転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第86話 早速一人目の救出を行おう

「つ・・・ついに着いた王都! DA〇GO的に言うならTTO(ついに到着王都)!」

 

「イヤ、何を言っているのかちょっとわからないのだが」

 

首を可愛く傾げるイリーナを横目に、大きくそそり立つ外壁を見つめる。

ようやく長旅の末に着いた王都。

・・・まだ王都バーロンの大門と呼ばれる大きな門の前で入る手続き待ちなのだが。

なんと貴族専用門でも十台の馬車が並んでいた。

 

「さすがに王都バーロン。貴族専用口でも手続きに待ちが発生するとはね」

 

俺は馬車の窓から顔を出す。

顔を出したとはいえ、俺は基本全身ローブ。

ちょっと怪しい感じが出てたりするかな?

 

その時、一斉にコルーナ辺境伯家の馬車にヒヨコたちが群がってくる。

 

『ボ、ボス!お待ちしておりました! マンマミーヤのマミちゃんの元へ!』

 

『ダークエルフのリーナちゃんを!リーナちゃんを!』

 

ヒヨコ十将軍序列一位レオパルドと序列二位クルセーダーが馬車の屋根の上に飛び乗って来て涙をちょちょぎらせながら俺に陳情する。

 

デジャヴだな。

 

『ボス!孤児院のシスター・アンリが!シスター・アンリが!』

『ハーカナー男爵元夫人が!テラエロー子爵の部下が借金の取り立てに!』

 

序列第三位クロムウェルも第四位センチュリオンも涙がちょちょぎれている。

 

だから、デジャヴだって。

 

『「定食屋ポポロ」の姉妹が・・・』

『アリーちゃんが倒れます!』

 

序列第五位ヴィッカーズ、第六位カーデンも、だからデジャヴだっての!

 

『マリンちゃんが!マリンちゃんが!』

 

第六位カラールも全くブレないね。

 

『ボス、王都警備隊隊長のクレリア・スペルシオですが、かなり有能な人物であることが分かりました。ただ、彼女を引きずり落とそうとする勢力が大きく暗躍しており、王都の一部地域で治安が劇的に悪化しています。夜の報告会で場所とその他調べました情報を報告させて頂きます』

 

序列第八位キュラシーア、コイツは本物だ、なぜコイツが序列八位なのか? これはヒヨコ隊長に序列変更の具申をしておこう。

 

「うん、頼むよ。頼りにしているよ」

 

『ははっ!』

 

マジで頼もしいな、キュラシーア。

 

序列第九位ティーガーと第十位センチネルは横で見ている。

王都情報を持ってないから落ち着いているな。

 

馬車の屋根にはヒヨコ十将軍以外に、十将軍の部下たちも集まっており、それぞれの将軍の助けて欲しいターゲットを押しまくる。

 

『『『ぴよぴよぴー(マミちゃん助けて!)』』』

『『『ぴぴぴよー(リーナちゃんが先だよ)』』』

『『『ぴよぴー(シスター・アンリはとっても優しいんだよ)』』』

『『『ぴぴよぴー(ハーカナー夫人もとっても優しいんだよ)』』』

『『『ぴよぴよー(定食屋ポポロのコロッケとってもおいしいんだよ)』』』

『『『ぴよよよー(アリーちゃんをいじめる聖女は天誅だ~)』』』

『『『ぴよー(マリンちゃんの怪我が心配~)』』』

 

うーむ、助けて欲しい理由が段々おかしくなってきている気もするが。

 

ちなみにキュラシーアの部下は俺に陳情しない。

情報とはボスである俺が取捨選択するべきだという考えが伝わってくるようだ。

 

「わかったわかった。とにかく、手に着くところから急いで対応するから」

 

『カッシーナ王女もお願いしますね!ね!』

 

ヒヨコ隊長も推してくる。どうやって王女助けるの?

 

とにもかくにも俺はヒヨコ達を落ち着かせる。

う~ん、今日すぐできる事はあるかなぁ。

 

「ヤーベ殿、順番が回って来たので入るとしよう」

 

そう言ってフェンベルク卿が声を掛ける。

 

ついに馬車は王都の門を潜って行く。

 

「うわ~、これが王都かぁ」

 

田舎者丸出しの感想を出してしまう俺。

今までの町や都市に比べても、建物が洗練されている気がする。

 

「フェンベルク卿、王都での予定は?」

 

俺はこれからの予定を確認する。

なんたって、ヒヨコ達からの救出依頼がてんこ盛りだから。

 

「王都ではコルーナ辺境伯家の別宅があるから、そこで滞在してもらう予定だ。宿暮らしからやっと解放されるぞ」

 

笑いながら説明するフェンベルク卿。さすがコルーナ辺境伯家だ。王都に別宅があるとはな。

 

「や、それは大変ありがたいですな」

 

馬車は大通りをゆっくり進んで行く。

 

「イリーナ。ルーベンゲルグ伯爵邸・・・というか、お前の実家はどの辺にあるんだ?」

 

「私の実家・・・ふぇ!? こ・・・これから行くにょ?」

 

「い、いや・・・今から行くわけじゃないけど」

 

「ルーベンゲルグ伯爵の屋敷はウチから近いぞ。必要なら先振れを出しておけば馬車を用意しよう」

 

「ありがとうございます。助かります」

 

フェンベルク卿の心遣いにとりあえず感謝。

 

「ふぇ!? 今日じゃないら・・・こ、心の準備をするにゃ」

 

顔が赤くなっているイリーナを置いておき、これからの予定を考える。

今は昼過ぎ、感覚的には午後三時くらいか?まだ日は高い。今日行動しようとすれば出来る。

 

「クルセーダー」

 

『ははっ!』

 

大通りをゆっくり進む馬車の窓から顔を出すと、クルセーダーを呼ぶ。

 

「例の奴隷商館ド・ゲドーはここから近いのか?」

 

『ははっ! この大通りから左へ入った奥にあります!』

 

「わかった。フェンベルク卿。申し訳ないが、奴隷商館ド・ゲドーで奴隷を購入してきます」

 

「な、なんだ藪から棒に?」

 

「ヤーベ様?」

 

「一体どうされたのですか?」

 

フェンベルク卿にルシーナちゃん、フローラさんからも急にどうしたのかと訝しがられる。

そりゃそうか、急に奴隷を買うなんて言い出したからね。

 

「ヒヨコの情報で、非常に不幸な状況に追いやられている人たちの情報が何人も上がって来ています。そのうちの一人が奴隷商館ド・ゲドーで売りに出されているとのことで、とりあえず買い受けて引き取って来てから処遇は考えます」

 

「ふむ、君の情報網のことだ、必要な事なんだろうね。奴隷商館は身分照会がいる場合もあるからね、この馬車で乗り付けた方が早いかな。案内してくれ」

 

「助かります」

 

 

 

 

 

 

奴隷商館ド・ゲドーは王都でもナンバースリーの位置にある規模の奴隷商館だ。

店の中に入ってたのは俺だけだ。他のみんなは馬車で待機してもらっている。。

 

「いらっしゃい。今日はどんな奴隷をお探しで?」

 

余分な挨拶無しで商館主であろう男が話しかけてくる。

すでに俺がコルーナ辺境伯家の馬車から降りてきている事は案内してくれた店員から情報が言っているはず。

 

「ここはどんな奴隷を扱っている?」

 

とりあえず探りを入れてみる。

ピンポイントで指定すると足元を見られたり売ってくれないなんてこともあり得るかもしれない。

 

「戦闘奴隷、家事奴隷、商業奴隷、愛玩奴隷・・・ウチは総合的に取り扱っておりますよ。必ずご希望に添える奴隷が見つかる事と思いますよ」

 

自信満々に説明する商館主。

 

「それでは愛玩奴隷を見せてもらえるか?」

 

「わかりました、ご案内致します」

 

そう言って奥の部屋へ案内される。

 

進められたソファーに座ると、正面は大きなガラスの窓になっている。

 

「今から十人ずつ、三回に分けてご案内致します。気に入った奴隷がいればお申し出ください」

 

 

そう言って女性たちがガラスの向こうに案内されてくる。

どの女性も平均的にレベルが高いな。

お姉さんな感じから、若い少女くらいまで、ぽっちゃりからスレンダーまで様々な女性がいた。どんな好みの客が来ても対応できそうなイメージだな。

 

だが、クルセーダーの言っていたダークエルフのリーナという少女はいないようだ。

 

「ふむ、かなりレベルが高いな。この商館の実力を十分知ることが出来た」

 

「ありがとうございます」

 

恭しく礼をする商館主。

 

「どうだろう、他にも少女のような奴隷はいないだろうか?」

 

決して、俺がそういう性癖持っているわけではないですからね?

 

「そうですね・・・ですが、自信を持って進められる品質の愛玩奴隷はこれくらいでして・・・」

 

「ふむ、何らかの理由で、自信を持って進められない奴隷もいるという事か?」

 

「そうですね・・・」

 

少し目を逸らして肯定する商館主。

 

「では、それらも見せてもらいたい」

 

「いや、本当にオススメ出来ないのですよ。お貴族様などにとって・・・」

 

「ああ、俺は貴族じゃないぞ。単なる冒険者だ」

 

「そうなのですか?」

 

「ああ、雇われていると言うか、そんな感じだ」

 

「そうですか」

 

言葉そのままに信じてはいない様子だが、貴族ではないと言うのは理解してもらったみたいだ。

 

「特殊な奴隷として、通常より格安でお引き渡しできる奴隷がおります・・・。ただ、当然問題があるから格安になっているのですが」

 

「ぜひ見せてくれ」

 

「・・・わかりました、こちらへ」

 

 

 

そして案内されたのは、建物の地下。

 

「愛玩奴隷としては、この娘だけになります」

 

そう言って案内されたのはガラスの部屋ではなく、牢屋だった。

 

そこに居たのは、ダークエルフの少女。

居る、というより倒れているようにさえ見る。

特別な事情により、価格が安くなっているとのことだが、その理由は一目瞭然だ。

まるで熊の一撃でも受けたかの如く、顔の左半分に爪でえぐられたような傷があった。

目や耳が損傷し、非常に痛々しい。そして左肩も怪我をしているのか、左手がうまく動かせないような感じだ。

 

「リーナ、聞こえるか?リーナ!」

 

大きな声でリーナと呼ぶ商館主。

 

「う・・・はい・・・」

 

のろのろと上半身を起こす少女。

 

「この少女はダークエルフのリーナと申します。魔法も使えて素質も高いはずなのですが、魔物に襲われてしまい、その後遺症で魔法もうまく使えず、左手も使えないため家事もうまくいかず、顔の傷もあるため、愛玩奴隷としても価値が下がっています」

 

・・・しかし、クルセーダーのヤツ、よくこんな状態のリーナちゃんを見つけて来たな。ある意味すごいヤツだ。

 

「いくらだ?」

 

「えっ!? ご購入されるのですか? 一応、この娘なら金貨五枚で大丈夫ですが・・・」

 

俺は即座に金貨五枚を取り出して渡す。

 

「本当によろしいので? 能力が足りなくて文句を言われても困りますが・・・」

 

「構わない。すぐに手続きを頼む」

 

「・・・わかりました。リーナ、よかったな。お前を買って下さるご主人様がいらっしゃったぞ」

 

「あ、あ、あ・・・ありがとうございましゅ・・・」

 

ぽろぽろと涙を流しながら三つ指を付いて頭を下げるリーナ。

心が締め付けられる。

 

リーナがどうしてここにいたのか、なぜ怪我を負ってしまったのか、そのような理由は今はいい。

今は早くリーナを連れ帰って休ませてやろう。

 




ついに出ました!『まさスラ』裏のヒロインの声も高い「リーナたん」登場です!
ぜひとも応援よろしくお願いいたします!

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