転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
う~む、どうしよう。
ただ、もう夜だ。今イリーナの部屋に行くのもどうかと思うしな・・・。
そろそろヒヨコ隊長たちも来るだろうし、イリーナのフォローをするのは明日の朝にしようか。
それにしても・・・いきなりイリーナに全身全裸を見られてしまったな・・・。
もう少し俺の姿は内緒にしておきたかった。
どうせならどこか劇的な場所で、バッと姿を見せて、本当の俺の姿はこれなんだー、とかなんかのピンチの時にバサーってローブを捨てて、これが真の俺の姿なんだーっ!とか、ちょっとやりたかったなー。
でもって、イリーナと急速接近して、ラブリーな夜を迎えて、幸せな朝チュンを迎える・・・
まあ、計画は吹っ飛びましたけどね!
コツコツ。
窓をつつく音。
「ヒヨコ隊長、お疲れさん」
『ははっ!十将軍揃っております!』
「ああ、報告を頼む」
『畏まりました。早速報告させて頂きます。ヒヨコ十将軍序列一位レオパルド!序列二位クルセーダー!』
『『ははっ!』』
序列一位レオパルドと序列二位クルセーダーが前に出て膝を付く。
『我々は王都バーロンの調査を行ってまいりました』
『ちなみに、王都バーロンは私も含めて3組に調査を担当させています』
ヒヨコ隊長が付け加える。
俺も王都情報が集中的に欲しかったからな、ちょうどいい。
『王都バーロンのメイン大通り裏手にある「手作りパンの店マンマミーヤ」の看板娘マミちゃんが大ピンチなんです。ぜひボスのお力で救済をお願い出来ればと思います!』
「情報がピンポイント過ぎっ!」
なんだ、手作りパンの店マンマミーヤって!?
看板娘のマミちゃんが大ピンチってどういうこと!?
『俺では・・・俺ではマミちゃんのピンチを救ってあげられないんです・・・』
がっくりと翼を落とし涙を流す序列一位レオパルド。
だからマミちゃんって何だよ!?
王都の情報でいの一番がパン屋のマミちゃんって!?
『次に私から報告致します』
おいおい、マミちゃんスルーで次行くんかい!?
『王都バーロンの中でも三本の指に入る規模で商いを行っている奴隷商館ド・ゲドーにて、ダークエルフのリーナちゃんが大ピンチなんです!次の奴隷入れ替えまでに金貨五枚で売れないと鉱山送りになってしまうそうなんです!なんとかバイトの口を探そうとしましたが我が力及ばす・・・、ぜひボスのお力で救済をお願い出来ればと思います!』
序列二位クルセーダーもがっくりと翼を落とし涙を流す。
なんなんだ、お前らの劇的にピンポイントなピンチネタは!?
大体情報収集に行かせたのにバイトの口探すってどないやねん!
てか、奴隷でダークエルフの少女がピンチってラノベのテンプレにあり過ぎてるから!
『次っ! 序列第三位クロムウェル!第四位センチュリオン!』
『『ははっ!』』
お前ら、ピンチです!でその後スルーですぐ次の情報行くのな。
『王都でも南に位置する比較的裕福ではない庶民層の町の一角にある教会が経営する孤児院のシスター・アンリが大ピンチです!質の悪い下っ端貴族がアンリちゃんを狙っており、手下を使って地上げ行為を行い、圧力を掛けているようです。ぜひボスのお力で救済をお願い出来ればと思います!』
今度はえらい具体的な情報拾ってきたな、おい!
ピンポイントな情報ではあるけれどね!
『ハーカナー男爵が陰謀によって殺されてしまい、未亡人となりましたハーカナー男爵元夫人が大ピンチです!テラエロー子爵の陰謀と思われ、その狙いは元々ハーカナー男爵夫人をわがものにせんとする企みからのようです。ぜひボスのお力で救済をお願い出来ればと思います!』
今度は未亡人来たし。
なんなの今回の情報は?
だれも大ピンチの女探して来いって言ってないし。
『次! 序列第五位ヴィッカーズ!第六位カーデン』
『『ははっ!』』
『王都バーロンの西地区にある商業区画の一店舗にあります「定食屋ポポロ」の姉妹が大ピンチです』
いや、パン屋に始まって男爵家未亡人まで行ったらまた定食屋に戻った感じがしますけど!?
『流行り病で父親を亡くし、母親も働き口を探しながら定食屋を準備しているうちに一ヶ月ほど前から行方不明となっており、今は両親が営んでいた定食屋を守ろうと姉妹が頑張っているのですが、いかんせん幼く、客足が遠のいてしまい、店が立ち行かなくなっているようです。ぜひボスのお力で救済をお願い出来ればと思います!』
定食屋が立ち行かないのって俺が何とかすべき問題ですかね!?
てか、この定食屋に関しては別に質の悪い圧力がかかっているとかいう情報すらないんですが!?
『我は王都の教会で情報を拾ってまいりました。何でも今代の聖女なる人物が城塞都市フェルベーンの奇跡を起こした聖女様を偽物と断罪し、王都に向かっているボス一行を王都の大聖堂に呼び出してその化けの皮を剥がすと息巻いているようです』
「そう!そういう情報を待ってたのよ、カーデン君!」
『ははっ!ありがたき幸せ』
「その聖女、危険だな。近寄らない様にせねば」
『その聖女なる人物にいつも虐げられている下働きのアリーちゃんが大ピンチなんです!ぜひボスのお力で救済をお願い出来ればと思います!』
「カーデンよ、お前もか!」
いや、お前達救出イベントフラグ一体何本立てるつもりだよ。
これがラノベなら「王都編」とか始まってるのにちっとも王都に到着しないパターンで、そのくせ王都に着いたらイベント満載でやたら章立てが長いパターンだぞ!
『ボス、この後はこのタルバーンの町周りとカソの村周りの報告になりますので、私から追加の情報を先に報告致します』
そう言ってヒヨコ隊長が前に出る。
「隊長自身も調査に出たのか」
『ははっ! 私は王都バーロンの中心にある王城に忍び込みました』
「何だと!それは素晴らしいじゃないか」
『はっ! そこで、王城の北東にあります塔の最上階にカッシーナ王女が半ば自分を幽閉する形でおります』
「自分を幽閉?」
『は、カッシーナ王女は部屋に一人の時でも仮面をしたままで、誰にも顔を合わせたくないと申しておりました。それも自分の顔を見られるのがつらいのではなく、見られることで相手に嫌悪感を抱かせたり同情の様に気を使わせてしまうのを気にしているようです。私の様に鳥になって自由にいろんな所へ出かけられたらいいのにって言っていました。ぜひボスのお力で救済をお願い出来ればと思います!』
「いや、お前も救済ネタかい!」
いや、助けることが嫌とかじゃないんだけどね。
なんだろう、この徒労感。
そんなにいい人キャンペーンやってるつもりはないのだが。
『次っ! 序列第七位カラール!第八位キュラシーア!』
『『ははっ!』』
『我々はこのタルバーンの町周りを調査担当致しました。まず攫われましたフィレオンティーナ様の情報を仕入れてきました』
「おお、それはすごい。ぜひ聞かせてくれ」
『ははっ! フィレオンティーナ様は非常に見目麗しく、魔力が高い優秀な魔導士との触れ込みです。また占い師としても有名で自身が営む占いの館は盛況だったようです。そのため、悪魔王ガルアードへの生贄としては優秀な人材と言えます。狙われるのも十分にうなずける内容かと』
「なるほど・・・生贄のために誘拐されたのは間違いないのか」
「御意」
『私は悪魔の塔の調査を行ってきました。塔は全六十階層となっており、入った者の行く手を魔物と罠が待ち構えると言う構造になっております』
どっかで聞いたことあるような塔ですな。
『その最上階では悪魔王ガルアードと思われる石造があり、その前に魔法陣が描かれております。また、怪しい魔導士風の男が準備に追われているのか忙しく動き回っておりました』
文化祭の準備か何かかいっ!?
敵の規模が透けて見えるような報告だな・・・。
それにしてもフィレオンティーナがその生贄にされるとなれば、十中八九その魔法陣に寝かされるんだろうな。大ピンチはそれからだろう。
「キュラシーア。手の者にその塔の最上階を常に見張らせてくれ。生贄と思われるフィレオンティーナが最上階に連れて来られたら大至急連絡だ」
『ははっ!』
これが生きた情報ってヤツだろ!
『次!序列第九位ティーガー!第十位センチネル!』
『『ははっ!』』
『我々はカソの村及び泉の畔周りの確認をしてまいりました』
「そうか、それで?」
「カソの村も泉の畔も神殿も平穏無事であります!」
「・・・・・・」
その報告いりますかねぇ!?
それにしても王都バーロンの救援フラグ乱立・・・、その前に悪魔の塔の悪魔王ガルアード復活の生贄儀式・・・。これがラノベの物語なら詰め込み過ぎだろうよ、多分。
でも現実は待ったなしなんだよな、これが。
まあ、フィレオンティーナはタルバリ伯爵の身内だ。自分たちで助け出すって言ってたし、なんとかなるのだろう。
・・・パン屋のマミちゃんに、なんだっけ?何人報告来てたっけ?
誰か救出予定リスト製作してくれませんかね~。
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!