転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
次々と引っ立てられて行く
「詰所で厳しく取り調べよ!」
フェンベルク卿の号令で衛兵たちがテキパキと詰所へ連れて行く。
さて・・・、この
ソレナリーニの町でも同じ毒でテロを狙っていた。
だが、よく考えればソレナリーニの町でテロを行おうとしていたのは盗賊チックな三名だった。フェルベーンではすでにテロ行為が始まっていると喋ったので大至急フェルベーンへ向かったため、その後の捜査を代官のナイセー殿に任せてしまったが、ソレナリーニの町でも
そしてその目的はどこにあるのか。
コルーナ辺境伯に恨みがあってこの地を混乱に陥れるのが目的か、それとも
ただなぁ、信者獲得が目的なら、こんな城塞都市で始めるよりももっと小さな町や村で始めるべきだろう。このような大都市ではあまりにリスクが高い。
先ほど、
すると、
この大都市で知られていないだけで辺境の小さな町では知られている可能性も無いではない。先に想像した大都市でのリスクも、すでに小さな町では実行済みだったのかもしれない。そのあたりは取り調べを待つしかない。
「ふぃ~」
俺はまた溜息を吐く。
つい先日まで泉の畔でのんびりしていたはずなんだが・・・。
あ、のんびりしてる場合じゃない!
辺境伯の娘は助けることが出来た。だが、町中にはまだ苦しんでいる人がたくさんいるんだ。
しかもヒヨコたちが捕まえて来た
「フェンベルク卿。街中でも貴方の娘さんと同じような症状で苦しんでいる人達が大勢いると思われる。ボーンテアック診療所というところで解毒剤を作ってもらっているのだが、なるべく早く町の人々に配れるように頼んでくるよ。薬代って、辺境伯からの支払いで大丈夫か?」
「ああ、もちろんだ! いくらかかってもいい。早く領民を助けてもらいたい。娘の事にかかりきりで、町のトラブルもここ数日は代官に任せっきりになっていたしな。私もすぐ町中の状況を把握するように努める」
「それではまた後で」
「ああ、頼むぞ!」
俺とイリーナはローガに乗ってボーンテアック診療所へ向かった。
「おーい、ボーンテアック」
俺たちはボーンテアック診療所の前にやって来た。
相変わらず列を成して患者たちが押し寄せている。
「おお、ヤーベ殿。解毒剤が出来たので薬草と合わせて患者に服用してもらったら劇的に回復してきましたぞ」
「おお、それは良かった」
ボーンテアックは助手に患者の相手を任せるとこちらにやって来た。
「だが、もう解毒剤の元になる毒が無いんだ」
ボーンテアックは以前渡したポイズンウォータードレイクの毒が入った瓶を振る。瓶の中は空っぽだ。
「あるよ」
と言っボーンテアックの手に握られた空の瓶を手(?)に取ると、亜空間圧縮収納に仕舞い、毒を詰めて再度取り出す。
「ほい」
「・・・君は手品師か何かかい?」
「否定はしない」
「しないんかい!」
ボーンテアックのツッコミを華麗にスルーし、ついでに薬草も取り出す。
「ああ、薬草もありがたいが・・・。実はもう僕では手に負えない患者がたくさん教会に集められているんだ。君に何とかしてくれとお願いするのは筋違いかもしれないんだが、なんとかならないだろうか・・・。かなり中毒症状が進んでしまって、解毒作用の効果が出なかったり、体力が限界に近い人たちがたくさんいるんだ。教会でも<
「むっ、それはイカンな」
「な、何とか出来るのか?」
「行ってみないとわからんが、何とかするしかないだろうな。早速行って来る」
「教会は大通りに出て右手に見えるよ。よろしく頼む」
そう言って頭を下げるボーンテアック。
いい奴だよな。ボーンテアックが悪いわけでも何でもない。だが、自分が助けられない患者のために動く俺に頭を下げることが出来る。そんな奴の診療所はもっと力を入れて貰ってもいいだろう。主に国に。
「こんちは! ボーンテアックの依頼でお手伝いに来ました」
教会の大扉を開けて中に入り声を掛ける。ちなみにローガ達六十一匹は教会の庭で待機な。
「おお・・・、手をお貸しいただけるのですか、大変ありがたい事です」
かなり年配の・・・というかお爺さんな神父さんが出て来た。
「かなり重篤な患者さんが集められているとか」
「そうなのです・・・ボーンテアック殿より解毒剤と薬草を頂いて回復出来た者達も多くいたのですが、今現在教会に寝かされている人々はそれでも回復しない人たちばかりなのです」
「なるほど・・・様子を見せて頂いても?」
「こちらです」
教会の大聖堂へ案内される。この部屋がもっとも広いからだろうが。
扉を開け、中に入る。
そこには壮絶な光景が広がっていた。
ざっと見ても百人以上が寝かされている。
どの人もかなり重篤な状態のようだ。
四人ほどシスターがタオルを持って患者たちを見て回っているようだ。
別の神父が<
「これほどの数とは・・・」
「ヤーベ、どうしよう。みんなルシーナちゃんと同じような感じで危険な状態みたいだ・・・」
ルシーナちゃんを助けた時のような「スライム透析」ならば助けられるだろう。
だが、正直透析する血液に直接水の精霊の加護を与えるのは若干ためらわれる。
加護ではなく、直接<
後は「スライム透析」を行うにしても一人一人ではとても間に合わない。助かる命も助からなくなる。
となると、触手をどういう風に説明するかだが・・・。
「神父殿」
「なんでしょう?」
「大変申し訳ないが、今この大聖堂にいらっしゃる皆さんに一度退出をお願いしたい」
「それは何故でしょうか?」
少し不審な表情を浮かべ問いかける神父様。
「患者の皆様を助けたいのですが、あまりに時間がありません。そのため大規模な魔法を行使したいのですが、患者以外の人間が範囲に入ると都合が悪いのです」
「それほどの魔法ですか・・・出来れば見学させて頂きたいのですが」
「申し訳ありません、集中せねばなりませんのでご遠慮いただけますでしょうか。できれば皆さん全員を助けたいので、少しでもリスクを減らしたいのです」
俺の説明に神父さんたちは「それでは皆さんをお願い致します」と全員退出して行った。
みんな疲れているし、休憩にとりあえず納得してくれたのだ。
俺とイリーナ、そして患者さんだけとなった大聖堂。
イリーナはジッと俺の方を見る。
「ウィンティア、シルフィー、力を貸してくれ」
「うん、もちろん。任せて!」
「お任せください!お兄様」
「<
大規模な範囲で<
精霊魔法の合成、など可能なのかと思ったが、力の行使時に精霊たちの力を借りると、精霊魔法を唱える時の力の流れに、かなり自由度があると感じていた。なので相反発しない力であれば、うまく調整することで合成したり二つの効果を持たせたりできるのではないかと考えていたが、それを実践で試すことにした。
具体的にはウィンティアの力を借りて<
そして百人以上の患者の右手首に触手を接続。もちろん同時にだ。
別人の血が混じってはいけない。当たり前のことだが。
先のルシーナちゃんの治療で「スライム透析」のコツはもう掴んでいる。加護の力を使わず浄化するだけなら、スライム細胞の仕事もわずかで済む。
そんなわけで百人以上に同時に接続して、全員の血を混ざることなく「スライム透析」して血液浄化を実施した。
「ふう、全員回復出来たな。うん、間に合ってよかった」
俺は呼吸の落ち着いた患者たちを見て安堵した。
「ヤーベ、お疲れ様」
そっと俺の右手を抱える様に寄り添ってきたイリーナ。
俺はイリーナの笑顔に少し癒されたような気がした。
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!