死んでも影激薄な僕が異世界に飛ばされたら最強チートアサシン…? 作:HAL
レリクの街に入る際に、僕とお兄ちゃんは荷台の上から中に入る。上にいたら変に見られるかもと、お兄ちゃんに言われた。
それに、中に入れば襲われる心配はないって…
中に通されてから、商売人さんの目的地に着いたみたい。下ろされてから、お兄ちゃんを捕まえては情報を聞いてる。僕は待ってる間、街をキョロキョロと見回した。大きな建物が多い。都会みたいだった。でもビルみたいなのは無い。本当に住んでた所とは違う場所。僕が転生された場所。人も色んな人がいる。僕やお兄ちゃんのように、耳や尻尾を生やしてる人や、硬そうな服を着てたり、大きな刃物や剣を持ってたり、普通に一般人もいたりと、たくさんいる。
でも、服装が違う…
本当に異世界に来たんだなって、改めて実感する。自分の知らない場所、だからだと思う。だからと言って、戻りたいとは思わない。戻るくらいならここに居たい、そう思ってる。それにお兄ちゃんもいる。
だから、必要ない。あんな世界は…
そう思ってると、お兄ちゃんが来た。少しぐったりしてた。やっと解放されたと思ってるみたい。
「スゲー色々質問された。あとは腕の見せ所なのにこれはどうしたら?あれはこうか?って言われて一々説明すんの超大変だった…。こんなことならあんなこと言わなきゃよかったぜ…。まあいいや、終わったし水に流すとして。んじゃ、とりあえずはギルド協会に行くか!戦利品とか交換したいし♪」
ぐったりしてたお兄ちゃんは、ギルドのことを思い出すと、急に元気になった。それくらい解放されて、嬉しかったみたいだった。それからギルド協会って所まで、歩いて行った。ちゃんと僕の歩幅に合わせてくれる所が、お兄ちゃんの良い所。
優しいお兄ちゃん…、僕の世界でもいたらな…
なんて思っててもしかたない。戻るという選択肢は、僕には持ち合わせてないし、使う気もない。なので、こんなことを考えるのは辞めた。そして僕達は大きな建物の前に着いた。
「入るぞ?シノブ」
「うん」
頷いて扉を開ける。扉を開ける前まで賑やかだったのに、僕達が入った瞬間、時が止まった。みんな僕達を見る。僕はお兄ちゃんの手を握りながらついてく。お兄ちゃんは僕の気持ちを汲み取って、握り返してくれた。それから受付の女の人に声をかける。
「あの、すみません。女性の方」
「はい。何でしょう」
「冒険者になるにはどうしたらいいですかね?」
「冒険者になる方ですね。そちらの子は?」
「あ、この子もです。俺は戦闘系は不得意で、どっちかって言うと情報収集が得意なんですが、こっちは情報収集よりも戦闘が得意です。あと、見ての通りですが職業は『アサシン』です。こんな感じでどうですかね?」
「はい。OKです。では戦闘力を試すために試験を行います。そちらの扉にお進み下さい。試験官が既に居ますので、その方の指示に従ってください」
「わかりました。んじゃ、行くぞ」
頷く。それからお兄ちゃんと一緒に、指示された扉の所に向かった。周りの人の声が聞こえる。
「あんな奴らにマスターを倒せるわけねぇよ」
「俺達でも倒すの一苦労だったってのに」
「あのチビに何ができるんだかw」
「けど、あの兄ちゃんは情報収集が得意ならチビは荷物持ちとかで充分じゃね?」
「それは有りだなww」
「もし、行く宛てねぇってならそうしようぜ♪」
「あの装備品とかどこで手に入れたのかしら」
「あんな高そうな装備品、ここら辺で売ってた?」
「売ってないと思う。剥ぎ取る?」
「そんなことしたらマスターに怒られるわよ」
「だよねー…」
「『アサシン』とかあんまり聞かないよね」
「今時『アサシン』とか古いわよねw」
「ガーディアンとか魔術師とか、そういう王道系が多い中のあえてかね〜?」
「まあ、マスターが決めることだしあたし達は結果を待ちましょ」
「そうね」
扉が閉まるまでの間に聞こえた声。聞き耳レベルがMAXだと、コソコソ話がそう聞こえない。お兄ちゃんは聞こえないみたい。
世界が変わっても、見る目は同じ…
自分のいた世界もこんな感じ。ただ生きる土地が違うだけ。それでも同じ光景は鮮明に覚えてるもの。そんな事も全部、忘れて試験に集中する。
「よーこそ、このギルドを選んでくれるとは光栄だ。さて、どちらが戦闘要員かな?」
「この子です」
「ん?お前ではなくチビがか?」
「チビだからと言って、侮っていると足元掬われますよ?ここのギルドマスター?」
「ふっ、ははははははははっ!!!」
ここのギルドマスターさんが、僕達を挑発します。でもお兄ちゃんも負けない。ギルドマスターさんは何が面白いのか、大笑いしてから僕達を見た。
「なら、お前は何が出来る?」
「所謂、情報屋みたいなもんですよ。情報収集が得意なんです。俺は戦闘系があんまり得意じゃないんで。それに、そういうのに出くわしたら逃げますから」
「なるほどな」
ギルドマスターが何を思って、そんなこと言ったのか、僕にはわからない。でも、ろくでもないことを考えてるのは間違いない。あそこにいた人達のように。僕はお兄ちゃんの前に出る。なんだか、渡したくないから。その行動にギルドマスターさんは、ますます面白いのか大笑いした。
「チビに何が出来るか知らんが、覚悟はあるんだな?」
頭を縦に頷く。お兄ちゃんが俺を見てキョトンとしていた。僕はお兄ちゃんを、同じ身長の高さにしてから、こう言った。
「お兄ちゃんは、僕のだから」
「!?」
「ここの人達が必要で、お兄ちゃんだけでも」
「………」
「僕も使えるよ、証明する」
「!」
「だから、信じてお兄ちゃん」
「………、当たり前だろ?信じねぇバカがどこにいんだよ?シノブのこと、俺が信じねぇなんてありえねぇだろ?ここのギルドマスターは本当に強い。油断してると足元マジで救われる。気を引き締めて行けよ?」
「わかった」
小声でそんな話をした。僕がこんなことを思うなんて、僕自身もびっくり。でも事実だから。僕は負けない。お兄ちゃんは僕が守るから。僕はお兄ちゃんから離れて前に進んだ。ギルドマスターさんは僕を見ていた。僕を試すように。
【神出鬼没】
頭の中で思っても使える技。目の前にいてただ歩いてるだけなのに、錯覚を覚えさせる技。何もしてこない僕にギルドマスターは殴ってきた。だけど。
「!?」
そこに僕はいない。分身?幻影?と思わせるような動き。そして僕は姿を消す。ギルドマスターは辺りを見回した。だけど僕を見つけることができない。僕は速やかにギルドマスターさんが持ってる、短剣でギルドマスターさんの影に刺す。その音も聞こえない。
【影縛り】と【全音遮断】
そして動ことしたギルドマスターさんは、体の自由が利かないことを知る。またどうしてこうなったか頭をキョロキョロすると、真下に自分の短剣が刺さってることに気づいた。けれどその動作も今となっては、遅い状況理解。僕はギルドマスターの耳元に口を近づけ、そして最後の言葉。
「チェックメイト」
小さく呟いた言葉はギルドマスターさんにとって、それだけでも驚異だった。いつの間にか背後を取られ、いつの間に影を縛られ、身動き取れなくなり、音も何も聞こえず、何も出来ないまま終わったから。ギルドマスターさんは驚いてる。何も武器を装備してない丸腰で、これだけの動きができるなんて、と。
「ご、合格だ…。為す術もない状態なら文句なく合格だ…。本当ならAランク以上といきたいところだが、生憎ここではFランクからスタートだ。だが、功績を徐々に上げればいずれそのランクまで行くだろう。チビ、名前は?」
「影闇忍」
「かげやみ、しのぶ?」
ん…?なんか変??
ギルドマスターさんが困惑してる。何に対してかわからないけど。お兄ちゃんが説明してくれた。
「ギルドマスターさんや?俺は情報屋だって言ったでしょ?今からこのことは他言無用で頼むわ。もし、万が一これが漏れた場合。俺達はこのギルドを抜けて、他の所に行く。数少ない情報屋と数少ない『アサシン』の職業を持ったやつを、みすみす捨てる行為だ。そしてそれは、他のギルドもこのことを知れば……どうなると思う?」
「俺達の勢力でも、こいつは止められない…ってことか?」
「そういう事だな?しかも情報屋も一緒にここを抜ける。独り占めできなくなるぜ?俺はここを抜けたらギルドマスターさんの言葉に耳を傾けることは無い。俺はなんでも知ってる情報屋だけど、手を組む人に裏切られたら元も子もない。だから、約束守れないなら俺達はすぐに此処を発つよ。……どうする?」
お兄ちゃんがギルドマスターさんを、追い詰める。この世界で情報が命だと、お兄ちゃんは言ってた。情報がないと利益になることが、半減してしまうからと。ここに来る前に、あの商売人さんの荷台の中で教えてくれた。だからお前はラッキーだぜと。5分ほど考えるギルドマスターさん。それから深い溜息を吐いてから答えた。
「…わかった。その条件に乗ろう。この世界、情報屋は貴重だからな。数が他と比べて段違いに少ない。国に情報屋が居るだけで、脅威となる。それを逃して他の奴らに渡るくらいなら、その条件を飲む」
「交渉成立。けど、もし万が一のことも考えて保険を付ける。後で受付の人に見てもらおうと思ってたけど、ギルドマスターさんの言葉が本当に信用出来る人間か試すぜ?まずはこれを見てくれよ?」
そう言ってお兄ちゃんは、バックから熊のモンスターを取り出す。僕も手伝った。それを見たギルドマスターさんは、目を丸くした。
「こ、これをどこで…?」
「ここに来る途中の茂みの奥。ちなみにやったのは俺じゃなく、シノブだけどな」
「ど、どうやって…?」
「中ぐらいの石だったと思うぜ」
「なっ!?そんな馬鹿な話が!?」
「なら、確かめてみろよ?どこを『貫いた』のか、見て判断しろよ?ギルドマスターさん」
ギルドマスターさんは、モンスターを仕留めたであろう部分を見る。そして汗をたくさん流した。
「これはBやAランクの出す依頼…。それをたった一人で?しかも、石で!?」
「止血はここに来る途中で襲われてた商売人がしてくれた。それにこのバックもその商売人がお礼としてくれたものだ。一度は聞いたことあると思うけど『収納整理バック』って聞いたことあるだろ?」
「!!?」
「超レアなアイテムバックだ。なかなか手に入れるの苦労する代物だ。洞窟とか迷宮とかに行っても、あるかどうか分からないような大物だぜ?それを俺達は貰ったんだ。その魔物もこのバックの中に入れたのが証拠だ。ここまで理解出来たか?ギルドマスターさん」
お兄ちゃんと同じように固まってる。そして頭だけは動いて頷く。それくらい驚いてるみたい。
「このバックを所持していて尚且つ情報屋稼業をしてる俺と、もしかしたらこの世界にもう『アサシン』っていう職業も無くなっちまったんじゃないかってくらい、希少価値な一撃必殺隠密戦闘専門のシノブを、悪用するなんてこと。名高いギルドマスターさんが、そんな悪事を働かすような真似…しねぇよな?」
ニコッと笑うお兄ちゃん。でもその笑顔は不気味だった。僕でもわかる。背筋がゾクッてする。気づかれないように少し離れる。これがお兄ちゃんのお仕事。ちゃんと見たの初めてだけど、改めてお兄ちゃんがすごいのを知る。でも顔が怖いから近づきたくない。
ギルドマスターさんの汗も、凄い出てる…
考える余裕もできずに、ギルドマスターさんは首を縦に振った。敵に回したらいけないと思ったのかもしれない。僕も思ったから。でも同時に心強いと思った。顔は怖いけど。そう思った。
「それともう一つ、ギルドマスターさん。恐らくあんたがここに来てからでも知ってたと思うぜ。俺の存在をさ。まあ、知らなかったらそれでもいいんだけど」
お兄ちゃんが僕にバックを持たせた。それからお兄ちゃん自ら猫になった。僕は何もしてない。何もやらずとも、仲間になったら自動的にできるみたい。初めて知った。後で少し異議を言おう。と思った。
そう言えば、木の上で寝てた時も…何もしてない…
その気持ちはとりあえず置いといて、お兄ちゃんが黒猫のレクに戻る。その姿を見たギルドマスターは、さっきのモンスターよりも驚いた。
「お、お前まさか!レクか!?」
やっぱり知ってるみたい…
「猫の言葉がわからないからアレだけど、久しぶりだな!レク!」
「『お前は相変わらず、ガキ大将的な人間だよな?それなのに俺みたいな猫が大好きで、隠れて俺を愛でてたもんな?小心者のガキ大将がギルドマスターなんだから、さぞかし金もがっぽり儲かっただろうよ?なぁ、悪ガキ大将ギルドマスターさん?』」
「なっ!?お前、レクの言葉がわかるのか!?しかもスゲー言われよう…。もうあんなことはしてねぇよ!足を洗ったわ!だからギルドマスターにもなったんだしよ…!変な風に言うな、レク!」
「『どうだかな?俺の存在がわかったからってまた何かしようと思ってんだろ?なら、その悪事を働かせないようにするのは当然だよな?さっきの青年が俺だってわかったんなら、もう二度と触らすことも見ることも話すこともしねぇから、そのつもりでな?いいな?ギルドマスターさん』」
「わかった!約束する!なんだったら契約書も作る!それだったらまたあの頃みたいにしてもいいだろ!?お前がいなくなってから、またこうして話して触れるなんて思わなかったからな!歓迎するぜ!」
「『なら』」
僕の口も疲れてきた所で、レクがお兄ちゃんになった。実際はにゃーにゃーって、言ってただけで猫語がわかるのは僕だけみたい。僕は猫以外とは話さないけど、本当に貴重みたい。主にギルドマスターさんは。
「これは他言無用だからな?俺だとわかったなら、お前の悪ガキ大将伝説をたくさん、あそこで暴露するからな?本当は小心者だったとか、猫が好きとかな?こんな見た目怖いのに本当はネガティブで寂しがり屋だとk」
「あーーあーー!!もう本当にわかったからっ!!本当に約束するからっ!!神様に仏様にレク様に誓うから!!他言無用話を聞かせてくれ!!」
「OK♪」
お兄ちゃんとギルドマスターさんは、昔から付き合いみたいだった。念押しするように言うお兄ちゃんの言葉に、ギルドマスターさんも押し負けてしまった。でも【影縛り】で身動き取れないので、僕はその短剣を外す。すると、力が抜けたのか尻もちついたギルドマスターさん。一緒に座って話をしだすお兄ちゃん。
「かげやみ、しのぶ。俺の知る限りではこの世界の住人じゃなくて、こことは違う異世界から来た人間だ。どんな経緯かはシノブに聞かないとわからねぇとこだけど、そこは保留な。なんか嫌な記憶があんのかもしれんから深くには聞くなよ?それはさておきだ」
お兄ちゃんは僕がここに来た時のことを話した。見慣れない服装、見慣れない傷などの話もした。この世界のことを何も知らない僕に、たくさんの情報を教えてくれたことも話した。僕からしてみればここが異世界だけど、お兄ちゃん達からしてみれば僕の世界が異世界。お兄ちゃんは順を追ってギルドマスターさんに話す。僕はその間、さっきの短剣を見つめていた。
「シノブ、あの服装備してみろ」
「わかった」
本当は嫌だけど、信用してもらう為に着る。色んな記憶があるから。画面を開いてカバンからアイテム欄にある、僕の世界の服に着替えた。忍者の服は横に表示された。いつでも着替えれるように、ってことかもしれない。優しい設定。ギルドマスターさんは終始驚いてた。自分の見た事ない品質の服を見て、舐めまわすように見ていた。僕はその視線が嫌で、お兄ちゃんの後ろに隠れる。
「あんまジロジロ見んな。怖がるだろ?まあ、理解出来たか?」
「理解はしたこれだけで見ても、コイツの世界では騒然たる戦いがあったってことが分かるな。けど、なんで前髪がそんなに長いんだ?切らないのか?」
「そう言えばそうだな?その髪の下はどうなってんだ?シノブ」
あ、これはダメだ…
僕は咄嗟に【神出鬼没】を使った。それから【全音遮断】して、【拡散投擲】で短剣を2つに増やし、【影縛り】で身動きを封じた。動けない2人は僕の能力に驚く。そして気づいた頃には遅かった。僕は忍者の服に戻り、【神出鬼没】を解除して、お兄ちゃんに近づく。お兄ちゃんは顔を青くして僕を見る。
「し、シノブ…?」
「お兄ちゃん」
「は、はい…」
「お仕置き」
「え?」
僕は画面を開いて、昨日見たメイド服のさらに可愛いのを着せた。僕の趣味じゃなくても、確実にお兄ちゃんが顔真っ赤にする服装にする。ギルドマスターさんは男だと知ってるのに、顔を真っ赤にさせてる。動けないので見るだけ。お兄ちゃんの顔も真っ赤でまたかって顔をしてる。けど今は動けないので、何されても文句は言えない。僕は『収納整理バック』をカバンの中にしまい、ギルドマスターさんの前に出る。お兄ちゃんは何をされるのかと僕を見てる。
「ギルドマスターさん」
「な、なんだ?」
「お兄ちゃんのスカートの下、見たい?」
『!!!!』
「見せてあげる?」
僕が見上げてギルドマスターさんを見る。口をパクパクさせて、悩んでる。お兄ちゃんは全力で頭を横に振っている。僕はさらにこう言った。
「僕の髪の下を見るのは却下。でも、お兄ちゃんのスカートの下は許可。どうする?」
「シノブ!お願いだから、それだけは!!」
動けないお兄ちゃんは人形のよう。お兄ちゃんの両腕を胸の辺りに固定。指1つ動けないから防げない。
「メイドさん」
「…あっ…」
「言葉遣い」
「ご、ごめんなさ」
「許さない」
「うぅ…」
涙をポロポロ流すお兄ちゃん。その姿だけでもギルドマスターさんは、少し興奮してる。けど、さっきとは違って指の先まで動かない状況では生殺し。僕は再びギルドマスターさんを見る。すると、決心したのか僕に答えを言う。
「髪の下はまたお前が良いと思った時に見せてもらう。今は長期の保留だ。スカートの下を見せてくれるなら、見せてくれ…!レクが男だってことは百も承知の上たが、気になるのは事実!」
「ちょっ、おい!ギルドマスター!?」
「すまん!レク!本能には逆らえん!襲える訳でもない!ならせめて見たい!!」
「気は確かかお前!?」
「見る!!」
「後悔しても遅せぇからな!!」
顔を真っ赤にするお兄ちゃんと、違う意味で顔を真っ赤にするギルドマスターさん。『見る』という答えが出たので、スカートをめくる。ビクッと震えるお兄ちゃん。その仕草だけでも興奮してるギルドマスターさん。すごい絵面で、扉の向こうの人が見たらどうなるか。幸い来ないので良いけど。
「じゃあ見せる」
「嫌です!!ご主人様っ!?お願いしますっ!!辞めてくださいっ!!許してくださいっ!!」
お兄ちゃんの言葉は却下され、スカートの下をめくった。やっぱり女の子のパンツを履いている。ギルドマスターさんは、鼻血を垂らして興奮してる。お兄ちゃんは為す術もなく、されるがまま。顔を真っ赤にして、泣く。僕は画面を開いてお兄ちゃんを猫に、レクにした。それから短剣を抜き取る。するともう1つの短剣も消えて、動けるようになった。
「レクは暮らせる所が見つかり次第戻す。それまではこのまま」
ぐったりした顔で頷く。僕はカバンから『収納整理バック』を取り出して、それを自分に装備。それからギルドマスターさんを見る。
「ギルドマスターさん」
「な、なんだ?」
「他言無用」
「わかってる。あと、スカートの件グッジョブ!」
「『もう口聞いてやらねぇ』だって」
「なっ!!」
「あと」
「うお?」
「買取」
「さっきの魔物だな?受付んとこでやれば出来る。俺が許可するって言ってたと言えばいい。ちゃんとした金額を払わす。入ったばかりだが、報酬は報酬だ。次からは受理された依頼のみだ。わかったな?」
「ん」
「よし、出たら受付で合格したって伝えろ。そしたら発行できる。レク……猫の分も作るように言えよ。そんじゃあ、ようこそ。俺のギルドへ!あ、そうそう。その短剣は試験祝いってことで、受け取ってくれ」
ニカッと笑うギルドマスターさん。僕は頷く。それから僕と、肩に乗せたレクを連れてこの部屋を出た。結果を心待ちにしてたのか否か、わからないけど。静かにその人達は待ってた。僕は受付の人に声をかける。
「あの」
「はい、何でしょう」
「合格した」
「え、えっと……お兄さんがですか?」
「僕も、お兄ちゃんも」
そう言うと後ろから声が聞こえた。それは僕に言ってることとだと知る。レクは今の状態じゃ、正体がバレるので何も出来ない。それでも人の言葉は止まない。
「嘘ついちゃダメだぜ?坊主」
「マスターが負けるわけねぇし!」
「俺らでも力で負けた人だぜ?」
「子供はさっさと母の乳でも飲んでこいよw」
ああいうのを野次といいのかも。まだコソコソとしてた、僕の世界よりマシだけど、これも嫌。見た目がそう見せてるから、みんなが納得しない。でもとりあえず、用事を済ませるために、淡々とする。あの世界の僕のように。
「お姉さん」
「は、はい…」
「買取して」
「え?」
「今『出す』から」
「『出す』って……?」
野次はずっと収まらない。レクは猫の状態でも怒ってるのもわかる。でも僕は淡々と、そして気にしない。慣れているから。僕は僕用に小さくなったバックから、熊のモンスターを思い浮かべて出す。それまで野次を飛ばしてた人も、受付のお姉さんも、固まった。
「こ、これを…お兄さんが?」
「話聞いてた?」
「へ?」
「お兄ちゃん、情報屋。僕、戦闘専門」
「あっ!た、確かに聞きましたが…。これはAランクの方々が1人じゃ仕留めれない魔物です。それを、あなた人で出来るわけ…」
「できたから、ここにいる」
「そ、それはそうなんですが…」
なんだか疲れてきた。レクならこういうの、切り抜けれるんだろうか。話してこなかった僕には、難しい空気。もう面倒になってきてた、その時。扉からギルドマスターさんが出てきた。
「ん?なんだ?まだ受理してないのか?」
「で、ですがギルドマスター!子供がギルドマスターに勝てたとは思えません!それにこの魔物だって、どう考えてもありえません!」
「コイツから何を聞いた?『不合格だった』と聞かされたか?」
「い、いえ…『合格した』と…」
「なら『合格した』を素直に受け入れろ。俺を負かし、この魔物を討伐したのは、紛れもなくコイツだ。俺が為す術もなく、負けたんだからな。実力は本物だ。それにここに入る前に取ってきた魔物だ。本来なら飛び級としてAやそれ以上のランクを与えたいと俺は思うが、ここのルールはどんなに強くてもFランクからってのがある。だから、そのルールを覆すことは無い。だが、証人もいると聞いてる。ここに来る途中で会った商売人だそうだ。確かめるならその本人に聞くといい。今日来たばかりの奴なら門番も見てるし、商業施設の所に行けばまだ居るだろ」
野次もお姉さんも、みんな固まってた。ギルドマスターさんが負けた、そんなことってあるのか、何かの間違いだろ、という目をしてる。ギルドマスターさんの言葉は続く。
「それとも、ギルドマスターである俺の言葉が信用出来ないか?なら、お前は見る目がねぇってことでクビにするが、いいか?」
「す、すみません!!従います!!只今受理を行い、この魔物の報酬もちゃん渡します!!ですから、許してください!!」
「なら、いい。さてカード発行と魔物鑑定をしてる間に、お前ら!」
『『は、はい!!』』
「何を言ったかはこの際聞かねえが、万が一『野次』を飛ばしたならココを即刻辞めてもらう。ギルドマスターである俺の言った言葉が信じられねぇならな?異議のあるやついるか?それでも納得出来ないならコイツと戦ってみるか?俺を負かしたのか本当か、試したいと思う奴3名は出てこい。受付の方が終わるまでが時間制限だ。誰がやる?」
『『…………』』
みんな考えてる。カード発行はそれほど時間は、かからないらしいけど、熊のモンスターはかかるらしい。少し時間を取って、3人が決まった。ギルドマスターさんと共に、僕と3人はあの扉に向かう。
「ルールは戦闘不能にすることだ。どんな手段でも構わない。ただし殺すことは許さない。以上だ。油断してると足元掬われるから、覚悟して挑めよ?それじゃ、始め!」
その合図に3人は僕に向かってくる。僕は【神出鬼没】を使う。向かってくるのは予想してた。後ろにいるのは、レクが言ってた魔術師。僕に向かってくる人はガーディアンと剣士、だと思う。そして振り下ろす剣を僕に刺す。しかし、そこに僕はいない。困惑する3人。僕は【全音遮断】を使って音を消す。そして、【拡散投擲】でさっきの短剣を4つに分身させ、【影縛り】で、3人の内2人の動きを止める。指や足や頭の先まで、動けないように集中する。それから魔術師の人の足元にも同じく、【影縛り】で短剣を刺す。そして、魔術師の耳元で囁く。
「チェックメイト」
「!!」
魔術師が気づいた頃には、喉の所に短剣を付けてた。微動だに動けず、でもそこにいると認識した時には、遅かった。3名の敗北が決まった。僕がギルドマスターさんを見ると。
「そ、そこまで!!」
その合図に前の方にいた人達が、ビクッと肩が震える。自分達が何も出来ないで終わってしまったと、本当にこいつなんだと、理解してくれたみたいだった。
「しのぶ、3名を解放してやれ」
「わかった」
言われた通り解放する。そして僕の能力も解放して、音が3人にも聞こえた。それだけで自分がどうなってたのか、わかったみたいだ。身にしみたのかもしれない。魔術師の短剣を外すと、他の短剣は消える。今まで動けなかった人達が、前のめりになって倒れた。動ことして力を、入れてたのかもしれない。
「これでわかったら仲間のやつや、このギルド内にいる奴らに伝えてこい。自分の起きた事実をありのままな。それでも納得しないやつはココを立ち去るように伝えておけ。俺はもう2度目は言わねぇからな」
『『わ、わかりました!!』』
そう言って扉から出て行った。この空間から静けさを感じる。するとギルドマスターさんが、僕に謝ってきた。何もしてないのに。
「すまん!」
「何が?」
「俺もあいつらみたいに思ってた時があった。人のこと言えねぇなと思ってな。だから、悪かった!!」
そのことか…
「慣れてる」
「いや、それでもだ。謝らせてくれ!」
しつこい気がする。そう思った僕は素直に受け入れた。その方がもう言わなくなると思って。縦に頷いた。それだけでギルドマスターさんはまた頭を下げた。ここの人達は謝るのが好きなのかな。
でも、話すの面倒になってきた…
僕は画面からレクを人間にした。まだメイド服のままなので、忍者の服に着替えさせる。顔真っ赤にしてるお兄ちゃんは、忍者の服になったのに困惑してる。
「話すの疲れた。代わって」
ぱあっと明るい笑顔になった。全力で頷く。別にまだお仕置きの件は許してないけど。それは今は置いといて。お兄ちゃんはさっきまでぐったりだったけど、今はすごく元気。しばらくしてから戻ると、色々の手続きが終わってた。お兄ちゃんも猫の状態で聞いてたので、把握はしてる。お姉さんが僕達を見て話す。
「それではここに名前を記入して下さい。これがあなた専用のカードになります」
カードを貰ってお兄ちゃんがまず書き方を教えてくれた。見たことない字。ここの世界の言葉かな。何て読むのかわからないけど、僕も同じように書いた。すると漢字で書いたつもりなのに、読めない字に変わった。不便だ。あとでお兄ちゃんに聞こうと思った。
「それからこれが報酬です。先程の魔物の価格です。ギルドマスターからも言われてると思いますが、次からは依頼を受理したものでお願いします。今回は特別ですが、ここのルールなので守って下さいね」
僕とお兄ちゃんは頷く。それから報酬を収納整理バックの中に入れて、その場を立ち去る。僕達が出てってから、瞬く間に情報が広まった。そんなこと知らない僕達は、次に休む場所を探していた。
「どうするの?」
「宿を探さないとな。それかどっかの一部屋を借りれる所を探した方がいい。幸い、金はあるからな。どこでも行けるけど、とりあえず一通り聞いてみよう。まだ昼だからな、聞き込みしよう。シノブは俺について来い。そんで、少しでもお仕置きを緩くしてください…。お願いします…」
最初はかっこよかったけど、最後の方でかっこ悪いこと言う。でも、代わってこういうことしてくれるならと思って、ちょっとだけ優しくしてあげようと思い、小さく頷く。それを見て、少しは希望を持ったお兄ちゃんは、深々と頭を下げた。
髪の下はいつか、話そう…。今は無理…
とりあえず休める場所を、手当たり次第に探す。けど、どこも満員で入れない。それでも粘ったお兄ちゃん。だけど一向に休める場所がない。
「うーん、あんまりあそこで寝たくないんだよなぁ…。けど、歩き疲れてるしお腹空いたしでちょっと苦しいしな…。シノブ、ちょっとこの街を離れるぞ。あんまり気乗りしないけど、俺達のことをサポートしてくれる奴がいる。そこに行く。入り口に着いたら俺を猫にしてくれ。泊めてもらえるとわかったらこの姿に戻してくれ。まあ、どの道宛がないんじゃ辛いからな」
よくわからないけど頷いた。今からどこかへ行くみたい。どこに向かうのか聞きたいけど、聞くのをやめた。街にいるうちは何か言うのもダメな気がする。そう思った僕は、黙ってついていく。察してくれたと判断したお兄ちゃんは、何も言わずにその目的地まで走って、街を出た。
こんな山奥に何が…?
結構奥に来た気がする。そして疲れた。そう思ってるとちょうど、お兄ちゃんの足が止まった。多分猫にして欲しい合図。画面からお兄ちゃんを猫にさせた。その状態で洞窟の中に入った。中に進むけど真っ暗。
「レク」
「なんだ?」
「待って」
「ん?」
「前が見えない」
「なら、ステータスの能力に猫関連の所に『透視』ってあるだろ?そこを触るとくらい所でも見えるようになるぞ」
「わかった」
言われた通りやると、本当に『透視』が出来た。猫みたいに夜の目が利くようになった。自動的になったら楽なのに。レクみたいに。とりあえず中に進む。奥に進んでいくと、明かりが少し見えてきた。
ゴールかな…?
広い場所に出た。レクが足を止めた。僕も止めると、目の前に老いたおばあちゃん猫がいた。
「ご無沙汰してます、ミコ婆」
「おや、レクじゃないか。久しぶりじゃのう?何用じゃ?」
「ここを拠点に住まわせてくれませんか?人里では住む場所が満員で入れないと言われました。野宿するにも魔物がいるので、危ないのです。ですから、ここ居させて貰えませんか?」
「なんじゃ、そういうことか。良いぞ、久しぶりに帰ってきてくれたんじゃ。歓迎じゃ。して、そこの者は誰じゃ?レクの友達かの?」
「はい。俺の友達であり相棒であり仲間です。名前はシノブと言います。シノブと言ってあげてください。それからシノブは俺達の声や言葉を理解しています。普通に話すことも出来ますので、遠慮しなくても大丈夫です」
話はどんどん進んでいる。知り合いみたい。なんだか慕ってるみたいだから、仲良いのかなと思う。でもここ洞窟みたいなのに、こんな所に部屋なんてあるのか、疑問に思う。何も言わずに見守っているとレクがこっちを見た。多分紹介のためだと思う。
「シノブ、この方はミコ婆。俺のおばあちゃんだ。親が死んだ時に拾ってくれてさ。それから困った時はミコ婆って頼ってんの。本当は人里の暮らしに慣れるべきだってわかってるし、慣れてきたから良いかと思うんだけど、人間のお前が住むってなったら話は別だろ?だから住める場所を探してたけど、見つからないからさ。ここに滞在することになるけど、大丈夫か?」
むしろ嬉しい。猫の世話ができるのは楽しいから。僕の世界だと、ペット飼うの禁止だったから、ペット持ってる人が羨ましかった。心の中ではキラキラした満面の笑みを浮かべてるけど、顔に出せず頷く。レクは嬉しそうに笑っていた。
本当に嬉しそう…
そしてレクはもう1つの方も話した。それは自分が人間になったことだった。
「人間に??」
「はい。このように」
レクが合図をしたのでレクを人間にした。それを見てミコ婆って猫は、目を丸くして驚いてる。
「ほ、本当にレクか…?」
「はい。レクですよ。そしてこの姿の時はシノブに『お兄ちゃん』と呼ばれてます。普段は『レク』と呼ばれてるんですけどね」
「はぁ〜…、なるほどよの…。人間の時も猫の時もレクはレクなんじゃな?それが分かれば大丈夫じゃよ。……猫に戻ってくれぬか?」
「はい、わかりました」
僕に合図することなく猫に戻るお兄ちゃん。少し罪を重ねるレク。猫に戻った時、ミコ婆って猫は招く仕草をした。そこから一匹にの猫が出てきた。レクも僕もキョトンとした顔をする。
「レクがここに来るずっと前にの、住みついた者がおってな?その紹介をしておこうと思う。これから共同するのじゃから、ちゃんと紹介しておいた方が良いじゃろう?とりあえず入って来るのじゃ」
そうミコ婆さんが言うと2匹の猫が現れた。双子みたいだった。1匹は片目に傷がついてて、もう1匹はその1匹に隠れて怯えてる。外傷はないみたいだけど、人見知りなのかも。
「この子達は名前が無いらしいんじゃ。私はそんな無責任なことは出来ん。じゃからもし、ここに人間が来るか、レクが友達になってやってくれぬか?ここに滞在する期間だけでもいいからの。頼む…」
ミコ婆さんが頭下げる。レクと僕は目を見合わせる。とりあえず僕はしゃがんで、自己紹介をする。レクも僕に釣られて紹介する。
「僕、影闇忍…シノブでいい」
「俺は黒猫のレクだ。レクって呼んでくれ。今はシノブが俺のご主人様みたいなもんだ。けど、口下手つーかあんまり難しいことはまだわかってねぇから、自分のものさしで話さないであげて欲しい。それからシノブは俺達の言葉が聞こえる所か話せる。まあ、そんなことが出来るのは『猫獣人』だけなんだけどさ。シノブ、フード取ってやれ」
頷いてフードを脱ぐ。するとミコ婆さんも双子も目を丸くして、固まった。固まる光景慣れた。驚いてるんだって思ったら、何も感じなくなっただけ。
「種族、『猫獣人』」
「ほぼ見た目は人間なんだけど、耳も尻尾もあるから。人里に出ても別に珍しい種族じゃない。エルフがいたり、人間より魔物に近い人間もいる。シノブは稀な存在だ。俺達猫を、見せもんにするような奴らとは違う。ちゃんとした人間だ。俺が保証する」
「好きなこと、猫と居ること。僕の癒し。猫と話せたらって思った。いっそ、猫になりたい。そう思った。そしたら念願叶った。レクと友達できた。今は仲間。家族になった。僕のお兄ちゃんみたいな存在。僕こんなだから、足でまとい。なのにたくさん教えてくれた。『ココに来た』ばかりなのに。優しかった。僕が信用できない。それはわかってる。でも、レクはしてあげて。人間の僕はわからない。でも猫のレクは、仲良くなれるよ。だから、レクに警戒しないで」
自分でもこんなに話すとは、思わなかった。でも何故か、感情じゃないかもだけど、レクのことを知って欲しい、そう思った。すると、双子も話し始めた。でも急に警戒しないでと言われても、初対面は仕方ない。警戒しない方がおかしい。
「俺は虎猫だ。こっちは弟。弟は見ての通り怯えててまともに話せない。だから俺が話す。人間にひどい仕打ちを受けた。ただの人間なら分からんでもない。アイツらは外道だからな。けど、もっと許せないのは俺達の言葉が聞けて話せるのに、そんな奴に俺達は苦しんできた。それがアンタみたいなヤツにな。だから、警戒するなってのが無理だ!お前は信用できない!」
………、そっか…
僕はフード破った。尻尾は仕方ないとして、せめて視界に入れさせないように、深く被った。僕もこの気持ちはわかる。でもわかってたとしても、僕を信用出来るものが無い。証明もできない。あるとしたら『目』だけかもしれない。でもこの『目』だけは、どうしても見せれない。見せて怖がる顔も慣れてるけど、猫には怖がられたくない。レクが何か言おうとして僕は、レクを静止させた。それから僕は人間が謝る時にする『土下座』をした。僕がした訳じゃない。でも、そのせいで苦しんだのは事実。なら、謝らないと。レクもミコ婆さんも、双子も。みんな僕を見て固まっていた。それは僕の視界には見えないからわからない。でも沈黙してるのが証拠。
「ごめんなさい」
一言謝る。すると虎猫は我に返り怒鳴る。レクには何も言わせないように、首を少し振った。その合図でレクは渋々、従ってくれた。
「あんたに謝られたって、こっちは困るんだよっ!!お前らみたいなのが居るから!!俺達猫はひっそり暮らすしかねぇんだ!!昔はもっとたくさんの猫がいた!!俺の家族だっていたっ!!それなのにお前ら人間を含めた『猫獣人』は、進化したとかなんとか言って俺達を金のために殺して、売りさばいた!!アンタはそんなヤツらと違うかもしれねぇけどなっ!?俺達にとってはトラウマとかって奴なんだよ!!それを見るだけで、今でも鮮明に覚えてる!!人間のせいで、『猫獣人』のせいでっ…!!どれほど傷ついたかっ!!そんなことあんたは知らねぇだろっ!!勝手なことばっかり言って俺達を知った気でいるんじゃねぇ!!!アンタも含めて人間も全部消えちまえっ!!そして、『いっそ、死んでしまえ!!』」
「!!!」
最後の一言は、あの世界での出来事と同じように、フラッシュバックし、そして僕の心にトドメを刺した。猫が希望だったのに、猫にまで言われてしまった。トドメを刺されて心のより所が、もう無い。でもこれだけは言いたいと思い、僕は立ち上がった。虎猫やその弟は僕の行動に警戒した。レクは心配そうに、そしてどこか怒ってる顔をしてた。僕は画面から装備をあの世界での服装に戻した。僕の外見を見た双子は、顔を青くしていた。レクにも話してない、僕が気を失わない間に話す。もう立ってるのがやっとなのに。
「僕は、『ココ』の人間じゃない。事実、こんな服を着てる人、いない。僕は違う世界で、『人間』をしてた。僕にも家族はいた。でもそれは偽りの家族。お父さん、お母さん、弟、僕。4人で暮らしてた。でも、みんなバラバラ。正確には僕が居たから」
僕は1枚1枚、服を脱ぐ。すると、至る所に傷や痣があった。色も青だったり、紫だったり、赤だったりと、たくさんの色があった。包帯やガーゼを外して、切り傷や煙草の痕等々。たくさんの傷をレク達に見せる。これで信用されたいと思ってない。でも、同じ境遇なら話すしてもいいかなと思った。話は続く。
「その家族の名前を僕は知らない。そしてその家族に、僕は否定された。父には『生意気だ』と、母は『生まれて来なければ良かった』と、弟は『傷ついたアピールをするな』と。家族だけじゃない。僕の世界には、学校っていう所がある。そこでは人間が、色んなことを学ぶ場所。この世界でもあるかもしれない。それは知らないけど。僕はそこでも、同じだった。僕がこんな風でも、その人達はもっと傷を増やした。包帯で巻かれてた所とか、特にそう。その人達につけられたもの。そして、またその人達にも言われた。ある人には『ノロマ』、『クズ』と呼ばれた。またある人には『生きる資格なんて無い』と言われた。そして、またある人には『いっそ、死んでしまえ』」
「!!!!」
「と、言われた。僕はその日、学校っていう建物の1番高い所から、落ちて死んだ。頭から落ちて、意識が消えて、今ここにいる」
「………っ……!!!」
「唯一の癒しは、公園っていう広場があった。そこにたくさんの猫達がいた。僕の癒しの場所。そこでしか、僕の居場所はなかった。まだ『人間』だったから、猫の言葉はわからない。でもみんな僕を慕ってくれた。嬉しかった。その猫達にはもう会えない。死んでしまったから。だけど、この世界にも猫がいた。その最初の友達がレクだった。レクはたくさんのこと、ココのこと、わからないことを教えてくれた。見ず知らずの僕に。なんの事情も知らないで。でも、何も聞いてこなかった。それが嬉しかった」
意外に保っている。僕はあんまり明かしたくなかったけど、ココならいいやと思い話す。それは『目』のこと。本当は話す気がなかったこと。でも、ここまで言ったならと思って話す。これでレクも離れても仕方ない。もう慣れてしまってるから。
それに、もう…僕に居場所はない…
「それから。これもレクは知らない。初めて話す。僕の顔を見て。レクも、いいね?」
「お、おぅ…」
僕は目を瞑り前髪を上げた。上げ終えた後、僕は目を開ける。すると虎猫も弟もミコ婆さんも、そしてレクも顔を青くして固まった。目に光がない。そして黒と同化してる空色と紫。ちゃんと鏡を見たことは無い。でも、多分まだ希望があったから、そこまで深刻ではなかったのかもしれない。だけど、今のトドメで僕の目は完全に、光の灯せない目になってしまった。前は見えてる。色は辛うじてある。でも、そのせいで表情や感情が死んでしまった。つまり無だ。あの世界でも経験した、無だった。でも話せてるのは進歩かな。
「これは、その世界での環境によって、こうなった。今の目は、もっと鮮明になっちゃって色は辛うじて、前もちゃんと見えてる。でもそれは『透視』っていう能力を使ってるから。そのおかげで見えるのかもしれない。でも多分、外したら何も見えない。色も何もかも。だから、多分解除できないのはのせい」
僕は前髪を下ろす。さっきの状態に戻す。そして多分、これがもう最後で、精神的にも限界だと思う。
「僕の居場所は猫『だった』。でもその猫達にも、そう言われたら…、僕にはもう…居場所はない…。でも、大丈夫……、僕…ここから出てくから…。レクは、ここに居て…?双子のこと、お願い…。……ミコ婆さん…、レクのことお願い…。僕はここに住むのやめる…。ごめんなさい…。………それ、じゃあ………」
クルッと回転した瞬間、僕は気絶した。その後何があったのかは知らない。僕はあれからどのくらい寝てたのか知らない。夢を見ることなく、海より深い、底無しの闇へと落ちる感覚を、感じながら眠った。
この世界で、生きるのは……大変……かな…