転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「今日もいい天気ですわ」
二頭立ての馬車を進めながら思わず口から独り言が出てしまいます。
「本当にいい天気が続いていてよかったですね!」
狩人のパティさんがわたくしの天気ネタに乗ってくれます。
わたくしは二人姉妹でしたから、妹のシスティーナがおりましたが、パティさんのような元気娘はやっぱり妹と雰囲気が違います。今はパティさんが新しく出来た妹の様でちょっと嬉しいですわ。
「もうすぐ王都直轄領の最初の町バリエッタに到着します。今日はこの町で宿泊予定でよろしいですか?」
冒険者パーティ<
「ええ、ヤーベ様の情報も収集したいですし、それでいいですわ」
そしてわたくしたちはバリエッタの町に入ります。
大通りを進んで、宿を取ったら冒険者ギルドに寄る予定です。
<
きっとヤーベ様はこの町でも活躍されていらっしゃるでしょうから、ギルドに行けば簡単に情報が入りますわ!
「ダークパイソンの串焼きだよー!今だけだよー!」
「ダークパイソンの煮込みだ!精が付くよー!」
「ダークパイソンのスラ・スタイルだ!最高にウマイよー!」
大通りの露店ではいろいろと食べ物が売っているのですが、ダークパイソンという魔物の肉を使った料理が人気なのでしょうか?
「ダークパイソンだって・・・? そんな高ランクの魔物の肉がこんなに出回ってるのか?」
屋台を覗きながらリゲンは情報を収集する。
「おうよ! つい一昨日大量にダークパイソンが持ち込まれたって話だぜ。昨日から肉を売り出しててね。昨日からダークパイソンの肉を使った料理の屋台がたくさん出ているよ! ぜひ食べてみてよ! ダークパイソンの肉を炙ってキャベキャベとトマトマと一緒にパンで挟んだダークパイソンのスラ・スタイル、最高にウマイんだから」
「じゃあ一つ貰おうか。おーい、みんなも食べてみるか?」
「リーダーの驕り?」
ポーラがからかう様に返事をする。
「ああ、わかったわかった。食べたいヤツは手を上げろ。あ、フィレオンティーナ様もおひとつ召し上がりますか?」
「え、よろしいのですか? では、わたくしも一つ頂いてよろしいでしょうか」
せっかくですので、一つ頂いてみましょうか。
「ソーン、お前は?」
「フンッ」
プイッと顔を背けるソーンさん。
良くない反応ですわね。もう少し大人になられるといいのに。
「勝手にしろ」
そう言って、屋台のお兄さんに数を注文するリゲンさん。
炭で焼かれたダークパイソンの肉をパンに挟んで渡してくれます。
パクッ!
「んんっ!」
とってもおいしいです!
ジューシーな肉汁がジュワっと口に広がり、パンとの愛称もばっちりです。
キャベキャベやトマトマもあるので、野菜も取れますしね。
「うまいだろ! 北のバハーナ村近くの森に大量に出たらしくて、大変だったらしいんだけどね。なんでも超すごい魔物使いがダークパイソンを狩り尽くしたらしいんだよね。しかも、バハーナ村がこのバリエッタの町の冒険者ギルドにダークパイソンの討伐依頼を準備してる情報を聞いただけで、村の救出のために狩りに出かけたらしいよ、その魔物使いの人。世の中そんなすごい人がいるんだね。まだ依頼受理も報酬も決まってない段階で村を救いに行ったんだってさ」
「へー、そんな英雄みたいな人がいるんだな」
リゲンさんが感心しています。
と言いますか、そんなすごい魔物使いの英雄、わたくし一人しか知りませんわ。
「ヤーベ様、もう一体いくつの町を救ってくださっているのかわからないくらいですわ。通る町通る町すべて救済しているような勢いですわね」
「え、これもヤーベ殿の仕事なのか!?」
「そんなすごい魔物使い・・・といいますか、<
「確かに! 助けてもらった時はヤーベさん自ら戦ってらしたんですけど、馬車の後ろからすごく大きな狼たちが整列してついて行っていたんですよね。あれ、全部使役獣だとしたら信じられない能力ですよね」
パティさんが興奮した様子で当時の事を話してくれます。
何度聞いてもヤーベ様の活躍、カッコイイですわ!
バリエッタの町でバハーナ村を襲ったダークパイソンをヤーベ様が見事に討伐された(正確にはヤーベ様の使役獣である狼牙族が根こそぎ討伐したみたいですが)話を聞いて、さすがヤーベ様と感動しておりましたが、わたくし、まだまだ甘かったようですわ。
現在到着したばかりの商業都市バーレールにて。
到着した時から、なぜか町全体がお祭り騒ぎだったので、どうしたのかと思っていたら、なんでもつい昨日、オークの軍勢が町を襲ったのを英雄が撃退したと言う話だったのです。
もう英雄とくれば、ヤーベ様しかいない!・・・と思ったのですが、どうも違う?見たいです。『愛と正義の騎士赤カブト』さんが狼牙族と共に千匹のオークを討ち果たしたとのことです。てっきりヤーベ様が活躍したと思ったのですが・・・。
冒険者ギルドに出向けば、三メートル近い長さのハルバードが飾ってありました。
「領主寄贈」って書いてありますわね。
なんでも『愛と正義の騎士赤カブト』が千匹のオークを退けた時に使っていた業物らしいです。そう言えば、「赤カブト」モデルのハルバードなるものを売る武器屋がいくつもありましたが、こういう事だったのですね。このハルバードのレプリカが売られているのですね。
「それにしても、てっきりヤーベ様が活躍されたものとばっかり・・・」
「ん? ヤーベの知り合いか?」
わたくしが呟いていると、カイゼル髭が立派なおじさまが出てきました。
「ええ、ヤーベ様は私の命の恩人で未来の旦那様ですわ」
ヤーベ様の事を聞かれた場合、常にこのお返事をすることにしていますの。
「未来のダンナ? アイツ、女連れだったはずだが?」
カイゼル髭をピンッと弾きながらおじさまが心配してくれます。
「ヤーベ様のような英雄ともなれば、奥方様も複数になるのは当然ですわ」
「・・・そうかい、まああの男の規格外さは尋常じゃなかったけどな。そのおかげでこの町は助かったわけだが」
カイゼル髭のおじさまはこの冒険者ギルドのギルドマスターさんでした。
しかも、彼が言うにはその「愛と正義の騎士赤カブト」なる騎士は、ヤーベ様の使役獣とのことです。
なんと、使役獣が増えているではないですか。さすがはヤーベ様!
聞く話聞く話、どれもこれも放っておかれれば町が壊滅しかねない事象なのに、その全てを見事に納めている・・・もはやヤーベ様は神と言っても過言ではないのでしょうか。
今日一日、休んで明日朝一番に王都に向けて出発です。
ヤーベ様との距離が後一日にまで詰まったようです。
待っていてくださいまし、ヤーベ様。
このフィレオンティーナ、貴方の元へ後少しですわ!
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!