今から二年前──────俺達アベンジャーズは意見の違いから二つのチームに分断された。
一つはソコヴィア協定に賛同し、スティーブの親友であるバーンズを捕らえようとするチーム。
もう一つはソコヴィア協定に反対し、バーンズを守るスティーブに協力するチーム。
空港での戦闘やシベリアでのスタークとスティーブの一騎討ちの末にある者はチームに残り、ある者は犯罪者として追われ、ある者は牢獄へと。
あの最悪の日から二年間──────その間に様々な事があった。
国王となったブラックパンサーことティ・チャラがワカンダを開国し、自国の技術を世界に伝えたこと。
そしてヴィジョンとワンダがアベンジャーズ基地本部から去ったこと。
世間的にはこれらが大きいだろう。だがその裏で、俺やスティーブ達は世界中で犯罪組織の壊滅やテロ活動の阻止を行ってきた。表立った活動は出来ないものの、俺達は俺達に出来る事をやってきたのだ。
「……スタークか?」
現在、ワカンダから離れている俺達が本拠地にしている建物にて、スティーブが携帯を取った。あの携帯に掛けてこれるのはスタークに渡した携帯からだけのはず。
という事は、スティーブを必要とする程の戦いが起こるという事だろうか?
……それにしても、スティーブも大分見た目が変わったよな。生やしていなかった髭は伸ばしっぱなしで、スーツはボロボロ。しかも相棒の盾はスタークに渡ってしまい、武器は素手のみ。俺も髪を伸ばしているが、そんなに見た目は変わってないはず。
「っ……バナー!?」
「はっ!?」
スティーブが立ち上がり、大声を上げる。俺もまさかの名前が出て来て驚いてしまった。
ブルース・バナー。事故でガンマ線を大量に浴びた事により、緑の怪物・ハルクへと変身できるようになった天才科学者。ウルトロンとの戦いの後、クインジェットに乗って姿を消してしまったが、一体今までどこにいたんだ?
「今までどこに……なに?……待ってくれ、それは一体……ああ、分かった」
「スティーブ、本当に相手はバナーなのか?」
「それも含め、君に代わってもらいたい。バナーが言ってる事が本当なのかどうか」
バナーが言ってる事?その言葉に違和感を持ちながら俺は携帯を受け取り、耳に当てた。
「もしもし、バナーか?スウァーノだけど」
『スウァーノか!頼む、よく聞いてくれ!インフィニティ・ストーンを狙ってる奴がいるんだ、そいつの名前はサノス!今、そいつの手下達が地球に来てるんだ!』
「えっと……サノス?誰なんだ、そいつ」
代わったかと思えば、バナーから急かすように言葉の波が襲ってきた。インフィニティ・ストーンはなんとなく分かるが、それを狙ってるサノスってのは何だ?
『宇宙の半分の命を消そうとしてる奴だ!今、二つある内、一つはスタークに任せてある。君はみんなと一緒にヴィジョンを守ってくれ!』
「……っ!?」
何だよ、そりゃ……それにインフィニティ・ストーンが地球に二つあるだって?一つはヴィジョンが持ってるやつ、もう一つは……何だ?俺の過去から推測するに、ソウル・ストーンの可能性があるが。
『スウァーノ、詳しい事はあとで話す!だからヴィジョンを……!』
「バナー、俺達は仲間だろ?仲間の言ってる事なら信じるし、仲間がピンチなら助けるしかないだろ」
『……ああ、そうだね』
「あんたはアベンジャーズ基地に行っててくれ。ヴィジョンを拾った後、そこで合流するぞ」
『えっと……ごめん。その、僕今まで『宇宙』にいたから場所が分からないんだ……』
「……は?」
今までバナーの身に何があったのか、手短に話してもらった後に基地の場所やローディがまだ残ってる事を伝えて電話を切る。
携帯を閉じ、スティーブに返す際に俺は申し訳なさそうな顔をした。
「すまん、スティーブ。色々と勝手に決めちまって」
「いや、僕も同じ判断をしていた。それよりヴィジョンの場所に心当たりは?」
「……たぶん、スコットランドにいるはずだ。この前、連絡を取った時にしばらくそこでワンダと暮らすって言ってたからな」
俺達はローディ、ヴィジョン、ワンダとは定期的に連絡を取り合っている。かつては対立した訳だが、後になって後悔したローディや仲を戻したかったワンダと再会して連絡先を教えてもらったのだ。
ローディとはスティーブが、ヴィジョンとワンダとは俺が主に連絡を取り合ってるから二人に関しては俺の方が詳しい。
「よし、なら僕はクインジェットの準備をしてこよう。サムとナターシャも帰還させないといけないな」
「サム達には俺が連絡しとく。ミアもそろそろ起きてくるだろ」
スティーブが部屋を出ていったと同時に寝室(にしてる部屋)から、目を擦りながら起きたばかりのミアが出てきた。昨日は犯罪組織との戦いで大活躍したらしいからな、好きな時間まで寝させる事にしていたのだ。
「スウァ~ノ~……おはようのキスしろー!」
俺を見つけ、迫ってきたミアは飛び上がって俺に襲いかかってくる。
「んんっ……んくっ、ぷはっ。えへへっ」
「満足したか?」
「もっとだ!こんなんじゃあたしは満足しないこと、知ってるだろ?」
再びキスをねだってくるミアを可愛いと思いつつ、今度は俺から口を近付ける。
この二年間で付き合っていた俺達の仲は急激に近付いた。というよりはスキンシップが前より過激になったというか……今では風呂で一緒だろうが、ベットで一緒だろうが動じない程だな。
「────おい、まずいぞ!ここの警察が俺達に気付き始め……って、またやってるのかよ……」
「いつ見てもラブラブね、貴方たち」
周囲の見回りから帰って来たサム、ナターシャから入ってくると同時にそのような言葉を貰った。特に恋人がいる事もいた事もないサムにとっては『空気が甘くなる』というレベルらしい、俺達は。
「そいつは丁度いいな。今すぐここから離れる事になったんだ」
「あら、新しい任務かしら?」
最後に、ミアに軽く口付けをして彼女には立ち退いてもらった。俺も立ち上がり、ミア、サム、ナターシャと順番に視線を合わせていく。
「どうやら地球の次は宇宙を救うみたいだぞ、俺達は」
スコットランド上空にて待機しているマウ達とは別のQシップから降り立ったコーヴァスは、マインド・ストーンの反応を頼りにワンダとヴィジョンを発見していた。
「ヴィジョン、これ……スタークがっ……助けにいかないと!」
「しかし、この映像を見る限りスタークはあの宇宙船を追って、既に地球にはいない可能性があります。今は早くロジャース達と合流する事を優先にした方がいいかと」
店のテレビから、ニューヨークでの戦いを知ったヴィジョンとワンダだが、ヴィジョンの姿は今までと違って地球人の青年とほとんど変わらない。マインド・ストーンの力を理解し、その力を最大限に使いこなす事で自身の見た目を変えられるようになったのだ。
「…………」
コーヴァスは話をする二人の内、ヴィジョンの後ろへと回り込んだ。ストーンを回収する為、まずはその所有者である彼を葬り去る為である。
得物であるハルバードを構え、矛先をヴィジョンへと向ける。『この一撃で胸を貫く』、そう決断したコーヴァスは勢いよく地面を蹴った。
────────だが。
「っ!?」
「えっ!?」
「これはっ……!」
突然ヴィジョンとコーヴァスの間に生まれた“エネルギーの壁“がハルバードを受け止めた。その衝撃と音に気付いたヴィジョンがいつもの姿へと戻り、驚くワンダを守るように立ち塞がった。
一方でコーヴァスは邪魔をした壁を睨み、もう一度ハルバードを叩きつけるが、ヒビすら入らずに弾かれる結果となった。
「っ……誰だ!?俺の邪魔をする者め!」
「仲間の危機なんだ、邪魔して当然だろ」
上空から聞こえてくる声に気付き、コーヴァスが見上げると目の前に何者かが降り立った。同時に両手から放たれた光線を受け、コーヴァスは地面を転がっていく。
「ちっ……!」
「……やっぱアーマーなしじゃ傷一つつかないか」
二年前、逃亡する際に基地から持ち出したS.H.I.E.L.D.時代の戦闘スーツを身に纏ったスウァーノはそう呟くのであった。
……こいつがバナーが言っていたサノスの手下のブラック・オーダー、その一人か。チタウリやウルトロンなんかよりも強いと聞いて、スティーブ達より早く駆けつけたが……危なかったな、確実にヴィジョンを殺しに来ていたぞあいつ。
「スウァーノ……助かりました。私のセンサーに何故反応しなかったのかは気になりますが」
「なるほど、だからか。まぁ、今はそれよりワンダを連れて逃げろ、ヴィジョン」
ギリギリで作ったアウトエナジーの壁を消し、代わりに双剣を生み出す。なんとかして奴をここで足止めしてヴィジョン達を逃がさないとな。
「私達も戦うわ、スウァーノ!相手がどんな敵なのかも分からないのに、貴方一人でなんて……」
「奴の狙いはヴィジョンのマインド・ストーンだ。それが奪われたら大変な事になるらしいからな……だったら一刻も早くここから離れた方がいい」
確かにヴィジョンもワンダも戦力的に申し分ないが、ヴィジョンのセンサーに奴が気付かれなかった事もある。万が一、マインド・ストーンが取られる事だけは防がないといけないのだ。
「ワンダ、行きましょう」
「でもっ……!」
「スウァーノが何も考えなしに来ると思いますか?おそらく、何か策があるはずです」
いや、流石に買い被り過ぎだろ。アーマーがない以上、ハイ・エナジーレイは撃てないし、まともに攻撃を受ければやられる可能性だってある。相手の詳細が分かってないにも関わらず、この状態で挑むのは無謀かもしれないがやるしかない。
「邪魔するなら貴様から殺してやる!」
「できるもんならなっ!」
跳躍してきた奴がハルバードを振り降ろし、俺はそれを双剣で防ぐ。しかしすぐに別の方向から攻撃され、俺も合わせて防ぐが反撃する機会が見つからない。
そのまま奴のハルバードを双剣で防ぐ、弾く、避けるを繰り返しながら追い込まれた俺の背中は壁に当たった。
「死ねっ!」
逃げ場を失った俺にハルバードを突き刺そうとしてくる。だがそれを好機と見た俺は紙一重でかわし、奴の得物は壁に突き刺さる事になった。
「今度はこっちの番だな!」
「くぅっ……!」
ハルバードを手離し、俺の双剣をかわすが逃がしはしない。双剣を槍へと変え、瞬時に投げつけて奴に怪我を負わせる。
それからも長剣、矢、斧、クロー、メイス、ハンマー、ブーメラン、鎌とアウトエナジーを様々な武器に変えながら攻めていく。武器を変えていく事で混乱する奴の先を読み、確実に攻撃を決められるのだ。
「これで────終わりだっ!」
再び変えた双剣で奴の首を斬り落としたかと思ったが、刃が交差する瞬間に奴の姿が消えてしまった。
「なに────っ!?」
後ろから襲ってくる感覚がし、俺はとにかく大きな盾へと変えた。それから数秒をしない内に強烈な一撃が俺を襲った。その犯人は目の前にいる
「勘のいい奴めっ!」
「何で後ろに、ぐっ!?」
地面を蹴って盾を飛び越え、上から襲ってくるがそれをかわす。着地した瞬間を狙って攻撃するも弾かれ、なかなか反撃のチャンスを貰えない。
「そもそもあの武器は壁に刺さってたのに、どうやって……ぁがっ!?」
「ふんっ、考えた所で無駄な事だ!」
凪ぎ払われたハルバードを脇腹に受け、俺は壁へと叩きつけられた。間一髪でアウトエナジーで受けたが、それなのにその衝撃が強すぎた。致命傷ではないが、無視できる程の痛みなんかではない。
「これでもっ!くらえっ!」
スティーブが使っていた盾をアウトエナジーで生み出し、それを近くの壁へと投げつける。あいつ程うまくはいかないものの、弾かれた盾は奴の死角から向かっていった。
そのまま当たる──────と思ったが、再び奴の姿は消えたのである。
──────
「っ、マジかっ……!」
影が動き出して壁を登り、俺の近くまで移動してきた瞬間に奴が音もなく影の中から飛び出してきた。その光景に驚くも、位置が分かっている今回は慌てずに逆に反撃を決める事に成功した。
「ぬぅっ……!俺の術に気付いたか……」
「影に入って動くなんて……宇宙人はそんな事が出来るのかよ」
「だがこの程度は問題ではないっ!」
奴が姿を消す方法は分かったが、ハルバードが刺さっていたあの場所からここまでは距離がある。いくらなんでもあの短時間でハルバードを抜き、再びこっちに戻ってくるのは無理な気がするが……。
「考えをしてる余裕があるとはなっ!」
「あったら楽なんだがな!」
ハルバードを盾で受け止めて弾き飛ばし、槍を投げつける。それを弾かれる事を想定した上で俺は斧を生み出し、跳躍して振り降ろした。
「はぁっ!!」
「っ……!」
槍を弾くものの、斧を受けて傷口から血を流す奴は地面へと手を付いた。しかしそれでもまだまだ戦えるだろう、奴は。
「ふっ……そろそろ時間稼ぎもいい所だな」
「なにっ?」
「俺が一人で来ると思ったか?残念だが、俺は
ハルバードを持ったまま走ってくる奴は俺に掴みかかってきた。それでも止まらずに走り続けるこいつを止めようとするが、その前に俺は轟音と共に背中に凄まじい痛みを受けた。
俺を盾にして奴は工場の壁へと突っ込み、さらには粉砕したのだ。
「がふっ……こ、のっ!」
「ふんっ!」
投げ飛ばされ、地面へと転がる俺はすぐに起き上がって両手を構えた。生身のまま壁へと突っ込まれたのは流石に苦しいが、まだ体は動くし、戦えるはずだ。
「見てみるがいい……貴様の仲間の死に様……を……っ!!?」
奴が指差す方向にいたのは膝を付くブラック・オーダーの一人と思われる人物。それとスティーブ、サム、ナターシャ、ミア。その奥には無事なヴィジョンとワンダもいる。
「悪いな、敵が一人じゃない事は想定済みなんだよ」
「くっ……プロキシマ!!」
「コーヴァス……」
プロキシマと呼ばれた敵に駆け寄っていく奴はコーヴァスと言うらしい。俺もプロキシマと戦ってくれたスティーブ達と合流する為に飛んでいった。
「みんな大丈夫か?」
「ああ。そっちもうまくいったみたいだな」
「まぁ、四人対一人だからな」
「……これがブルースが言ってた敵の実力なの?正直信じられないけれど……」
スティーブ達にやられたプロキシマは武器の槍を支えにしながら立ち上がる。そして俺達の方に矛先を向けてきた為、一気に警戒するが向かってくる気配はない。
──────と、思っているとその矛先から青白い稲妻状の光線が放たれた。その速度に誰も守る体勢に入れなかったが、光線は空中で曲がって俺達の間を通っていくのであった。
「っ────まずいっ!!」
スティーブが叫ぶ。その言葉で俺は背後にヴィジョンとワンダがいる事を思い出した。急いで振り返り、二人の安否を確かめようとするとそこには驚きの光景が広がっていたのだ。
「う……ぐ、ぅ……っ!!」
ワンダがヴィジョンの前へと出て、サイコキネシスの壁で光線を防いでいたのである。火花が散り、苦しそうな表情をするワンダだったが最後には光線の向きを変え、コンテナへと飛ばした。
そして──────周囲にあったドラム缶や机などを巻き込んでコンテナは爆発したのである。
「っ……ちぃっ!」
「どいつもこいつも邪魔をっ……!」
ヴィジョンへの攻撃を邪魔された二人は悔しがり、拳をギリギリと握り締めていた。どうなるかと思ったが、ヴィジョンが助かって良かった。
「ヴィジョンは……私が守るわ。私は彼と一緒にどこまでも進むって決めたのよ!」
「ワンダ……」
ヴィジョンとワンダ、二人が機械と人間という違いを越えて相思相愛になったとは聞いていたが、どうやらうまくいってるみたいだな。
ヴィジョンを守る為にワンダも戦いに加わり、俺達はブラック・オーダーと対立する。人数はこちらが有利なのだ、このまま奴らを追い詰めて──────
「ぐぁぁあああっ!!?」
後ろからヴィジョンの悲鳴が聞こえたのはその直後だった。
コーヴァス・グレイブは影の中へと入って移動するオリジナル能力を持ち、プロキシマ・ミッドナイトは次回ですね。
ちなみにコーヴァスはもう一つオリジナル能力を出します。
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