深海より来る者   作:えんびーれん

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第一話

「おっはよー司令官!出撃してた艦隊が帰投したみたいよ」

 

現在の時刻は7月20日、午前7時。

秘書官である雷の挨拶を聞きながら、窓を開ける。今日も快晴でいい天気だ。と背筋を伸ばしながら考えた。

 

「おはよう、雷。金剛から報告書はもらった?」

 

「いーえ、そろそろ来るんじゃない?はい、私がいれたんだから全部飲みなさい」

 

自信満々に胸を張りながら言う雷にお礼を言いつつお茶を飲んだ。

初めの頃は渋すぎて残していたが、今では全部飲めるようになってきた。これも毎日いれている成果だろう。毎日のように飲んでいたからか、これが無いと調子が狂ってしまう。

雷には第4艦隊の遠征報告を捌くように指示して、第2、第3艦隊の遠征報告書を確認しようとした時に提督室の扉が開かれた。

 

「Hey! 提督!戦果Resultあがったヨー!」

 

元気よく提督室に入ってきた金剛は報告書を机に置くと、提督の隣に座ってニコニコと横顔を眺めた。同じく隣に座っていた雷はそれを見て金剛へと攻撃を仕掛ける。

 

「ちょっと!金剛!何司令官の隣に座ってんの!?私は仕事してんのに!」

 

「提督と私は相思ソウ愛ネ!隣にいるのは当然デース!」

 

毎回のように起こる両隣の口論を耳からシャットアウトすると、金剛が持ってきた報告書に目を通した。

 

 

*南方奥海域 出撃報告書*

 

 

7月19日 09:00出撃

 

同日 17:00敵前衛艦隊と交戦

駆逐ハ級F2隻 軽巡ホ級F2隻 雷巡チ級2隻轟沈

 

同日 21:00敵護衛主力艦隊と交戦

戦艦タ級F2隻 重巡リ級F2隻 駆逐ハ級F2隻轟沈

この戦闘により、榛名改二が中破。任務続行可能と判断し進軍。

 

同日 23:00敵支援艦隊と交戦

戦艦タ級F1隻 重巡リ級F3隻 軽巡ヘ級F2隻を轟沈

 

同日 00:00 敵潜水艦からの奇襲

初撃の雷撃により愛宕改二 夕立改二が大破

三式水中探信儀により、敵潜水艦を補足。データ無し。艦隊編成は1隻のみ。

爆雷攻撃後、1本の雷撃を受け時雨改二が中破。

敵潜水艦の行方は不明。

 

任務続行不可能と判断し撤退。

 

 

*以上で報告を終了する*

 

 

報告内容を読み、目頭を押さえた。

 

「金剛、榛名達に入渠させておいてくれ。俺は上層部にこのことを報告しなければ」

 

「分かりました!提督ぅ!無理しちゃNoなんだからネー!」

 

ニコニコと入ってきたときと同じテンションを保ちながら提督室を出ていく金剛を見送り、上層部へと謎の潜水艦についての報告を行う。軍議に出すとの返答と共に、この潜水艦に関しては君に一任する。とのお言葉を頂いた。今日の軍議が終わり次第、指示を出すとの言葉を残し通話が切れてしまった。

 

「雷、開発部に行って探信儀と爆雷の開発を頼む。分量は[10/50/10/50]だ」

 

「分かったわ。何かあったら私を頼りなさい。すぐ駆けつけるわ。それじゃ行ってくるわね」

 

指令書片手に部屋を出ていく雷を見届け、対潜艦隊の編成をどうしようかと考えながら席に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い…暗い…

辺りを見回しても何もない。どこへ行けばいいのか分からず、先日からずっとこの海域を移動し続けていた。海面を漂う燃料を飲み、海底に沈んでいる弾薬を食べ、目的地が分からないまま彷徨い続けた。手に持った魚雷を推進機代わりに使い、前へ、前へと進み続けていた。海流の流れに逆らわずとにかく前へ。移動は魚雷に任せて自身は思考の海へと旅立っていた。

自分は何をすればいいのか。ここは何処なのか。何処へ行けばいいのか。

 

分からないだらけの少女が唯一、分かっていることがある。

 

艦娘は敵

 

だから少女は魚雷を撃つ。

 

 

 

 

 

ピーン…

 

 

 

 

探信音が聞こえる。その音に意識を覚醒させ、此方からも探信音を打った。

思考の海に沈んでいるうちに大分近づいてしまっていたらしく、敵艦が大分近い位置にいる。

にも関わらず、少女の顔に動揺や焦りの感情は一切浮かんでいない。

冷静に持っていた魚雷を起動させると標的に向かって発射する。発射された2本の魚雷は同一の標的へと挟み込むように接近した。

右舷に回り回避を試みているようだが、魚雷はしっかりと敵の背後をついていく。

青い目を光らせた魚雷が敵艦に食いつこうとした時に、別の艦がその軌道上に割り込んだ。

爆発音と共に多くの鉄片が海中に沈むが轟沈した気配はない。

 

反撃を受けないよう急ぎ潜航しようとする少女の頭上付近へとバシャバシャと大量の爆雷が投げ込まれた。その数は8。

 

「ヨケキレナイ」

 

ダメージを最小限にしようと体を丸くし衝撃に備える。

回りの爆雷が爆発する。急激な海流に揉まれラバースーツが所々破けていく。大きな損害こそ受けなかったものの、小破してしまった。

そんな少女の頭上にさらに追撃の8個の爆雷が投下される。

 

「キュウソク センコウ」

 

損傷の拡大を防ぐために逃げようとするが、小破した体が思うように動かない。

魚雷を抱えて真下へと潜行するが、爆雷の1つが至近距離で爆発してしまった。抱えていた魚雷がベコりと凹むのを見て遠くへ放る。魚雷が爆発し余波でラバースーツが吹き飛ぶ。荒れ狂う海流により前後不覚になった。爆発の衝撃で頭部にダメージを受けたのか酷い痛みが残る。

 

 

 

まだ…死にたくない。

 

 

 

下ではなく上へ。残った最後の魚雷に上手く動かない足と両手で抱き着き海上へ浮上する。

体中が痛い。ラバースーツの装甲により耐えられていた水圧だったが、その大部分を失ったことにより牙を剥いている。爆発でついた傷口から燃料を流しつつ少女は上を目指した。上にいるだろう敵艦のことは頭からすっかり吹き飛んでいた。今はとにかく浮上をし、沈むことを防がなければ。

 

 

 

 

そして…。

 

 

 

 

先日、数隻の艦娘を大破させた謎の潜水艦が艦娘たちの目の前に姿を現した。

 

雪のような白い髪を海面に浮かべ、棲艦特有の白い肌を晒している。爆雷によるダメージで至る所に傷がついており、四肢は力なく水面に浮かんでいる。主を海面まで届けるという大役を果たした魚雷は推力を無くし海底へと沈んでいった。

 

 

艦娘達は砲塔を向けながら油断なく近づき様子を探る。

力なく海面に浮かんでいる状態を気絶していると判断した雷は少女を抱えると、鎮守府へと進路を取った。

 

 

 




爆雷の数は 装備無し1個
      装備有り2個


*小説内では軽空母は対潜攻撃しない
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