アベンジャーズーホープ・オブ・レイー   作:白琳

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ブラック・オーダー襲来 前編

太陽系へと辿り着いたQシップ────サノス軍のドーナツ状の軍艦────二機は目の前に見える地球へと向かっていた。

エボニー・マウとカル・オブシディアン、コーヴァス・グレイブとプロキシマ・ミッドナイトに分かれてそれぞれタイム・ストーン、マインド・ストーンの奪取を企んでいるのである。

 

 

 

「カル、我々の作戦は分かっているな?」

「グルルゥ……」

「そう、タイム・ストーンを奪う事だ。調べた所、ストーンは”ニューヨーク”という街でストレンジなる者が所持しているらしい」

 

マウは種族の中で禁断とされていた闇魔術を何十体もの死骸へと施し、不思議な模様が浮き出る度に別の場所へと移動させていた。

その後ろでカルは自身の武器である斧の調整をしている。それも今から始める”狩り”の為に念入りに、だ。

 

「カル、さっきのような失態はもうしないように。サノス様の機嫌を損ねるな」

「グルルァァガッ!」

 

マウの言葉が気に障ったのか、カルは斧を振り上げてチェーン付きの刃を飛ばした。それをマウは見もせずに闇魔術による念力で受け止めたのである。

 

「『なら私がやればよかった』と?ふっ、用心棒が聞いて呆れるな」

「ガルルゥ……」

「いいか?目的はタイム・ストーンを奪い取る事であって、仲間割れではないのだ。それを忘れるな」

 

全ての死骸を移動し終えると、マウは操縦桿の前へと立った。しかし自動操縦である為に握る事はせず、巨大なモニターに前方の地球を映しただけだった。

 

「こんなにも綺麗な星は私の実験場として使いたい所だが、今はストーンをサノス様の元へ届ける事の方が大事だ」

 

マウ達が乗るQシップがニューヨークへと向かう中、もう一方のQシップも別の場所を目指していた。

おそらくマインド・ストーンの所在地を突き止めたのだろうとマウは予測する。

 

「それでは始めよう。偉大なる我らが父(サノス様)の悲願の為に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ドクター・ストレンジ』

 

本名スティーヴン・ストレンジ。今から一年前、彼はニューヨークで優秀な医師として働いていた。だが事故により指の精密な動きが出来なくなり、彼は医療の世界から姿を消した──────医師でなくなった事を頑なに認めなかったが。

彼は様々な治療法を試したものの失った機能は治らず、莫大な時間と費用の浪費だけに終わると共に世界中の医師、そして元恋人にまで見捨てられてしまう。

 

自分の傲慢さが結果的に何もかも失う事になったストレンジが最後の希望をかけて訪れた場所。

 

 

その名は”カマー・タージ”。そこで手に入れたものは────────”魔術(まじゅつ)”。

 

 

 

 

 

「──────サノスが地球に来る……!」

 

ストレンジは現在、自らが主として務めるサンクタム・サンクトラム────地球を別次元からの侵略から守る施設────に落下してきた()()()の言葉を聞き、同じ魔術師であるウォンと顔を見合わせた。

 

「サ、サノ……なんだって?」

「サノス!!インフィニティ・ストーンを狙ってる怪物だ!あいつをどうにかして止めないと!宇宙が大変な事になるぞ!」

 

ストレンジが聞き慣れない名前について尋ねた所、バナーは発狂したかのように掴みかかって叫んだ。

そんな中、ウォンはインフィニティ・ストーンの名前にピクリと眉を動かした。

 

「インフィニティ・ストーンだと?どこでその事を知った?君は何者なんだ?」

「バナー!ブルース・バナーだ!ええっと、ハルクって言った方が分かるかな?ストーンの事は……っ、ソーから聞いたんだ」

 

ハルクにソー。アベンジャーズの主力にして現在行方不明となっているメンバーである。

その片方が空から降ってきて、サノスという怪物がインフィニティ・ストーンを狙っているときた。

普通なら信じないだろう。しかしここにいるのは地球を侵略者から守る魔術師二人である。

 

「誰に連絡をとればいい?」

「アベンジャーズ全員に。まずはキャプテンからだ」

 

 

 

 

 

 

 

「何だよ、あれ……!?」

 

課外学習へと出掛ける為にバスに乗っていたスパイダーマンことピーター・パーカーは、遠くに見えるQシップを目にして驚いていた。

一体どこからあんなものが?と考え込んだが、あれが地球のものとは思えないのは当然だろう。

そして何よりも──────自身が持つピーター・ムズムズ(命名者メイ・パーカー)が危険を察してる時点でアレがヤバい物である事は分かっていた。

 

「ね、ねぇ、ネッド!みんなの目をアレから逸らしてくれ!」

 

ピーターは隣に座る親友兼同級生にしてメイと同様にスパイダーマンの正体を知るネッド・リーズへと声を掛けた。彼がピーターの指差す方向を見てみれば、目に映ったのは空を飛ぶQシップ。

 

「ユ……UFOだぁぁああっ!」

 

それをUFOと勘違いし、かつ叫ぶのは当たり前である。

 

ネッドの叫び声により全員がQシップへと釘付けになる。方法はともかく全員の目を引き付けてくれたネッドに感謝しつつ、ピーターはマスクを被ってバスの窓から外へと飛び出した。

 

「あんなの、絶対にスタークさんが見逃すわけない!僕もヒーローとしてやらなくちゃ!」

 

かつてアベンジャーズの内乱でスタークからの期待を裏切りつつも、その後にどうにか信頼を取り戻したピーターは更なる活躍の為にQシップへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「アベンジャーズが解散って……どういう事だい、トニー!?」

 

近々結婚を考えているペッパーとのウォーキング中にストレンジに呼び出されたスタークは、サノスの脅威を聞いた後にバナーに彼がいなかった間のアベンジャーズの事について話した。

 

「言った通りだ。僕らは二年前、ソコヴィア協定やバーンズの確保……まぁ、冤罪だったんだが。それらが理由で内乱を起こして解散した。キャプテンやスウァーノとも連絡を取れなかったのはそれが原因だ」

「そんな……でもさっき、連絡手段はあるって言ってなかったか?」

「……キャプテンとはな」

 

スタークがポケットから取り出したのは古い携帯。

 

──────『必要になれば必ず駆けつける』というメッセージと共に送られてきた、現状唯一スティーブと連絡が取れる機器である。

 

「電話をするんだ、今すぐにだ」

「……何故君にそんな事を言われなきゃならない、ドクター?いや、魔法使いか」

「タイム・ストーンは必ず守らなくてはならない。その為に出し惜しみをしてる余裕はない」

「電話をするかは僕らの問題だ。首を突っ込まないでくれるか?」

 

スタークとストレンジ。互いにプライドが高く、さらには性格も似通っている二人が出会えば衝突するのは仕方がない事である。

 

「そうだ……トニー、ヴィジョンは?彼の額にはマインド・ストーンが埋まってる。彼も狙われるに違いない」

「……ヴィジョンはワンダと一緒にアベンジャーズを脱退した。今じゃどこで何をしてるのかも分からない状態なんだ」

 

かつてスウァーノがヴィジョンに伝えた、アベンジャーズにいる事が彼とワンダに危険をもたらすかもしれないという話。その可能性を否定できなかったヴィジョンはワンダと共にチームを抜けたのだ。

 

「トニー……ソーが、死んだんだ」

「っ……なんだと?」

「ハルクの意識がまだあったからハッキリと見えた訳じゃない。でもソーのあの状態じゃ生きてるのは絶望的だ。サノスは今までのように勝てる相手じゃないんだ」

 

バナーから伝えられた仲間の死。それが確実でないにせよ、スタークにはもはや迷っている暇はなかった。

携帯を開き、一つだけ入っている『スティーブ・ロジャース』の名前をすぐ押そうとするが……一歩手前で指は止まってしまった。

 

「っ……!」

 

親友であるバーンズを守る為に自分と戦ったスティーブと顔を合わせる事だけを躊躇っていたスタークだったが、そこである可能性を思い付いてしまった。

 

スティーブよりも会う決心がついていない仲間、スウァーノ・エイナムが一緒にいるんじゃないか、と。

 

スターク自身が開発した兵器を利用したテロリストにより彼の両親は殺された。

その真実を突きつけられた日から、スタークは何をどうすればいいのかとずっと悩んでいたのである。

 

「……トニー?どうしたんだ、早く電話を」

 

動きを止めたスタークを心配し、バナーが話しかけたと同時に──────外から爆発音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Qシップの接近によりニューヨークの市民は一斉に逃げ出していた。誰もいなくなった場所に降り立ったマウとカルは目的のタイム・ストーンを見つける為、互いに動き出そうとしたのだったが──────地球で最初のヒーローが勝負を挑んできたのである。

 

「うわぁぁっと!?」

 

チェーン付きの斧を振り回しながら辺りを破壊していくカルに対し、スパイダーマンことピーターは空中をスイングで移動しながら間一髪で避けていった。

 

「そ、その斧、凄いね!スッゴい!イケてる!でも僕のスーツには負けてるね!」

 

飛んでくる刃をかわし、ウェブで絡めた車を勢いよく投げ飛ばすピーター。しかしそれをカルは片手で弾き飛ばしたのだった。

 

「ウッソ!?マジで!?」

「グルルァアッ!」

 

なかなか地面へと降りてこないピーターに苛立ち、攻撃をさらに激しくするカル。その光景を共に地球に降り立ったマウは呆れた目で見ていた。

 

「まったく、あのような虫けらは放っておけばいいものを……む?」

 

自分は自分でタイム・ストーンを探そうと決めたマウであったが、近付いてくる足音に気付いてそちらを見た。

 

その足音の正体は、トニー・スターク、ブルース・バナー、ドクター・ストレンジ、ウォンの四人である。

 

「おいおい……どうして坊主が戦ってるんだ?」

「えっと、あの赤青の方だよね?坊主って、もしかしてまだ子ど──────」

 

「ちょっ、まっ、ぁぁぁああああっ!!」

 

カルは斧を変形させた鋏でピーターを挟み込むと、勢いよく投げ飛ばした。

──────スターク達のいる方へと。

 

「ふっ!」

 

ストレンジが咄嗟に開いたゲートウェイ───スリング・リングにより開かれた転移できる門───へと飛び込んでいったスパイダーマンは、転移先である公園の芝生へと落ち、そのままゲートウェイは閉じられた。

 

「おい!パーカーをどこにやった!?」

「落ち着け、すぐ近くの公園だ。アスファルトにぶつかるよりマシだろう」

 

ストレンジは詰め寄るスタークを遮り、ウォンと共にオレンジ色の魔法円を展開した。互いにすぐにでも戦闘へと入れる段階である。

それに対してマウは両手を腰に回し、カルは斧を肩にかけて隙がある態勢を取っていた。

 

「お前達、サノスの回し者だな?」

「如何にも。我々はブラック・オーダー、サノス様に仕える忠実な部下である。偉大なるサノス様の悲願の為、タイム・ストーンを寄越したまえ」

「お断りだな。我々の領域に踏み入れてる時点で、お前達は”敵”だ」

 

ストレンジの答えにマウはやれやれといった様子で首を振る。そして指を鳴らすとカルが歩き出し、次第に助走をつけ始めたのである。

 

「バナー、準備はいいか?」

「ああ、いつでも」

「久し振りの共同戦だな」

 

スタークは前へと出ると、胸に装着している新型のアーク・リアクターを起動させた。内部から放出されたナノ粒子がアーマーへと変形していき、スタークへと装着されていく。

 

マーク50、通称”ブリーディングエッジアーマー”。今までのアーマーとは違い、高度なナノテクノロジーによりその形状を装着者が望む形へと自在に変化させられる。さらには十億以上のナノ粒子で構成されているアーマーそのものが高い攻撃力、耐久力を誇っているのだ。

 

「うぅぅ……ぉぉぉオオオっ!!」

 

一方、バナーも心拍数を上げていき体を緑色の巨体へと変化させていく。膨れ上がった筋肉が服を破り捨て、いつも通りパンツ一丁となったハルクはスタークの隣へと立った。

 

「……お前、誰だ?ソーの友達か?」

『おおっと、随分見ない間に賢くなったな、グリーン・ジャイアント(緑の巨人)?誰って僕はトニー・スターク、一緒に戦ってき──────』

「スターク、余所見をするな!」

 

迫ってきたカルは飛び上がり、斧をスタークへと振り下ろした。しかしスタークはそれを一瞬にしてナノマシンで構築した盾で防いだのであった。

 

「ガァァアアアアッ!!!」

 

カルが再び斧を振り上げる前に、飛び出たハルクが殴り付けた。すぐに態勢を立て直して斧を凪ぎ払うが、伏せたハルクには当たらずに掴みかかられたのである。

 

『ハルク!理解してるんなら三秒後にそいつから離れろ、いいな?一、二、三っ!』

 

スタークの背後から現れた四基のビーム砲が火を吹き、真上へと飛んだハルクが今まで目の前にいた為にそれが見えていなかったカルへと直撃した。

 

「……ふっ」

 

マウは横にあった瓦礫を動かし、飛んできたカルが自身にぶつかる寸前で今度は真横へとぶっ飛ばしたのである。

 

「アイツ、ハルクが倒す!邪魔するな!!」

『邪魔なんてしてないだろ、手助けしてやったんだ』

「そんなのハルク、いらな、いっ!?」

 

ハルクがスタークへと詰め寄ると、突然地面から生えてきた土の柱が二人を吹き飛ばした。スタークは上空へ、ハルクは建物の窓を突き破って姿を消してしまう。

 

「まったく、お喋りな奴らだ」

 

柱を生み出したマウは今度は近くにある瓦礫を操り、ストレンジ達に向かって飛ばしたのであった。

 

「むっ」

「私に任せろ!」

 

ウォンがすぐに大きな魔法円を展開し、盾のように瓦礫を防いだ。そして攻撃が収まると、ストレンジが何重もの魔法円を展開して防御から攻撃へと転じようとする。

しかしそれを囮に見せるかのように、戻ってきたスタークが両手から衝撃波を撃って車をマウへと吹き飛ばしたのであった。

 

「いい手だが、私には通じない」

 

向かってくる車をマウは闇魔術により生み出した刃で切断し、真っ二つとなった車体を返すように飛ばした。

片方はスタークの攻撃により破壊したが、もう片方は避けるだけで精一杯だった為にストレンジが開いたゲートウェイでどこかへと飛ばされていった。

 

『おい、そのストーンどっかにやってくれ!』

「悪いが手離す気はない」

『だよなっ、じゃあな!』

 

ストーンを狙っている以上、そのストーンをどうにかすればいいと考えたスタークだったが、断られた為にそれを諦めて単身マウへと向かっていった。

それに対し、瓦礫を繋ぎ合わせて槍のような形状へと変えてスタークを狙うマウ。全て避けられてしまうものの、自身の背後から飛んできたチェーン付きの斧には反応されずに吹き飛ばす事に成功した。

 

「カル、あちらは任せたぞ」

「グルルゥ────ッ!?」

 

建物を貫通していったスタークを問い掛けようとするカルだったが、直後に建物の壁を突き破ってきたハルクの体当たりを受ける羽目となった。そして互いに絡み合いながらスタークのいる方へと進んでいったのである。

 

「よっと……あ、あれ?スタークさんは?」

「彼ならデカブツと戦ってるぞ」

「本当!?」

 

建物の間をスイングしながらストレンジの隣へと着地したピーターだったが、彼の言葉を聞いてすぐにまた飛び出そうとした。

しかしそのピーターをストレンジは腕を掴む事で止める。

 

「スタークにはハルクがいる。君は私と一緒にあいつを倒すぞ」

「えっ、ハルク!?マジで!?うわぁっ、タイミング悪すぎるでしょっ!」

 

憧れのアベンジャーズメンバーであるハルクがいる事に興奮するピーターだったが、その姿をストレンジは呆れながら見ていた。

 

「……いくぞ、少年」

「あっ、僕はスパイダーマンだから!」

「ドクター・ストレンジだ」

「ん、ドクター?えっと、もしかしてお医者さん?」

 

ストレンジ、ウォン、ピーターが並び立つとマウは上空で待機しているQシップに視線を移した。そして手を掲げ、スッと地面に向かって降ろしたのである。

 

「……?何してるの、あれ」

「さぁな。だが……」

「ああ……凄まじい力を感じる。気を付けろ、ストレンジ」

 

Qシップから一筋の光が放たれ、地面へと照射された。そしてその中から這い出るように何かが出てきたのである。

それは──────

 

「ヴヴヴヴァ……」

「ィアアア……」

 

呻き声を上げながら歩いてくるのは、『歩く死骸』もといゾンビ。地球人とは思えない姿をしている事から宇宙人と思われるが、その中にはサンダー人やアスガルド人なども混ざっていた。

 

その数は二桁を軽く越え、三桁にまで上り詰めている。

 

「えっ、ちょっ、はぃ!?な、何あれ本当に!?バ、『バイオハザード』みたいなんだけど!?」

「ゾンビ映画には興味がないんでな、早々に退場願おう」

 

ピーターがゾンビの圧倒的数に怯えて後退るのに対し、ストレンジとウォンは魔法円を構えて勇敢にも立ち向かっていった。

 

「ゆけ、我が『死者の軍団』よ。奴らを殺し、タイム・ストーンを奪うのだ!」




映画と違ってバナーがハルクに変身できた理由は『ハルクが映画よりもバナーに協力的だったから』『サノス達を恨んでたから』などと思ってください。

ブラック・オーダーを強化すると前回言いましたが、マウの場合は闇魔術によりネクロマンサー的な事が出来る事にしました!闇魔術ってなんだかそんなイメージがあるので。

次回は映画とは違ったタッグでブラック・オーダーと戦います!

エンドゲーム以降のお話について

  • エンドゲーム以降も続ける(同作品にて)
  • エンドゲーム以降も続ける(別作品にて)
  • エンドゲーム以降は求めてない
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