「何してんだ、スティーブ……!」
俺はナターシャから連絡が入った瞬間に基地を飛び出し、アーマーは着ずに空中へと飛んだ。向かう先はベルリンに置かれている対テロ共同対策本部である。
ナターシャ曰く、爆破テロの容疑者であるバーンズがブカレストに潜伏している事にスティーブとサムが気付き、接触を図ったが警察特殊部隊に襲撃されたとのこと。
その後、ワカンダの王子であるティ・チャラが扮する『ブラックパンサー』までもが父親の復讐の為に参戦し、混戦となったもののローディが四人を逮捕する事で事態は収まったらしい。
「確かにバーンズは親友だろうが、今動いたらどうなるか分かってるだろ……!?」
それは今の俺も同じだ。しかし車やクインジェットなどで向かっているようでは遅い。その間にどう事態が変わってしまってもおかしくはないのだ。
「何だ……?」
人目につかないよう着地し、本部に近付いていると騒がしい事に気付く。ここの職員達が外を走り回ったり、集まって何かを話し合っている様子を見る限り、何かが起こったのは間違いない。そう思い、この騒ぎが何なのか尋ねようとすると──────
「……サム?」
どこか周囲を警戒しているような素振りを見せるサムが、誰にも見つからないよう本部から出てくる姿が見えた。ローディに犯罪者扱いで捕まった以上、ここからそう簡単に出てこれるとは思えない。
つまり──────
「……よし」
後を追いかけよう。そして色々と事情を聞こうじゃないか。
「……あの精神鑑定医が暗号を使って、俺をまた洗脳したんだ。ヘルムート・ジモという男だ」
「暗号だって?」
「ヒドラが使っていた特殊な暗号だ。まだあの頃の癖が抜けないみたいでな」
「バッキー、君が本当にあの爆破テロを起こしたのか?」
「スティーブ、あれは俺じゃない。ジモが俺に変装して起こしたんだ」
「何でそれが分かるんだよ?」
「……奴の狙いはおそらくウィンター・ソルジャーの軍団だ。その中に、俺も引き入れるつもりだろ」
「どういう事だ、バッキー?」
「ウィンター・ソルジャーは俺以外にも何人かいる。シベリアで今も冷凍保存中だ」
「そいつらを目覚めさせるって事か、そいつは」
「かもしれないな。ジモの目的がさらに大きなテロを起こす事だと考えれば、間違いないはずだ」
「……なら、ジモって奴は今度はシベリアに向かうはずって思ってるのか?」
今まで壁越しに話を聞いていたが、このまま放っておいたら次に何をするのかは目に見えている。だから俺はスティーブ、サム、バーンズの三人の前に姿を現した。
「スウァーノ……今までの話を聞いていたのか」
「ああ。脱走したサムを追っ掛けてたらここに辿り着いてな」
「マジか、見られてたのかよ……」
別に途中で声を掛けても良かったんだがどこまで行くのか気になったからな。そしたらこの廃工場が目的地だったというわけだ
「よっ。久し振りだな、バーンズ」
「……俺からの伝言を
「言っても聞かないと思ったしな」
「……だろうな、俺も半分諦めてはいた」
「伝言?何の話だ、二人共」
話の内容を理解していないスティーブ、それからサムが首を傾げているが今頃言う必要はないだろう。それよりも今はジモの事だ。
「もしかしてシベリアに行ってジモを止める気か?」
「ああ、僕達はそのつもりだ。スウァーノ、君も一緒に来てくれるか?」
「……その前にまずは他のメンバーに相談した方がいい。お前らは犯罪者扱いで動けないし、スタークも近くにいるだろ。俺だって迂闊には動けないし、ジモは戦えるメンバーに任せて──────」
「今のスタークは何を言っても信じてくれない」
おそらくあの討議の後もスタークと何かあったんだろう。今まで共に戦ってきた仲間であり、アベンジャーズのメンバーでもあるスタークに相談する事をきっぱりと断ってきた。
「それに相談しても、国連の指示がないとアベンジャーズは動けない。バッキーがあの爆破テロの犯人だと決めつけられてる以上、この話を信じてもらうのは無理だ」
「だからって、これ以上何かしたら今度はどうなるか分からないぞ」
「このままジモを放っとけば、今度はさらに多くの人が死ぬかもしれないのにか?」
確かに国連からの指示を待っていれば、その間にジモはウィンター・ソルジャーの軍団を率いて前よりも大きなテロを起こすかもしれない。だが協定への同意を拒否してるにも関わらず、また動けばスティーブもサムも今度は確実にラフトに収監されるに違いない。
「スウァーノ、俺も覚悟してる。アベンジャーズのメンバーとして世界の危機を前に黙ってなんかられない」
「サム……だが」
「……なら俺一人でジモを止めに行く」
アベンジャーズ内での問題だからか、今まで黙っていたバーンズが初めて口を開いた。確かにバーンズはアベンジャーズのメンバーでなければヒーローとしても認識されていない。例え動いても協定に反するわけではないが……。
「バッキー、それを僕は許さないぞ。君が一人で行くなら僕は全力で君を止める」
「……スティーブ」
「スウァーノ、そういう事だ。俺達はこのまま黙ってるわけにはいかない。犯罪者になっても構わない。必ず世界を守ってみせる」
スティーブ、サム、バーンズの意思は固いらしく、スターク達には相談せずにこのままシベリアに向かうつもりらしい。
「スウァーノ、君はどうする?」
「……少し待ってくれ。答えは必ず出す」
「味方として俺達と一緒に戦うか、敵として出てくるかをか?」
「……ああ」
「……スティーブ達を捕まえるだって?」
「ああ、ロスからそう言われてな。しかも制限時間付きだ」
ひとまずスティーブ達と別れ、対テロ共同対策本部に戻った俺はスタークと合流した。「ここまでどうやって来た」とか「力を使っていないだろうな」とか聞かれたが、バレないよう誤魔化しておいた。
そしてスタークから告げられたのは『制限時間内にスティーブ、サム、バーンズの身柄を確保する』という話だった。
「君は何か知らないか?彼らの行方について」
「……いや、何も知らないな」
「だろうな、僕もまだ尻尾すら掴めてない」
本当はスティーブ達がどこに向かってるか知ってる。三人は航空機を奪う為にライプツィヒ・ハレ空港に向かうと言っていたからな。
「スティーブ達にも何か考えがあっての行動なんじゃなのか?」
「なら何故、僕達に相談しない?僕達はチームだろ!あの二人は協定に同意してないんだ、もしも犯罪を起こして捕まったらアベンジャーズだってどうなるか分からないんだぞ!」
……なるほどな。スティーブが『今のスタークは信じてくれない』と言った理由が分かった。スティーブは世界を守る為に動いてるが、スタークは仲間を守る為に動いてる。これでは相談した所で、他の仲間に被害が及ばないよう行動するはずだ。
「スウァーノ、君も協定に同意するんだ。そして僕達と一緒にスティーブ達を捕まえに行くぞ」
「……悪いが、断る。言っただろ、俺は自分の責任を誰かに押し付けるつもりはないって」
「あのな、今はそんな事を言ってる場合じゃ────」
「それに」
俺は少し躊躇ったものの、意を決してスタークに向かって言葉をぶつけた。
「俺は……あんたとは一緒に戦いたくないんだ」
「……そうか。ああ、そうか!理由は知らないがそれなら結構だ!!」
「ああ、理由なんて知らなくてもいい」
子供みたいな理由だって事は分かってるからな。『自分の親を殺した兵器の
「だったら僕にも考えがある!君の代わりに他に戦える者を誘うという方法だ!丁度気になってる相手がいてね、彼を誘うとしよう!」
「……ああ、好きにしろ」
俺はそう言い、叫び続けるスタークに背を向けてその場を立ち去った。
アベンジャーズ基地へと戻った俺はミアからどこに行っていたのか尋ねられたが、それをはぐらかして自室へと入った。
そして携帯電話を取り出してスタークが『気になってる』という人物へと電話を掛けた。
『あっ、エイナムさん!?突然どうしたの?いや、それより聞いてよ!実はさっき、家にスタークさんが来て、僕の力を貸してほしいって言ったんだ!それで飛行機っていうか、自家用機でベルリンに今向かってて!』
「……やっぱりか」
動画サイトでスタークがスパイダーマンことパーカーの事を見つけた、と前に言っていたからな。その後も正体について調べていたらしいから大方予想はついていた。
『えっ、やっぱりってどういうこと?』
「いや、何でもない。……なぁ、近くに誰かいるか?」
『うん、ハッピーっていうスタークさんの運転手がいるよ。すぐそこで寝てるけど』
「ならいい」
とりあえずこの話が誰かに聞かれてるって事はなさそうだな。他のメンバーに俺とパーカーに繋がりがあるって事は伝えてないし、スタークも学生という身分から警戒もしていないだろう。
「パーカー、スタークから何を頼まれたんだ?」
『なんでもキャプテン・アメリカが暴走してるからその鎮圧の為にって……ねぇ、エイナムさんは何か知ってる?同じチームのメンバーでしょ』
「……そうだな。だが俺も理由については詳しくは知らない。ところでスタークから何をしろとか指示はされてるのか?」
『うん!って言っても、登場する時の演出くらいだけどね』
なるほどな。スタークの事だ、初めて姿を見せるからとかいう理由でパーカーを派手に登場させるつもりなんだろう。
「どんな演出なんだ?」
『えっとね、僕がスタークさんに呼ばれたら──────』
パーカーから本人のみの動きだけだが知る事が出来た。とりあえず対策はどうにか出来るだろう。まずは基地を出てスティーブと合流し、この事を伝えないといけない。
「…………」
今回の事件をややこしくしてるのは、発端のソコヴィア協定だ。あれのせいでチーム内で意見が割れ、俺達の関係は悪くなった。そのせいでスティーブもスタークも互いに対立する構図となってしまっている。
犯罪者になってでも親友、そして世界を救おうとしてるキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース。
相手に嫌われてでも今は仲間を守る為に懸命になっているアイアンマンことトニー・スターク。
もしもソコヴィア協定さえなければバーンズを助ける為にスタークも力を貸してくれただろう。だが協定に同意し、バーンズを犯人と決めつけてるスタークにそれはもう無理な話だ。
『世界を救いたい』『仲間を守りたい』────互いにその事を知らなくても、どちらとも最もな理由だろう。
だが仮に知っていても、ソコヴィア協定という邪魔なものがある限り、納得は出来ても止まる事は不可能だ。
「だから……」
ソコヴィア協定が存在してる限り、俺達が元のチームに戻る事はない。いつになっても意見が合う事はこないはずだ。
「アベンジャーズを────力ずくにでも
……それぞれが自分を守るには……それしか方法がないから。
親友との『友情』、『仲間』を守りたい、アベンジャーズの『解散』。今回のタイトルはそれぞれ三人の目的さらとりました。
オリ主とスタークとの関係が一気に険悪になりましたが、それとは別に目的が仲間を守りたいというのはどちらも同じです。ただ手段が違うだけで。
そして次回からはようやく戦闘シーンが多くなります!