転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
俺はゆっくりルシーナの血液を「スライム透析」にて浄化して行く。
浄化が進むごとにルシーナの顔色が良くなっていく。
当然通常の透析なら不純物を取り除くだけだろうけど、何といってもコレは俺様特製「スライム透析」だ。水の精霊ウィンティアの加護により血液に水の加護を与えている。具体的な効力は<
「ああ、ルシーナの顔色が良くなってきているわ!」
奥さんが喜んで、ルシーナの左手を握る。
俺が右手を掴んでいるから、ベッドの反対側に回り、ルシーナの左手を握っていた。
すでに悪徳神官を沈黙させているので、衛兵及びメイドを部屋に入れている。
見た目の問題もあるので、ルシーナの口に入れていた触手は回収している。
「・・・声も出る様になってきました」
まだだるそうにしながらも笑顔を向けてくるルシーナ。
「ああ、ルシーナ!」
奥さんがルシーナに抱きつく。本当に心配していたんだな。家族っていいね!
ちらっと見ればフェンベルク卿も目に浮かべた涙を拭っている。
「・・・? あれ・・・イリーナちゃん?」
ルシーナがイリーナを見て呟く。
「ふえっ!? バレた?」
「くすくす・・・、そんな格好してるからちょっとびっくりしたけど、分かるよ。イリーナちゃんとは仲良しだもん。少し前に会えなくなって、行方不明って噂も流れて・・・、とっても心配してたんだよ?」
「今はルシーナちゃんの方が心配だよ?」
そう言って二人はくすくすと笑った。
「イリーナちゃんだったんだ・・・」
奥さんが呟けば、
「まさか、ルーベンゲルグ伯爵令嬢がルシーナを助けに来てくれるとは・・・」
フェンベルク卿も信じられないと言った表情だ。
「ええっ!? イリーナって伯爵令嬢だったんだ!?」
思わず信じられないような物を見るような目でイリーナを見てしまう俺。
「え、ああ、うん、そうだな・・・」
俺のツッコミに急にモジモジして照れだすイリーナ。
「え・・・、イリーナちゃん、その人って・・・」
未だにルシーナの右手首を掴んで、謎の治療中のヤーベを見つめるルシーナ。
そう言えば意識がはっきりしてからもまだ、名前すら聞けていない。
「え、ああ・・・、うん・・・、その、私の・・・大事な人・・・かな?」
イリーナが高速モジモジをかましながらそんなことを宣う。
「「ふえっ!?」」
俺とルシーナが同時に驚きの声を上げる。
俺はいつの間にイリーナの大事な人に!?
ローブを纏った怪しい奴ですけど!?
自分で言うのもなんですけどね!
見れば奥さんもフェンベルク卿も驚いた顔をしている。
「イリーナちゃんの大事な人って・・・結婚するの?」
ええっ!? 結婚!? 俺が!? イリーナと!?
まず、人ではない俺が結婚ってどーなのよ!?
「え・・・」
チラッと俺を見るイリーナ。
顔を真っ赤にしている。
「うん、結婚する・・・」
すんのかーい!!
今初めて聞きましたけど!?
後、イリーナのご両親にも会った事ありませんけど!?
後、再確認しますけど人じゃないですが!?
ルシーナが今度は俺に視線を向けてくる。
「お名前・・・教えて貰ってもいいですか・・・?」
ルシーナが俺に聞いてくる。
「お、俺・・・? ヤーベって言うんだけど・・・」
まだ俺自身も気持ちが落ち着かない。
イリーナが事あるごとに俺にモーション?をかけてくれるのは気づいていたが、まさか大真面目に結婚とか考えているとは思わなかった。
というか、イリーナは俺が魔物の体だと知っているはず何だが。
「ヤーベさん・・・奥さんは二人いても大丈夫ですよね・・・?」
「はいっ!?」
「ふえっ!?」
「まあっ!」
「何だと!!」
そこにいた主要メンバー全員はそれぞれ声が裏返った。
「ル、ルシーナちゃん、ヤーベはダメだよぉ・・・」
ちょっと涙目で俺の右上腕部を抱えるようにするイリーナ。
揺すらないでね?まだ治療中だから!
「でもでも、イリーナちゃん、こんなすごくて素敵な人と知り合ってずるいよぉ・・・私だって仲良くしたいよ」
「そうねっ!ルシーナ。大事な人だって思ったらたくさん積極的になるのよ!」
ニコニコしながら左手を握る奥さん。
「お母さま!」
母親の応援を受けてより元気を増したルシーナがさらに俺に質問をする。
「ヤーベ様は奥様がたくさんいた方がよろしいですか?」
「ふええっ!?」
イリーナがもっとびっくりした顔でルシーナを見る。2人だけじゃなくてたくさん奥さんがいるの・・・!?
「ダメダメ!ルシーナちゃんと2人でも大変なのにもっと一杯なんてだめだよ~」
イリーナはヤーベの周りに自分とルシーナ、そしてたくさんの女性がいる場面を想像してもだえ始めた。
「そんなにたくさん女性が居たら、イリーナはポンコツだからもういらないって言われちゃうよ・・・」
急にグスグスし出すイリーナ。
「大丈夫だよ!イリーナちゃん。私と二人でヤーベさんを支えて行けばいいんだから」
「ふえっ!? 二人で・・・?」
「そう、二人で!」
そう言ってはにかむルシーナ嬢。すでにイリーナの味方だよ!みたいな感じで丸め込まれてますよ、イリーナさん?
「イカンイカン! 結婚なんて何を言っているんだ! 大体まだルシーナには早すぎる!」
急にフェンベルク卿が騒ぎ出す。
「あら、貴方? ルシーナの命を救ってくださった奇跡の魔導士様が、まさか気に入らないとでも?」
いやいや、お気になさらずに。というか命救ったら求婚って、お医者様はハーレム状態になっちまうよ。
「いや! そう言うわけではないんだ、感謝はもちろんしてるさ!対価もちゃんと支払わなければと思っているよ!でも結婚は早いんじゃないかと・・・」
「あら貴方、すでにルシーナは十六歳ですわよ。去年社交界にデビューを果たしておりますし、何の問題も無いではないですか。すでにいくつかの貴族よりルシーナを娶りたいと申し出が来ておりますし」
「むうっ! だが、やはり早いからそういった申し出も断っているではないか」
「それは相手によるからですわ。今まで申し出のあった貴族のお相手は皆さんイマイチでしたもの。それに比べてこのヤーベ様はとてつもない力の持ち主ですわ!ルシーナの伴侶にふさわしい!」
いや、怪しいローブを羽織った顔すら見せない謎星人ですけど?
俺のどこにダンナ要素ありますかね?
あ。屋台で食い物買い占めた時はダンナって呼ばれてたわ!
「そうですね、お母さま。イリーナちゃんと二人でしっかりヤーベ様を支えたいと思います!」
「うん!その意気よ」
「イリーナちゃんも一緒に頑張ろうね!」
「え・・・、うん・・・」
おうっ! オペレーション・なし崩し!
いつの間にやらイリーナとルシーナちゃんがタッグを組んで俺を支えると言うのが既定路線に!?
コルーナ辺境伯家の女性陣、恐るべし!
「あの~、フェンベルク様? この悪徳神官を引っ立ててもよろしいですか?」
衛兵たちが気絶している悪徳神官を連れて行こうとしている。
「お、おお、頼むぞ!尋問をきつく行って情報を吐き出させよ!」
タジタジだったフェンベルク卿だが、仕事モードに切り替わって指示を出す。
そのうち、玄関でピヨピヨと騒がしくなってきた。
「ああ、多分
そう言って伝えた時、ルシーナの血液循環が一周して加護がつながった感覚がした。
「うん、治療完了。もう大丈夫だと思うよ。後はゆっくり水分を取って消化にいいおいしいものをいっぱい食べて体力をつけてね」
「あ、はいっ! ありがとうございます!」
上半身を起こして頭を下げるルシーナ。
「まだ無理しなくていいから、ゆっくり休んでね。ではフェンベルク卿、玄関に集まった
にっこり微笑んでフェンベルク卿に伝える。ローブだからきっと顔がわからないだろうけどね。現在、顔がわかると大問題なのもあるけどさ。
俺とイリーナ、フェンベルク卿は館の玄関から外に出る。
すると、続々と悪党・・・いや、
そして、連れて来られた悪徳神官・・・
あ・・・急に一人立ち上がって走って逃げ出した。
狼牙の一頭が二本足で立ち上がって・・・ビンタ! 男は錐揉み三回転で吹っ飛び、中央へ戻される。
・・・狼牙マジハンパないっす。
ローガや四天王だけじゃなく、もはや一兵卒まで圧倒的な戦闘力を保持しているような気がするな。
「全員ひっ捕らえて徹底的に尋問だ! 詰所に連れて行け!」
フェンベルク卿の号令で衛兵たちが動き出す。
これで背後関係が割り出せれば、万事解決なのだが。
今回の事件も、イリーナとルシーナの関係も、スッキリ片付いてくれないものか・・・。
俺は溜息を吐いた。
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!