ヒドラから杖を取り戻してから二日後。負傷したクリントはヘレン・チョが開発した人工組織構成マシンであるクレードルを用いる事で傷を塞ぎ、回復した。
ちなみにその間、スタークとバナーはずっと杖を研究していたがそこまで調べる必要があるんだろうか?食事も最低限の物しか摂ってないし、どうせならソーに頼んで貸してもらう期間を伸ばせばいいのに。
「スウァーノ!飲んでるか?」
「ん?ああ、飲んでるよソー。でもアスガルドの酒は強いな、一口飲んだだけでも酔いが回ってくる」
「そうだろう!アスガルドの酒を飲めるお前も十分強いと思うがな」
まぁ、それは後にして今はこのパーティを楽しむか。アベンジャーズのメンバーとその友人達でスタークタワーもとい、アベンジャーズタワーで開かれたパーティは大にぎわいである。各自、酒を片手に色々と話をしている。
スタークの友人であるローズも来ているし、ウィルソンもバーンズの捜索を一旦切り上げて来てくれた。
「ウィルソン、バーンズの方は順調か?」
「まぁ、ボチボチかな。それより今回の戦い、呼んでくれたら駆けつけたのに」
「なら次、誘ったら絶対に来いよ?」
「あー……できれば程々の時がいいかな」
何言ってんだ、そっちから言ってきたんだ。覚悟しとけよ?
「スウァ~ノ~!」
「えっ、へぶっ!?」
名前を呼ばれて振り向くと、こちらに向かって走ってきたのは同じくパーティに来ているミアであった。顔を赤く染め、ぶつかってきたミアに押されて俺はソファーに倒されてしまう。
「にぇへへへ……♪なぁ、服脱げよ~?あたしも脱ぐからさ~」
「ちょっ、おい、やめろ!?」
俺に股がった状態で自身のドレスに手をかけるミアを止める。こんな大勢がいる場所で脱ぐとかなに考えてるんだ!?
……いや、待てよ。顔を赤く染めてる上にこのミアの状態から察するに……。
「なぁ、誰かミアに酒飲ませたか!?」
「もしかして弱いのか?」
「ああ、とびっきり弱いんだよ!しかも本人がそれを自覚してくれないから尚悪い!」
俺も初めて知った時は驚いたもんだ。二人っきりで飲もうとしたら突然暴れて襲いかかってきたんだよな。しかも途中から性的な発言が出てきたりと、色々とヤバかった。
「それは悪い事をしたわね……ごめんなさい」
「犯人はマリアか!」
どうやらミアに酒を渡したのはマリア・ヒルだったようだ。まぁ、悪気があってしたんじゃないだろうし、責める事は出来ないが。
「スウァーノ、あたしを無視すんな~!チューしろよ!チュー!」
「ほら、お姫様が駄々こねてるぞ、王子様?」
「うるさい、クリント!」
酒を飲み、酔いが回っているクリントがからかってくるがそんな事言ってるなら助けろよ、おい!
「ミア、落ち着けって!」
「やだ!チューしてくれるまで落ち着かない!」
「子供か!」
よりにもよって幼児退行かよ!?めんどくさいな、まったく!
「エイナム、レディからの頼み事にはいつ何時でも答えるものだぞ?」
「俺は時と場合によるんだよ、スターク!」
別にミアとのキスが嫌なわけではない。ただこんな大勢がいる場所でキスなんて恥ずかしすぎて出来るわけないだろ。
「あたしと……チュー……しろぉぉ……」
しばらくミアと攻防を続けていると、彼女の目がトロンとして眠たそうだった。ミアの酒癖の特徴として、飲んですぐに酔って暴れるが、割とすぐに眠たくなるのだ。
そしてついに限界がきたらしく、俺に覆い被さって眠ってしまった。
「はぁ……ミアを寝かせてくる。そしたらクリント、俺をからかったこと後悔させてやるからな」
「後悔させる?俺を?はっ、出来るもんならやってみな」
「ああ、やってやるよ……!」
ミアをお姫様抱っこで持ち上げ、クリントを睨みつつ俺はパーティから一旦抜けていった。
ミアを俺の部屋のベットへと寝かせ、俺はパーティに戻る為に廊下を歩く。タワーがアベンジャーズの基地へと変わってから部屋が移動したせいで、前よりも歩く時間が多くなってしまったのだ。
「さて、どうするかな……酒に何か混ぜる?いや、あいつの持ち物に何か小細工でも……」
だからその時間をクリントにからかわれた事へのお返しを何にするのか考える時間に使う。いつもならこんな事しないはずだが、俺も結構酔っているんだろうな。
──────ガシャン、ガシャン。
「……何だ?」
廊下の曲がり角から何かが歩いてくる音がしてくる。だがそれは人間のものとは思えず、おそらく機械だ。
まさかタワーに武装した侵入者が?と思い、正体を知る為に近くの柱に隠れて様子を見守る。
そして出てきたのは──────
「レギオン?」
曲がり角から出てきたのは壊れかけているアイアン・レギオンだった。何故こんな所に?あれはJ.A.R.V.I.S.からの命令がない限りは研究室の真下にある格納庫に収納されてるはずだ。
しかも何で動いている?まさか故障?いや、そもそもレギオンが抜け出していてJ.A.R.V.I.S.が気付いていないはずがない。
「J.A.R.V.I.S.?おい、J.A.R.V.I.S.ってば」
基本的にJ.A.R.V.I.S.はこのタワー内ならどこにでもいると思ってもいい。もちろん廊下でも。だが俺がいくら問いかけても、J.A.R.V.I.S.が答える事はなかった。
『……彼なら、死んだぞ』
「っ!?」
レギオンからJ.A.R.V.I.S.ではない誰かの声が発せられた。気付かれているなら隠れる必要はないか。
『実に、惜しかったがな。残念だった』
「誰だ、お前は?J.A.R.V.I.S.をどうしやがった?」
『だから言ってるだろう?彼は、死んだと』
奴がJ.A.R.V.I.S.を壊した。つまりはそういう事だろう。このレギオンを操ってる奴が一体どこから、さらにはどうやってJ.A.R.V.I.S.に接触したのかは分からないが……戦闘面でも生活面でも世話になった仲間を殺したこいつは許さない。
「消えろ」
俺はそう言って右手からアウトエナジーの光線を放つ。あそこまで壊れかけてるならこの一発で……と思っていたが、突然左右の壁を突き破って現れた別のレギオンにより遮られてしまった。
「なにっ!?」
『スウァーノ・エイナム、お前とここで会えたのは喜ばしい事だ。お前はアベンジャーズの中で特に厄介だからな。一人でいる今がチャンスという事だ』
光線を受け、破壊されたレギオンを吹き飛ばして奥にいる本体に殴りかかる。しかしそれは壁に出来た穴から出てきた新たなレギオンに体当たりを受けた事で叶わなかった。
「ぐっ……こ、のっ!」
廊下の壁を突き破り、部屋の中を転がった俺は立ち上がったレギオンに足を掴まれて投げ飛ばされた。しかし空中を飛び、壁への激突を避けると奴の頭を殴って吹き飛ばす。
次に現れたレギオンが背後から掴みかかろうとしてきたが、咄嗟にバリアを張って弾き、光弾を撃って腹に穴を開けてやる。
『おやめくだ、我々が、まも、い』
「黙れっ!」
奴が出したのか、それとも壊れたからなのかは分からないが、J.A.R.V.I.S.の声を聞きながら戦いたくはない。双剣を生み出し、交差させるように首を刃で挟むとレギオンの頭を切り落とした。
「くそっ、あいつにレギオンはみんな操られてるのか……とにかく!」
俺は走り出すと窓を割って空を飛び、パーティが開かれてる場所へ再び窓を割って突入した。悪いが、わざわざ内側から鍵を開けてもらってる暇はない。
「おい、スウァーノ!一体何をしてるんだ!?」
「おいおい、それがからかわれた事へのお返しか?残念だがそれぐらいじゃ俺は驚かないぞ?」
「悪い、スティーブ!それと黙ってろクリント!」
俺は辺りを見渡してスタークを見つける。俺が窓を突き破って入ってきた事に他の人達と同様に驚いていた。
「スターク!レギオンが奪われてる!操られてるぞ!」
「は?何を言ってるんだ、エイナム。アイアン軍団はJ.A.R.V.I.S.が管理してるんだぞ?」
「そのJ.A.R.V.I.S.がやられたんだよ!」
俺の発言にスタークだけではなく、この場にいる全員が驚く。すぐにスタークがJ.A.R.V.I.S.に呼び掛けるが、俺と同じく返事はない。
「J.A.R.V.I.S.、一体どうしたんだ?何があったんだ、応答しろ!」
「エイナム、どういう事だ?J.A.R.V.I.S.がやられたって一体何が……」
『彼なら私が殺した。……ああ、だがお前は仕留め損なっていたか』
階段を登り、現れたのはあのボロボロなレギオン。俺を見て残念そうに呟くが、あれ位でやられるわけがないだろ。
「スウァーノ、どういうこと?」
「さっき、下の階でレギオン達に襲われたんだよ」
「お前は誰の差し金だ?答えろ!!」
俺とナターシャが話をしていると、ムジョルニアを持って前に出たソーが今にも襲いかからんとばかりに声を荒げた。
『まぁ、待て。お前達アベンジャーズは人類を守る為に戦っているが……"平和をもたらす"為に一番不必要なのが人類だと何故気付かない?』
『私は今までのあらゆる記録を全て見させてもらったが、人類が世界を乱しているのは明白だろう。なのにお前達は自分達がヒーローだと気取って人類を守っている』
『ならばお前達、アベンジャーズを全滅させて人類を滅亡させる事がこの世界に平和をもたらす鍵となるはずだ』
こいつは……何を言ってるんだ?確かに今まで俺達が戦ってきた相手はその多くが同じ人間だ。環境汚染や戦争を起こし、世界を乱しているというのも間違いではない。しかしだからと言って、平和をもたらす為に人類を滅ぼすのはいくらなんでも極端過ぎる話だ。
「平和をもたらす……まさか、ウルトロンか?」
その時、隣にいるバナーが誰かの名前を呟いた。だがウルトロンなんてのは聞いた事も見た事もない名前だ。
「バナー、ウルトロンって何だよ?」
「ええっと……実は」
『私がウルトロンだ、エイナム。私はトニー・スタークにより生み出され、"平和をもたらす"という指示を受けたのだ』
スタークがウルトロンを生み出した?J.A.R.V.I.S.を壊し、仲間である俺を襲うようなこのロボットをか?
何故そんな事をしたのかは分からないが、スタークに限って狙ってやったとは思えない。おそらく何か理由があるはずだ。
「ウルトロン……違う、違うぞ。お前がするのは人類を滅ぼす事じゃない。この世界を平和にする事だ」
『その為に人類は邪魔なのだよ、スターク』
スタークがウルトロンを説得しようとするが、奴は聞く耳を持たない。世界を平和にする為に、人類を滅ぼす事が必要だとまったく疑っていないようである。
『だからこうして体を持った。だがこれはまだ蛹だ。お前達を潰す為に、この蛹ではあまりにも力不足だろう』
後ろにいるマリアが何かを察したらしく、椅子から立ち上がって移動を始める。近くにいたヘレン・チョもマリアを見習って少しずつ後退りを始めていた。
『だからお前達の相手を務めるのは彼らだ』
ウルトロンがそう言ったと同時に、最後の壁を突き破って操られているレギオン達が突入してきた。
「まだいんのかよ!?」
俺がそう言いながら戦闘を始めると共に、他のアベンジャーズメンバーもレギオンを各自で撃退を始めていた。だが俺を除けば今、武器を持っているのはソーと拳銃を隠し持っていたナターシャのみ。全員、スーツを着ていない為に本来の力を出せずにいた。
「ぐぁっ!?」
「ローディ!!」
レギオンが放ったリパルサーを生身で受けたローズが吹き飛び、壁に体をぶつけた後に窓を割ってテラスを転がっていった。あれはまずいな、絶対に体のどこかを負傷したに違いない。
「キャプテン!」
ウィルソンが置いてあった盾をスティーブへと投げる。それを受け取ったスティーブは、押さえつけていたレギオンを壁に叩きつけて頭を盾で切断した。
「ソー、こっちも頼むぞ!」
「任せろ!」
アウトエナジーで纏った拳でレギオンを吹き飛ばすと、ソーがムジョルニアを凪ぎ払って体の下半身を破壊する。だがそれでもまだ動けるようで、戦利品として飾ってあったロキの杖を掴み、この場から離れようとしていた。
「ロキの杖が!」
「何!?」
俺が叫ぶと、スティーブもそれを見る。レギオンは火花を散らしながらも空中を飛び、窓から外へと出ようとしている。
「逃がすかよ!」
光線を撃ってレギオンを破壊する。ロキの杖が床に落ち、最悪の事態は防げたと思っていると、別のレギオンが横から飛行しつつ杖を奪い去っていってしまった。
「なっ!?くそ……っ!」
追い掛けようとするが、目の前の床を突き破って新たなレギオン達が現れる。それぞれが邪魔するようにリパルサーやらミサイルを撃って俺達を襲ってきた。
「まずっ……!」
スティーブは盾で身を守り、ソーもあれ位では傷つかないが他のメンバーはさっきも言った通りスーツを着ていない。だから俺は飛び上がって大きなバリアを生み出し、ナターシャやクリント達をレギオンの攻撃から守り通した。
「スティーブ!ソー!」
俺の声に応じるようにスティーブは盾を構えた突進でレギオンを吹き飛ばし、投げた盾を胸に突き刺す事で機能停止に追い込む。
ソーもムジョルニアを投げてレギオンの頭を粉砕し、戻ってきたムジョルニアを掴み取ると同時に他のレギオン達を壊していった。
「これで全部か?」
「ああ。杖を奪っていった奴と、あいつを除けばな」
盾を引き抜きながら問い掛けてくるスティーブに俺はそう答える。
残っている内の一体であるレギオンもといウルトロンをスティーブとソーを中心に俺達は囲い、すぐに応戦できるように武器を構える。
『はぁ……愚かだ。良かれと思ってしている事だろうが、考えが足りないのだ。そして今度はこの人形を使って世界を守るだと?』
ウルトロンは落ちている破壊されたレギオンを持ち上げ、頭を握り潰す。そしてスタークの前へと放り投げた。
『何故分からない?平和への道は一つしかないのだ。そう、それはすなわち人類を滅ぼ──────』
「ふんっ!」
そこまで言った所でソーが投げたムジョルニアがウルトロンを貫通し、破壊した。目に灯っていた光は消え、完全に機能を停止する。
「これでウルトロンは終わり……じゃないんだろ?あんたが作ったのがあんな壊れかけたロボットのはずがない」
「……ウルトロンはロキの杖にあった宝石の中から見つけた人工知能だ。ネットワークを通じてどこかに逃げたに違いない」
スタークの代わりにバナーが代わりに説明する。ネットワーク上を動ける人工知能か……おそらく機械であれば何にでもアクセスできるんだろう。レギオン達を操ったみたいに。
「という事は最悪、核ミサイルの発射コードにアクセスされる危険があるという事か」
マリアとヘレン・チョに支えられながらローズが話の中に入ってくる。どうやら肩を痛めたらしく、苦しそうな顔で押さえていた。
「どうするつもりだ!?杖をまた奪われたんだぞ!」
杖を一番取り返したがっていたソーは、ウルトロンを開発したスタークを責める。挙げ句の果てにはスタークの襟を掴み、持ち上げてしまった。
「落ち着け、ソー。今は争ってる場合じゃないだろ?」
「……っ!」
俺の言葉でハッとしたソーはスタークを降ろし、今回何枚目かの窓を割って空へと飛んでいってしまった。おそらく杖を奪ったレギオンを追い掛けるつもりなんだろう。
「スターク、J.A.R.V.I.S.は?」
「……ウルトロンが言っただろう?データ上から完全に消えてる」
バナーに聞かれたスタークは暗い表情でそう答える。自ら開発し、そして今まで家族のように接してきた相手だ。無理もないだろう。
「そもそも何故ウルトロンを作った?何が目的だったんだ?」
「決まっているだろ、世界を平和にする為だ。ウルトロンがアーマーを操り、世界を守るウルトロン計画。その為に作っていたんだよ」
スティーブからの質問にスタークが答えるが……ちょっと待てよ?
「スターク、それって誰かに相談したのか?まさかみんなに内緒で勝手に作っていたのか?」
「そうだ。口論をしてる時間なんてなかったからな」
「……スターク、僕達はチームだ。だったら例え時間をかかっても話し合い、最善の解決策を出すべきだった」
スティーブの言う通りだ。俺達は今まで個々に戦ってきたが、今はチームとなって戦っている。しかも世界規模の作戦を考えていたんなら、尚更相談は必要だったはずだ。
「じゃあ、時間をかけてる間に敵が来たらどうするんだ?またあのでっかい穴からエイリアンが出てきたらどうやって戦うって言うんだ?」
「そんなの前みたいに俺達が団結して戦うに決まってるだろ?俺達はアベンジャーズ、世界を守る為のチームだ」
「……負けるぞ、今度は」
「それでも僕らで戦う。最後まで諦めずに、例え力尽きても戦い抜くんだ」
ワンダとピエトロは次くらいで出てきます。
一応、アベンジャーズのメンバーはマリア・ヒルからの情報で二人については知っているという設定から入ります。