死んでも影激薄な僕が異世界に飛ばされたら最強チートアサシン…? 作:HAL
とてもシリアスです。
とても暗いお話です。
異世界に行くまでのあらすじなので…
僕の生まれは日本。当たり前のように生まれて、当たり前のように生きて、当たり前のように死ぬ。なのに僕が生まれてきてからそれは無い。まるでそこだけ狭い箱の中にいるよう。生きてるはずなのに死んでる。家の中は嫌い。親も嫌い。弟も。学校も。友達も。みんなみんな嫌い。でも義務だからと、お金を払ってるからだと、そう言い聞かせて今日も一日が始まる。
朝5時、起床…
僕の朝の日課。まず誰よりも早く起きること。それから自分のご飯を作り、自分の弁当を作り、制服に着替えて早めに家を出る。それから公園に行き僕の唯一安らぐ猫達の楽園へ向かう。そこで過ごすことが至福の一時。人間と関わるより楽しい空間。話せる訳じゃなくてもそこに居るだけで癒される。時間になるまでここで過ごす。猫達と昼寝をしたりもする。それくらいの時間もここにいれば、嫌なことも忘れられる。
時間なんて止まればいいのに…
そうすれば幸せなのにと思っても時間は来る。ここからの学校までの道のりは遠くて時間がかかる。なので学校の校門が開くのは8時。7時には出なくちゃいけない。猫達と別れて僕は学校へ向かう。嫌いな学校に。逃げ場のない箱に。今日も行く。
僕に安息地なんてない…
入学してきてからずっとこの調子。親の虐待を受けながら通う。それだけでも注目される。最初は心配されたけど、今はそんな人はいない。何が気に食わないのか知らないけど、何かあれば僕に当たる。サンドバッグのように。それが毎日だからもう抵抗してない。それどころか人形のように扱われる。それが休み時間の過ごし方。僕の安息地なんてどこにもない。
あるのはあの公園の猫達だけ…
毎日のように絶えないいじめ。何が楽しいのかわからない陰口。知ってて見て見ぬふり。僕に居場所なんてない。学校の中は何も無い。でも強いて言うなら屋上。自殺するにも弁当食べるにも昼寝するにも、なんでも出来る場所。行くことは滅多にないけど昼ごはんはそこで食べる。帰ってきて机や椅子がなくても、教科書や筆記用具が無くなっても、バックすらも無くなっても、生きるためのお弁当がある限りは、生きられる。水は水道水飲めればいい。それで充分だった。
なのにーー。
「お前は水道水でも飲んでろよ?」
「弁当なんてお前に入らねぇだろ?」
お弁当を取られて中身全部ひっくり返された。
あぁ、お弁当が…
「ちゃんと片付けとけよ?」
「汚したもんは片付ける、常識だろ?」
「お前自身が汚ぇし洗っとけよ?」
もう食べられない。食べ物を粗末にするのは良くない。このままじゃあ可哀想。
………、片付けよう
「……!!くそっ、なんとか言えよ!!」
「!」
髪を引っ張られた。痛い。片付けろって言ったから片付けてるのに片付かない。髪を引っ張った男の子が一瞬僕の目を見て青ざめた。
「っ!!……んだよ、その目はよっ!!!」
「っ!」
目をつぶって目を必死に守った。殴ってきたから。頭を殴ってきた。さすがに周りが男の子を止めた。『これ以上はまずい』、『先生に見つかる』と。誰も僕の心配はしない。止めてる間に僕は弁当の中身を片付ける。それからそんなに時間がかからないうちに先生が来た。先生はずっと見て見ぬふりをしていた。僕の傷のことなんて見向きもしてこなかった。今日さすがに言ってきた。
「影闇、どうした頭?血が出てるぞ。保健室へ行ってこい。それから家に帰りなさい。早退するようにって親御さんに俺から言っておく」
ずっと傷のことを黙秘してきた先生が心配する。けど、何も感じない。心配されてる感覚がない。嬉しいって気持ちもない。今更だからかもしれない。もっと早く心配されてたらその感情も出たかもしれない。
何も感じないからわからない…
言われた通り保健室へ行った。途中カバンがあったのでカバンの中身を見ると空だった。周りを見ると散乱してるので、それを拾ってカバンの中へ。全部拾ってまた改めて保健室へ。『コンコン』と叩くと。
「どうぞ」
と言われたので入る。おばちゃん先生が僕を見て何も言わず、何も聞かずに手当してくれた。おばちゃん先生は僕の目を見ても動じなかった。血を拭って包帯を巻いてくれた。巻いてる間にお腹の音が鳴る。
「内緒だけどこれあげるわね。ここで食べなさい。これしかないのが残念だけど、ないよりはマシでしょう。これから帰るのであればせめて家に着くまでの力になるはずよ」
先生は優しかった。未だに感情が出ないけど、猫と同じ癒しを感じる。ここも居場所かもしれない。だけど、毎回来れる所じゃないから候補に入れない。やっぱり居場所は猫の公園だけ。そう思いながら貰ったものを食べる。それからカバンを持って早退した。あんまり家にはいたくない。居ても居なくても同じ。
猫になりたい…
でも帰らないといけない。帰りたくない場所に。行きたくない場所に。苦しいことしかない場所に。癒しのない場所に。家に着きドアを開けて部屋に入る。僕の部屋には何も置いていなければ、何も思い出に残る物もない。全て弟が持っている。兄の僕には何も無い。
今日のご飯を先に持ってこよう
いつもしてる事。直ぐに捨てられるものを用意する。使い捨てペットボトルに水を入れる。少し漁るとパンが置いてあったので、それを持って部屋に行く。自分が一緒に食べない代わりにそれだけは許されている。何も咎めない。部屋から出ていないし、迷惑かけてない。なので、鉢合わせにならないように常に耳を敏感にさせている。親の中で一番の権力者はお父さん。次にお母さん。最後に弟。僕は最下位だから圏外。僕に権力とか持ち合わせてない。だからこの家では逆らえない。でもみんな嫌い。だから話したくない。少し眠たいので寝ることにした。
ベッドがあるだけ幸せ…
そう思ってた。今日は最悪な日なのかもしれない。学校だけじゃなくて家でも同じことが起きた。僕が嫌いなお父さんが帰ってきた。しかも運悪く酔っ払ってるようだった。極めつけにイライラしてる。話したくもなければ会いたくもない。にも関わらず面倒な階段を登って僕の部屋に入る。そして、眠ってる僕を起こしてはサンドバッグにする。お母さんも弟も見て見ぬふりをする。僕は二人の代わりに生贄になる。いつもの光景であり、いつもの空気であり、いつもの関係。
痛い……のに、感覚がない…
これに耐えればいい。お父さんは滅多に帰ってこない。帰ってくる時は、お酒を飲んでる時だけ。その矛先が僕。だから今だけ、耐えればいい。
早く…終わらないかな…
お父さんが僕の髪を掴んだ。そしてお父さんも一瞬僕の目を見る。いつものお父さんなら、怖がらないのに、今日は顔が強ばった。みんな僕の目を見ると、一瞬固まる。そして固まった体が動き出すと同時に、僕の心も少しずつ、侵食し壊していく。
『なんだその目は!!生意気だぞ!!』
パキッ。
……?なんだろう?
自分でも分からない。今小さく音がした。何か割れる音。でもまだ実感がない。とにかく目を開けないように瞑る。お父さんは開けるように殴る。固く閉ざした目を開けることはない。諦めたお父さんは僕を連れてリビングへ行く。連れてこられて中に押され転ぶ。お母さんと弟は怯えていた。まだ2人は僕の目を見てない。震えるのはお父さんのせい。
あと、僕がいるせい…かな
「お前も言いたいことがあればコイツにぶつけろ!文句の一つはあるだろ?さっさと言え!!」
「ひっ!!」
「っ!!」
弟も抱えて抱きしめるお母さん。そしてお母さんもまた僕に言う。心の何かが壊れる音がした。
『あんたがいるから私を苦しめるのよ!!』
パキッ。
これはお母さんの気持ち…かな
また聞こえた。よく分からない。傷がたくさんありすぎて、わからない。弟は怯えていて声が出せない。弟は中学生。だけど、名前を知らない。覚えてない。だから、他人のように見える。そしてお父さんは僕を立たせてリビングから追い出し、部屋に連れていかれて、投げ捨てられる。幸いベッドがあったのでクッションになり、痛くない。ベッドが守ってくれた。
ありがとう、ベッド…
それからもうお父さんが来ることはなくなった。なので隠してた水とパンを食べる。今日の夕ご飯はこれだけ。でもまだあるだけマシな方。無い日もあった。食べてまた隠して寝た。また明日に備えて眠りにつく。
けれど、僕に明日なんてなかった。それはお父さんやお母さんの気持ちに、何か壊れる音がした。アレが前兆だった。僕の死ぬまでのカウントダウンが始まる。
朝5時、起床。いつものように起きて制服に着替え、食器を片付けて、朝食を食べて、お弁当を作る。けど、今日はいつもと違った。それは弟が起きたからだった。自分の日課だったらから気づかなかった。
「何してんの?」
「?」
見ての通り、弁当作ってる…
顔を少しあげるけど、作り終えて盛り付けしてるのは、止めない。すると何を思ったのか、弟が僕に言った。顔を歪ませてた。
『苦しでますアピールとかいらねぇんだよっ!!』
パキッ。
まただ…、何かな?これ…
あんまり動じないけど、原因がわからないから混乱する。盛りつけ終了したので、袋の中にお弁当を入れて、袋をキュッと締める。それから弟を素通りする。
「何か言えよ!不気味なんだよ!」
弟もお父さんのように髪を掴む。そして一瞬僕の目を見てしまう。そして固まる。僕はわからないけど、彼らにとってはこう見えるのかもしれない。
『何か用?』、『邪魔してないよ』、『楽しい?』、『話してないよ』、『なら、殺せば?』
どれが当てはまる言葉かはわからない。それは人によると思う。でも僕が言葉を発する前だからかもしれない。そして弟は怯えて僕から離れた。僕は鞄の中に弁当を入れて、いつもの公園に向かうべく、家を出た。
この日、僕は家に帰ることは無かった。これが最後の日になるとは、誰も思わない。僕も思わなかった。そして、家族は知る。僕が居たから自分に被害が来なかったのだと。まだそれを知るのは後の話。
いつものように公園に行ってお皿に餌を入れる。それも日課。猫達はこの公園の中でもすごく多い。だから、今日は贅沢に家の肉を焼いて持ってきた。全部じゃないけど、焼いた枚数は覚えてない。それを小分けにして餌を与える。
みんなの分も、あるよ…
周りの猫達も呼んで食べさせる。食べ終えた猫から順に、お礼としてなのかスリスリしてくる。
どいたしまして…
よしよしと撫でると嬉しそうに笑う。僕もその時だけは笑えた。心から。いつもは無表情で無感情なのに、猫達といる時は何故か感情が生まれた。その時だけは、本当に楽しかった。でも時間はすぐに終わる。
もう、行かなきゃ…
それから僕は学校へ向かうために猫達と離れた。それから学校という名の、悪魔の巣窟へと向かった。僕にとっては学校はそういう場所。本当になんで行かなきゃいけないのか、わからない。
正直、めんどくさい…
まだこんな風に考えられる間は大丈夫。そう思ってた。怒涛の苦しみを味わうとも知らずに。学校に着いた。上靴と履き替えて教室へ。だけどそこには僕の机と椅子は無かった。また捨てられた。
いつも重くないのかな…?
持ってくの面倒だと思うのに、律儀に持っていく。学校での僕の日課は机と椅子を持ってくる。それから机と椅子を綺麗にする。淡々とした作業。楽しいのかと言われたら、楽しくない。でも、仕方ない。これが無いと授業を受けれない。それに僕のじゃない。学校のものだから。粗末にしたらダメ。だから誰かが、こんなことしても、僕がちゃんと綺麗しないと。
使わせてもらってるのに、失礼だから…
周りはそれをいつも笑ってる。楽しんでる。でも何も言わない僕に、不気味だなんだと言う人もいる。そう思われても、何も返せない。期待しないで欲しい。そしてしばらくして先生が来た。ホームルームが始まった。これと言ってお知らせはなかった。合って。
「頭はもう大丈夫か?影闇。無理はするなよ?頭の出血は死に繋がるからな。死ぬということはもう二度と戻れないって事だ。そしてそれは自分も後悔することになる、みんなも気をつけろ?もし万が一、自分の手で相手を死なせてしまったら人生に関わる。それは償いができない程だ。まだ難しい話だが、いつかわかる時が来る。その時に胸の中で考えてみるといい。その時、自分のやってしまったことに気づけたその時はまだやり直せるかもしれないからな」
わかった人なんていないと思う。自分は何もしてないからとか、やってるのあの子だけとか、自分は関係ないとか、そういう感じだと思う。だから、これから起きることも予知できない。僕自身もわからない。
みんな、他人事だから…
ホームルームが終わって先生は出ていく。2時間目から移動教室。普通は面倒だと思う。けど、僕は教室が嫌い。みんなと離れるわけじゃないけど、あそこは嫌い。居たくない。それだけ。1時間めは普通に始まった。特に何も起こらずに。平和に。いつもこうならいいのに。2時間め、移動教室。なのに囲まれてる。
何か用かな…?
「お前なんでなんも言わねぇんだよ」
「口ついてるだろ!それともお飾りか?」
「ま、人形だもんな?仕方ねぇよな?」
「てか、俺達に口出しできるわけもねぇか?」
「怯えて言葉も出ないんだからな」
「ぎゃはははははっ!!!」
時間の無駄遣い、してる…?
僕に何か言うより、さっさと移動すればいいのに。みんななんで、遠回りしてるのか。意味がわからない。目障りだのウザいだの、たくさん言ってるけど。時間の無駄遣いと、口の疲労が溜まるだけ。
暇なのかな…?
ずっと黙ってると、頭を殴られた。その拍子に椅子から転げ落ちた。すぐに立ち上がる。するとまた殴って床に倒された。起き上がれないように足蹴にされた。僕の椅子、汚いのに座ってる。
『なんとか言えよ!!このノロマ!!クズ!!』
パキッ、パキッ。
また聞こえた…。でも、なんか心が痛い…?
「クズは床でも舐めてろよ!!」
「おい、そろそろ行かねぇと間に合わねぇよ?」
「おっ、そうだな!んじゃあ行くか」
僕の頭に体重を乗せて立ち上がり、そして出ていった。僕も準備して、移動教室へと向かった。案の定、間に合わなかった。先生には怒られた。でも、気にせず聞いてた。それから自分の椅子に座る。そして授業を普通に受ける。何も感じないので、何も思わない。誰がどう思っても、僕にはわからない。それくらいには麻痺と毒に侵されてる。授業は普通に終わった。するとさっきの人達が、机の上に教科書類を置いた。
「?」
「それ、教室まで持ってけよ?」
「落としたら弁償だからな!」
「誰かの手とか借りるなよ?」
「自分でやれよ、バーカ!ぎゃははははっ!!」
それだけ言ってそのまま出ていった。僕は全員の名前を見た。それから覚えて自分のを下に置いた状態で、教室まで持っていく。教室に向かってると、たくさんの人に注目された。
「あの子、持たされてるよ?」
「何も言わないんだって」
「てか、誰か手伝ってやれよ」
「お前が手伝えばいいだろ?」
「あの子が暗いのが悪いのよ…」
「近寄っても気味悪いしさ…」
「一緒にいるとこ見られたくないよね…?」
「ねー…?」
普段から耳を敏感にさせてるせいもあって、陰口が聞こえる。鮮明に。でも、誰も助けようと言う行動はしない。しない方がいい。巻き込まれるだけなんだから。巻き込まれたくなかったらしない方がいい。そう僕も思っていた。すると、誰かに半分持っていかれた。その誰かというのは。
「何当たり前のように持ってんのよ!」
学級委員長…
「あんたねー?そんな風に何も言わないから舐められるのよ?」
なんで…?助けるの…?
「ほら、手伝うから。さっさと行くよ?」
しなくていいのに…
僕が言葉を出す前に先へ行ってしまった。僕もそれについて行く。そして教室に向かうと、既に授業は始まっていた。また先生に怒られる、そう思った。
「先生!遅れてすみません」
「学級委員長!君が遅刻するなんて初めてだね?」
「生徒が1人いないのは大問題ですから、探しに行っていたのです。そしたら偶然にもそこを歩いてきたので連れてきたのです」
「そうか。それで、それは何だ?」
「はい。これはクラスメイトの教科書類を持ってたようです。名前は土井(ツチイ)、風神(カゼカミ)、火坂(ヒザカ)、水崎(ミズザキ)の4名の物です。その1人は私の幼馴染みなのですが、今日私は堪忍袋の緒が切れました。先生、すみませんがこの4名と影闇を連れて行ってもよろしいですか?」
「学級委員長が言うなら、いいが…。何かしたのか?」
「少しお灸を添えるだけです。しかし授業の妨げになるのは良くないので、教室を移します。許可を貰えませんか?」
「いいよ。連れていくといい」
「ありがとうございます。今言った4名と影闇は私について来なさい。逃げれると思わないことよ?」
「「「「……っ……」」」」
どんどん話が進んだ…
何もわからない間に話が進んだ。学級委員長は、いろんな人から信頼を得ている。そしてモテる。そんな人からの声掛けは家宝物だと、みんな言う。僕はその価値が、よくわからない。わからないことだらけだ。
今の状況も、よくわからないのに…
そして1つの空き教室に入り、4人と僕と学級委員長が中に入る。それから少し沈黙が入る。意を決して4人の内の一人が話し出す。
「な、なんだよ…?水織(ミオリ)」
「あんた達、こんなことして楽しいの?」
「な、なんの事だよ?俺達何もしてないぜ?」
「とぼけるつもり?私の見てない所でいじめて」
「うっ…!」
いつも周りを見てる訳じゃないから、わからなかったけど、確かにいない気がする。いつもは1時間めからでもやって来た。なのに今日はなかった。
変だなって思った…
「いじめてないって言うなら教科書のことはなんて説明するの?」
「いや、それはさ?そいつが持つって言うから仕方なく……」
「それを他の人に聞いた時にそう答える人はいるかしら?」
「うぐっ……」
一人一人に話しかけては黙らせる。学級委員長は正義の味方。弱い人を助けるような人。そして誰に対しても平等。隠し事はあまりしない。あっても開き直って切り抜ける。普通の人には真似できない。憧れの存在。僕は憧れたことがないから、わからないけど。
みんなは希望の光みたい…
「それにこの頭の傷はどうなの?」
「それは俺たちじゃねぇし!」
「なら、朝まではなかったのに保健室に連れていく時には血を流してたのはなんで?」
「そ、それは転んだからじゃねぇの?ドジだし」
「転ぶ?転んだからって教室で血を流すほどの衝撃なんて与えられないでしょ?強い衝撃を誰かに与えられない限りは。違う?」
「うぅ…」
次々と撃沈していく。そして最後に残った人に目を向ける学級委員長。僕は見守ってるだけ。
「土井」
「な、なんだよ…?」
「ここで私はカミングアウトするわ。噂が広まっても構わないけど、事実だから隠すのを辞めるわ」
「だ、だからなんだよ…!」
「私ね?ずっとあんたのことが好きだったのよ」
「え?…は!?嘘だろ!?告白されちまった!!」
「「「おぉっ!!」」」
学級委員長は淡々としてた。土井って人は顔が赤い。周りはヒューヒューと言ってる。4人が浮かれてるのに、学級委員長は少し冷めた声で言う。
「でももういいわ。今回の事であんたのことよく分かったから」
「へ?」
学級委員長の顔は僕には見えなかった。その代わり見えてる人の顔は青くなった。そして少しずつ凍りつくような声に変わる。
「私、人をいじめてる人や殴って蹴る人って下劣で最低だと思うの。私ってあんたも知ってる通り、正義の味方をしてる上で言うんだけど。昔のあんたはとってもかっこよかった。ヒーローみたいで、私もそうなりたいって思った。だから今の私がいるんだけどね?」
「お、おい待てよ…?まさか……」
「あんたには失望した。こんなのがヒーローなんて、私もどうかしてた。あの時のあんたは本当にかっこいいと思ったけど、今のあんたとってもかっこ悪い。人をいじめて楽しんでる悪に染った人を好きにはなれない。だから、告白されたとか思わないで。私はもうあんたを好きになるのは辞めたから。八つ当たりに人の頭を殴って、八つ当たりのために人を足蹴にして、自分の物は自分で持たずに他人に押し付ける。あんたってそんなに偉い人かしら?本当に偉い人はこんなことしないのよ?こんなあんたが幼馴染みとか気持ち悪くて、今にも吐き気がする。私に二度と話しかけないでくれる?もっと嫌いになるだけだから」
それだけ言って教室を出ようとした。ピタッと振り返り口にしたのは。
「1番最低なのは、その後八つ当たりで人を殴って蹴って相手を気絶させることよ?私が見てないからって忠告無視してやるなんてこと、しないでよ?」
そう言って出ていった。僕はただ立ってるだけだった。僕はなんのために呼ばれたのかわからないけど、とりあえず終わったみたいなので素通りしようとした。が、肩を掴まれ突き飛ばされた。そして思いっきり殴られ蹴られた。他の人達も便乗して殴って蹴る。
忠告を無視してる…
「お前のせいだっ…!」
僕のせい…?
「お前のせいで台無しだ!!お前さえいなけりゃこんなことにはならなかった!!お前さえ苦しんでますアピールなんてもん見せなきゃ、こんなことにはならなかった!!!お前が目の前から消えればこんなことにはならなかったんだ!!!俺だって水織が好きだった!!!だから守ってやろうって思ったんだ!!!それをお前が奪ったっ!!!お前なんて人形の癖に動きやがって!!!」
八つ当たり…、もう何言ってるかわからない…
文面にしたら意味がわからない。頭が混乱してる。言いたいことの整理がついてない。そのせいで殴ったり蹴ったりの力が強い。痛い感覚はもう感じない。麻痺してるせいもある。他の3人は便乗をしたけども、やめ時に辞めた。けど、残った人はまだ殴っては蹴ってる。朝のホームルームのことを思い出した3人は残った人を取り押さえる。
「もう辞めろって!」
「これ以上したら死んじまうぞ!」
「離せっ!!このっ!!こんなやつなんかに情けなんていらねぇんだよっ!!お前なんてっ!!」
抑えてる力より振りほどく力の方が強かった。それから僕の頭を強く蹴ってから言った。
『お前なんて生きる資格ねぇんだよっ!!』
パキッ、パキッ、パキッ。
だんだん音が強くなった…、心が痛い…
そして僕は最後の時を迎える。最後に放った言葉が僕の最後だった。その言葉というのは。
『いっそ、死んじまえ!!』
パキンッ!
……あ……っ…
何かが、フラッシュバックした。言ったのは目の前の人だけなのに。今見たのは、お父さんとお母さんと弟。それからここには居ない学校の全員が、出てきた。僕の何かが今砕けて壊れた。目の前から色が無くなった。耳から音がしなくなった。鼻から何も臭わない。痛みも何も感じない。何も見えない。
……………
自分の頭では何も考えていなかった。ただ、わかったのはこの世界に、僕は必要ない。それだけ。そして僕はゆらりと立ち上がり空き教室を出ようとした。話が終わってないのか髪を掴まれた。これが最後に見た僕の表情。そこに居た4人全員が凍りつくように固まった。そして怯えて手を離し僕から離れた。解放されたと思ったら僕の体は、そのまま屋上へ行った。屋上は大きいフェンスが付いてる。外側に行くのは難しい。なんとかフェンスを乗り越えて僕は思う。
あぁ、こんな世界に居たくない…
何もかもーー無になってしまえーー。
そして僕は屋上のフェンスから離れ頭から落ちて死んだ。何も考えずにそのまま起きることは無かった。即死だった。最後の嫌がらせとして、みんなの教室がある所から落ちた。見せつけるように。そして僕の人生はここで終わった。
………
……………
………………?
死んだはずなのに温かい。風が気持ちいい。そんなこと思うなんておかしい。そう思った僕は目を開ける。そこは死後、天国や地獄とも違う場所。草原。キョロキョロしても学校はなく、あるのは1本の木。見渡す限り、草ばかり。
ここは、どこ…?
何も見えない、何も聞こえない、何も感じなかった五感が普通に感じる。見えてる、聞こえてる、感じる。これから僕はどうすればいいのか、やっぱりわからない。そのままずっと気持ちいい風に煽られて、僕はひたすらボーっとするのだった。
ーー異世界に飛ばされたことも知らずにーー