展開のネタバレ注意ね(いつになるかは分からんけど)
バレンタインデー。それは2月14日に異性が好きな人にチョコを渡す日である。
義理、友、本命など。渡すチョコでその人が自分をどう思っているのか?というのが理解出来る日だ。
元は古代ローマ時代にいたキリスト教司祭のヴァレンティヌスという人物が関係していると言われているのだが、ここは割愛。
その前日の12月13日から準備は始まっているものだ。チョコを買い、チョコを選別し、型を考え、渡す人を決める。
それこそ、本命、義理、友。その関係を決断する日なのだ。
だからこそ……その夜は……
「全く……なぁにがバレンタインデーだよ。菓子会社の策謀に踊らされてなっさけない。何?チョコみたいに頭の中ドロドロに溶けてんの?溶けたやつ固められてんの?お、10連で○ック○ーケきたやった」
ルージュ色のアホ毛付きの髪のロングヘア。目にはハイライトが宿っておらず、死んだ魚のような瞳をした女顔の男がいた。
彼の名は竜胆明日斗。セブンソードプロダクションという芸能事務所に所属している、駒王学園の2年生である。
ソファーに背中を預けるように座り、右手を後頭部に当ててだるそうにスマホの画面に向かって言い放つ。
「お前……バレンタインに告白の全てをかけてる女もいるんだぞ……」
そんな彼に呆れた声を漏らすのは青髪の女性だ。高身長でツリ目の鋭い瞳を持つ、片目が隠れている髪型。どちらかと言うと同性に好かれそうな見た目の女性はカラワーナ。堕天使だ。
「まぁそう言うな。明日斗の奴、去年は散々だったらしいぞ」
「貰えなかったとかか?」
そんなカラワーナに対して宥めるように言うのは黒髪の女性。姐御のような雰囲気を漂わせるスタイルのいい女性。
しかし下半身は神話のバケモノを思わせるような、ケモノのような巨大で強靭な肉体だった。大概の人ならば怯え逃げ惑うような見た目をしている。
そんな女性の名はバイサー。はぐれ悪魔として3大勢力を悩ませた存在である。
「全く……あの男共……なぁにが『リアス先輩に届けてくれ』だの『リアスの妹さん』だの好き勝手言って……挙句の果てには人違いされた上幻滅されるとかなんなの?男からも何度も告られたし……ほんとどうしてくれんのこれ?マジで頭痛くなってきた……バレンタインなんて滅びればいいのに……明日休もっかなぁ……?」
「明日は撮影だよお兄ちゃん」
無表情で淡々と要件を言った水色髪の少女。片目が隠れるギリギリのラインの前髪に、セミロングまで伸ばした髪型。ぴょこんとあるアホ毛に加え、少々小柄な少女は竜胆龍騎。明日斗の妹だ。
「何?バレンタイン衣装に着替えてロケ?それともチョコクッキング?駒王学園の撮影?」
「チョコレートイベントとしか聞いてない」
「ふーん」
さも興味無さそうに反応する明日斗。それを見てため息をつくカラワーナに、明日斗の頭を撫で、ほっこりした雰囲気を作っているバイサー。
「そういや堕天使って妖魔並に階級にうるさかったよね?バレンタインってどうしてんの?」
「……基本は郵便物だな。下級が中級に会うだけでもかなり厳しいし、上級ともなれば雲の上の存在だからな」
「全くよ。しかも郵便物でも下級が上級に渡すだけで手続きに時間がかかるんだから。おかげでアザゼル様にチョコを渡すことすら出来なかったんだから」
「大変なんだなぁ……ん?」
聞き覚えのある女性の声。しかし、ここに住んでいる家族は明日斗とカラワーナ、バイサー。そして妹の龍騎の4人。
ペットにヒポグリフがいるのだが、彼は獣に分類されるので除外。
チラッと横を向くと……
「……なんでキミがいる訳?」
黒髪ロングのボルテージ衣装を着た美女がいつの間にか明日斗の隣に座ってコーヒーを入れていた。
「なんでって……部下に会うのに理由なんているの?」
「いや、カラワーナはもう君の部下じゃないから。ボクの部下だから」
「いや……お前の部下じゃないからな……?」
苦笑いをしながらツッコむカラワーナ。この光景ももう見慣れてきた。
レイナーレが兵頭一誠。そして明日斗とカラワーナに敗れ、復活してからは夜はこんな光景が日常となっている。
レイナーレが口を開き、明日斗が口を開き、それが広がり口論となる。まるで根っこが似ているものの、馬が合わないためによく喧嘩をする友人のように。
「大体家の番鳥と番蜘蛛を手懐けてなぁに企んでんの?なに?《私は至高の存在になるのよー!》とかまだ思ってたりするわけ?《ぼくのしょうらいはやきゅうせんしゅになりたいです!》って言う幼稚園生と同じレベルなの分かんないの?」
「そういうアンタは無駄にスペック高い癖に無駄な事しかしてないわよね?なに?自慢してるの?自分は高スペックだって自慢してるわけ?こういう奴ほどいや〜なやつなのよね〜。自分のスペックに胡座かいてなーんにもしないやつ。典型的なやられ役ってそういう奴が多いのよねぇ〜」
「黙ってよ至高の堕天使(笑)!お前こそ転生したばかりの見習い悪魔に手も足も出ないまま殺られたじゃないか!アレか?ソウ○スティール抜きのクジ〇シー?ソウ○スティール見切られたのぉ〜?『流○切りが完全に入ったのに』ってやつ〜?得意技ひとつ見切られた位で途端にクソザコナメクジになるのもテンプレだよね〜?」
「いや明日斗。それク○ンシー違う。クジ○シーに殺られたやつ」
カラワーナがやんわりと訂正を入れるものの、口論はどんどんヒートアップしていく。
「アンタのその外見、どう見てもグレモリーよねぇ?どう見ても背と胸が低くなったグレモリーよねぇ?」
「うるせぇ!作者のボキャブラリーの無さを舐めんなゴラァ!1回知り合いのDMで見せた時なぁ!なんて言われたと思う!?『アホ毛とか髪色とかリアスですよね』だぞ!!別作品での没案をそのままボクに半分移植したんだぞ!」
「でもそのおかげでキャラが纏まったのは事実よね?」
「そうだねク○ンシー」
「ク○ンシー言うなぁァァァァァァ!!!」
「2人ともうるさいぞ!近所のこと考えろ!」
「「黙って(黙りなさい)ウォッチ○ン!!」」
「誰がウォッチ○ンだゴラァァァァァァァァ!!!」
止めに入ったカラワーナもカチンと来て口喧嘩に参加。益々痛烈さを増していく。
それを呆れるようにジト目で見つめる番蜘蛛と番鳥。彼らはバイサーが与えたエサを無言で食べながら3人の喧嘩を見つめているようだ。
「……明日のチョコの仕込みでもするか……」
バイサーはキッチンへと向かい、龍騎は欠伸をして部屋に戻る。
それに気づかない3人は更に発展。それは夜中まで続いた。
(……腐りやすいし、明日まで持つかなぁ……?)
虚ろな目で家の冷蔵庫を一瞬見たあと、頭を掻きながら面倒くさそうに欠伸をする。
ヒートアップしたレイナーレとカラワーナにチョップをかまし、部屋で3人で川の字になって明日を迎えるのだった。
後半めっちゃ急ぎあしぃ……(´・ω・`)