転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
本来、俺様はそれほど奥ゆかしい人間ではない。
実際の所、モテたいし、褒められたいし、尊敬されたい。
それ自体は別に悪い事でも恥ずかしい事でもないと思っている。
生活が楽になる様にお金だって欲しい。
だが、今の俺は・・・スライムなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
なんてったって、モテる前に!褒められる前に!尊敬される前に!狩られてしまう!
もう正直こればっかりは何ともならん。
俺が狩られないためには、目立たず騒がず大人しく生きるしかない。
それに、ある程度スライム能力でいろいろな事が出来るようになった今、権力者から目を付けられかねない状況でもある。
狙われるのは本当に面倒くさい。勘弁してもらいたい。
大体モテたってスライムの体じゃ、ヘソまで反り返った俺の(以下略)。
これがチート能力満載でイケメンにでも転生していればモテ街道も楽しめただろう。冒険者でSランクとか目指していたかもしれない。全力でハーレム狙っていたかもしれない。たくさんのお金を稼いで豪邸でも建てて住もうと思ったかもしれない。
だが、今の俺は・・・スライムなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!(2回目)
今更だが、何でスライム?
一度神だか女神だかに聞いてみたい。
あなたは~何故に~スライムにしたのですか~
「はぁぁ・・・」
俺は深い深いため息を吐く。
「ヤーベ!もっと奥に隠れるのだ!」
イリーナが俺を裏路地の奥へ押し込む。
大通りを神官たちが走って行く。
「使徒様はどこへ行かれたのか!」
「何とかお戻りになってお礼をお伝えせねば!」
「出来れば我々にも神力によるご教授を賜れぬものか・・・」
誰が使徒だよ!使徒って敵のイメージの方が強いのはアニメ好きのせいですかね!?
俺とイリーナはあの後七つの教会を回って約千人近い人々を治療し切った。
どこも「ボーンテアック殿に依頼されて来ました~」で挨拶したから、ボーンテアック治療院の関係者で押し通すつもりだったのに。何でこんなことになった!?
「いや、ヤーベ。それは無理があるだろう・・・」
「そう?」
「ボーンテアック殿の協力があって回復へ向かった人たちが沢山居たとはいえ、解毒剤や薬草で回復できなかった重篤な患者をわずかな時間で百人以上いきなり回復させたんだぞ。奇跡の御業以外にないではないか」
「いや、神の力なんて欠片も無いけど。なんせ神に会ったことないし。でもきっといるんだろうね、神。何たって人の体をこんなにしたの、絶対神だからね」
俺は高速スラプルプルで若干怒りを示す。
「ならば私は神に感謝せねばならんな」
「なんでよ?」
「そのおかげで私はヤーベに出会えたのだから」
輝くような一片の曇りもない笑顔を向けてくるイリーナ。
「イリーナ・・・」
ちょっと見つめ合ってしまい良い雰囲気になったと思ったら、大通りからまた大声が聞こえてくる。
「こちらの方に来たと思ったんだが」
「お、西の教会の連中じゃないか、どうした?」
「奇跡なんだ!神が降臨なされた!」
「何だって!」
「まさに『城塞都市フェルベーンの奇跡』だ!」
「ブフォッ」
もう使徒でも何でも無くなってんじゃねーか!神そのものになってるし!
「そっちもか! こっちもだ!」
「ローブに身を隠されて女騎士を従者になされておられた!」
「何としても見つけてその御業をもう一度!」
教会デンジャラス!
回復系の大パワーを実行したとは言え、自分たちの常識では計り知れない事は全て神の御業と判断するのは教会の悪いクセだと思います!
「どうする?ヤーベ」
とりあえず、服装を変えるか。
「どこかで服を買おう。イリーナは騎士風の鎧を着ているから、俺と同じローブを上から被れ」
そう言って亜空間圧縮収納から予備のローブを取り出す。
「わ、わかった」
そう言って灰色のローブを被る。これで女騎士の従者は消えた。
さて、俺はどうするか・・・。
「こ、こちらに「奇跡の使徒」様が来ていると聞いたのですが!」
「ブブフォッ!」
奇跡が、勝手に奇跡が増えています!
「私も、母も助けて頂いたのです!なんとかお礼をお伝えしたくて・・・」
「いや~、我々も何とかお礼が言いたくて探しているのです。こちらへ来たという情報はあるのですが・・・」
「きっとあまり騒ぎになるのを好まない御方なのかもしれません」
そう!そのとーり!だからそっとしておいて!
「路地裏などで少し休んでいるかもしれません。裏通りも探して見ましょう!」
グッハア!
騒ぎを好まないと看破しておきながら路地裏までくまなく探そうとする、何か矛盾してませんかねぇ!
「や、やばいぞヤーベ。ここも時間の問題だぞ!」
ヤッベー!久々ヤベちゃんヤッベー!どうする!?
「こちらの方も捜索して見ましょう」
本気でヤバイ!どうする!?
「あ、思い出した!」
「な、何だ!?どうしたヤーベ?」
「行くぞ!スライム流戦闘術究極奥義<
「ひょわわっ!」
エネルギーをぐるぐるしてイリーナのローブの内側に滑り込み、背中に張り付く。そして手足をスライムボディでコーティングして行く。
「ああ、ヤーベに私の手足を束縛されて・・・くっ犯せ!」
「久々クッオカ頂きました!」
そう言って俺様はその場を飛び上がる、その勢いは建物の二階の屋根に軽々届く。
「わあっ!す、すごいぞヤーベ!」
「しーーーーー!!」
見つかるからデカい声出さないで!
今まで居た路地までドヤドヤと神官たちが押し寄せて来る。
「マジで危なかった・・・」
「ヤーベは本当に神様扱いされてしまっているな。もう「私が神だ」とか言って出て行った方が話が早くないか?」
「誰が神か!」
「ん!?」
ヤベッ!
声が聞こえたのか神官たちがキョロキョロしている。
このままイリーナの体を操って屋根伝いにコルーナ辺境伯家まで戻るとしよう。
「とうっ!」
「わわっ!」
屋根から屋根へ飛び移る様に動くとローブがはためいて動きにくい。
「メンドイから脱いじゃおう」
そう言ってローブを脱がして亜空間圧縮収納へしまう。
「ヤーベが私のローブを脱がして・・・くっ犯せ!」
「久々聞いたと思ったら乱発しますね」
そう言って<
「とうっ!」
「ひょわわ~」
俺様は動きやすくなったことに気を良くして屋根から屋根へまるでどこかの怪盗の如く飛び移った。追い詰められていた状況を一気に打破できると調子に乗った俺はその時点で気が付かなかった。イリーナの衣装は上半身のハーフプレートを装着していたが、下半身は太ももが見えるミニスカートだったことを。そして今現在、怪盗が暗躍する深夜でもなく真っ昼間であったことを。そして、異世界だからと言って、上を見上げるものが決していないわけではないことを。その事に気が付くのは少し時間が経ってからの事になる。
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!