転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第62話 式典で報奨金を即寄付してみよう

 

フェンベルク卿にだいぶ白い目で見られてしまった。

どうもイリーナは師匠ではなく、結婚の挨拶だと思ったようだ。

見ればイリーナはどこかのボクサーの様に真っ白に燃え尽きていた。

そう言えば、ルシーナちゃんを治療している時にも、俺と結婚するとか言ってたな・・・。

そしてパレードではルシーナちゃんが町の人々に俺と結婚するって大宣言してるし。

そこへ来て、俺が両親に会って結婚の話をしないって事は、イリーナからすると俺がイリーナと結婚する気が無いって事になっちまうか。

 

 

 

結婚ね・・・。

俺スライムなんだけどなぁ。

どう考えたってヘソまで反り返った(以下略:2回目)

貴族の娘なんかと結婚したら、絶対血を絶やさぬようにとか言って子供せっつかれるよな。

どう考えても無理な気がするんだけどね。

でも、イリーナが狙われているなら、ダミーの相手として俺がいた方がいいのか。

もしそのリカオロスト公爵家とやらが手を出して来るなら、イリーナからその対象が俺に移るはずだ。それだけでもイリーナを守れる確率が上がるか。それならば悪い事ばかりでもないな。子供の事は別に考えてもいいし、落ち着いてから俺が消えてもいいのだ。

 

「イリーナ、とにかく君の両親に会って、どうするか相談しようか?」

 

「ふえっ!?」

 

「そのリカオロスト公爵家がどのように君の領地に圧力をかけているかわからないからね、対策の打ちようが無いし。とにかく話を聞きに行こうか」

 

「ううう、ヤ~ベェ~、助けてくれるの?」

 

イリーナが俺の腕を取って目に涙を一杯溜めて聞いてくる。

 

「まあ、何だ。俺にとってはイリーナは大事な仲間だしな。イリーナや両親に敵対するような奴は撃退しないとな」

 

 

「ヤ~ベェ~! ふぇ~ん!」

 

今度は俺に抱きついて泣き始めるイリーナ。

やっぱり、今まで不安だったんだろうな。

まして相手は公爵だ。イリーナの両親が責任を持つ領地に影響を及ぼすほどの圧力などと言ったら、なかなか覆すことは難しいのかもしれない。

だが、俺様ならばなんとかできるかもしれない。いや、何とかせねばなるまい。

経済封鎖か、それとも実力介入か、どんな圧力をかけて来るのか・・・。

まあ、聞けばわかるか。

 

 

「さて、午後の式典に向かうか。ヤーベ、俺と一緒に出てくれ」

 

「はあ・・・」

 

仕方なく俺は席を立った。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

「皆よ!今ここに『城塞都市フェルベーンの奇跡』を起こしたヤーベ殿を迎えることが出来た」

 

「「「わああ~~~!!」」」

 

民衆がメッチャ盛り上がってる。

フェンベルク卿よ、迎えるって言い方は誤解を招きかねませんからね?

 

「フェルベーンを混乱に陥れようとしていた連中もヤーベ殿のおかげてすべて捕らえることが出来た。体調不良で危険な状態になった者達もヤーベ殿の力で回復させてもらい、死者を出すことは無かった!」

 

「「「わああ~~~!!」」」

 

パレードの時でも思ったけど、やっぱり毒で体調を崩してしまった人たちが大勢出てしまったからだろうな、回復した事に対して非常に喜んでくれているようだ。

 

「ここに褒賞として金貨二千枚を進呈するものとする!」

 

「「「わああーーー!!」」」

 

金貨二千枚・・・すごいね。

よく考えるとナイセーから貰った迷宮氾濫スタンピードの褒賞と同じ額だ。

だから少ないとか文句を言うつもりもないけどね。

 

フェンベルク卿が俺に金貨の袋を渡してくる。

 

「それではヤーベ殿より一言頂く」

 

フェンベルク卿に促されて俺は民衆を見渡す。

よくもまあこんなローブで顔が見えない怪しい男を褒め称えてくれるものだ。ちょっと涙が出そうだよ。

 

「俺は出来る事をしただけで特別な事はしていないつもりだ。だが、感謝の気持ちを示して頂くのは大変ありがたい。そこで、この金貨は私からコルーナ辺境伯家へ寄付させて頂く! 具体的にはホーンテアック診療所の様に、薬草や解毒の治療が誰でもより高い効果で受けられるような研究と整備に使って頂きたい。教会の神聖魔法の治療と合わせれば、この城塞都市フェルベーンでの人々の存命期間は飛躍的に伸びることだろう!」

 

「「「「「・・・うおおおおーーーーー!!!」」」」」

 

一瞬会場に集まった町の人々もお金を返してしまう?というヤーベの行動を理解できなかったのだが、次の瞬間、この町の治療に対する技術向上のためというその理由に衝撃と感激を受けたようだ。

 

「お、おい・・・いいのか?」

 

「うむ、あまりお金を使う理由もないのでな。役に立つ目的で使ってもらった方がいい」

 

「ヤーベってやつは・・・」

 

フェンベルク卿が少し涙ぐんで俺が返す形になった金貨の袋を受け取る。

 

「皆よ!ここにヤーベ殿より、報奨金をそのまま寄付頂けることになった! ホーンテアック診療所を中心に町の治療技術を高めることをここに宣言する!」

 

「「「わああーーーーー!!」」」

 

この城塞都市フェルベーンが活気に満ち溢れれば、コルーナ辺境伯の力も増大するし、王都とのつながりもより深くなっていくだろう。コルーナ辺境伯家の賓客という立場である以上、今の俺の後ろ盾となるのはコルーナ辺境伯家となるのだから、ここで恩をさらに売っておくのも悪くないだろう。コルーナ辺境伯家の力の増大は俺にとってもプラスになるだろうしな。イリーナの両親の領地であるルーベンゲルグ伯爵領へ圧力を掛けているというリカオロスト公爵家へのけん制の意味を含めてコルーナ辺境伯家の力は必要になるだろうしな。

 

「皆よ! この城塞都市フェルベーンに住む全ての住民の事を案じて力を貸してくれるヤーベ殿に盛大な拍手を!」

 

 

「「「わああーーーーー!!」」」

 

パチパチパチパチ!!

 

集まった民衆の万雷の拍手に俺は少しだけ胸が熱くなる。

地球時代、こんなに他の人たちから褒められたことは無い。

いいもんだね、褒められるのって。

まあ、それも程度によるけどさ。

ふと見れば、イリーナが中央広場舞台の袖にいて俺を見ている。

イリーナと一緒に舞台に上がりたかったのだが、この町ではちょっと騒動があり過ぎたしな。

それに王都に近づくにつれ、ルーベンゲルグ伯爵令嬢としての存在をなるべく気取られたくないしな。何か変装することも検討しよう。

 

・・・後、民衆の後ろに横断幕掲げて手を振りまくっている神官団からの逃走ルートも検討せねば。なんだか神官団がサングラスをかけてどこまでも逃走者を追ってくる黒服にダブって見えて来たぞ。

掴まらずに逃げ切って見せる!

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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