アベンジャーズーホープ・オブ・レイー   作:白琳

41 / 47
遅くなりましたが、『アイアンマン』からずっとトニー・スタークの吹き替え役を担当してくれた藤原啓治さんのご冥福をお祈りします。
今までありがとうございました。


ワカンダ防衛戦 中編

俺は飛び回りながらハイ・エナジーレイで周囲の敵を薙ぎ払っていく。跳躍して襲いかかってくる奴もいるが、そいつらはかわすか殴って叩き落としていった。

このガントレット、ヴィブラニウムで造られている為に頑丈である。故に殴っても有効なダメージが与えられるのだ。

 

「っ、失せろ!」

 

複数で飛び掛かってくる敵をアウトエナジーで生み出した槍で突き刺し、殺す。……そのつもりだったんだが、地面に落ちた奴らは生きており、槍が刺さったまま走り出していく。

 

「不死身か、こいつら!?」

『おい、そいつは勘弁してくれよ!』

 

リパルサー・レイ、マシンガン、ミサイルポッドなど装備されてる武器を総動員させて敵の殲滅に当たっているローディが苦言を漏らす。

だが宇宙という未知の領域の敵である以上、あり得ない話ではない。バリアの左右から入ってきた奴らは俺とローディ、ハルクとサムで迎い撃ってどうにか止める事は出来た。だが正面から入ってきた敵は数が多く、動きを止めてもまるでゾンビみたいに起き上がって襲いかかってくるのだ。

 

「はぁっ!」

「ふっ!」

 

遠くでスティーブとティ・チャラがお互いの背中を相手に任せながら戦っているのが見える。スティーブはワカンダから新しい小型の盾を二つ貰い、両手に装着して敵を次々に殴り付けていってる。投げ付ける事は不可能みたいだが、何もないよりはマシだろう。

 

「はっ!!」

 

敵からの攻撃を受け続けていたティ・チャラが衝撃波を放って周囲の敵を一掃した。だが吹き飛ばしてもすぐにまた新しい敵が襲いかかっている。

 

「させるかよっ!」

 

俺はガントレットから今まで溜め込んでいた衝撃波を光線状にして敵に放つ。それは広範囲に広がって一気に敵を吹き飛ばす事に成功し、俺はスティーブ達の近くへと降り立った。

 

「助かった、スウァーノ!」

「スティーブ、どうする?奴ら、一体一体はそんなに強くないが、数が多い上に半端な攻撃だと致命的な怪我でも全然動くぞ」

「なら一撃で仕留めにいくだけだ!」

 

ティ・チャラがスーツに装着されている鋭利な爪で敵の体を引き裂いていく。そして最後に蹴りによる重い一撃を叩き込み、吹き飛ばした。

それでも立ち上がる相手だったが爪で胸を抉られると、流石に絶命したようだった。

 

「やっぱりしぶといな……」

 

周囲の敵を光線や光弾、投げつけた槍や剣などで蹴散らしつつ仲間達の戦いに目を向ける。

 

「うぉぉおおおおっ!!」

「ふんっ!」

 

上空から降下していくサムが二丁のマシンピストルを乱射し、敵の大軍へと命中させていく。そして地面スレスレを飛び、背中の翼を敵に叩きつけていった。

その隣ではバーンズが機関銃を撃ち、近付いてきた敵は義手のアームで殴り飛ばしていってる。飛び掛かってくる大勢の敵に苦戦する事はあるが、サムの協力で危機には陥っていない。

 

「はっ!どうした、こんなもんかよ!!」

 

ミアは反重力ブーツで飛び、伸ばしたセルファローを振り回して敵に変化自在な攻撃を当てている。また時にはワイヤーを射出し、電撃を浴びせて敵を倒していってる。

 

「っ……!」

「ふっ……はぁっ!」

 

ナターシャはバトンを両手に持ち、軽やかに動きながら敵の隙を突いていってる。その近くではドーラ・ミラージュの隊長であるオコエが槍を構えて敵と対峙していた。

共に戦った事はなかったと思うが、相性はいいらしく互いに生まれた隙をカバーするように戦っているな。

 

「ゥガアアアッ!!どこにいる、デカブツめ!!」

 

……そしてハルクはたった一人で群がっていく敵を叩きのめしつつ、おそらくニューヨークで戦っていたあの巨体の敵を探しているようだった。

 

『ぐぁああっ!?』

「っ、ローディ!?」

 

すると突然上空から攻撃を仕掛けていたはずのローディが地面へと落ちてきた。二回程バウンドし、展開していたミサイルポッドは外れて近くに転がっている。

 

「大丈夫か!?」

『わ、悪いっ……あいつの攻撃を貰った……』

「あいつって……っ!」

 

ローディが顔を向ける方に視線を向けると、丘の上にブラック・オーダーの一人であるプロキシマが立っているのが見えた。空に向けてる槍の先端では青白い電流が迸っており、おそらくローディはあそこからの光線を受けたんだろう。

 

「ローディ、いけるか!?」

『あ、ああ。まだいけるぞ、キャプテン』

 

スティーブが心配する中、ローディはなんとか立ち上がって戦闘に復帰する。それを見届けた後、俺はプロキシマを睨んだ。薄らと笑みを浮かべる奴に怒りが沸き、俺は両手にアウトエナジーを溜め込んで飛び出した。

 

「……今だ、やれ」

 

プロキシマが何かを呟いたように見えたが、ここからハイ・エナジーレイを撃ち込めばただでは済まない筈。俺は両手を奴に向け、一気に──────

 

『っ!?スウァーノ、奥から何か出てくるぞ!!』

「何……っ!?」

 

サムからの連絡を聞き、俺が警戒するとプロキシマの背後から回転する巨大な刃がいくつも並んだ巨大兵器が姿を現したのである。

 

「ぐっ……!」

 

避ける暇もなくギリギリの所で巨大兵器をアウトエナジーで包み、強引にその場で止めた。だが咄嗟の事でどうにか止めていられるのが限界である。

もしも今の状態で攻撃を受けたら間違いなくやられるし、そうなればこの巨大兵器により多くの仲間が殺されるのは明白だ。

 

「グルルアアッ!!」

「っ!?」

 

だが今の俺を見逃してくれるはずもなく、あのブラック・オーダーの一人がチェーン付きの刃を投げ付けてきた。勢いよく飛んでくるそれを避けていられる余裕はなく、俺に直撃──────

 

「ゥガァァァアアアッ!!」

 

────する前に上から落ちてきたハルクが刃を叩き落とし、再び跳躍して相手に突っ込んでいったのである。

ハルクに突進された奴は倒れ、二人は周囲にいる味方や敵を巻き込みながら転がっていく。そして先に起き上がった敵がハルクを掴み、投げ飛ばすと奴も同じ方向へと向かっていったのである。

 

『スウァーノ、大丈夫か!?』

『待ってろ、すぐにこいつを破壊してやる!』

 

サムとローディが武器を展開して俺が止めている巨体兵器に攻撃を始めるがビクともしない。それどころか段々と力が上げているのか、止め切れずに回転を始める刃が現れてしまってる。

 

「こんのっ……!」

 

どこか遠くに投げ飛ばせればいいんだが、今の不安定な状態じゃ厳しいしそもそも『物を操る』というのは専門外だ。ワンダなら軽々と出来るかもだが、俺ではうまくいかずに味方を巻き込む危険性が付いてくる。

 

「スウァーノッ!!」

「うおっ……!?」

 

突然ミアの声が聞こえたかと思うと、正面から向かってきていた稲妻状の光線が直前で曲がり、俺の横を掠めていった。犯人としか思えないプロキシマの方を見ると、ミアが対峙している。おそらく光線を放ったプロキシマをミアが襲った事で驚き、不意に曲がったんだろう。

 

「っ……この小娘が!」

「あたしはミアだ、小娘なんかじゃないぞ!」

 

振り回される槍にセルファローで対抗するミアだが、実力に差があり過ぎる。いくら攻撃しても槍で弾かれるか受け流されるかで終わり、至近距離に入ったプロキシマに槍で顔を殴られ、ミアは吹き飛ばされてしまった。

 

「っ……あの野郎、ミアを!!」

 

怒りで顔が歪むのを感じるが、今攻撃に向かえばどうにか止めてる巨大兵器が動き出してしまう。自分の大切な彼女が傷つけられてるのに何も出来ないなんて、悔しさ以外のなにものでもない。

 

「ふん、邪魔が入ったが……今度こそ貴様をっ!?」

「させるものか!」

 

プロキシマが俺に向き直った直後、走ってきたティ・チャラが衝撃波を放って奴を吹き飛ばした。それでもすぐに体勢を立て直して着地するプロキシマだが、ティ・チャラの猛攻が彼女を襲っていく。

 

「ふっ、はっ!」

「チィッ!」

 

槍で振り降ろされる爪を防ぐプロキシマだったが、流石は国王にして世界やワカンダを守る戦士、ブラック・パンサーの名を持つティ・チャラ。すぐに攻撃の隙を見つけてすり抜け、プロキシマの顔に爪痕をつけた。

 

「ぐっ……!?」

 

だがそこまでが限界だったようで、槍から放たれた光線を受け、吹き飛ばされてしまった。ヴィブラニウム製のスーツ故に大したダメージは受けてないみたいだが、その間にプロキシマは今は不利と見て立ち去ってしまったようだ。

 

……そういえば、あの大男やプロキシマは俺を狙ってきたというのに、コーヴァスの奴は来ないな。というか戦いが始まる前に姿を見たのが最後だ。

 

「うおっ……!?」

 

と、考え事をしていたら巨大兵器の力が更に強まって刃が少しずつ近付いてきている。このままだと俺はおろか、後ろで戦っているみんなの所に向かっていくのは時間の問題だ。どうするっ……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スウァーノッ……!」

 

ワカンダ・メディカル・センターにてアベンジャーズ・ワカンダ軍とサノス軍の戦いを見守っているワンダは、スウァーノの危機を見て声を張り上げた。

 

「あのままじゃ……」

 

自分がいけば強力なサイコキネシスであの兵器をどうにか出来るはず、とワンダは思った。だが敵がいつあの防衛線を抜けてくるか分からない以上、離れるわけにはいかない。

それにシュリの部下の他にも戦士が何人か残ってるとはいるとはいえ、彼らが侵入してきた敵に敵わなかったら最愛のヴィジョンを失うという恐怖がワンダをこの場から動けなくさせていた。

 

「……ワンダ」

「ヴィジョン……?」

 

今もシュリによるマインドストーンの摘出手術を受けているヴィジョンがワンダに声を掛ける。今までずっと黙り込んでいた為に、どうしたのかと心配そうにワンダは近付いていった。

 

「行ってください、みんなの元へ」

「っ!」

「貴女は今、ここにいるべきではない。仲間を助ける為に向かうべきだ」

「で、でもっ……」

 

もしもの事があったら、と言いたげなワンダにヴィジョンではなくシュリが口を開いた。

 

「もしもこっちで何かあったらすぐに連絡する。だから兄さんやみんなをお願い!」

「…………」

 

ワンダはギュッと手を握り締める。ヴィジョンは大切な存在だが、仲間であるアベンジャーズの面々も同じく大切な存在である。ここでただ待ってるだけでは何も守れない、と意を決したワンダは部屋を飛び出していった。

 

「……あれで良かったの?実は不安なんじゃないの?」

「私はワンダや仲間達と触れ合い、人の心を手に入れ、ワンダを愛するようになりました。ですから彼女がいなくなって不安はあります」

 

ヴィジョンはそこで言葉を切り、「しかし」と言う。

 

「だからこそ信じなければならない。ワンダを、そして私の仲間達を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ……!」

 

ギギギ……と巨大兵器が音を立てながら近付いてくる。サムやローディが破壊しようと攻撃を懸命に仕掛けているが、破壊するどころかビクともしない。二人が抜けている以上、こちらの戦力は減ってるし早い所どうにかしなければならない。それは分かってるんだが……!

 

「っ……撃つのはまず……!」

 

ハイ・エナジーレイを撃とうとするが、アウトエナジーを手の平に集中させた瞬間、集中が乱れて巨大兵器が大きく動いてしまった。丘の地面を切り裂き、瓦礫と共に刃が仲間達を襲っていく。

 

「ぐっ……はぁっ……!」

 

再びアウトエナジーで巨大兵器を包んで止めに掛かるが、踏ん張ってなお止めるだけが精一杯だったコイツを 簡単には止められなかった。動きを遅くするのが限界である。

 

『撤退だ!撤退しろーっ!!』

 

ティ・チャラが無線機越しに叫んでいるのが聞こえる。その命令に従ったワカンダの戦士達が逃げ出しているが、あれでは駄目だ。絶対に追いつかれる。

 

「止まれっ…………あ?」

 

俺の抵抗も虚しく進んでいく巨大兵器が突然止まり、それどころか空中に浮かび始める。よく見てみると周りを赤い霧状のモノが漂っており、それにより何故こんな事が起こってるのか理解できた。

 

「ワンダ!!」

「ふぅ……はっ!」

 

地面の上に立っているワンダを見つけ、彼女が腕を振るった瞬間に巨大兵器は吹き飛んで敵が固まっていた場所へと突撃していった。あそこには味方もいないようだったし、一番いい場所だったと言えるだろう。

 

『ワンダ、ヴィジョンはどうしたんだ!?』

『まだストーンの摘出手術中よ、スティーブ。でも大丈夫、呼ばれたらすぐに戻るわ!』

『いや、必ず連絡できるとは限らないだろ!?早く戻った方がいい!』

 

スティーブからの質問にワンダは答えるが、最悪の事態を想定してるローディはそれに意を唱える。確かにヴィジョンとマインド・ストーンの安全を取るならローディの意見に従った方がいいが……。

 

『でもワンダの力がなければ被害はもっと大きくなってたわよ』

『キャプテン、こちらの戦力は削られつつある。彼女をここで戻せば苦戦は免れないぞ!』

 

ナターシャ、ティ・チャラからローディとは反対の意見が出てくる。ティ・チャラの言う通り、ワカンダの戦士には怪我をした人が多い。中には致命傷を負ったのか他の戦士達に守って貰ってる人もいる。

……あの巨大兵器のせいもあるだろうが、俺がそれを止めてる間に大分こちらが追い詰められていたんだろう。

 

「……スティーブ、ローディ。ワンダは残そう。ここを抜かれたらヴィジョンが危ない事に変わりはないだろ」

『それはそうだけどな、スウァーノ!』

『……ワンダをここに残す。全員、シュリ達からの連絡に気を付けろ!』

 

スティーブがキャプテンとして苦渋の決断を下す。ここで共に戦ってもらうか、ヴィジョンの傍でいざという時に戦ってもらうか──────彼は考えた末に前者を指示したのであった。

 

 

 

 

 

 

ワンダが加わり、俺も戦いに戻るが……ワカンの戦士は多くが致命傷を負って動けず、ほとんど戦っているのはアベンジャーズの面々とティ・チャラ、ドーラ・ミラージュの彼女達だけだ。

こちらの何十倍もの数に加え、いくら傷つけても倒れないしぶとさを持つ奴らと対峙するにはいくらなんでも数が少なすぎる。

 

「ぐっ……!?」

「おい、来るなって……!」

 

スティーブやティ・チャラ、地面に引きずり落とされたサムに敵が群がる。すぐにその場から脱出するがその先にも敵がおり、どこにも逃げ場がないのだ。

 

「ぐっ……!?」

 

飛び掛かってくる敵を光弾や光線で撃ち落としていくが、その内の一体に捕まれて地面に叩きつけられる。すぐにV・B・ガントレットからハイ・エナジーレイを撃つが、そろそろこちらも限界のようだ。

 

「っ……はぁっ!」

 

衝撃波を放って辺りの敵を吹き飛ばすがその威力は最初の時よりも弱い。ハイ・エナジーレイもだ。

撃った数はおそらく何百発に及ぶだろう。それに加えて衝撃の吸収と放出を何度も繰り返した事でガントレットは既にボロボロになってしまってる。

 

「くそっ……!」

 

ハイ・エナジーレイと衝撃波が使い物にならなくなった以上、もはやガントレットは殴るくらしか使い物が残っていない。他の攻撃手段である光線、光弾、槍や剣での攻撃などでも攻めるが威力は格段に低下している。

 

俺やスティーブ達の他にもあちこちで仲間達が押されている。このままじゃここを突破されるのは時間の問題だ。早く何とかしないと……ん?

 

「何だ、あれ……っ!?」

 

突然空から降り注いできた光の柱が敵を一気に吹き飛ばした。あれは……見た事がある。確かソーがどこかに移動する度に出現していたビフレストとかいう……という事はもしかして……!?

 

「うおっ!?」

「い、今のは……?」

 

ビフレストの中から現れた謎の斧が回転しながら飛び回り、まらで意思を持っているかのように敵を薙ぎ倒していく。しかもその斧からは雷が放出しており、それがあの斧の持ち主が何者なのかを示していた。

 

「────待たせたな」

「ソー……生きてたんだな……!」

 

ビフレストが消え、戻ってきた斧を手にしたのはアベンジャーズの一員にして、アスガルドの新たなる王になったという──────”ソー”であった。




ワカンダ防衛戦、次回でラストです。

エンドゲーム以降のお話について

  • エンドゲーム以降も続ける(同作品にて)
  • エンドゲーム以降も続ける(別作品にて)
  • エンドゲーム以降は求めてない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。