転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第81話 愛と正義のオーク騎士「赤カブト」を誕生させよう

「それにしても、苦労したんだな~」

 

『そりゃあ地獄だっただよ。話は通じないだし、野蛮だし』

 

「転生してどれくらいだ?」

 

『気が付いたらオークになってて、感覚だと三か月くらいだべかな』

 

「うわ~、俺だったら心折れてるかも。ゲルドンはタフだな」

 

『オークはタチが悪いだよ。人間に迷惑かける事しかできないだで』

 

「お前真面目だな。すごく苦労するタイプだろ」

 

俺たちは西門から大通りを真っ直ぐ冒険者ギルドに向かって歩いていた。

俺はボロを纏っているオークのゲルドンと並んで歩き、その後ろからローガが頭にヒヨコ隊長を乗せてついて来ている。

 

周りの人々からかなりざわつかれてしまっているな。

仕方ないか、ボロいローブを纏っているとはいえ、オークの顔が出ているのだから。

どこかでイカツイ仮面でも買うか。

 

「おっ!あの真っ赤な全身鎧フルプレートいいじゃないか。ゲルドンの体に合いそうな重厚感だぞ」

 

『真っ赤でねえか、おで恥ずかしいだよ』

 

「着てしまえば自分では見えないぞ」

 

『そう言う問題ではないだで』

 

 

「もしかしたら通常の三倍のスピードで動けるかもしれんぞ?」

 

『どこぞのロボットアニメじゃあるまいし、そんなことあるわけ・・・異世界だからあるだか?』

 

話ながら歩いていると、冒険者ギルドの看板が目に入る。

 

「ここが冒険者ギルドか。かなり建物が大きいな」

 

ギルドの看板が出た建物についたのだが、かなり大きな建物だった。

 

『おで、人間の町に来るのは初めてだで。こんなに建物も大きいだな』

 

ゲルドンがシンプルに驚いて建物を見上げている。

 

 

カランコロン

 

 

「どこのギルドでもカランコロン鳴るんだよな」

 

『決まりでもあるだか?』

 

「わからんけど、こっそりは入れないシステムみたいだ」

 

そう言って二人?とローガが入ってくる。

ローガは建物の前で座って待つつもりだったのだが、俺が建屋内に入る様に指示した。

「え?いいの?」みたいな表情してたが、ついて来ている。

 

 

 

「キャア!オ、オーク!?」

「なんだ、あの巨大な狼!?」

 

カウンター近くにいた冒険者たちがざわつく。

そしてギルドの受付嬢がカウンターから飛び出てくる。

 

「す、すみません!使役獣を建屋内に入れるのは禁止されているんです!ですから・・・」

 

その説明を手で遮り、伝える。

 

「緊急事態だ。ギルドマスターに取り次いでくれ。先ほどの大けがをした冒険者たちと同じ情報の話だと」

 

「ええっ!? 先ほどの・・・と、とにかくそこでお待ちください」

 

そう言ってギルド嬢が奥の部屋の扉の前まで行き、ノックして扉の中に顔を入れている。

そして戻って来た。

 

「こちらへ、特別に使役獣を連れて入っても良いとギルドマスターの許可が出ました」

 

「ありがとう」

 

『すごい交渉力だでな』

 

「基本相手が困っていて、こちらが何とかできそうな雰囲気を出すと、多少無理も通るんだよ」

『勉強になるだな』

 

ゲルドンが感心する。

 

ギルド嬢がノックした後、ギルドマスタ―入ります、と声を掛ける。

 

「入りたまえ」

 

そう言われて、ギルド嬢が開けてくれた扉に入る。

入った先には応急処置を受けている男女の冒険者とカイゼル髭のがっしりした人が座っていた。このカイゼル髭がギルドマスターなんだろうな。

 

部屋にぞろぞろと入る。

俺は冒険者たちの横に座れるが、ゲルドンが座れないな。

 

「かけたまえ」

 

俺はソファーに座る。

 

『おでは立っているだよ』

 

「スマンな」

 

ゲルドンに声をかけてから座る。

 

「それで、緊急事態の情報だったかね? 聞かせてくれるか?」

 

カイゼル髭が自己紹介もせずに話に入る。

それだけ慌てているという事か。単なる無礼者でないと願いたい。

 

「このオークがオークの軍勢が攻めて来ると教えてくれたのでね。もっと詳しい話を報告しようかと思ってね」

 

「うむ、この者達も命懸けでその情報を持ち帰ってくれたのだ」

 

未だに手当てをしながらソファーに座っている二人の冒険者たち。

 

「どれくらいのオークの軍勢を見た?」

 

「正確に数えたわけじゃねえが・・・千匹近くいたと思う」

 

思い出しても震えるのか、男性冒険者の方が身を震わす。

 

『そうだでな、千匹ちょっとは居たと思う』

 

「ギルドマスター、このオークによればやはり千匹ちょっとが集まっているようだ」

 

「とんでもない数だな・・・」

 

ギルドマスターは自慢であろうカイゼル髭を指ではじきながらボヤく。

 

『だども、それだけじゃねえだ』

 

「ん?それだけじゃないって?」

 

『その千匹のグループは囮だで。西側から攻めて注意を引いておき、本体は精鋭五百匹で町の北側から攻める手はずだで』

 

「何っ!?」

 

「どうしたんだ?」

 

カイゼル髭を揺らしてギルドマスターが突っ込んで聞く。

 

「その千匹は囮らしい。西門を攻めて注意を引き、本体の精鋭五百匹が北門を襲うらしいぞ」

 

「なんじゃと!? それでは総勢千五百匹もの軍勢なのか!?」

 

「そうみたいだな」

 

「ばかな・・・オークなんて、百五十匹も集まったら災害レベルだってのに、その十倍もいるなんて!」

 

男の冒険者が震えている。女の方は治療が終わってもぐったりしている。

あれ?もう三人くらいいなかったか?

 

「すぐに王都に救援依頼じゃ! それと・・・お主、その見たことも無い大きな狼を使役しておるのであろう、どれくらい戦えそうじゃ?」

 

「よくぞ聞いてくれました。さて、商売の話を始めようか」

 

「商売?」

 

「冒険者なんだから、魔物を殲滅するのが商売だよ。で、オークの精鋭千五百匹の討伐、いくらの報奨金になる?」

 

「はっ?千五百匹全部のか? そりゃ相当冒険者の人数を集めねばならんし、強制依頼も掛けるし、かなりの額になるが」

 

「だから、その千五百匹、すべて受け持つよ。依頼処理してもらいたいんだが」

 

「はあっ!?」

 

「受けるのは俺だが、先陣を切るのはこの「ローガ」と「赤カブト」と呼ばれし騎士、この正義のオークだ!」

 

「なんじゃと!?」

 

『おで、赤カブトなんて呼ばれてないだで?』

 

「町の防具屋で見た真っ赤な全身鎧フルプレート買ってやるよ。それ来て活躍すれば、正義の騎士っぽくて目立つだろ。やっぱりオークのままだと違う意味で目立つし」

 

コソコソ話でゲルドンに作戦を伝える。

よし、愛と正義のオーク騎士、赤カブトを誕生させよう!

 





今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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