今回、オリ主の過去が一部判明します。
──────バロン・ストラッカーがウルトロンに殺された。
おそらくは奴の口から情報が漏れないようにする為だろう。
しかし本人が消されてもある程度の情報を集める事は可能だ。かつてナターシャによって世界に公開されたS.H.I.E.L.D.の犯罪者リストを漁り、ストラッカーと関係がある人物を探したのだ。
ウルトロンは自身の事を『蛹』と称していた。つまりボディを必ずアップグレードするはず、とスタークの考えによりそれを可能とする人物を片っ端から探した。
そして見つけた。名前はユリシーズ・クロウ、ワカンダという国で盗みを働いたという武器商人である。
「そいつ、知ってるぞ。……いや、僕が武器を提供していたわけじゃないぞ?ただ、同じ商人として調べていただけだ」
「オランダ出身のベルギー人……この首筋の焼き印は泥棒って意味らしい」
スティーブに睨まれたスタークが誤解を生まないよう説明している中、バナーがクロウについて記載されているプロフィールを話していく。
「……なぁ、スターク。ワカンダって確か」
「ああ、あそこには
昔、ワカンダについて調べた事がある。あの国は厳しい鎖国状態が続いていた為に情報が少なく、しかしそれを怪しいと感じた俺は色々な方面から調べていた。そして二十年前、クロウにアレを全て奪われたと国連に報告していた事を発見したのだ。
「スティーブ、父はあの金属をどこで手に入れたと言ってた?」
「金属?……っ、見つけたのはハワードだけじゃなかったのか!」
「……?おい、何の話だ一体?」
スタークの言葉にスティーブが気付くが、ソーだけは話についていけずに置いてけぼりであった。
「世界最強の金属、それをクロウが今も持ってるかもしれないって事だ」
俺とスターク、スティーブは後ろを振り向く。そこには壁に立て掛けられたヴィブラニウムの盾があった。
──────俺達の考えは正解であった。クロウの隠れ家を見つけ出し、暴れたら危険が伴うバナーを機内に残して内部に乗り込むとヴィブラニウムが納められた倉庫を見つけた。
それをウルトロンは狙い、クロウから全て買い取ったみたいだが……どうやら何かいざこざがあったらしい。クロウの片腕が切断されているのだ。
『来たか、アベンジャーズ』
『ウルトロン、こんな事をしてお父さんは悲しいぞ』
『誰が息子だ、誰が!』
生みの親であるスタークは確かにウルトロンの父親と言えるだろう。残念ながら息子はそれを嫌がっているみたいだが。
とりあえず俺とスターク、スティーブ、ソーでウルトロンと対峙し、ナターシャとクリントにはクロウの部下達を任せる作戦だったんだが……ここで予想外の相手が現れた。
「まさか本当に現れるなんてね」
「よっぽど暇なんだろ、偽善者ってのは」
ウルトロンの背後から現れた姉弟には見覚えがある。ソコヴィアでクリント達を襲った強化人間であり、マリアが入手した映像から顔や姿も確認していたからすぐに分かった。
ソコヴィア政府への反対運動に参加していたらしく、それを手助けする為にヒドラの人体実験を受けた姉弟。
姉のワンダ・マキシモフは強力なサイコキネシスと精神操作の能力、弟のピエトロは光速並の超人的スピードを出せる能力だと既に判明している。
「偽善者、だと?」
「ああ、そうだろ。特にそいつ……トニー・スタークは!」
兄がスタークを指差し、次にクロウが取り扱っているミサイルに視線を移す。そこにはスターク社のロゴが描かれているものもあった。
スターク社が兵器の開発から身を引いてから何年か経つが、未だに作ってしまった兵器は残っている。それはもう、世界中に。
「自分で兵器作って、それが人の命を奪ってるから今度はヒーローになるなんてよく考えたよな、そんな作戦!」
「そんな事あるわけないだろ」
ヒーローになった事がスタークの考えた作戦なんてあるはずがないだろ。スタークは世界平和を望んでいたが、自分のやり方ではその願いを叶えられないと知り、今度こそ世界平和を実現させる為に頑張っているのだ。
それが例え、今回のような騒動を生もうとも。
『落ち着け、ピエトロ。今からそいつらに分からせてやればいい。自分達の愚かさをな』
ウルトロンのその言葉と同時に奴によく似たロボットが現れ、それが戦いの合図だと言わんばかりにスタークがウルトロンへと突っ込んだ。
『こいつは僕が止める!』
互いに殴り、レーザーや光弾、ミサイルなどを撃ち合いながらスタークとウルトロンは屋根を突き破り、外へと戦う場所を変えていった。
「ぐっ!?」
「ソー!」
こちらもロボットと戦っていると、突然ソーが吹き飛んだ。一体何が、 と思っていると俺も体に謎の衝撃を受け、よろめいた。
アーマーを着ているから痛みはそうでもないが……一体何が?
「気を付けろ、兄の方だ!」
「……なるほどな」
ロボットの攻撃を盾で防ぎつつ叫ぶスティーブの言葉に納得した。どうやら超人的スピードというのは本当らしい。走っている姿など一瞬も見えなかった。
「どうだよ、俺のスピードは?ついてこれるか?」
「ふんっ!」
「遅い遅い!」
背後に向かって腕を振るうが、当たらずに逆に俺が殴られたような衝撃を受ける事となった。肉体は一般人と変わらないだろうが、あの超人的スピードが加わる事で俺達と変わらない威力を出しているんだろう。
「おい、いたぞ!」
「殺せ殺せぇっ!」
「……ちっ、そっちからもか」
クロウの部下達がライフルを構えてこちらに向かってくるのが見える。どうやらナターシャとクリントだけでは抑えきれなかったらしい。
「ソー、スティーブ!兄の方を頼む!」
「分かった!」
両手から光弾を撃ち、敵を吹き飛ばしていく。ロボット達も向かってくるが、所詮は量産型だ。ウルトロンと比べれば弱く、光弾を数発撃ち込めば煙を上げながら落下していった。
「……そういえば」
クロウの部下とロボットをほとんど倒しきった辺りで妹であるワンダ・マキシモフの姿が見当たらない事に気付いた。兄の方はソーのムジョルニアを握るなんて馬鹿をした事で吹き飛んでいったのを見ているが、妹だけがどこにもいないのである。
「一体どこに……っ!?」
「ひっ!」
突然横から違和感を感じ、振り向けば探していた妹を見つけた。しかし両手が赤く光っており、俺の周りにもそれによく似た赤い煙が漂っ……て……?
「っ……なに、しやがった……」
頭の中に何かをされた。おそらく、というか間違いなく能力の精神操作だ。アーマーを着込んでいるが、どうやらそれは何の意味もなかったらしい。
「がっ……!?」
何が……起こっ……て……!?
「────……ーん!!うわぁーん!!父さんっ!母さんっ!どこにいるのっ!?」
周囲で銃撃戦が起こってる中、少年は
「ねぇってば!どこにいるのっ!?」
さっきまで一緒にいたはずなのに!と少年は両親を探す。しかしどこにもいない。幸か不幸か爆発で玄関近くまで吹き飛ばされた少年だけは瓦礫が少なかった為、もがいて外へ出る事が出来たのだ。
「ひっ!?」
遠くの方で爆発がいくつも起こる。空から降り注ぐ爆発物が少年の住み慣れた町を破壊していっていた。
「……あ」
元々、この辺りは紛争地域から近かった。だが今までこの町まで被害が出る事はなかったのだ。故にこの襲撃は突然のものであり、誰もがこの状況に追い付いていなかった。
「おい、坊主!ここで何してやがる!?さっさと逃げるぞ!!」
「やだっ!父さんと母さんがここにいるんだっ!」
走ってきた中年の男性に少年は抱えられたが、崩れた家に戻ろうと男性から離れようとするが、子供と大人では力の差は歴然だった。
「……残念だが、あれじゃもうだめだ!親の事は諦めろ!」
「やだぁっ!!離してよぉっ!」
「っ……!」
もがく少年の気持ちを男性は理解していた。自身もさっきの爆発により家族を一人失ったからだ。だがここで立ち止まってしまっていては、せっかく助かった命を無駄にすると思い、こうして逃げてきたのだ。
「父さぁぁんっ!母さぁぁんっ!」
政府により今回の襲撃の首謀者が逮捕された頃、少年を含めた民間人は避難所での生活を余儀なくされていた。
数日前、ここに到着してから少年を助けてくれた男性は生き延びていた家族と合流し、少年と別れた。それから彼は避難所の片隅で子供という理由から大人達の手を借りつつ、生活しているのだ。
「なぁ、知ってるか?」
「ん?何だよ」
少年が一人でご飯を食べていた時、すぐ近くで男性二人が話を始めた。
「この襲撃で使われた兵器ってさ、ほとんどが『スターク社』のものらしいぜ」
「マジか。ならあんな威力を持ってる事にも納得がいくな」
少年の耳に偶然聞こえてきた『スターク社』という言葉。今まで生きてきた十数年間で聞いた覚えがない言葉だったが、どこかの会社という事だけは理解していた。
「社長のトニー・スタークってさ……軍需産業で世界平和を目指してるみたいだけど、そんなの無理だろ。好きに戦争をやってくれーって言ってるようなもんじゃん」
「だよな。あいつがやってんのは平和なんかじゃない。この襲撃だって、あいつが兵器なんて作ってなきゃ起こってないのかもしれないんだぜ?」
「トニー……スターク……」
そいつが──────父さんと母さんを殺した。
「────……い、おい!大丈夫か?エイナム、しっかりしろ!」
「う……ん?」
名前を呼ばれ、俺はゆっくりと目を開けた。ここは……クインジェットの中か。どこかを飛んでるらしく、外の風景が動いている。
そしてすぐ目の前には必死になって俺に呼び掛けるちょび髭のおっさん……というか、トニー・スタークがいた。
「……スターク?」
「ようやく目覚めたか。心配したんだぞ、襲われた中でお前だけが目覚めな──────」
意識が朦朧とする中、スタークの言葉を遮り、スタークの首を絞め上げたと同時に壁へと叩きつけた。
「か……はっ……お……お、い……?」
「トニー……スターク……!」
ギリギリ、と首を絞める力を強める。スタークが俺の手をこじ開けようとしたり、引き離そうとするが少し前までは生身で戦っていた俺とは体の鍛え方が違う。
このまま、奴の意識を刈り取って──────
「何してんだ、スウァーノ!」
操縦席から突然現れたクリントが驚きの声を上げ、俺を突き飛ばす。その衝撃でスタークは俺の手から離れて転がっていった。
「けほっ、けほっ!……なぁ、僕って何か恨まれるような事とかしたか?」
「さぁな、自分の知らない所でしたんじゃないか?」
咳き込むスタークを守るようにクリントは俺に向けて弓矢を構える。仲間であるはずのスタークを襲ったのだから当然の行動だ、驚きはしない。
「スウァーノ。お前、スタークをどうする気だった?」
「……悪い。その……混乱していたんだ。だから敵との見分けがつかなかったんだ」
嘘だ。意識は朦朧としていたが、混乱はしていない。それにあれが俺の過去なのか、それとも作られたものなのかも分かっていなかった。
だが、あれが本当に俺が過去に経験したものであり、両親がスタークの作った兵器により殺されたと考えると、ジッとはしていられなかったのだ。
「……すまん、スターク」
「いや、いい。他のみんなだってこの有り様だからな」
「他のみんなって……っ」
クインジェットの奥を見るとソーやナターシャ、スティーブまでもが虚ろな瞳となって、壁に寄り掛かって座り込んでいた。意識はあるようだが、何かに取り憑かれたかのように反応がない。
そしてその奥にいる毛布にくるまっているバナーもブツブツと呟くだけで、何の反応もない。
「ソー達はお前と同じ様にあの女にやられたんだ。しかもバナーを操ってハルクに変身させやがった」
「それで……どうなったんだ?」
「僕がハルクバスターを着て止めた。その結果がこれだ」
スタークが俺にスマートフォンを渡してくる。その画面には、『ヨハネスブルグに死者数人が出る甚大な被害が』『アベンジャーズ、世界中から非難される』などを始めとするニュースがいくつも映っていた。
「……ウルトロンとあの兄妹は?」
「ウルトロンにはまたネットに逃げられた。兄妹も、姿を消したそうだ」
「そうか……」
つまりまたこんな事が起こる危険がある。ウルトロンは俺達を全滅させると言っていたが、自滅させられる可能性も大きく出てきたな。
「ところで俺達は今、どこに向かってるんだ?」
「今、世界で一番安全な場所さ」
オリ主の記憶に関しては今後、ワンダが鍵になります。
トニー・スタークの一人称を「私」から「僕」に全話、訂正しようと思います。