今回もタイトルは前編後編などではなく、ちゃんとつけていきます!
戦いと犠牲
──────ウルトロンとの戦いから一年が経った。脱退していったメンバーと入れ替わるように新たなメンバーを加えた俺達アベンジャーズは、世界を守る為に常にどこかで戦っている。
そう……今も、だ。
ナイジェリアの都市、ラゴスにある感染症研究所を元S.H.I.E.L.D.のS.T.R.I.K.E.のリーダーにしてヒドラの一員であるブラック・ラムロウが仲間と共に襲撃するという情報が数日前に舞い込んできた。
おそらく奴らの目的は厳重に保管されている生物兵器だろうが、もしもあれが奪われれば大変な事になる。
故に全メンバーで出動し、ローディ・ヴィジョンには待機をしてもらいつつ研究所に侵入した奴らを全員捕らえようとしたんだが──────
「スティーブ、こっちは片付いたぞ!そっちは!?」
スティーブ、ナターシャが重傷を負った末に奴らは生物兵器を奪い、研究所から二手に分かれて逃げていった。その内、片方は俺が追い付いて捕らえたものの奪われた生物兵器は持っていなかった。
さらにラムロウも乗っていなかった事も含めると、こっちは囮だったんだろう。
『サム、ナターシャ、ミアと一緒に追いかけてる!スウァーノもこっちへ────』
『会いたかったぜ、この野郎っ!』
ラムロウと思われる男の声と共に、スティーブが殴られた音が聞こえてきた。そこから途切れ途切れの声と一緒に激しい殴り合いの音が聞こえてくる。
「くそっ……サム、状況は!?」
『奴ら、マーケットの中に分かれて逃げた!民間人でいっぱいだ!こんな所でもし、撒かれたら……!』
「どれだけの被害が出るか分からないぞ……とにかく生物兵器を取り返さないとまずい」
無線でサムと連絡を取りつつ、俺はマーケットへと向かって飛び立つ。スティーブがラムロウと交戦し、サムとナターシャ、ミアは逃げた仲間を追跡……そういえばワンダは?
「ワンダ、今どこにいる?」
『今、スティーブ達を追いかけてる所よ!』
……どうする?生物兵器はサムとナターシャ、ミアに任せてスティーブを援護するか?民間人が多い中でワンダが力を振るえば、それで被害が出る可能性を考えると彼女の為にも避難を優先した方がいいだろう。
「ローディ、ヴィジョン!マーケットにいる人達の避難を頼む!」
『ああ、了解した』
『任せてください』
指示が出来ないスティーブに代わり、二人に避難を頼んだ俺はマーケットへと降り立った。入り口近くから中心に向かって店や壁が破壊されている事を見るに、これを追えばスティーブと合流できるはずだ。
「スウァーノ!みんなは!?」
「来たか、ワンダ。俺はラムロウと戦ってるスティーブを援護してくる。ワンダは周囲にいる人達が巻き込まれないよう避難させてくれ」
「分かったわ」
ワンダと分かれた俺は走り出す。するとそう遠くない場所でスティーブとラムロウが多くの人達に囲まれながら戦っていた。
「お前ら、早く逃げろ!スティーブ、ラムロウから離れてろ!」
「あ?テメェ、何するつも────」
人の壁を飛び越え、スティーブが距離をとった瞬間に俺はラムロウに向かってハイ・エナジーレイを撃つ。スタークがアーマーに改造を施してくれた事により、隙を見せずに撃つ事が可能となったのだ。
「がはぁっ!?」
大きく吹き飛んだラムロウは果物が積まれた棚へと突っ込んだ末に店内へと転がり込んでいった。あの強固そうなアーマーを着込んでいるとはいえ、ただでは済まないだろう。
「スティーブ、ここからどうする?」
「ああ……サム、奪われた生物兵器はどうなってる?」
『キャプテンか?無事に取り戻したぞ!』
『ラムロウの仲間も全員捕らえたわ』
『あたしとサムのロボ
『ミア、ちゃんと名前で呼んでくれよ。レッドウィングってさ。ナターシャも』
『『嫌
ミアとナターシャから相棒の名前を呼ぶ事を断られたサムを放っといて……ラムロウはどうなった?
「ぐっ……やってくれたな……」
フラフラとしながら煙の中から出てきた奴は、ヘルメットを脱いだ瞬間によろけて倒れた。アーマーもボロボロな事から、もうまともに戦えないだろう。
「お前、その傷は……」
「ふっ……そんなに目立たないだろ?」
素顔を見せたラムロウの顔半分は焼け爛れていた。サムからトリスケリオンの崩壊時にラムロウは巻き込まれたと聞いていたが、おそらくその時の物だろう。
「ラムロウ、答えろ!あの生物兵器を誰に売り付けるつもりだった!?」
横から飛び出したスティーブが息も絶え絶えなラムロウに掴みかかり、問い出そうとする。
しかし返ってきたのはそれとはまったく別の内容だった。
「そういや前に、バッキーと会ったぜ」
「……何だと?」
「奴が洗脳されるまでな」
バーンズが洗脳をされた……!?だがあいつはあの激闘の末に、過去の事を思い出したはずだ。だったらヒドラやその他の奴らにも、もう手を貸さないはずだ。だったらどうやって奴らの接近を許して洗脳を……?
「奴からの伝言だ……"彼に伝えてくれ、死ぬ時は死ぬしかない"ってな」
「……バッキー」
……何か嫌な予感がする。今回の作戦とは関係ないにしても、あいつがこうも簡単にペラペラと情報を吐くわけがない。
何を狙っている?──────まさか!?
「スティーブ、罠だ!そいつはお前を油断させるのが目的だ!」
「っ!?」
「だから俺と……死ね!」
ラムロウが隠し持っていた爆弾を起動させ、スティーブを道連れに自爆へと踏み切ったみたいだが──────それは失敗したようだった。
「ぎゃぁぁあああっ!?」
「っ……ワンダ!!」
スティーブがラムロウを包む爆炎から離れ、いつの間にか現れていたワンダへと声を掛ける。
爆炎を外側からサイコキネシスで強引に抑え込み、ラムロウだけを殺そうとしているみたいだが……そういった訓練をまだワンダはしていない。
「はっ!」
爆炎を抑え込むワンダの力の上から、さらにアウトエナジーで囲い込む。このままワンダに任せれば、力をコントロールできずに暴走させる光景が目に浮かんでくる。
「ワンダ、力を切れ!」
「……っ!」
「俺が必ず守ってみせるから!」
「で、でもっ!」
「だから早く切れ!!」
「わ……分からないのよ!」
ワンダからの悲痛な声により、俺は確信した。彼女は既に力をコントロールできていない。おそらく切ろうとしても、切れないんだろう。
「ヴィジョン!今すぐワンダの元へ来てくれ!」
ワンダの状態を危険と判断したスティーブがすぐにヴィジョンに通信を繋げ、大声で呼び出す。
すると数秒もしない内に、空中からヴィジョンがマントをはためかせながら地上へと降り立った。
「ヴィジョン……!」
「ワンダ、落ち着いてください」
ヴィジョンがゆっくりとワンダへと近付いていく。彼女から発せられる力に、ヴィジョンは押されかけるがそれに耐えながら進んでいく。
そして進むにつれて額のマインド・ストーンが強く輝き出し、その状態でヴィジョンはワンダの手を握った。
その瞬間──────ワンダの力は弾けるように消え、ラムロウを襲う爆炎を留めるものはなくなった。
マインド・ストーンを持つヴィジョン、その石の力を授かったワンダ……同じ力を持っているからこそ互いに力を抑える事が出来るのではないか、という考えから生まれたワンダの暴走対策である。
「ぐ……っ!?」
爆炎は既に生き絶えているラムロウを瞬く間に炭へと変え、アウトエナジーのバリアへと叩きつけられる。抑え込まれた結果、巨大なエネルギーとなっていた爆炎は衝撃を外へと吐き出した。
その衝撃はバリアにより弱まったものの、民間人はおろか近くにある建造物を軽く吹き飛ばす程のものであった。
「ふぅ……」
バリアを解除し、一息つく。怪我人がまったくいないわけではなかったが、最悪の事態を防ぐ事は出来た。
その原因となったワンダはヴィジョンに支えられながらこちらへと歩いてきていた。
「スウァーノ、ありがとう……それと、ごめんなさい……」
「お前はスティーブを、みんなを守ろうとしたんだろ?だったら謝る必要なんてないだろ」
「ワンダ、私達はチームです。互いに助け合うのは当然の事です」
俺の言葉に同意するように、ヴィジョンはワンダに声を掛ける。そう、俺達はアベンジャーズ。協力し、助け合い、敵を倒す事はチームとして当たり前だ。
「バッキーが……また洗脳されて……?」
「スティーブ、そいつはまだ分からないだろ。ラムロウが咄嗟に思い付いた嘘かもしれない」
「……そうだといいんだが」
スティーブにとって、バーンズは幼少時代を共にした唯一の親友だ。故にラムロウがスティーブを油断させる為の嘘だったとしても、何かがあったと思うと不安になるのは仕方のない事だ。
「スティーブ、とにかく今は救助だ。今の衝撃で怪我をした人もいるだろうし」
「ああ、確かにそうだ。ワンダとヴィジョンは協力して救助を。スウァーノ、君はサム達と合流して──────」
「なぁ、スウァーノ。お前からも言ってくれよ。レッドウィングは俺にとって、大切な相棒だ。それなのにみんな名前を呼んでくれないなんて、酷いと思わないか?」
「あのな、サム……嬉しいのは分かるが、専用のドローンを貰えたからって喜び過ぎだろ。もうちょっとその気持ちを抑えとけ」
「スウァーノの言う通りだ。毎回毎回しつこいんだよ」
アベンジャーズ基地への帰還中、クインジェット内ではいつものように俺達は今回の事や他愛もない話などをしていた。
狭いとはいえ小さな部屋もいくつかある為、落ち込んでしまってるワンダや彼女についているナターシャやヴィジョンはそちらにいる。
と、思っていたんだが──────
「みなさん、少しいいでしょうか?」
「ヴィジョン?」
いつものように壁をすり抜けてきたヴィジョンにはもう驚く事もなくなった。それどころか普通に会話できるレベルである。
「ヴィジョン、ワンダは?」
「大丈夫、落ち着いています。ですがスウァーノがワンダの力を抑えてくれなければもっと酷い事になっていたでしょう」
「まぁな!スウァーノは凄い奴だからな!」
ミアが俺を褒めるが、俺としては仲間であるワンダや民間人を助けただけだ。それは今まで何回もしてきた事なんだからそこまで騒ぐ事じゃないだろ。
「
その言葉に全員が押し黙る。俺達アベンジャーズは今まで世界を守る為に、チームでも個人でも何度も戦ってきた。しかしその度に犠牲者を何度も出している。
それによりアベンジャーズは今ではヒーローチームどころか、国際法違反の自警団ではないかと言われるまでになってしまった。
しかし──────俺達がしてきた事は間違っていないはずだ。ウルトロンの件など異例はあるが、世界を守る為に俺達は戦ってきたのだ。
それに俺達が戦わなければもっと酷い事に、さらには人類が絶滅していたかもしれない。
だから俺は何があろうと、信じている。俺達ヒーローがいる事は正しいんだと。
シビル・ウォー編は全6話構成の予定です!