体ヤーベが空を飛んで行った。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「ケェ~~~ケッケ! この井戸にこの毒をぶち込んだらイチコロよ!」

「アニキィ!たまらねーな!」

「いくつの井戸を回るんだ?アニキ」

「ああ?後十か所もありやがるからよ!さっさとこの毒をぶち込んで・・・って、わあっ!」

 

いつの間にか上からスーっと降りて後ろに立っていたヤーベ。

井戸の周りにいた三人の男たちがいきなり現れたヤーベを見て驚く。

リーダーらしき男が毒の瓶を井戸に傾けて中を垂らそうとしているのをジーっと見ていた。

 

「な、なななんだお前!」

 

「あー、それが毒なんだ。どんな毒?」

 

「ああ、何でこれが毒だってわかるんだ!? てか教えるわけねーじゃねーか!」

 

激高するリーダー。単細胞だね。

 

「あ、そう」

 

シュパッと触手で毒の瓶を回収。

 

「あれっ!?いつの間に!」

 

でもって亜空間圧縮収納へ放り込んでみる。

 

【ポイズンウォータードレイクの毒】

【詳細:致死毒。成人男性に対して致死量は約3g。瓶内50g 現在合計1462g保持】

 

「Oh・・・」

 

いつぞやの泉で対峙した猛毒トカゲの毒じゃないですか。ものすごく致死性の高い奴。

 

「最悪だな、お前ら。こいつはかなり致死性の高い毒だ。大量殺人だな。死刑間違いなし。だから、今のうちに洗いざらい吐いておいた方が楽だぞ?」

 

「たった一人で何言ってやがる!おい!お前ら、見られたからには生かしちゃおけねえ!やるぞ・・・あれ?」

 

リーダーの男は振り返るが、すでに他の男2人は倒れている。

ちなみに俺様がリーダーと会話している間に、足元から触手を2本伸ばして、後ろの二人を締め落としただけだけどね。

 

「てめぇ!」

 

ナイフを振りかざし襲い掛かってくる男。もちろん触手で手首を引っ掴んでまるでハエタタキの様に石畳に叩きつける。

 

「ガハアッ!」

 

あっさり無力化成功。トラブルは未然に防いでこそってね。

 

そこへナイセーが衛兵を連れてやって来た。ローガよ、案内ご苦労さん。

 

「ヤーベ殿、賊はどうなりました?」

 

「無力化完了、奴らの持っていた毒がこれだ。致死性が極めて高いポイズンウォータードレイクの毒のようだ」

 

「なんですと! ポイズンウォータードレイクの毒は毒そのものが珍しく、解毒剤が作りにくいので非常にやっかいな毒なのです。即死するほどではありませんが、比較的死に至るまでの時間も短い。本当に毒が混入される前に阻止出来てよかったです。助かりました」

 

ホッとした表情でお礼を言ってくるナイセー。いいって事よ、昨日は御馳走になったしね!

 

「はぁ~~~はっは! これで解決だとでも思ったか!バカめ!」

 

衛兵に取り押さえられたリーダーらしき男が急に騒ぎ出す。

 

「どういう事です?」

 

「この町でのテロは失敗したがな、もうフェルベーンではすでに始まっているんだよ!」

 

「ま、まさか・・・!」

 

ナイセーは絶句した。もう始まっている、それはこの地を納めるコルーナ辺境伯がいる城塞都市フェルベーンでのテロを示唆していた。

 

俺は皮手袋をした右手でリーダーの男の顔を掴む。

 

「フェルベーンでも同じ手口なのか? 誰がお前らのボスだ? 何が目的だ?」

 

「はっ!誰が喋るか・・・うぎゃぎゃぎゃぎゃ!」

 

俺はアイアンクローの状態で万力の様に男の頭を締め上げる。

 

「で、フェルベーンでも同じ手口なのか? 誰がお前らのボスだ? 何が目的だ?」

 

「はががががががが!」

 

メリメリメリメリッ!

 

聞こえてはいけない音と出てはいけない何かが見えてしまった気がした。

 

「ヤーベ殿、尋問はこちらで」

 

ナイセーが声を掛けてくる。

 

「ナイセー、お前さんの上司に大至急連絡を取る方法があるか?」

 

「王都と違い、ここには通信魔道具がないのです・・・」

 

唇を噛むナイセー。やはり辺境伯や城塞都市が心配なのだろう。

 

「ならば大至急辺境伯宛に手紙を書いてくれ。俺がどういう人間か、それからソレナリーニの町にて起こったテロ未遂事件の概要をな。急げ」

 

「分かりました!」

 

急いで衛兵長に犯人から出来る限り情報を得る様に指示する。

 

「至急代官邸まで戻りましょう!」

 

走るナイセーの後を追って俺たちも代官邸まで戻る。

 

手紙を受け取ったら大至急城塞都市フェルベーンまで出発だ。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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