「ここに帰ってくるのも、随分と久し振りだな」
「ああ、そうだ」
ヴィジョンとワンダを連れ、クインジェットで基地へと辿り着いた俺達。ソコヴィア協定による影響か、基地に滞在している職員はほとんどおらず、何事もなく廊下を進んでいく。
そしてローディが待っている部屋へと入ると────
『よく戻ってくる事が出来たな、キャプテン……!』
ローディは勿論いたが、空中に浮かぶディスプレイには協定を推し薦め、俺達を嫌って国際指名手配犯に指名してくれたロス長官の顔が映し出されていた。
「……そっちもよくここに顔を出せたな?」
『黙れっ!ローズ、早くこいつらを捕らえろ!』
「ええ、任せてください長官」
ローディはそう言うと、即座にディスプレイの電源を切り落とした。これでうるさい奴がいなくなってくれた。
「悪いな、なかなか話が終わらなくて……いや、それよりも久し振りだなみんな!会えて嬉しいよ」
「ああ、連絡はしてたとはいえ、直接会えると嬉しいもんだな」
俺とローディが手を握って再会を祝い合う。だが今はそれは手短にして、早く本題へと入ろう。スティーブも目で訴えてるしな。
「ローディ、バナーは着いてるか?」
「……こっちだよ、スウァーノ。みんな、心配かけてごめん。でもこうしてまた会えて良かったよ」
奥のドアから顔を覗かせ、現れたバナーは俺達との再会を喜んではいるものの、初めはどこか元気がなかった。
おそらく自分と因縁のあるロスがいつの間にかアメリカ国務長官なんて立場になってるからだろう。ソコヴィア協定もそうだが、今後もその立場を利用して何をしてくるのか不安なんだろうな。
「あっ……ナ、ナターシャも……その、会えて嬉しいよ」
「え、ええ。私も嬉しいわ、ブルース」
「髪、金色に染めたんだ。すごい似合ってる」
「ありがとう。ちょっと色々あってね」
ナターシャとバナーがちょっとよそよそしいが、まぁ、いい雰囲気になった途端にバナーが行方不明になったからな。しょうがないか。
「バナー、大体は話で聞いたがもう一度話してくれないか?」
「ああ……勿論だ。じゃあ、まずはウルトロンとの戦いの後、僕がどうしてたかだけど──────」
俺は電話で軽く聞いたが、やっぱり驚く事ばかりだな。二年間もハルクのままで、サカールって星の闘技場でチャンピオンとして君臨していたかと思いきや、そこで偶然再会したソーと一緒にアスガルドをソーの姉であるヘラから守る為に戦って……。
結局はスルトとかいう化け物のせいでアスガルドはヘラもろとも崩壊してしまったが、残ったソーやバナー、その他の仲間やアスガルド人は地球を目指して旅立った。でもそこでサノスが現れて──────
「ソーがやられた……?」
「つ、つまり殺されたって事かよ!?」
「ソーが死んだかは分からない。でもサノスに手も足も出ずに負けたのは事実だ」
ヘラのせいでムジョルニアを失っていたとはいえ、ソーが敵に完敗するなんて……確かにバナーの言う通り、サノスは今まで以上の化け物みたいだな。
「サノスの脅威は分かった。ところでストーンの所在が分かってるのはサノスが持つパワー、スペース。ヴィジョンが持つマインド。そして────」
「スタークとパーカー、それとストレンジっていう魔術師が持ってるタイム・ストーンか」
バナーの話の中で、『赤と青の蜘蛛みたいなヒーロー』って言葉でそれがパーカーだとは分かったが、ストレンジなんて奴は知らない。しかもスタークと一緒に宇宙に行くとか……無事に帰ってきてくれればいいんだが。
「残りのリアリティとソウルに関しては誰も知らないか……」
「でもとりあえず、ヴィジョンだけでも守る事が出来れば絶対にストーン全部は集まらない。そうでしょ?」
「確かに!ヴィジョンが守る為だけに集中すればいいんだからな!」
「ああ、いいんじゃないか?」
ナターシャの提案にミアやサム、その他のメンバーも賛成する。だが当の本人であるヴィジョンは暗い表情であった。
「どうしたの、ヴィジョン?」
「……それよりも私ごとストーンを破壊する方が確実だと思われます」
「なっ……!?」
ヴィジョンの言葉にみんなが驚く。いや、俺やスティーブ、ナターシャもその方法は考えてはいた。だが仲間であるヴィジョンを失うわけにはいかないと、口に出さなかったのだ。
「ヴィジョン……お前、犠牲になる気か?」
「私を守ろうとすれば間違いなく多くの犠牲者が出ます。あのブラック・オーダーという敵は決して侮れません。それに……」
ヴィジョンがコーヴァスに刺された腹に手を置く。同じストーンの力を持つワンダに治してもらったみたいだが、完全に元通りになったわけじゃなく少し調子が悪いらしい。
「駄目よ、ヴィジョン!そんな事、絶対に駄目よ!」
「……もしも私ごとストーンを破壊するならワンダが適任でしょう。私と同じストーンの力を持っていますから可能な筈です」
「……ヴィジョン!お願いだからその話をやめて!!」
ワンダの能力が無意識に少し発動したらしく、周囲の植木や棚が浮かび、倒れていった。その事でワンダは一気に冷静になり、わたわたと困惑し始めた。
「ご、ごめんなさい、私……!」
「落ち着いて、ワンダ。大丈夫だから」
「ああ、誰も怪我してないしな。ちょっと気持ちが昂っただけだろ?」
申し訳なさそうに謝るワンダにナターシャ、ミアの女性陣が宥め始める。宇宙の危機が迫ってるとはいえ、今のヴィジョンはワンダの気持ちを無視していたな。
まぁ、自分が宇宙の危機に関わってる以上、そんな大胆な発想を提案するのも無理はないか。
「とにかく、ヴィジョンを破壊するというのは他に手段がなくなった時の最後の方法だ。バナー、ストーンをヴィジョンが外す事は出来ないのか?」
「……ストーンをヴィジョンから無理やり外せば、ストーンから力を供給してる彼は完全に機能停止する。でも掛かってる鍵を一つずつ外していけば……可能かもしれない」
バナーの言葉にヴィジョンとワンダが振り向き、俺達もバナーを見る。すると全員から視線を向けられてるバナーはあまりの期待の大きさに耐えきれなかったのか、手を振って慌て出した。
「あ、あくまで可能の話だからね!?でもヴィジョンはJ.A.R.V.I.S. 、ウルトロン、マインド・ストーンによって生み出された。だからストーンが欠けても、他の二つが補い合って、そこにストーンとは別のエネルギーを供給できれば……」
「それはここで出来るの?」
「いや……ここの技術じゃ難しいかもしれない。それに鍵は僕とスタークで掛けたんだ。だから僕ともう一人、スタークと同じ位の科学者がいれば……」
スタークと同じ位の科学者……バナーも頭はいいが、既に頭数に入ってるから駄目だろ。ラングのアントマンスーツを開発したハンク・ピム……いや、探してる時間はないし、ラングに聞こうにもあいつはクリントと同じで司法取引中だから接触するわけにはいかない。
あと、いるとしたら誰だ……?
「なぁ、スウァーノ」
「何だ、ミア?今スターク以外に優秀な科学者がいないか考えてるんだが」
「あいつはどうだ?ほら、スウァーノのアウトエナジーを研究してる、あのワカンダの科学者」
「ワカンダ……あっ」
「あたしはあいつ、苦手だけどな。だってアウトエナジーを調べるだけって言ってスウァーノのあちこちを触ってたし……」
そうだ、あいつなら……絶対にスターク並の頭脳を持ってる!それにワカンダは最新技術が揃ってるし、場所としても最高だ!
「ミア、よく言った!ありがとな!愛してるぞ!」
「えっ、愛し……ふへへへっ」
嬉しさからか体をくねらせてるミアを一旦放置し、スティーブ達に駆け寄る。サノスやブラック・オーダーがいつまた襲ってくるか分からない以上、すぐに行動しないとな!
「スティーブ、今すぐワカンダに行くぞ!
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