ニューヨークの決戦
スウァーノ・エイナムという青年がいた。彼は記憶喪失で自身の名前以外の事を何も覚えておらず、路上で暮らしながら日々を過ごしていた。
そんな彼はある日、謎の力が自分の体に宿っている事に気付いた。
エネルギーの吸収・放出。
エネルギーの放出を利用した空中飛行。
エネルギーを体に纏う。
エネルギーを実体のある形に変える。
様々な事が出来るこの力を独自に
その存在に目を留めたS.H.I.E.L.D.の長官、ニック・フューリーに誘われたスウァーノは特殊エージェントとして、他のエージェント達と共に平和の為に様々な戦場へと飛び込んでいった。
それから2年の月日が経ち──────
「……本当に行くのか?」
「ああ。俺は知りたいんだよ、自分の事を」
スウァーノはS.H.I.E.L.D.を去った。自分がどこの誰で、どうして記憶を失ったのか。そして何故このような力を持っているのか────それを知る為に。
「吹っ飛べ!」
俺は迫ってくる宇宙人達に大きなエネルギー弾を放ち、吹き飛ばしていった。数は多いものの、どうやら一体一体は弱いらしく倒れた奴は起き上がってこない。
「ほら、早く逃げろ!」
「は、はい!」
「ありがとう、助かった!」
背後に隠れていた市民達に逃げるよう指示し、俺は空中飛行で別の場所へと向かった。
「くそっ……何なんだ、こいつら!?」
世界をいくら飛び回っても情報が集まらない事に苛立ち、気分転換にとニューヨークへ立ち寄ってみればこの惨状だ。
カフェでゆっくりしていたかと思えば、突然空に大穴が開いてそこから乗り物に乗った宇宙人がわらわらと出てきやがった。
そいつらを止めようとアイアンマンことトニー・スタークの姿が見えたが、軍勢に押されて今は戦艦みたいな化け物と対峙している。
「おらあっ!」
「ギャブワッ!?」
市民達を狙う宇宙人共を、エネルギーを全身に纏った状態での体当たりで薙ぎ倒していく。銃みたいな物から小さなエネルギー弾を撃ってくるが、生憎俺には効かない。
「ほら、返してやる」
手の平から吸収したエネルギー弾を強化して撃ち返してやる。宇宙人共の胸を貫き、倒すものの次から次へと敵は増えていってる。
「これでも食らっとけ!」
放出したエネルギーを何本もの槍へと変え、一気に放つ。それぞれ頭に突き刺さった後に爆発を起こし、首から上を無くした奴らはどんどん倒れていった。
「……流石に全部相手するのは無理か」
戦うだけならともかく、市民を守りながらでは到底不可能だ。戦うメンバーがどうしてと足りない。
あの戦艦の化け物をどうにかしようとしているスタークを援護して味方につけようにも、その間は地上が無防備になってしまうから駄目だ。
「ん?」
ふと強い風が吹いたかと思うと、上空から何かが飛来した。あの形に見覚えはある。あれは間違いなく、S.H.I.E.L.D.が保有しているクインジェットだ。
「何であいつらが……あっ!?」
その時、スタークタワーの方から放たれたエネルギー弾がクインジェットを直撃し、煙を上げながら墜落していってしまった。
一体誰が、と思ってタワーの上を見てみると、空の穴はスタークタワーの天辺から放たれている光線と繋がっている事に気付いた。
「あそこで何が起こってるんだ?」
この惨状が戦っているスタークの仕業とは思えないし、何よりあいつはヒーローだ。となればこの宇宙人共を呼び出しているのは別の誰かという事になるが……一体誰が?
「いや、まずはクインジェットの中にいる奴らを助けないとか」
俺は再び空中に浮かび、クインジェットが墜落した方へと向かっていった。
「スウァーノ、何で貴方が!?」
墜落した場所へと辿り着くと、そこでは戦闘が繰り広げられていた。S.H.I.E.L.D.所属のエージェント、ナターシャとクリントが宇宙人を相手に戦っているのだ。
「それはこっちの台詞だ。気分転換にカフェで寛いでたんだよ。そしたらいきなりこれだ」
「それは災難だったな。俺達としては戦力が増えて大助かりだが」
「久し振り、クリント……で、あそこにいるのって本物か?」
俺が戦いながら指差す方向には、あのキャプテンアメリカがいる。第二次世界大戦中に生まれたアメリカの英雄であり、唯一無二の
「ナターシャ!そこにいる彼は誰だ?」
「元S.H.I.E.L.D.の特殊エージェントよ。名前はスウァーノ・エイナム、戦力としては申し分ないわ」
「それは助かるな!」
最後の宇宙人を盾で大きく吹き飛ばし、一段落ついたキャプテン・アメリカが俺に近付いてくる。
「スティーブ・ロジャースだ、よろしく頼む」
「ナターシャに言われたけど、改めて……スウァーノ・エイナムだ。よろしく、キャプテン」
俺とロジャースが互いに自己紹介していると、突然上空から凄まじい勢いで誰かが降ってきた。銀色のハンマーを持つ金髪の男である。
「ソー、上はどうなってる?」
「キューブを囲ってるバリアが破れない」
『ああ、だがまずはこいつらだ』
ソーという男とロジャースに加え、スタークの声が聞こえてくる。どうやら俺以外の奴ら全員、顔見知りみたいだな。おかげで俺だけ色々と置いてきぼりである。
『キャプテン、一緒にいるのは誰だ?民間人は地下に避難させとけ』
「違うぞ、スターク。エイナムは僕達と一緒に戦ってくれる仲間だ」
スタークからの通信にロジャースが答え、俺が仲間である事を伝えてくれる。ナターシャやクリントみたいにスーツさえ着ていれば分かったと思うんだけどな。
「なぁ、ナターシャ。俺、急に巻き込まれたから分かんないんだけど、こいつら何なんだ?それとあのソーって人は?」
「奴ら、チタウリっていう宇宙人よ。で、ソーは神様。彼の弟のロキがチタウリを呼び寄せたのよ」
「……ナターシャ、頭大丈夫か?神様なんているわけないだろ」
俺としては真面目に言ったつもりだったんだが、ナターシャからは横目で睨まれてしまった。いや、だって突然「この人は神様です」って言われて信じられるわけないだろ?
「なら俺と戦ってみるか、ん?」
「……いや、それはパス。やっぱ信じるよ、あんたが神様だってこと」
右手に持つハンマーを軽く振りながらソーが提案をしてくるが、それは断る。何故かって?相手の実力を見切れるから分かるが、あいつと戦ったら間違いなく負けるからだよ。それにあのハンマーも着ている鎧も地球のものとは思えない作りだし、本当に神様なのかもしれない。
「ロジャース、作戦は?」
「チームワークだ。個々で戦うのは危険だ」
「待て、俺はロキとの決着が着いてない」
いや、今ロジャースがチームワークって言っただろ。ロキとやらに突っ込む気満々じゃないか。
「あ?あいつを仕留めるのは俺が先だ」
「お前もかよ、クリント!」
「俺はあいつに洗脳されていいようにされてたんだよ。一発やらなきゃ気が済まない」
矢じりの調整をしながらクリントがそんな事を言ってくるが、プライドが高いこいつの事だ。一人で突っ込む事はないにせよ、何かお返しをさせてやらないと俺がストレス解消の相手にされる可能性がある。
「ロキがいなくなれば軍隊が暴走し、さらに被害が拡大する。上にいるスタークを援護しないと」
「……ん?なぁ、誰かこっちに来るぞ」
瓦礫を避けながらバイクに乗って走ってくる男に気付き、俺はみんなに声をかける。すると全員がその人物に向かっていってしまった。
……えっと、S.H.I.E.L.D.のエージェントじゃないし、見た目からして何か特別な力を持っているような感じじゃないよな。
「その人、民間人か?ならさっきスタークが言った通り、地下に連れていった方がいいんじゃないか?」
「それは……何かのジョークかな?」
みんなに問いかけると、バイクから降りた人に苦笑いをしながら言われてしまった。
「いや、至って真面目なんだけど」
「あー……悪かった、せっかく心配してくれたのに。でも大丈夫、
今の僕……?どういう意味だ、それ?
「それにしても、こんな酷い事をする奴らもいたもんだ」
「もっと酷い事をした人もいたわ」
「……すまない」
男がナターシャに謝るが、一体何をしたんだ?そもそもナターシャはS.H.I.E.L.D.のエージェントだ。何かしようものなら、叩きのめされるはずだろうに。
「スターク、来たぞ」
『バナーか。スーツを着ろって言え』
……バナー?ってもしかして、あの生物学者のブルース・バナーか?……なるほどな、これでさっき言っていた意味が分かった。となると、この場にいるのは学者としてではなく、
『これから愉快な仲間を連れてくる』
「ん、まだ仲間がいるのか?」
「いや、これで全員のはずだが」
俺の問いにロジャースが答える。そしてしばらくしない内に、その愉快な仲間が現れた。
「……どこか愉快な仲間なのよ」
唖然としながら言うナターシャ、というか俺達の目の前に現れたのはスタークと、ビルを突き破りながら現れたあの戦艦の化け物であった。
「あれはどこからどう見ても愉快な敵だな、間違ってるぞスタークの奴」
「冗談言ってる場合?」
「来るぞ!」
笑わせようと思ったらナターシャに睨まれ、ソーがハンマーを構える。俺もエネルギーを放出して盾を構成していると、バナーが迫ってくる怪物に向かっているのが見えた。
「あれ?なぁ、確かあっちの姿になるには……」
「バナー博士!」
ナターシャに問いかけていると、ロジャースに遮られてしまう。何だ、と思っていると、バナーも不思議そうに見ていた。
「今なら思いっきり怒ってもいいぞ」
「僕の秘密を教えようか。……いつも怒ってる」
そう言った瞬間、バナーの姿が変わった。皮膚が緑色へと変わり、筋肉が膨れ上がっていく。膨張していく体に合わなくなった服は破れて落ちていき、まるで丸太のようになった腕を勢いよく振りかざした。
「ゥガアアアアアアアッ!!」
雄叫びと共に拳が激突した怪物の顔は歪み、失速していく。そして突然の衝突により後ろが持ち上がっていく。周りの装甲が剥がれていき、その下に見える柔らかそうな場所が丸見えとなった。
『そのまま!』
一度は俺達の真上を通り過ぎたスタークが戻ってきて、ミサイルをその場所へと撃ち込んだ。
「レイ!!」
「任せろ!」
覚えてくれていた俺のコードネームを叫ぶナターシャに答え、俺はエネルギーを大きなドーム状にしてみんなを覆った。
次の瞬間、爆発を起こした怪物の破片が飛び散るもエネルギーの壁にぶつかるそれらは弾かれ、俺達は傷一つなくあの怪物を倒す事が出来た。
「さて、これで終わり……なわけないよな」
「当たり前だ、ここからが本番だろ」
エネルギーを消し、辺りを見渡す。いつの間にこんなに現れたのか、宇宙人共がビルの壁にくっついて吠えまくっていた。おそらく威嚇かそれに近いものだろう。
それに対するは、
負けじとばかりに吠えるハルク。
愛用のトリックアローを構えるホークアイ。
ハンマーを握り締めるソー。
エネルギーを双剣へと変える
銃を構えるブラック・ウィドウ。
相棒とも言える盾を構えるキャプテン・アメリカ。
そして、降り立つアイアンマン。
敵の数は多い。だが……このメンバーで、負ける気などするはずがない。
『おい、それでこのエイナムってのは誰なんだ?急に仲間って言われて出てこられても困るんだが』
「スウァーノ・エイナムだ。よろしくな、スターク。元S.H.I.E.L.D.の特殊エージェントで……」
「おい、自己紹介は後にしとけ」
・オリ主の補足
オリ主がS.H.I.E.L.D.を抜けたのはアイアンマンが誕生する以前のこと。その後はS.H.I.E.L.Dに関わらずに過ごしていた為、正体を明かしているスタークはともかく、ソーが来たことやキャプテンアメリカの復活は知りませんでした。
ハルクに関してはニュースなどから存在を知り、独自に調べて正体を知ったという感じです。
アベンジャーズ計画に関しては知っていましたが、今回の事がそれに関わってる事は知らず、戦いの後に知りました。
オリ主の現在の強さは能力や経験も含めてナターシャ、クリントより上ですが、アイアンマン、ソー、キャプテン・アメリカ、ハルクよりは下です。