ニューヨークの決戦から一年が経ったある日。ソーが突然ロンドンに現れ、女性を連れ去ったという情報が入った。調べてみればその女性とはソーが恋人だと語っていたジェーン・フォスターであり、どこに行ったのかと探したが二人共地球のどこにも存在しなかった。
その後、イギリスに地球外からの敵が現れたとフューリーから連絡が入り、アベンジャーズが出動したもののソーが仲間達と共に解決してくれていた。
事件の全貌を知っているソーから惑星直列やエーテル、ダーク・エルフなどの様々な事を聞いたが、まさか最後にあんな事を言われるとは思っていなかった。
『ロキが死んだ』など。
「ロキは……俺よりも王が何なのかを知っていた」
目の前に座る私服姿のソーが俺にそう呟いてきた。突然タワーを尋ねてきて、部屋に入ってきたかと思えばこれである。
「アスガルドの王位を継ぐのはやめたって言ってたな。それに関係している事か?」
「そうだ。父はそれを認め、俺に自由をくれた。もしもロキが生きていれば……俺は王位をあいつに継ぐよう父に頼んだに違いない」
俺はロキについてあまり知らない。奴が何をしたとかは聞いたし、姿については捕らえた時に知ったがそれだけだ。性格についてはずる賢く、たまに抜けている所があると聞いているが。
「本気か?奴は一年前、あれだけの事をしでかしたんだぞ?」
「だとしてもだ。あいつは王になりたがっていた。方法は何にせよ、王がどのような存在なのかをあいつはよく知っていたんだ」
確かにそれは頷ける。あの戦いの後、資料映像としてロキがドイツのパーティー会場を現れた時の記録を見させてもらった。そこで奴は会場にいた人々に対し、膝まづくように迫っていた。まぁ、結局はロジャースとスタークに邪魔されて捕まったが。
「でもそれも結局はロキが生きていたらの話だろ?」
「ああ……そうだな」
最近、ソーは弱気な様子を見せる事が何度かある。ロキが死んだ事が関係しているんだろうが、ソーとロキは義兄弟だ。敵として戦ってもやはり義弟であるロキを亡くしたのは辛いんだろう。
「なぁ、ソー。ロキは本当に死んだのか?」
「……何を言ってる。あいつは俺の前でカースによって間違いなく殺されたんだぞ」
「偽物って事はないのか?」
ソーからロキの能力については聞いた。幻術を得意とし、他者への変身や分身なども作れるという相手を惑わすにはぴったりな力だ。特に奴は言葉巧みに相手を操る事が出来るから余計に厄介らしい。
「偽物……あいつの幻術に嵌まっていたという事か?」
「ああ。ロキは宇宙に放り出されても生きてたんだろ?そしてチタウリと結託して地球に攻めてきた。……しぶとさに関しちゃ、ありえない話じゃないだろ」
ソーやロキが宇宙空間でも生きていられる事を考えれば当然だが、そこから地球まで来るというのは奇跡や偶然としか言いようがない。ロキ本人のしぶとさもあるだろうが、もしかしたら今回もまだ実はどこかで生きているのかもしれない。
「だが、だとしたら一体どこに!?」
「それは分かるわけないだろ。それにこれだって、さっきソーが言ってように『生きてるかもしれない』話だ」
「……そうだな。すまん、大きな声を出したりして」
ロキがまだ生きている可能性を出した瞬間、声を張り上げた事を考えると相当期待したんだろうな。それはつまり、ソーはまだロキの事を大切な義弟だと思っている証拠である。
「だがスウァーノ、お前のおかげでようやく見えた。ロキはまだ生きてるかもしれないという希望が」
「探すのか、奴を?」
「……いや。もしも生きているのであればロキは自ら俺の前に現れるはずだ」
義兄弟だが、昔から一緒に過ごしているせいだからだろうか?ソーはロキの事を、ロキはソーの事を互いの事をよく分かっているのかもしれない。そうじゃなければ今のような事は言えないだろう。
「お前のおかげで少し楽になった気分だ。礼を言うぞ」
「それはどうも。何か相談とかあったらいつでも来いよ?」
「ああ」
ソーはそう言うと、置いてあったハンマーもといムジョルニアを自身の手に納め、開いている窓から飛んで出ていった。
…………たぶん恋人の所に行くんだろうが、普通に行ったらどうなんだ?
ソーがロキに対して甘いかな?と執筆を終えてから思ったんですがどうでしょうか?感想を頂けるとありがたいです!