転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

76 / 332
第70話 悪魔王ガルアードを居なかった事にしよう

「さあ、悪魔退治と行こうか」

 

俺は更に亜空間圧縮収納から鉄の剣を取り出す。

魔法のマントと聖銀の鎧で占めて金貨二百五十枚。

イリーナたちと買い物を済ませた後、武具の店に行って一番高い物を買った。

それが「暴風のマント」と「聖銀の鎧」だ。

魔法の武器は良い物が無かったので素材の良い鉄の剣を買って来た。

 

これでフィレオンティーナも俺が人間だと思うだろう。

 

だが、俺は悪魔王ガルアードが復活するまで待ってやるほどお人好しではない。

ゲームならば復活の映像がそのまま流れて、復活後に戦闘が始まるパターンだ。

だが、これは現実。仕留められる時に仕留める。

 

「はりゃあ!」

 

後ろのフィレオンティーナからは見えない様に腹から触手を伸ばし、悪魔王ガルアードにぶち当てる。

 

「吸収せよっ!」

 

バチイィィン!

 

「ちっ!」

 

スライム触手で一気に吸収してしまえるかと思ったが、さすがに悪魔王、甘くはない。

バリヤーのようなものに弾かれてしまった。

 

「どうやら、体表に魔法障壁のようなシールドが展開されているか・・・?」

 

スライム触手で吸収に失敗した感触からそう想像する。

 

「グゴゴ・・・フソンナルモノヨ・・・ワレノチニクトナルガイイ!」

 

ついにバキバキと石化の状態が溶け始める悪魔王ガルアード。

 

「ちっ! <真空断頭刃(スライズン)>」

 

無数の魔力を伴った真空の刃が悪魔王ガルアードに襲い掛かるが、悉く弾かれる。

 

「やっかいだねぇ」

 

俺は溜息を吐く。

 

「グガガ・・・シネ! <雷撃(サンダーボルト)>!!」

 

頭上から凄まじい雷が降り注ぐ!

 

「シッ!」

 

俺は左手を頭上に掲げる。

迫りくる雷は、だがヤーベを直撃せず、塔の外壁に流れ落ちる。

もちろんフィレオンティーナ達にも影響はない。

 

「グゴゴ・・・ナニ・・・?」

 

「お前のような古い時代の輩にはわからんかな?」

 

俺は触手を頭上に伸ばすと、パラソルの様に分裂させ、避雷針の代わりとして張り巡らせた。

一瞬、俺から切り離した触手の避雷針は悪魔王ガルアードの放った<雷撃(サンダーボルト)>の巨大な雷を塔の外壁へと完全に流しきる。この瞬間、塔自体が巨大なアースと化したのだ。

 

「ならばこっちの番だな!」

 

俺様は一瞬に悪魔王ガルアードとの距離をゼロ距離まで詰める。

 

「<雷撃(ライトニングボルト)>!!」

 

俺は悪魔王ガルアードの腹に掌底を叩き込むように全力の<雷撃(ライトニングボルト)>を放つ!

 

ドバァァァン!

 

凄まじい轟音と共に悪魔王ガルアードの腹が吹き飛び、焼け焦げた匂いが立ち込める。

 

「グガガ・・・バ、バカナ・・・」

 

「はっは、不思議か?時代遅れ!」

 

 

自分で編み出した必殺の<雷撃(ライトニングボルト)>。

これは静電気の超強化版だ。電気自体に魔力を帯びさせていないので物理的攻撃力となるのだ。

 

追撃するように飛び上がると鉄の剣をヤツの頭に叩きつける!

 

・・・が、あっさり砕け散る鉄の剣。

 

「やっぱ鉄の剣で悪魔王を仕留めようというのはムシがよすぎるか」

 

苦笑しながら柄だけになってしまった鉄の剣をポイッと捨てる。

 

「グゴゴ・・・ナメルナヨ!」

 

そう言うと悪魔王ガルアードの腹が再生して行く。

 

「やっぱあるよね・・・そう言う能力」

 

俺は何度目かの溜息を吐く。

 

「シネ! <死の衝撃(デス・インパクト)>!」

 

6本の腕をまるで一つにまとめて突き出すように黒い球を打ち出してくる。

 

「<細胞防御(セル・ディフェンド)>」

 

俺はスライム細胞を防御壁の様に展開する。ぐるぐるエネルギーを惜しみなく纏わせることにより対魔法防御能力を極限まで上げられる。魔力の攻撃には魔力で防ぐのが一番だ。

 

バギィィィン!

 

派手な音を立てて魔法がぶつかる。

 

「ギザマァァァァァ!!」

 

四本の足でシャカシャカと走り寄って来て六本の腕で滅茶苦茶に攻撃してくる。

素早く避けながらぐるぐるエネルギーを圧縮して練り上げて行く。

あの二人の力を借りねばならない。フィレオンティーナを守っているあの二人の力を。

 

悪魔王ガルアードの六本の腕が縦横無尽に攻撃を仕掛けてくる。刀、槍、槌、剣、斧、杖。六種の武器を高速で振り回す。

 

(チョーこぇぇ!)

 

正直ビビっていた。かなりの迫力だ。そのスピードも侮れない。

 

一瞬、槍と槌の武器を握り直してその間合いを変えて来た。

 

「しまった!」

 

ズバッ!

 

一瞬にして握り直された槍と槌の間合いを測り損ねた。

 

瞬間、右手が肩から切断される。

 

「ヤーベ!」

「お兄様!」

「ヤーベ様!」

 

あれ?フィレオンティーナまで俺の名前を呼んでいる。

確か自己紹介はまだなはずだと思ったが?

まあ、ウィンティアかシルフィーから聞いたのかもな。

 

俺は飛ばされた右手に左手の人差し指からピアノ線のような細い触手を発射、右手に絡めて引き寄せると、右肩に再度装着する。

 

「ナ・・・ナンダキサマ!ホントウニニンゲンカ!?」

 

「失礼だな、貴様。()()()()()()()()()()()?」

 

そう、悪魔王ガルアードにだけ聞こえる様に言った。

 

「マ・・・マサカ!?」

 

「これで終わりだ。ウィンティア! シルフィー! 力を借りるぞ! <凍破の竜巻(ホーロドニィスメールチ)>!!」

 

悪魔王ガルアードの足元から凍てつく突風が渦を巻き、全てを凍らせる竜巻が発生する!

 

「グガガガガ!!」

 

「その性根まで凍り付け!悪魔!」

 

 

 

 

 

竜巻が納まると、そこには氷の彫像のように固まった悪魔王ガルアードが存在していた。

 

 

「やったね!ヤーベ!」

「ステキですわお兄様!」

「ヤーベ様、勝ったのですか!」

 

「まだだ!来るな!」

 

こちらに来ようとするフィレオンティーナ達を止める

ウィンティアとシルフィーに力は借りたが、まだフィレオンティーナのそばに居てもらわないと。まだ決着はついていない。

 

「グガガ!! コノオレヲタオセタトデモオモッタカ!」

 

固まった氷の竜巻を内側から壊し、向かって来る悪魔王ガルアード。

そうだろうな、<魔力感知(センスマジック)>で見ているが、まだ悪魔王ガルアードの魔力は尽きていない。

・・・尤も尽きていないと言うだけで、尽きないと言うわけではない。

現に悪魔王ガルアードの魔力はもう消える寸前だ。

ウィンティアとシルフィーに力を借りた<凍破の竜巻(ホーロドニィスメールチ)>はヤツに大ダメージを与えていたのだ。

 

「終わりだ」

 

そう言って俺は右手で必殺ブローを放つ。

 

「トルネーディア・マグナム!」

 

俺のコークスクリューブローはものの見事に悪魔王ガルアードの胸板を貫いた。

 

そして、そのままスライム細胞に命令を下す。

 

「吸収せよ!」

 

「ギガガガガァァッァ!」

 

貫いた胸板の内側からスライム細胞が悪魔王ガルアードを吸収して行く。

そして完全に消える悪魔王ガルアード。

 

そこに残されたのはヤツが使っていた六種類の武器だけだった。

 

 

 

「ヤーベ!今度こそ大丈夫だよね?」

「お兄様・・・大丈夫ですか?」

「ヤーベ様・・・」

 

今度こそ大丈夫なのかと三人が駆け寄ってくる。

まあ、ウィンティアとシルフィーは飛んでるけど。

 

「ああ、もう大丈夫だ。悪魔王ガルアードはもういないよ」

 

「さっすがヤーベ!ボクはもう感動が止まらないぞ!」

 

そう言って抱きついてくるウィンティア。

 

「ああっ!ウィンティアちゃんズルいです! 私だってお兄様に抱きつきたいんです!」

 

シルフィーもウィンティアに負けずに抱きついてくる。

 

「あ、あの・・・ヤーベ様は一体・・・どれほどのお力をお持ちなのです・・・?」

 

フィレオンティーナが恐る恐る聞いてくる。

 

「少なくとも君を守れるくらいに・・・かな?」

 

「えっ・・・」

 

頬を真っ赤にするフィレオンティーナ。

 

「む~~~、ヤーベいつの間にこんなスケコマシに!」

「お兄様?カッコイイのは認めますが、節操がないのはいけませんよ?」

 

何故か二人から説教を喰らう。おかしい。

 

「ところで、悪魔王はいなかった事にしようか」

 

唐突に俺は宣言する。

 

「「「・・・はっ?」」」

 

ウィンティア、シルフィー、フィレオンティーナは同じ顔で同じセリフで驚いた。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。