転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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閑話11 フィレオンティーナの大冒険 その①

 

「姉さん!」

 

妹のシスティーナが飛びついてきます。

 

「まあまあ、なんですの? 伯爵夫人たる者、もっと落ち着いてお淑やかになさい」

 

わたくしは厳しく妹に伝えます。

確かに私は昨日賊に誘拐されてしまいました。

何でも悪魔を復活させるための生贄のためだとか・・・。

それもわたくしの王子様であるヤーベ様が救い出してくださり、悪魔ガルアードすらも倒してしまわれました。正直、すごすぎますわ。

本当は王都に向かわれると言うヤーベ様にそのままついて行きたかったのですが、タルバリ伯爵にシスティーナが心配しているから一度帰って安心させてくれ、と言われたので、タルバーンの町に帰って来ています。

 

「何をいってらっしゃるの! お姉さまは誘拐されて悪魔の生贄にされる所でしたのよ! 心配するに決まっているではありませんか!」

 

ぷりぷりと怒りながらわたくしの肩を揺らず妹。

妹のシスティーナはガイルナイト・フォン・タルバリ伯爵と結婚しましたので今は立派な伯爵夫人になります。

伯爵夫人なのですから、大抵の事にも落ち着いて取り乱すことの無いよう対応しなければならないと思うのですが。

 

「まあまあ、システィーナも本当に心配していたんだ。フィレオンティーナが無事で本当によかったよ」

 

タルバリ伯爵もシスティーナの肩を持つようです。

まあ、タルバリ伯爵は妻であるシスティーナを溺愛と言っていいほど愛してらっしゃいますからね。仕方ないところです。

 

「ところでシスティーナ」

 

「なんです、姉さん?」

 

「わたくし、明日にでも準備を済ませて王都に出向きます」

 

「ど、どうしたの?急に」

 

「聞いてくれシスティーナ。君のお姉さんは昨日家にコルーナ辺境伯家の皆さんと一緒にに来られた賓客のヤーベ殿に助けられたのだが、そのヤーべ殿を追って王都に向かうと言うんだよ」

 

「ど、どういう事?」

 

わたくしはヤーベ殿に助けられた経緯を伝えます。

 

「は~~~、まさか命を助けられて、一目惚れとか・・・。まさかの王子様キタ――――ってヤツ?」

 

多少呆れた感じを出すシスティーナ。ほっといてくださいまし。

 

「それにしても・・・全く男の人に興味を抱かなかった姉さんがね・・・」

 

腕を組んで溜息を吐くシスティーナ。

 

「おい、システィーナ。お姉さんを止めないのか?」

 

タルバリ伯爵が心配そうにシスティーナに問いかけます。

 

「無駄です・・・姉さんはこれと決めたらテコでも動かないほど頑固なんです。絶対言う事なんて聞きませんよ」

 

お手上げ、といった仕草でタルバリ伯爵に答えるシスティーナ。

あら、ずいぶんと姉の事をわかっているのね。

 

「しかし・・・」

 

タルバリ伯爵が何かいいたげなのを制してシスティーナは言う。

 

「姉さん。今日はゆっくり休みましょ。おいしい夕飯を用意してもらっているし、湯あみもしたいでしょ。準備は明日ね。出発は明後日。いい?」

 

「あら、準備に一日もかけるなんて」

 

不満を口にするわたくしですが、それを制してシスティーナは言います。

 

「王都までは結構距離があるわ、姉さん。しっかりとした準備が必要よ。明日は買い物と、自宅の整理をしてちょうだい。それから冒険者ギルドで護衛も雇ってね。あなた。大変申し訳ないのですが、タルバリ伯爵家の予備の馬車を姉に貸してもいいでしょうか? 貸すと言っても、いつ帰って来るかわからないのですが、今からしっかりとした馬車を仕立てるのはだいぶ時間がかかりそうですから」

 

「ああ、予備の馬車くらいはかまわないが・・・」

 

「馬二頭もよろしいです?」

 

「ああ。明日中に準備させておくよ。それにしても、それほど王都行きをサポートしたいのかい?」

 

どちらかというと止めると思っていたシスティーナが応援してくれる流れになっているので、タルバリ伯爵がブレーキ役になっていらっしゃる感じですわね。

 

 

「先ほども言いましたが、姉はコレと決めたら頑固ですので。もう王都に行くと決めたのであれば、出来るだけ安全に行ける様に協力するしかありませんわ。例え馬車を買えなくしても、歩いてでも行ってしまう人ですから」

 

「あらあら、システィーナはわたくしの事が何でもわかるのね」

 

そう言ってクスクス笑う。

 

「おかげさまであまり気が休まりませんけどね」

 

「あらそう?」

 

「そうです!全然結婚しないと思って心配していたら、唐突に王子様を追いかけて王都まで行くだなんて」

 

苦笑しながらシスティーナがわたくしに言う。

 

「さあ、出発の準備は明日明日! 今日はゆっくり休みましょ!」

 

そう言ってわたくしの手を引いて食堂に向かうのでした。

 

 

 

 

 

 

「あらあら、これは酷いわねぇ」

 

占いを行っていた店舗兼住宅だったのですが、入り口が派手に壊されています。

ロープが張ってあり、警備の方が前に立っています。

タルバリ伯爵が気を回して警備してくださったようです。ありがたい事ですね。

 

自宅に入ると、いろいろ壊されていますが自分の商売道具であった占いの道具や隠してあった金目の物は無事でした。早速大きなカバンに詰め込みます。

呪文でロックしてある金庫も解除して、全ての資産を持ち出します。

後、洋服や下着類ですわね・・・後でもう少し若く綺麗に見える洋服やドレスも少しだけ買い足しましょう・・・、何といってもヤーベ様の奥方達はかなり若く可愛いですからね。年齢なりの美しさを出して行かないと。

大きなカバン三個に手提げカバンも用意して、荷物の全てをタルバリ伯爵家に届けてもらいます。この建物と土地の権利書もタルバリ伯爵に渡してもらうように手配します。

もうこの建物も土地をわたくしには必要ありません。わたくしの居場所はヤーベ様の隣ですから。

全ての荷物を処理し終わるとわたくしは自宅を出ます。

・・・ありがとう、今まで。わたくしはこれから幸せになるために旅立ちますわ。

 

 

 

カランコロン

 

冒険者ギルドにやってきました。

もちろん目的は王都までの護衛を頼む冒険者を雇うためです。

王都に向かってくれる比較的腕の立つ冒険者パーティがいらっしゃればいいのですが。

 

早速カウンターに行きます。

 

「いらっしゃいませ、ご用件は・・・」

 

そう言って話しかけてくれた受付嬢の女の子が驚きます。

 

「えっ!? もしかして、とにかく当たると噂の占い師、フィレオンティーナ様でいらっしゃますか?」

 

「え、ええ・・・そうですが」

 

とにかく当たるって・・・占い師としてはありがたいような気もしますが、少し恥ずかしいですわね。

 

「今日はどのようなご用件で・・・あ、昨日占いの館を襲撃されたってお話でしたよね?もしかして占いをする場所をお探しですか?よければこのギルド内に場所を・・・」

 

えらく見当違いの話をし出した受付嬢。

とりあえず止めます。

 

「いえ、そうではありません。大至急王都に向かわなければなりませんの。今馬車の準備を進めております。明日朝に王都に出発するのに護衛頂ける冒険者パーティを雇いたいのですわ」

 

「えっ!? 王都に行ってしまわれるのですか?」

 

それでは占いをしてもらえない、などとブツブツ呟く受付嬢さん。

占いの事は申し訳ないのですが、早く腕利きで明日出発頂ける冒険者パーティを紹介頂けないかしら。

 

「王都に行かれるんですか!?」

 

いきなり飛び掛かるかのように話しかけてくるお嬢さんが。

王都に何かあるのかしら?

 

「王都に明日出発されるのですよね? ぜひ護衛を私たちにお任せいただきたいのですが!」

 

ものすごく前のめりに話しかけてくる少女。

 

「ちょっとちょっと! 他のメンバーに確認も取らずに何を言ってるの!」

 

今度はお姉さんな感じの女性が少女を止めに来ます。

どうやら少女の暴走の様です。

 

「でも・・・」

 

「でもじゃないでしょ! すみません、急に話しかけてしまって。リーダーのリゲンに確認もいるし、リゲンもカルデラも剣と槍を失っているのよ。お金も無い中、今武器の掘り出し物を探しに行っているけど、見つかるかどうかもわからないのよ」

 

「う・・・」

 

泣きそうになる少女。この子、どうして王都に行きたかったのかしら。

 

「貴方、どうして王都に行きたかったの?」

 

「・・・私の命を救ってくださった方が、王都に向かわれているんです。ちゃんとお礼を言いたかったのですけれど、助けて頂いた時は声が出なくて、その後町でお会い出来たらお礼を伝えたかったんですけど、その方はお急ぎだったのか、すぐに王都に旅立たれてしまって・・・」

 

「そうなの、それで貴方も王都に行きたかったのね?」

 

「え、ええ・・・。王都は広いですし、行けたからと言って会えるわけでもないのでしょうけど・・・出来ればちゃんとお礼を言いたくて」

 

「まあ、ステキな話ね。よければぜひ貴方方に護衛頂ければ嬉しいのですけど」

 

「彼らはタルバーンの冒険者ギルドに所属するCランクパーティ<五つ星(ファイブスター)>です。腕は間違いないですよ」

 

ギルドの受付嬢さんがオススメしてくれる。

それはありがたいですわ。

 

「ふう、参ったね。手持ちの金額で手に入る質のいい武器が無いとは・・・」

「だが、何かしら手に入れないと稼ぐためにギルドの依頼も受けられないぞ」

 

そこへ男性二人がギルドに入ってきます。

 

「あ、リゲン、カルデラ! ちょっと聞いて。パティが明日朝出発の王都までの護衛依頼を受けたいって言うのよ」

 

ちょうど、パーティメンバーの方が戻って来たみたいです。

 

「ええっ!?」

「そりゃ無理だ。何といっても武器が無い」

 

カルデラが驚き、リゲンは無理だと断定する。

目に見えて落ち込むパティ。

 

「もし、貴方がたが護衛依頼を受けられないのは剣と槍が手に入らなかったからですか?」

 

「ええ・・・そうですが」

「もしかして貴方が依頼人?」

 

「そうです。わたくしが王都まで行くのを護衛頂きたいのです。剣と槍はタルバリ伯爵に頂いてきますわ。タルバリ伯爵家が騎士に使用する剣と槍なら質もいいでしょう」

 

「「ええっ!?」」

 

リゲンもカルデラも驚いて声を上げる。タルバリ伯爵家の騎士用の武器など、文句のつけようもない。

 

「ほ、本当にいいのですか?」

「そりゃすげえありがたいけど」

 

「それとは別に正規の護衛料をお支払い致しますわ。よろしければ依頼受理をお願いできませんか?」

 

「わ、わかりました。ポーラもそれでいいか? 俺としては剣がもらえて護衛料まで頂けるんだ。この依頼は逃したくない」

 

「俺もだ。タルバリ伯爵家の騎士が使う槍なんて、夢のようだぜ」

 

「そりゃアタシもいいけど・・・、アレンの奴とソーンにも確認を取らないと」

 

ポーラと呼ばれたお姉さん風の女性が頭を掻きながら言います。

何となくこのポーラさんがパーティを纏めているような感じがしますわね。

 

「とりあえず、用が無いなら文句を言わせない。受ける以外に俺とカルデラには選択肢が無い。武器の供給は喉から手が出るほどありがたいからな」

 

「それでは王都まで護衛をよろしくお願い致しますわ。わたくしはフィレオンティーナと申します」

 

そう言って頭を下げる。

 

「え、あの占い師で有名な!」

 

ポーラさんが驚く。

名前だけは知って頂けていたようですわね。

 

「ああ、こちらこそよろしく頼む。俺たちはCランクパーティ<五つ星ファイブスター>だ。王都まで貴方をしっかり護衛しよう」

 

こうしてやっと王都まで出発する準備が整いましたわ。

待っていてくださいまし、ヤーベ様。

このフィレオンティーナ、貴方の元へ馳せ参じますわ!

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
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