今回の話は前編後編などではなく、タイトルに名前をつけていきます。
幕開け
「たくっ、ぞろぞろと出てきやがって!」
迫ってくるヒドラの兵士達を次々に光線を撃って吹き飛ばしていく。相手も最新鋭の武器を装備して強力な光弾を撃ってくるが、当たらなければ問題ない。
が、しかし。
『ちょっと誰かこっち来てくれない?敵がどんどん増えてきてるのよ』
「戦力を集めて一人ずつ倒していく気か」
『ナターシャ、僕が行くまで耐えろ!』
ジェットパックで飛んでくる兵士を殴り飛ばし、地面に落とすとバイクに乗って走っていくスティーブが見えた。上り坂を飛び出し、空中で盾を投げると兵士達を撃退していき、計算された動きで盾が手元に戻っていく。
『スウァーノ!』
「はいよっ!」
スティーブがバイクに乗ったまま引きずっていた兵士を放り投げ、そいつを光弾で遠くへ吹き飛ばす。
ふと背後から嫌な感じがし、振り返ると斧らしき武器を振り上げながら飛んでくる兵士が見えた。しかし放たれた矢がジェットパックを貫き、爆発して悲鳴と共に落ちていった。
『ボケッとしてると痛い目見るぞ?』
「助かったぜ、クリント」
敵からの攻撃を木々に隠れながらやり過ごし、矢を放って倒していくクリント。様々な種類の矢を使っているようで、刺さった瞬間に爆発したり、痺れて倒れたりしていた。
「スウァーノ、ムジョルニアに!」
「任せろ!」
俺より高い位置からソーが投げたムジョルニアにアウトエナジーを纏わせる。それによって威力が格段に増し、狙っていた戦車は激突した瞬間に潰れ、周囲の兵士達を衝撃波で吹き飛ばしていった。
『エイナム、右から狙われてるぞ?』
「サンキュッ!」
スタークからの報告を受け、俺は右に向かって両手を向ける。その瞬間、両手に組み込まれているアウトエナジー増幅装置が起動して威力が増した光線、ハイ・エナジーレイを撃った。
直撃した兵士達は宙を舞い、倒れなかった一部の兵士はスタークが吹き飛ばしてくれた。
『そろそろアーマーに慣れてきただろ?』
「まだちょっと違和感があるけどな」
スタークが開発してくれた俺専用のスーツ、その名も『レイ・アーマー』。アイアンマンのアーマーをモチーフにしたようだが違っている部分もある。マスクは口の部分のみが開閉できる仕組みで顔を割らずに直に喋れたり、
その代わりにスタークが研究の末にアウトエナジーの威力を増幅させられる装置・『ブーストラル』を開発し、それを両手に組み込んでいる。それ以外にも機能はあるが、一番よく使うのはそれだ。
「ゥガアアアアアッ!!!」
どこからか跳躍してきたハルクが俺を越え、前進してきていた兵士達の前に着地し、その衝撃で吹き飛ばす。さらには戦車や見張り台も体当たりで次々に破壊していき、様々な所から悲鳴が上がっていた。
「……ハルクさえいれば十分なんじゃないかって思うんだが」
『いや、あの緑の彼だけだったら暴れまくって手に負えなくなるぞ?』
『やめて、生きた心地がしなくなるわ』
『無駄口を叩く暇があるなら戦ったらどうなんだ!?』
あっ、まずい。スティーブが大勢の敵に囲まれてる。援護してやらないと。
東欧の小国、ソコヴィア。五月になった今でも雪が降り積もっているその国の山奥には廃墟同然の古城がある。
そこを今、バロン・ストラッカー率いるヒドラの残党が基地にしているのだ。フューリーからの情報に判明した事だが付近にある市街地の人々はそれを知らず、避難もまだ完全ではない。
『皆様、市街地に住む市民が襲われています』
『J.A.R.V.I.S.、アイアン軍団を送れ!』
J.A.R.V.I.S.からの情報にスタークは迅速に対応し、アイアン・レギオンを呼び出した。アーマーを模して作られた量産型ドローンであり、主にJ.A.R.V.I.S.の操作でアベンジャーズの後方支援をする役目を担っている。
……まぁ、スタークが作った兵器が紛争に使われてるこの国では、市民はあいつを心底嫌ってるが。
「なぁ、奴らが使ってる武器の原動力、何だと思う?」
『ロキの杖だろう。ヒドラがキューブを利用して作った武器とも似ている』
「ならあそこに杖があるはずだ!」
ソーがムジョルニアから雷を放ち、敵を一掃するとヒドラの基地へと飛び出していった。
「スターク、ソーがそっちに向かってるぞ」
『ああ、こっちからも見えた』
「スウァーノ、また来たぞ!」
スタークに連絡をしている途中、スティーブが無線越しではなく、走りながら直に声を掛けてきた。視線の先には数多くの兵士と今までよりも数倍の大きさを誇る戦車が向かってきている。
「スティーブ、あいつらに向かって盾を投げてくれるか?あと、縦向きで」
「どうする気だ?」
「試したい事があってな」
スティーブは疑問に思いながらも盾を敵へ向かって縦向きで投げてくれた。そこに俺がアウトエナジーを盾の周りへと纏わせる。さらに周囲を鋭利な形へと変化させ、盾を中心に円形の鋭い刃となった。
「さらにこうすればっ!」
刃を巨大化させ、戦車と同じ高さへと変える。雪を巻き上げながら迫ってくる刃から兵士達は逃げるように横へと飛び、戦車は刃によって真っ二つにされた上に爆発した。
「よし、成功っ!どうだ、凄いだろ?」
「……凄いが、僕の盾を使う必要はあったか?」
「アーマー越しだとまだ調整が難しいんだよ」
ヒドラの基地へと飛んでいくソー。邪魔をしてくるジェットパックを装備した兵士は体当たりで吹き飛ばし、徐々に距離を詰めていく。しかし基地に辿り着く寸前に突然発生したバリアがソーを弾いた。
『サーファーくん、まずはバリアを解除しないと基地には近付けないぞ?まずはその方法を見つけるのが先だ』
「ふんっ……それよりも手っ取り早い方法があるぞ、スターク」
地面に着地したソーは上空に発生した雷雲から雷をムジョルニアに吸収させ、バリアに向かって一気に解き放った。しかしまるでバリアの表面を滑るかのように雷は広がっていってしまう。
「なに?」
『ストラッカーは他のヒドラの基地よりも進んだ技術を持っているようです』
『なるほど、対策はされているという事か』
ソーでもバリアを破れない事を見て、スタークは確信した。やはりバリアを発生させている元を断つしか方法はない、と。
『J.A.R.V.I.S.、このバリアの動力源は?』
『北側の塔の下に粒子の変動が見られます』
『よし、そこを突っついてみよう』
スタークは飛行速度を加速し、兵士や車両の隙間を縫いながら基地の北側へと向かっていった。
『まずいわ、クリントが重傷よ』
「なに?」
迫ってくる敵を片っ端に吹き飛ばしているとナターシャからそのような連絡が入った。クリントが攻撃を受け、しかも重傷?大袈裟かもしれないが、このヒドラの兵士ごときにあのクリントがやられるとは思えない。
『ぐっ……兵士じゃない、敵がいるぞ……』
「兵士じゃない敵?」
「スウァーノ、強化人間がいる。今まで見た事がない相手だ、高速で動いている」
「強化人間?……まさか」
ロキの杖を利用したのか?あれが洗脳や攻撃をする以外にどれ程の力を持っているのか分からないが、だからこそ強化人間を作り出すなんて芸当が出来る可能性が高くなる。
「敵は制圧できた。スウァーノ、君はクリントをクインジェットへ。ナターシャはハルクに子守唄を頼む」
『……分かったわ』
指示を受けたナターシャは躊躇いながらも返事をする。やはり共に戦っている仲間だとしても、ハルクに接近して落ち着かせるなど怖いに決まっている。だがナターシャしか今の所、ハルクと心を通わせる事が出来ないのだ。
「スティーブは?」
「僕はストラッカーを捕らえてくる」
「了解、頼んだぞ」
クリントを無事にクインジェットへ送り届けた後、ナターシャと精神的に不安定なバナーと合流し、ロキの杖を取り戻したスタークとストラッカーを捕らえたスティーブ、ソーも戻ってきた。
「大丈夫か、クリント?」
「ああ、死にはしないさ」
クリントの傷は確かに重傷だが応急手当をした事で多少マシになり、バナーの友人であると同時に人工皮膚細胞専門の科学者であるヘレン・チョが治療を担当するらしい。なんでも画期的な技術を使うとか。
「ようやく取り戻す事が出来たな、ソー」
「ああ、ついにだ。これで全て解決した」
ロキの杖を見ながら話しているスティーブとソーに近寄る。ソーにとってこの杖は自身の義弟であるロキが地球に持ち込んだ、いわゆる置き土産なのだ。故にこの杖を取り戻し、アスガルドに保管する事こそが兄としての尻拭いなんだろう。
「でもアスガルドにはキューブもあるだろ?それらを一ヶ所にまとめるつもりか?」
「いや、キューブは引き続きアスガルドで保管するが、杖は別の誰かに頼もうと思っている。信頼できる誰かにな」
なるほど、それなら安心だ。前にダーク・エルフとの戦いで手に入れたエーテルという物体もアスガルドには置かずにコレクターという人物に守ってもらってるようだし。
「なぁ、その杖を少し調べてもいいか?ほんの二日間だけだ」
クインジェットの操縦をJ.A.R.V.I.S.に任せたらしいスタークがこっちに向かってくる。おそらく科学者としての探究心を抑えられないんだろう。
「そしてその後はソー、君の見送りと今回の作戦成功を兼ねたパーティを開くつもりだ」
「いいだろう。戦いの後の宴は格別だからな」
絶対にソーの奴、パーティが目的だな。スタークが開くとなれば出てくる料理も酒も豪華になるだろうし。
とりあえずこれでしばらくは落ち着いた生活が送れるだろうからな、パーティまではゆっくり休もうとするか。
────────この時、誰もが気付いてなかった。ロキの杖を取り戻した事がこれから起こる戦いの幕開けでしかなかった事に。
そしてスタークが突然ロキの杖を調べると言い出した事に誰か一人でも違和感を感じるべきだった事に。
オリ主のアーマーの口元の開閉については実写版トランスフォーマーのオプティマスみたいな感じです。戦闘時にあのマスクが閉まる瞬間がかっこよかったので使ってみたくなりました。