(ふふん!さぁこい竜胆明日斗!お前の神器を……!)
そう意気込むカラワーナは握りこぶしを作り、自分を鼓舞する。
ニヤリと口元を三日月のように釣り上げた彼女の表情は悪の組織のネームドキャラを彷彿とさせるようだ。
シャラン……
「!?」
雰囲気が、変わった。
後ろからなんだかよく分からない気配が近づいてくる。
周囲にいた人たちにもすぐに気づいたのか、その方向へと視線を向ける。
ーーー後にカラワーナはこう語る。その様子はまるで、『王様が通る道を開ける統率された兵士のよう』であったと。
「……なんでジロジロとボクの方を見るのだろうか……?」
ふぅ……と呆れたような表情をして現れたのは竜胆明日斗。カラワーナとのデート(大嘘)相手である。
精神年齢が好奇心旺盛な子供のように幼く、テンション高めではしゃいでいるイメージの昨日とはまるで正反対だ。
「え?誰?」
思わず呆然とした感じで聞いてしまった私は悪くない。
ヒポグリフに乗って慌てて合流すると思っていた。昨日の彼の様子を見て簡単に予想出来た事だ。
だが、今の彼はどうだろうか?幼さは若干残っているものの、昨日見た印象とはまるで違う。完璧に男装をした儚い女性のような面影を感じさせる。少しだけ化粧をしているようだ。
衣装は、肩を露出させている真っ赤な着物。女の私でも思わずドキッとしてしまうようなすらっとしたラインを描いている。というかこんななりで本当に男なのだろうか?
普通のストレートヘアから、お団子状に結んだ髪のポニーテールにしているようだ。簪は3つ首のドラゴンを彷彿とさせるようなデザインだった。
「アハハ……満月が近くなるとこうなるんだよねぇ……」
なんで夜じゃなくて昼にこうなるんだよムシケラァ……とボヤくように言った。
「ん?ボクの顔になにかついてる?」
「あっ……いや……本当に昨日見た男と同一人物なのか照らし合わせてたんだ……」
「まぁ無理もないよねぇ……」
本日何度目か分からないくらい溜息をつき、振袖から煙管を取り出した……って!!
「お前!!未成年だろ!?なんで煙管なんて持ってるんだ!?」
「いや?これキセルじゃないよ。飴だよ飴」
「飴なはず無いだろ!!いいから咥えるのやめろ!!」
「えぇ〜?」
ええ〜?じゃない!と目にも止まらぬ早さでキセルを奪い取ったカラワーナ。しかし、その手は何故か、ネチョネチョしていた。
「あぁもう。だから言ったのに〜。それ、咥えるとこしか上手く固まってないから溶けやすいんだよもぉ〜」
「……え?いやマジで飴だったの?」
「そうだよ。竜姫さんが作ったんだって。この衣装も竜姫さんの本気の衣装とおソロだよ。あとは3匹の竜魂があれば完璧らしいんだけどね」
そう言った瞬間、着物の帯締めから3匹の龍が飛び出してきた。闇を思わせる漆黒の怪物。どうやら身体は一匹一匹が独立してリボン結びの要領で巻きついているようだ。
「オイイイイ!!それ何!?」
「何って……着物の帯だけど、なんでそんな当たり前のこと聞くの?」
「着物の帯がこんなうねうね動く怪物であってたまるかぁぁぁぁぁぁ!!」
「何言ってるかわかんないんだけど……ねぇ青髪美女くんちゃん?人間は誰しも自分の内側にドラゴンを1匹買ってるんだよ。ウィ○ード然り、花○烈○くん然りおっ○い○○○ン然り。みんな内側に熱いもの秘めてるの。だから着物の帯くらい些細なものでしょ」
「いや、些細じゃないんだけど……寧ろ大きいんだけど……?あと私の名前カラワーナ……」
「そんなことより行くよ。ちょっと知り合いにあって2人デートじゃなくなるかもしれないけどいい?」
「……もう好きにしてくれ……」
「イクゾー」
ツッコム気力すら失せたカラワーナは明日斗の生肩を掴んでフラフラと歩いていく。
その姿は酔っ払いの先輩が酔ってない後輩に掴まり立ちの千鳥足で何とか進んでいくようは哀愁さを漂わせている。
……たどり着いたのは、ゲーセン。騒がしくも楽しいひと時を過ごせる魅惑の空間である。1プレイ100円で様々なゲームを楽しめる。
ただし、それは上級者のみに与えられた特権である。慣れてないものや初心者にとっては苦痛を味わうこととなる。
格ゲーで壁ハメされ、クレーンゲームで金をスりまくる。唯一の楽しみは100円でポップコーンを作れるやつや、メダルゲームが精々。
あるのは敗者の屍と、勝者の美酒。そしてひっそりと楽しむ観客達。
そこに、一人の少女がいた!!
「コレで終わりだァァァァァァ!!」
バコォォォォォン!!
カーンカーンカーン!!
ここに今!!戦いの終了のゴングが鳴り響いたァァァァ!!
「ふぅ〜……アンタ、強いッスねぇ……名前、なんて言うんスか?」
「名乗るほどのものでは無いが、海智鯨真(かいちけいま)とでも呼んでくれ」
「ウチはミッテルトっス!今日は辛勝だったけど次は圧勝してやるからな!!」
「ふん!次は俺が勝たせてもらうぜ!!」
エメラルドグリーンの髪をポニーテールに纏めた中性的な美少年、鯨真はミッテルトと握手を交わした。
その姿はまさに、再戦を約束したライバルのように熱いものであったという。
明日斗「後半へ〜つづく」