さて、こちらはそろそろ物語が後半に入っていきます。
禁断の戦いがついに始まる────!
「スウァーノ、アーマーを持ってどこに行くつもりですか?」
俺のアーマーはスタークに改造が施された事により、スーツケースへの変形機能が追加されてる。そのスーツケースを片手に持ち、基地の入り口へと進んでいると正面に降り立った相手から声が掛けられた。
声の主は──────ヴィジョン。
「貴方は協定に賛同していません。故にアーマーを持って外に出る事は禁止されています」
「ああ。知ってるぞ、ヴィジョン」
「……何をする気ですか、スウァーノ」
ヴィジョンのマインド・ストーンに力が集まるのを感じる。おそらく俺が反対の立場であるにも関わらず、何かを企んでいるのであればすぐに止められるようにだろう。
「悪い、ヴィジョン。何も聞かずにそこをどいてくれ」
「断ります。ロジャース、ウィルソンに続いて貴方までも犯罪者にさせるわけにはいきません」
「……だよな」
それぞれ賛同と反対の立場とはいえ、それ以前に俺達は仲間なのだ。大切な仲間を敵に回す事になる行動を止めないわけがない。
「でも俺にはやらないといけない事が出来たんだ。その為には犯罪者になる事も仕方ないんだよ」
「……どうしても、ですか?」
「ああ、どうしてもだ。だから……止めるなら、強引にでも突破する」
俺はスーツケースを展開し、アーマーを装着しようとする──────が、何故かスーツケースは動かず、何事かと思って見ると、
「これは……っ!」
その煙にスーツケースが引っ張られ、俺の手を離れて遠くの床に転がされる。こんな芸当が出来る奴はこの基地に一人しかいない。
「何をしようとしてるの、スウァーノ?それにヴィジョンも」
「……ワンダ」
俺とヴィジョンが今にも戦いを始めうとしたからだろう。ワンダの顔には困惑の色が見え、状況に追い付けていないらしい。
「ワンダ、スウァーノを止める為に手伝ってください。彼は自分の力を使って何かを企んでます」
「えぇっ!?スウァーノ、今自分がどんな立場にいるのか分かって──────」
「ああ、分かってる。結果がどうなる事もな。それでも俺は止まる気はない」
アベンジャーズの解散……スティーブとスターク、二人を中心に始まろうとしてる戦いを利用するこの目的を今は誰かに言うわけにはいかない。言えば本気で止められる可能性が大きいからな。
「何を言っても止まる気はありませんか」
「悪いが、ないな」
「……なら仕方ありません」
ヴィジョンが宙に浮かび、俺に向かってくる。アーマーがない以上、ハイ・エナジーレイは撃てないがだったらそれ以外の戦法をとるだけだ。
「スウァーノ、抵抗は無駄です」
「そんなの、やってみないと分からないだろ!」
迫ってくるヴィジョンに対し、俺はアウトエナジーを放出してバリアを張った。マインド・ストーンの力により透明化できるあいつには足止め程度にしかならないだろうが。
「っ……これは」
しかしヴィジョンがバリアに触れた途端、あいつは透明になったにも関わらずすり抜ける事が出来なかった。
この事に関して俺は少ない時間の中で考えた。俺に力を与えた石、ソウル・ストーン……石である事や名前からしてそれもインフィニティ・ストーンの一つである事は間違いない。
俺は力を与えられただけでヴィジョンは石そのものを持っているが、もしもソウル・ストーンが圧倒的な力を持ち、力を与えられただけでもそれがマインド・ストーンと同等だとしたら。
「……はぁっ!」
「うっ!?」
バリアを押し出すと同時にヴィジョンを弾き飛ばし、俺はアウトエナジーの双剣を生み出す。こうやって武器を使うのも随分と久し振りだな。
「いくぞっ!」
俺も宙に浮き、空中で制止したヴィジョンへと迫る。こちらに気付き、俺に掴みかかろうとするヴィジョンの両手を避け、俺は剣を薙ぎ払った。
「ぐっ……!?」
「私もやられてばかりではありません」
マインド・ストーンにより硬化したヴィジョンの体に刃は通らず、その隙に腕を掴まれた俺は床へと勢いよく放り投げられた。
「ちっ……っと!?」
床に叩きつけられる前に空中で止まり、着地するとヴィジョンの額から放たれた光線が俺の周囲に着弾し、大きな爆発を起こしていった。
「げほっ……やってくれるな」
「攻撃を止めるなら今の内ですよ」
空中に浮かび、マインド・ストーンを輝かせるヴィジョンと、爆炎に囲まれながら双剣を構える俺が互いを睨む。
今度はどんな攻撃を仕掛けるか、と考えていると俺が持つ双剣が両方とも手の中から抜け出して俺に切っ先を向けた。
「ワンダ、お前もやる気か?」
「…………」
双剣が赤く包まれている事からワンダの仕業だという事にはすぐ気付いた。しかしそれ以上の動きをワンダは見せず、双剣も空中で止まったままである。
「お願い、スウァーノ……こんな事やめて」
「ここまでやって、やめるわけにはいかないだろ」
「私は……貴方と戦いたくない!私を強くしてくれた貴方とは!」
ワンダの気持ちも分かる。俺だってスティーブに頼まれた事とはいえ、これまでワンダの教育係を務めてきたのだ。自分の教え子と言えるワンダと戦いたいなど思うはずがない。
「だったら今すぐここから離れろ。俺はヴィジョンを倒してここを出ていく」
「だから……それをやめてって言ってるのよ!」
「……悪い、そういうわけにはいかないんだよ」
アベンジャーズが国連の管理下になれば、スタークやスティーブなどよりもより強力な能力を持つワンダやヴィジョンがどうなるか分からない。もしかしたらどこかに監禁される可能性だってある。そんな事は絶対に許さない。
「邪魔するつもりなら、お前にだって容赦しないぞ」
「だったら……その前に貴方を止めるわ」
ワンダの力がみなぎるのを感じる。同時に止まっていた双剣が動き出し、俺に向かってきていた。ワンダの力の影響か、構成しているアウトエナジーを分散する事も出来ず、このまま自分の武器と戦う事になるのかと思っていると──────
「きゃあっ!?」
「っ!ワ、ワンダ!」
背後から誰かに襲われたワンダは床を転がり、咄嗟にヴィジョンが駆け寄る。双剣を支配していた力も消え、二つは俺の手元へと戻ってきた。
「なーにしてるんだよ、スウァーノ?」
「ミア……お前」
ワンダを襲ったのは突然現れたミアであった。しかも戦闘スーツに身を包んでおり、協定に違反しているのは明白である。
「ほら、これ捨ててあったぞ」
ミアが放り投げてきたのはさっき遠くに飛ばされたスーツケースである。それを受け取った俺はすぐにアーマーへの変形機能を起動させた。数秒もしない内に展開したそれを装着し、最後にマスクを被って完了する。
「……いいのか?お前、犯罪者にされるんだぞ」
「知るかよ、あんな協定。あたしはあたしのしたいようにするんだ。それにお前が何しようと、あたしはお前の味方だからな」
そう言うとミアは強化された多節棍、その名も『セルファロー』を取り出して床に叩きつける。どうやら意思は固いらしく、ヴィジョン達と戦う事にも躊躇いはないらしい。
「ミア、貴女まで……!?」
「悪いな、ワンダ。でも好きなこいつの為ならあたしは何だってするぞ?」
俺だけでなく、ミアまでも敵に回った事にワンダは驚く。それに対してミアは当然と言わんばかりに俺の味方である事を主張した。
「……ミア、俺があの二人を足止めするからお前は先に外に出てろ」
「はぁ?あたしも戦うに決まってるだろ」
「今はここから無事に逃げる方が重要なんだ。だから頼む」
ヴィジョンやワンダと戦い、あいつらを倒す事が目的ではない。戦わずに済むならそれに越した事はないのだ。
「……分かったよ。その代わり、お前もちゃんと来いよ」
「ああ、分かってるさ」
セルファローを折り畳み、背中の筒へと収納したミアは背後の入り口へと走り出した。しかしそんな行動をして、ヴィジョン達が黙って見ているはずもない。
「ミア、止まりなさい!」
「ヴィジョン!私が止める!」
ワンダのサイコキネシスが周囲の棚や机、椅子、置物などを浮かび上がらせて入り口に飛んでいった。おそらくあれで入り口を塞ぎ、逆に俺達を足止めするつもりだろう。
「ミア、突っ走れ!」
「おう!」
俺はワンダに双剣を投げつける。当てる気はないものの、それにワンダは怯み、力にも乱れが生じた。浮かび上がっていたものはコントロールを失い、床に次々と落ちていく。
「っ、ワンダ!」
両手で顔を守るワンダの前へと立ったヴィジョンは、双剣を両手で受け止めた。そしてそれを握り潰し、強引にアウトエナジーへと戻したのである。
「……スウァーノ。貴方は本当に私達を裏切るつもりですか?」
「裏切ってなんかない。お前らを守る為だ」
「だとしても、この行動は明らかな裏切りです」
ミアが無事に入り口を出ていった事を確認し、俺は両手にアウトエナジーを高めていく。ここからどんな事が起ころうと、立ち止まるわけにはいかない。
自分の為にも……そして仲間の為にも。
「なら止めてみろよ」
「はい。必ず止めてみせます」
前へと歩いてくるヴィジョンの額に強大な力が集まっていくのを感じる。おそらくあれがヴィジョンの最大の攻撃になるだろう。
「怪我なく止める事が望みでしたが……仕方ありません」
次の瞬間、マインド・ストーンへと集まった力が巨大な光線となって一気に放たれた。間違いなくこの基地一つ分を半壊させる威力はある。
そんな光線を俺は両手で受け止め──────全力を以てして吸収をした。
「ぐっ……ぅぅぅうううっ!!?」
「スウァーノ、何をっ……!?」
吸収するエネルギーが全身を駆け巡り、凄まじい激痛が走る。まるで筋肉は裂け、骨は砕かれ、内蔵のいくつかが破裂していくような感覚だ。
「ぐっ……っ、はぁっ!!」
そして我慢の末にエネルギーを全て吸収した。だがあまりにも強大だったからか、全身が熱をもっているように熱い。いや、蒸気が俺から放出されている事から間違いなく異常なほど高温になってるんだろう。
「だが……これで、いい」
「っ……まさか!?」
一度に大量の力を失ったからか、ヴィジョンは膝をついている。そんなヴィジョンへと俺は痛みを無視しながら近付いていった。
「心配すんな。加減はしてや────っ!?」
ヴィジョンに向けた両手が無理矢理下に向けられ、俺の動きが封じられた。そうだ、さっきから姿が視界に入らなかったからすっかり忘れてた……!
「ワン、ダ……!」
「これで終わりよ、スウァーノ!」
サイコキネシスで俺を拘束するワンダ。しかしヴィジョンが放った最大のエネルギーを吸収した今なら、ワンダの力にも抗えるはず。
「おおおおおおおっ!!」
「な、何?この力……」
「ワンダ!すぐに離れてください!」
ヴィジョンがワンダの前へと立ち、彼女を守るように抱き締めた瞬間、俺は限界まで吸収して今にも溢れ出そうだったエネルギーを衝撃波にして周囲に放った。
「きゃっ!?」
「っっ!?」
衝撃波に巻き込まれたヴィジョンとワンダは吹き飛び、壁すらも容易に破壊していった。周囲にあった物は全て吹き飛ぶか壊れ、一瞬にして何もない空間が出来たのである。
「っ……はぁ……しんどいな、これ」
今まで吸収したどんな力よりも強大だったな。最悪、自爆するかもと考えていたがうまくいって本当に良かった。
「……悪いな」
どこかにいるはずのヴィジョンとワンダに俺はそう告げ、破壊されて大きな穴が出来た壁から外へと出ていった。
このままミアと合流し、スティーブ達が向かうライプツィヒ・ハレ空港へ俺達も飛び立つ。そしてそこで必ず起きるはずだ。
アベンジャーズを分断する……
「大丈夫ですか、ワンダ?」
「え、ええ……ありがとう、ヴィジョン」
ヴィジョンのおかけでワンダは無事であり、そのせいで瓦礫に押し潰されていたヴィジョンだったが平然と起き上がっていた。
「スウァーノ達は逃げてしまいましたか……」
「ごめんなさい、ヴィジョン……私、足を引っ張ってばかりで……」
「ワンダ、気にしないでください。……とにかく今はスターク氏に連絡する事が先決ですね」
ヴィジョンはそう言うと、通話機能を起動させてスタークとの連絡をとり始めた。一方でワンダは基地の惨状を見て唖然としていた。
巨大な穴が出来た壁。
大量の瓦礫。
あらゆる機器から飛び散る火花。
これらを全て自分達とスウァーノが起こしたのだ。仲間であるにも関わらず、争って基地を破壊してしまった。
「こんなの……もう嫌よ……」
大切な仲間達が互いに戦い、自分の居場所も失いつつある事がワンダはとても悲しかった。
今回と次話で空港戦を描こうと思ってましたが、文字数が一杯だったので無理でした。
もしかしたら話数が一つ増えるかもしれません。
感想はいつでもお待ちしてます!