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ニューヨークでの戦いからおよそ一年半が経った。あれ以来、ソーとダーク・エルフとの戦いで(意味なかったが)出動した事を除けばアベンジャーズが集結した事はない。それは同時に世界が平和という証拠だ。
俺とバナーはタワーに住み、スタークもカリフォルニア州にあった豪邸が崩壊してからはこちらに住んでいる。
ナターシャとクリントは相変わらずS.H.I.E.L.D.のエージェントとして活動し、ソーは恋人のフォスターと過ごしている。
そして最後の一人、スティーブ・ロジャースは……。
「またここに来てたのか」
寂れたボクシングジムを訪れた俺は、その中でサンドバッグをただひたすら殴っているスティーブに声をかけた。
「スウァーノ……どうやってここに?」
「最近、あんたの様子が変だってナターシャから連絡もらっててな。休日はたぶんここにいるんじゃない?って言われて来てみたんだよ」
現在、S.H.I.E.L.D.に所属しているスティーブはナターシャと組み、様々な事件を解決しに出向いている。一緒にいるナターシャだからこそスティーブの変化に気付いたんだろう。
「……昔に戻りたくなったのか?」
俺は近くのテーブルに置いてあるいくつもの資料に目を向けた。見てみると、どれも第二次世界大戦中のものである。特に多くあるのは戦時中の恋人、ペギー・カーターとスタークの父親、ハワード・スタークのものであった。
「……最近、いつも考えてしまうんだ。自分が大戦中に消えてなかったらどうなっていたかって」
「そりゃ……今ここにはいないんじゃないか?」
そんな答えが欲しかったわけじゃない事は分かっているが、俺がそれを言ってもしょうがないだろう。これはロジャースの問題であって、俺が解決できるようなものじゃない。
「眠りにつく前、ペギーと約束をしたんだ」
「どんな約束なんだ?」
「『土曜にクラブで会いましょう』って彼女は言っていたんだ。でも僕が目覚めたのはそれから70年も後だった」
「……それは」
「仕方がない事だとは分かってる。でもペギーとの約束を果たせなかった事が心残りなんだ」
ロジャースをいつも持っている方位磁石を取り出し、開く。その中には一人の女性の写真が納められている。きっとあれがロジャースの恋人だったペギー・カーターなんだろう。
「……ペギーにはこの間、会ってきたんだ」
「どうだった?」
「認知症は改善されてきていた。ただ尋ねる度にやつれていってる」
スティーブにカーターの存命を伝えたのは他でもない、俺だ。フューリーからは弱みを見せる事になるとか、任務に支障が出るとかで口止めされていたが俺はもうS.H.I.E.L.D.を抜けた身だ。故にフューリーに従う理由はなく、彼女がいる老人ホームの場所を教えてあげたのだ。
「君が教えてくれた時点で彼女はもう車椅子生活だったんだ、無理もない」
「……あんたこそ、無理してるんじゃないのか?」
「なに?」
椅子に座る俺がそう言うと、ロジャースが驚きながらこちらを向いてきた。
「今の時代を生きてるのはあんたにとって、窮屈でしかないんじゃないか?S.H.I.E.L.D.の一員じゃなく、カーターと一緒に過ごす事が一番の望みなんだろ」
「……そうだとしても、世界では常に何かが起きてる。それを放っておく事は出来ない」
「でも、君の言う事も合ってるな」
「えっ?」
「僕が
「……ロジャース」
あんたは周りから求められてるだけで、自分の意思で戦ってないんじゃないか?そう言いたかったが、それはロジャースが持つ通信機が鳴り響いた事によって遮られた。
「……緊急任務だ。すまないな、エイナム」
リングから降りたロジャースは資料をまとめると、脇に抱えてボクシングジムから出ていってしまった。
誰にだって戦う理由はある。でもロジャースは本来ならもう戦う必要がないはずだ。目的であった戦争終結は既に果たされているのだから。
だが周りはそれを許さない。世界は今もキャプテン・アメリカを必要としているから。
ちなみに誤解をする人がいるかもしれない為、追記をしますとオリ主はペギーがまだ生存していること、老人ホームにいる事を確認してからスティーブに伝えています(生存、老人ホームの場所についてはS.H.I.E.L.D所属時に知っているため)。
この章はこれで終わりです。オリ主については次に執筆するウィンター・ソルジャー編以降に執筆しようと思っています。
あと、「戦いの傷(アイアンマン3前日談)」、「ロキの死(ダークワールド後日談)」のタイトルを変えました。