ヒエヒエの実を食べた少女の話   作:泰邦

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メリークリスマス


第九十二話:〝海賊王〟

 ──〝富〟〝名声〟〝力〟……この世の全てを手に入れた男、〝海賊王〟ゴールド・ロジャー。

 前人未到の世界一周を成し遂げた男を世界はそう呼び、また手に入れた全てのものを総称して〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟と呼んだ。

 

「……〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟か」

 

 海軍、世界政府はロジャーを狙って過剰なまでに動き始め、同様にロジャーが手に入れた全てを奪おうと誰もがロジャーの行方を探した。

 カナタは新聞を読みながら小さく笑い、「ついにやり遂げたか」と我が事のように喜ぶ。

 執務室に丁度書類を運び込んできたティーチは、カナタの肩越しに新聞を読みながら「ロマンがあるな」と笑っていた。

 

「最後の島には何があったんだろうなァ……姉貴は何だと思う?」

「さあな。数日前に酒の勢いで連絡を入れてきたときは、随分支離滅裂なことを言っていたが……」

 

 かろうじて分かったのは最後の島を〝ラフテル〟と名付けたことくらいだ。

 かなり酔っぱらっていたので祝いの言葉だけ伝えたが、あの分だと連絡してきたこと自体を忘れている可能性もある。

 

「〝ラフテル〟……姉貴は気にならねェのか? そこに何があるのかってよ」

「気にならないと言えば嘘になるが……そうだな、あの男が〝ラフテル(Laugh Tale)〟と名付けたんだ。余程のことがあったんだろう」

 

 財宝が〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟と呼ばれていることも鑑みて、カナタは「〝赤い土の大陸(レッドライン)〟の崩し方でも書かれた石碑があったのかもな」と冗談めかして言う。

 ティーチは一瞬きょとんとした顔をした後、意味を理解して大笑いした。

 

「ゼハハハハハ!! ()()()()()ってそういう意味かよ!!」

 

 世界中の海をひとつにするという意味での()()()()()

 もっとも、カナタの予想に過ぎない。莫大な宝は本当にあったと言っていたし、恐らくは違うのだろう。

 ティーチはひとしきり笑った後、部屋を出て行った。

 

「……しかしティーチめ、随分と大きくなったな……」

 

 ちょっと前までまだ子供だと思っていたが、既に背丈は抜かれたし横幅も随分大きくなっていた。

 カイエもここ数年でかなり背が伸びていたし、子供の成長は早い。

 〝西の海(ウエストブルー)〟で天竜人を殺害してからこっち、勢いのままに突き進んできた。資金繰りは安定しているし、易々と潰されないだけの戦力も抱えることが出来た。

 久しぶりの……本当に久しぶりの、平穏だ。

 だが。

 

「〝海賊王〟か……また、時代が動くのだな」

 

 海軍も世界政府もロジャーを放ってはおかないだろう。

 ロジャーを狙う海賊も増える──否応なしに世界は荒れる。

 時代のうねりは、すぐそこまで迫っていた。

 

 

        ☆

 

 

「わはははは!!! 久しぶりだなァ、カナタ!! 元気してたか!?」

 

 相変わらず病人とは思えない元気さのまま、いつかと変わらない笑みを浮かべるロジャー。

 追われていたのか、遠目には多くの海賊旗が見えている。ロジャーなら蹴散らすことも難しくないだろうが、相手にするのも面倒なのだろう。

 そういう意味では面倒事を押し付けに来たとも言えた。

 財宝に目が眩んでロジャーを追いかけてきたはいいものの、カナタのいる〝ハチノス〟に攻め入る勇気はないのか……多くの船はうろうろと島の回りを回遊している。

 目障りなので哨戒を出して潰させておくように通達し、カナタはロジャー達を快く迎え入れた。

 

「久しいな、ロジャー。不治の病を患った割には随分元気そうだ。クロッカスの腕が良かったからか?」

「ああ、クロッカスのおかげだ! あいつを紹介してくれたスクラにも感謝だな!」

 

 丸っきり言う事を聞かなかったが、それでも治療にあたってくれたスクラに感謝してはいるらしい。本人が聞けば「感謝の前に言う事を聞け、この愚患者め」と罵ることだろう。

 既に余命以上の時間が過ぎている。いつ死んでもおかしくなかったが……クロッカスのおかげで旅が出来た。

 カナタはロジャーの後ろで気恥ずかしそうに頭を掻くクロッカスに視線を向け、「久しぶりだな」と声をかけた。

 

「数年ぶりか。〝双子岬〟に報告に行った時以来だな」

「そうだな。お前たちの情報を信じていなかったわけではないが、やはり自分でも確かめたかったのもある……結果は残念だったがな」

 

 ルンバー海賊団を探すことを条件に、クロッカスはロジャー海賊団に乗船した。結果は途中で脱落したことしかわからなかったが……それでも、確かめられただけ良しとするべきなのだろう。

 誰もがカナタやロジャーのように強く在れるわけではない。成功する者がいれば、必然的に脱落していく者もいるのだから。

 握手を交わしたのちにクロッカスは「医務室を借りるぞ」と言ってロジャーを引きずって行き、レイリーが入れ替わるように現れた。

 

「薬が切れそうだったんだ。済まないが、少し分けてくれるか?」

「構わない。他にも必要な物資があればこちらで用意しよう」

「すまない、助かる」

 

 ロジャーの病気を抑えるために必要な薬は数が多い。クロッカスとてそれは理解して必要な量の薬を都度調達していたが、世界一周を成し遂げて以降はどこへ行くにも海賊や海軍が現れて補給もままならなかったらしい。

 今後どうするかは全員が覚悟していることだが、最後に宴をしようとカナタのところに寄ったのでついでに物資の補給を行うことにしたようだった。

 続々と降りてくるロジャー海賊団の船員たちの顔は明るい。今後はどうあれ、この旅の思い出は皆の心に残る良い物だったのだろう。

 ふと、降りてくる船員の中にイゾウとおでんを見つけた。

 

「イゾウ! 久しいな、元気にしていたか? ついでにロクデナシも」

「おれはついでかよ!?」

「カナタさん、お久しぶりです」

 

 おでんに対しては適当に挨拶し、イゾウには握手を交わして話しかける。

 おでんは不満そうだが、言っても仕方がないと思ったのか口をへの字にして黙り込んだ。

 以前来た時にはイヌアラシとネコマムシがいたが、今回は見回しても姿が見えない。どうしたのかと聞けば、「トキ様が病に倒れたので一足先にワノ国に降りました」と答えた。ロジャーのような不治の病ではなく、船旅の疲れによるものだという。

 錦えもんたちが把握していないトキや子供たちだけを降ろすわけにもいかず、ミンク族の二人が降りたという訳だ。

 

「お前たちもワノ国へ帰るのか?」

「ええ、その予定です」

 

 本来ならイゾウも先に降りておくはずだったが、おでんのお目付け役が一人はいたほうがいいという事で相談の上残ったらしい。

 

「……出来た家臣だな」

「そうだろう! 何せおれの家臣だからな!」

「上がこれだというのに」

「どういう意味だァ!!」

 

 ドヤ顔で自慢したおでんが次の瞬間にはキレていた。

 だが、自分の我儘で海外に出ることが禁止の国から無理矢理出国しているのだ。半ば暗黙の了解を受けているとはいえ、好ましいことではないだろう。

 このまま立ち話というのもどうかと思い、詳しい話は夜の宴にすることにして全員を〝ハチノス〟に迎え入れた。

 

 

        ☆

 

 

 その日の夜。

 集まった〝黄昏〟の面々とロジャー海賊団は、手に酒の入ったコップを持って宴が始まるのを待っていた。

 出来上がった料理が次々にテーブルに並び、立ち飲み形式で好きなように歩き回って食べられるようになっていた。

 ロジャーは今か今かと待ちくたびれ、準備が終わったと聞いた瞬間に立ち上がる。

 

「よォし、もういいだろ! 時間だ!」

「では──ロジャー海賊団の世界一周を祝って!!」

『乾杯!!!』

 

 酒の入ったコップをぶつける音がそこかしこから聞こえてくる。

 誰もが笑って酒を飲み、料理を摘んで舌鼓を打つ。旅の終わりを迎えたロジャー海賊団への祝福であり、それぞれが新しい道を行く旅の門出への餞別でもあった。

 カナタはロジャーと少しばかり立ち話をして、〝黄昏〟の古株たちがロジャーのところへ殺到したので少し離れてイゾウとおでんのところへ足を向ける。

 

「おうカナタ、飲んでるか!?」

「まだ始まったばかりだというのに、もう出来上がっているのか?」

「ワハハハ! 今日は祝いだからな!」

 

 呆れた様子のカナタの態度も気にせず、おでんは酒を浴びるように飲んでいた。

 一方でイゾウは控えめにおでんを窘めつつ、ワノ国のことを考えているのか難しそうな顔だった。

 

「ワノ国が気になるのか?」

「……ええ。一度だけ、トキ様をお送りしたときに見た光景が……脳裏に焼き付いて離れないのです」

 

 かつてのワノ国からは想像も出来ない状況だった。

 多くの工場が建ち並び、決定的な何かが豹変している……それを感じ取っていたのだ。

 それでも、イゾウにはやるべきことがあった。それ故にワノ国に戻ることは出来ず、今の今まで頭の片隅に追いやっていた。

 戻ってからやるべきことは数多くあるだろう。

 

「それだがな」

 

 カナタは以前ワノ国に行った時の事を再び話す。

 何者かに陥れられて将軍殺しの汚名を着せられたこと。〝白ひげ〟と戦ったこと。そして、将軍代理とされる〝オロチ〟のこと。

 その名前を聞いた瞬間、酔って気分が良さそうだったおでんも思わず真面目な顔をする。

 

「オロチ? 何故その名前が出る?」

「お前の弟分だと認識されていた。私は寡聞にして知らないが……本当か?」

「そんな訳があるか! あいつはヤスさんのところで小間使いをしていたから、気を使って金を貸していただけだ!」

 

 それ以上の関係性ではなく、ましてや弟分などとは片腹痛い。

 だが市井の者たちにそう思われていた以上、どこかで情報操作が行われていたのだろう。何の目的があって、などと聞くまでもない。

 ()()()()()()()だ。

 

「恐らく、今のワノ国はかなり厄介なことになっていると言っていい。私も恩義のあるスキヤキ殿を暗殺した容疑を掛けられた以上、犯人には思うところがある」

「……だから手を貸すって?」

「そうだ」

 

 今の〝黄昏の海賊団〟の勢力は凄まじい。

 〝ビッグマム海賊団〟〝金獅子海賊団〟と抗争を繰り返すも敗れることはなく、拮抗した勢力を保って海の皇帝の如く君臨している。

 ワノ国で誰が暗躍しているかは知らないが、カナタが手を貸せば解決することは可能だろう。

 しかし。

 

「……いや、駄目だ。ワノ国のことはおれが解決する」

「何故だ? 敵の事は何もわかっていない。戦力は多い方がいいだろう?」

「おれは一度国を出た身だ。そんな奴が将軍になるなんて虫のいいことを言うつもりは無かったが……旅をするうちに、そしてお前の話を聞いて気が変わった」

 

 ──おれがワノ国の将軍になる。

 

「……身内のサビは身内で何とかするとでも言うつもりか?」

「あァそうだ。ワノ国はおれの国だ。おれが何とかしなくちゃならねェ……どのみち、ワノ国は開国するつもりだ。いずれはおれがやらなきゃいけねェ」

「おでん様……」

 

 覚悟を決めた顔をするおでんを見て、イゾウは感極まったように「立派になって」と涙ぐむ。

 カナタは数秒、睨みつけるようにおでんを見ていた。だが、おでんの決意が固いと見るや、ため息を吐いて「仕方がない」と諦めた。

 おでんの頑固さは良く知っている。何を言っても意見を変えることはないだろう。

 

「だが、そうだな……イゾウは置いていけ」

「あァ!? なんでだよ!?」

「ワノ国を開国するのだろう。世界政府加盟国になるかどうかはともかく、他国との交渉や貿易に関してはお前たちにノウハウが無い。最低限のことは叩き込んでおこう」

「そういう事か……いや、だが……そういう事なら仕方ねェ、か?」

 

 うーんうーんと頭から湯気を出しながら考え込むおでん。

 適当に料理を取って酒のツマミにしつつ、カナタはイゾウの方に視線を向けた。

 

「お前自身はどう思っている?」

「……他国との交渉術は必要でしょう。貿易は少なからず康イエ様がやっていましたが、(まつりごと)となると、各郷を治める大名との折衝くらいしか無いのも事実です」

「だが、それはイゾウじゃなくてもいいんじゃねェか? お前らのところから得意そうなやつを何人か貸してくれりゃァ済むだろ」

「外交を外様にやらせる君主がいるか、阿呆め」

 

 イゾウが経験を積むために〝黄昏〟にいれば、少なからず影響はあるだろうが……それでもおでんの家臣であることに変わりはない。

 カナタの部下が外交を担当するようになってはワノ国の実効支配をしているのと同義だ。それはおでんにとっても良いことではないのだからと、考えなしの発言をするおでんに頭を痛めながら説明する。

 要はおでんの顔を立てているのだから素直にアドバイスを聞けという事だ。

 カナタのことを信用しているからこその発言なのだろうが、国の王となるなら公私混同は避けるべきだ。

 

「多少年数はかかるが、最低限のことは覚えさせる。その間にワノ国を何とかしておけ」

「……仕方ねェ。イゾウ、頼めるか?」

「おでん様のためとあらば、文句なく」

 

 おでんは渋々といった様子でイゾウに頼み、イゾウは一切文句なく受け入れる。

 真面目な話になったが、今夜は祝いの席だ。気が合わずともそれなりに理解はある。話はこれくらいにして、宴を楽しむように告げて二人から離れた。

 おでんに気付かれないように、イゾウに「おでんのビブルカードを作っておく。爪のかけらを切っておいてくれ」と頼みごとをして。

 その後、レイリーやクロッカス、ギャバンやバギーにシャンクスと話していると、ロジャーが少し離れたところでカナタを呼んでいた。

 人気が少ない場所で、やや喧騒から離れている場所だ。

 

「どうした、ロジャー。こんなところに呼び出して」

「いや……まァ、なんだ。お前には色々感謝してんだ。クロッカスの事とか、おでんの事とかよ」

 

 二度命を救ったとはいえ、ロジャーの旅にとって重要な情報をもたらしてくれた存在でもある。

 これを逃せばもう会うことはないと、ロジャーは深々と頭を下げた。

 

「ありがとう。お前のおかげで、おれたちは無事に旅を終えられた」

「……礼を言うのは私の方だ。お前に受けた恩は一生のものだからな」

「ワハハ、そうか! おれはもう長くねェ。もしお前が良けりゃだが……おれの子供を助けてやって欲しい」

「子供? お前、子供がいたのか?」

「これから出来る!」

 

 なんだそれは、と言いたげな顔で呆れるカナタ。

 だが、他でもないロジャーの頼みであれば否は無い。

 

「私のビブルカードを渡しておこう。お前の子供に肌身離さず持たせるよう言っておけ」

 

 ビブルカードの切れ端に「親愛なる友へ」と書き、ロジャーに手渡す。もしロジャーの子供が海を渡ってカナタの元まで来たとき、手助けが出来るように。

 ロジャーは「世話をかける」と笑って受け取り、酒を飲む。

 ……かつて、ロジャーがガープと共に打ち倒した男がいた。その娘にこんな頼み事をする日が来るとは、夢にも思っていなかったが……運命というのは数奇なものだ。

 長い付き合いのある相棒でもなく、共に海を渡った仲間達でもなく、カナタにこそ頼むべきだとロジャーは考えた。

 ただの勘だが、ただの勘だからこそでもある。

 

「ロジャー海賊団は今日限りで解散するつもりだ。もう、おれ達の向かうべき冒険はねェからな」

「……そうか。これからどうするつもりだ?」

「最後に〝白ひげ〟に会うつもりだ。あいつとは長年戦ってきた……ガープと同じで戦友みてェなもんだ」

「〝白ひげ〟か」

 

 カナタも一度戦ったことがあるが、確かに個人の強さという意味では頭一つ抜けていた。リンリンもシキも、直接的な戦闘力という意味ではニューゲートに及ばないだろう。

 もっとも、シキはロジャーと互角に戦う実力者だ。易々とやられはしないだろうが。

 

「お前も一度戦ったんだって? どうだった」

「どう、と言われてもな。かなり強かったが、それだけだ」

 

 勝てるかどうかで言うならかなり厳しいが、ニューゲートは能力の及ぼす影響が大きすぎるがゆえに全力を出せない。その辺りを考えれば互角と言っていい。

 本当に本気で殺し合えば、カナタではまだ及ばないだろうが。

 二人はツマミを手に取りながら酒を飲み、話題はロジャーの名前へと移る。

 

「近頃は海軍も新聞もおれのことをゴールド・ロジャーだと言う!! 違う! おれは()()()()D()()()()()()だ!!」

「Dか……うちの部下にも一人いるし、何人か知ってはいるが……結局何なのだろうな」

 

 ティーチや、かつて肩を並べたドラゴン。それに海軍のガープ。

 他ならぬカナタも〝Dの一族〟に名を連ねているが、その名の由来までは知らない。

 

「おお、知りてェか? ラフテルへの行き方も知りてェなら教えてやるが」

「そちらは興味が無いな。単なる財宝なら今となっては座っているだけで手に入る」

「わははは! すっかり商人だな、お前も!」

 

 ラフテルへ本気で行くつもりならもっと本気で動いている。カナタにとって最重要目的ではないのだ。

 だが、〝Dの一族〟に関しては興味もある。父親にも……母親にも関わる話だ。

 

「いいか、〝Dの一族〟ってのは──」

 

 ──ロジャーは最後の旅で得た情報を話し、カナタもそれを知った。

 本来であれば敵対してもおかしくなかった二人が友好的になり、このような結果となった──この二人の出会いは、きっと運命だったのだ。

 

 

        ☆

 

 

 それから一年後のことだ。

 ロジャー海賊団が〝ハチノス〟で解散し、一人一人行方知れずとなった一年後──ロジャーは海軍へと自首していた。

 「〝海賊王〟が海軍に捕まった」と報道され、激高したシキが海軍本部に殴りこんでガープ、センゴク両名と戦闘。

 海軍本部を半壊させるまでに及び、戦いはシキの敗北という形で決着を見た。

 〝金獅子〟のシキはインペルダウンに投獄され、〝海賊王〟ゴールド・ロジャーの処刑は生まれ故郷である〝東の海(イーストブルー)〟にて執り行われることとなる。

 海軍の厳重なる警備の下、ロジャーは〝東の海(イーストブルー)〟のローグタウンにある処刑台へと送られ、処刑の瞬間を待つ。

 そこには多くの見物人がおり、後の世に大きく名を馳せる海賊たちが集っていたという。

 その中で、誰かが叫んだ。

 

「お前の財宝はどこに隠したんだ!」

 

 誰もが探し、見つけられなかった存在。

 〝富〟〝名声〟〝力〟──この世の全てを手に入れたとされる男の隠した財宝はどこにあるのだと。

 それに対し、ロジャーは処刑直前にも関わらず……()()()()()()()

 

「おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやるぜ。探してみろ。この世の全てをそこに置いてきた」

 

 ──それは、小さな灯が業火へと姿を変える瞬間だった。

 瞬く間に燃え広がっていく熱狂が渦を巻き、誰もが海に(ロマン)を見る。

 老若男女を問わず、強きも弱きも関係なく──〝偉大なる航路(グランドライン)〟を目指す。

 

 ──ここに、大海賊時代が幕を開けた。

 

 

        ☆

 

 

 〝ハチノス〟の砦内部。

 カナタはドラゴンからロジャー処刑の報を聞き、その最期を知るや否や大きく笑った。

 あの男らしい最期だ。

 月夜に盃を掲げ、死んでいった男に捧げるように言葉を紡いだ。

 

「さようなら、偉大な男。地獄の果てでまた会おう」

 




END 海賊王/ビリーバーズ・ハイ

NEXT 大海賊時代/insane dream
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