ヒエヒエの実を食べた少女の話   作:泰邦

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第九十七話:未来へ贈る花束を 前編

 かつて、カナタには姉と慕った女性がいた。

 幼いカナタに対して色々と世話を焼いてくれたこともあり、随分と仲良くなった。

 その女性が賞金首になり、あまつさえ世界政府に狙われているとなれば──カナタが動かない理由はない。

 〝凪の帯(カームベルト)〟を越え、〝西の海(ウエストブルー)〟へと移動して〝オハラ〟を目指す一行。

 だが、風向きが悪かった。オハラまではやや遠く、時間がかかる。

 オハラは考古学者の聖地だ。

 〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟を探し求める考古学者は後を絶たず、それらへの見せしめも兼ねてか政府がオハラへの関連を常に探し続けていたことは知っている。

 この機会を逃すことはないだろう。現に海軍本部の軍艦も動いていると情報が入っていた。

 なので。

 

「……船だと時間がかかる。私は一人先行して軍艦を沈めてこよう」

「待て待て待て!!」

「ツッコミが追い付かねェ!! 海軍は〝バスターコール〟を発令するつもりなんだろ!? いくらお前でも分が悪ィ!」

「そうだぜ! そもそもオハラまで結構な距離がある! 軍艦の足は速いが、まだ数日の時間はあるだろ!?」

 

 ジョルジュとスコッチが先行しようとするカナタを必死に引き留めていた。

 カナタの実力は良く知っているが、流石に中将五人は相手取るにしても誰が来ているかによるところが大きい。仮にガープなどが来ていれば目も当てられない大惨事になってしまう。

 カナタが姉と慕う女性──オルビアが心配なのはわかるが、結論を出すのがいくら何でも早すぎる。

 

「つーか、政府主導の襲撃だろ? お前が介入したら流石に七武海除名じゃねェのか」

「構うまい。元より私が欲した地位ではない」

「おれ達の一年間の準備が無駄に……まァお前がやるっていうなら仕方ねェが」

 

 カナタにどれだけ言っても、決めたことを覆すことはないと知っている。

 二人は溜息を吐き、「海軍と全面戦争か」と呟いた。

 

「一人二人くらい、お前なら秘密裏に助け出せるだろ。オルビア一人攫って来れば済む話じゃねェのか?」

「仲が良かったのはオルビアくらいだが、学者たちとも不仲だったわけでは無いからな」

 

 あれもこれもと言い始めるとどこまでも広がっていく。折り合いは付けるべきだが、今回は全員助けるべきだと思っていた。

 

「〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟を読める学者だ。いずれ必要になる……世界政府が消したい者ほど生かしておくべき人間も他にいない」

「反骨精神溢れすぎだろ」

「政府に何の恨みがあるんだ……」

 

 出来る事ならオハラに先行して防衛に回りたいところだが、本部の軍艦を相手取るには数が少なかった。数は多くないが政府の役人もいるだろう。

 幹部を招集する暇もなく出てきたし、〝ハチノス〟の防衛に戦力を残す必要があったので、今オハラに向かう戦力は軍艦三隻分にも満たない。

 〝バスターコール〟と正面衝突するにはやや不利だ。

 招集はかけているので一時的にでも凌げば戦力は増えていくが、その辺りは出てきた中将にもよる。

 ……〝バスターコール〟の発令権限は海軍大将か元帥しか持たないので、最悪センゴクかコングが出張ってきている可能性もあるが。

 

「だがまァ、急ぎたくなる理由はわかった」

 

 ジョルジュは「こんなこともあろうかと」と言って何かをカナタに投げ渡す。

 カナタは受け取ったそれを見てみると、趣味の悪い金色の髑髏のお面だった。

 オクタヴィアが付けていた物によく似ている。

 

「失わなくて済むならそれに越したことはねェ。七武海の立場だって、お前はどうでもいいかもしれねェがおれ達にとっては使える手札だからな。最悪、オクタヴィアに全部罪をひっ被せちまえ」

「お前は人の母親を何だと思っているんだ」

 

 だが悪い手ではない。

 オクタヴィアへの感情などそんなものだったし、ドラゴンが世界政府に牙を剥いて革命を起こそうとしているのを知っている以上、政府側の情報を手に入れる立場として七武海の座は有用だ。必要な物ではないにせよ、一度手に入れた席なら進んで手放す必要は無い。

 それとマリージョア横断を商機と見て準備してきたスコッチとジョルジュの頑張りも無駄にならない。

 

「だがもう少し時間はあるだろ。オハラまで数日かかるだろうし、焦らず待つことも──」

「そのことだけどよ」

 

 船内からクロがメモを片手に現れた。

 話はある程度聞いていたのか、今しがた話していたことについて追加の情報が来たと言う。

 

「元々オハラに矛先を向けてたんだろうな。思ったより行動が早ェ。政府の船がオハラ近海まで移動してるらしいぜ」

 

 海軍の軍艦と政府の船で定期的に連絡を行っているのだろう。通信を傍受した限りだと、カナタ達よりも先に到着する可能性は十分にある。

 様子を見ながら、などと言っている場合では無くなった。

 

「──私は先行する。オハラに近い島で待機しておけ」

 

 無人島ならいくつかある。身を隠すには良いだろう。

 派手に開戦するよりも時間稼ぎに徹して奇襲をかけたほうがいいと判断し、カナタは船を飛び降りた。

 

 

        ☆

 

 

 一人船から飛び降りて、およそ一晩海上を走り通した。

 道中で軍艦を確認出来れば奇襲して時間を稼ぐことも考えたが、残念ながら既にオハラ近海の北西部に集合している。ガープはいないようだが、ひとまずオルビアの安否確認が先だ。

 ざっくり船の位置関係を把握し、趣味の悪い仮面を被って島の中央にある〝全知の樹〟付近へと足を運ぶ。

 タイミングとしてはかなりギリギリだったらしい。

 政府の役人が学者たちに銃を突きつけ、クローバー博士と役人が何かを話している。オルビアは傷だらけで倒れているし、すぐにでも動きたいところだが……まずは数を把握してからだ。

 何を言っているかは聞き取れないが、政府の役人を全滅させれば足は付かないと考え──どう動くか思案している間に、クローバー博士が銃で撃たれた。

 一刻の猶予もないと判断し、即座に動く。

 

「──では、大将センゴクから預かったこの〝ゴールデン電伝虫〟で……ああ?」

 

 現場を任されたサイファーポール──CP9の長官であるスパンダインは、左手に持ったゴールデン電伝虫で〝バスターコール〟を発令しようとして、気付く。

 ()()()()()()()()()()

 

「あ、ああ、あああああああああ!!? お、おれの腕がァァァァァ!!!」

「長官!? 一体何が──!?」

 

 刀か何かで綺麗に切り落とされたかのような断面だ。

 傍にはCP9が控えていた。その二人に悟られず、スパンダインの腕を切り落としたのだ。

 

「なるほど、これが〝ゴールデン電伝虫〟か……〝バスターコール〟の発令はこれで行う訳だな」

 

 カナタは手刀で切り落とした腕を投げ捨て、珍しそうにゴールデン電伝虫をマジマジと見る。

 背中についているボタンを押すだけで、オハラは砲撃の雨が降って壊滅するだろう。そう思えばここで止められてよかったと言うべきか。

 勿体無いが、ゴールデン電伝虫は踏み潰して破壊し、学者たちを守るようにスパンダインの前に立つ。

 周りの役人など気にも留めていない──どのみち、意識を保ってなどいられないのだから。

 

「テメェ……! 何者だ!」

 

 スパンダインの横に控えていたサイファーポールの一人が声を荒らげる。

 もう一人は即座にスパンダインの腕をベルトで止血しており、時折視線だけカナタへと向けていた。

 

「……その仮面、まさか──」

 

 ここ数十年の中でも五指に入る超高額の懸賞金を掛けられた存在を思い出しかけ──次の瞬間に発された強烈な覇王色で()()()と意識が揺れた。

 数多の経験を積んだCP9でそれなのだ。そこらの役人が耐えられるものではない。

 学者たちを囲んでいた役人たちは次々に倒れ、スパンダインもまた泡を吹いて倒れていた。

 

「……殺しておくか」

 

 カナタの覇王色でも意識を保っていられるのなら、それなり以上に強いという事。

 邪魔をされる前に消しておいた方が良いだろうと考えて、一歩踏み出した瞬間にCP9の二人は動いていた。

 一人はスパンダインを抱えて逃走。

 一人はカナタへと時間稼ぎを兼ねて攻撃。

 CP9はサイファーポールの中で唯一殺しを許可された集団でもあり、CP0に及ばないまでも実力はある者たちで構成されている。並の強さでは太刀打ちできない。

 

「──死ね」

 

 カナタの咽喉へと指銃(シガン)を繰り出して殺害しようとして──カナタの右足が僅かにブレた。

 それを知覚することも出来ず、男は凄まじい勢いで島の外まで吹き飛ばされる。

 逃走を選んだなら追う必要は無い。優先するべきはオルビアの方だ。

 カナタは学者たちの方へと振り返り、歩を進める。

 誰もが突然の事態に驚愕を隠せない中で、オルビアだけがカナタのことを正確に把握していた。

 

「……久しぶりね、今日はそんな恰好までして……七武海になって、政府の側についたと聞いていたけれど」

「仮面一つ付けただけだろう。七武海の座は私が望んで欲したモノじゃない……お前を助けられるなら安いものだ」

 

 怪我をしているオルビアを抱き起こし、仮面を外して撃たれたクローバー博士の近くに寄る。

 

「こちらも久しぶりだな、クローバー博士」

「まさか……カナタか。最後に会ったのは、何年前だったか……随分美人になった。貸していた本を返しに来たのか?」

「フフ。残念だが、まだ本は返せそうにない。だが、あなた達の命を救いに来た」

 

 クローバー博士は撃たれているが、致命傷にはなっていない。手当をすれば十分助かるだろう。カナタは仮面を付けなおし、ひとまず服を破って止血だけしておく。

 すぐ近くにいた黒い髪の少女はおろおろとクローバー博士とオルビアを見回していたが、意を決したようにオルビアに話しかけた。

 

「あの……お母さん、ですか?」

 

 カナタは少女の声に顔を上げ、オルビアと少女を見比べて「なるほど」と呟いた。

 髪の色は違うが、目元などはよく似ている。

 結婚したという話は聞いていたし、子がいても何ら不思議ではない。

 オルビアは迷ったように目を伏せ、何かを言おうとして口を閉じる。その様子を見てカナタは溜息を吐いた。

 

「ここにいるのはお前の味方だ。何を言っても咎められることはない」

「……そう、ね──おいで、ロビン」

 

 手招きし、オルビアは少女──ロビンの手を取って抱きしめた。

 

「お母さん!!」

「大きくなったのね、ロビン……」

 

 六年前にオハラを旅立って以降、一度も会うことが出来なかった我が子を抱きしめ、オルビアの目から自然と涙が零れ落ちる。

 ロビンもまた、長い間待ち望んでいた母との再会に堪え切れず涙を流す。

 再会は喜ばしいことだが、いつまでもそのままにしておくわけにはいかない。

 

「今のうちに籠城の準備を──」

「お、おい、あれ!! 〝全知の樹〟が燃えてるぞ!!」

 

 政府の役人たちが〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟の研究資料を探して爆弾などを使用したためか、〝全知の樹〟が発火して炎上し始めていた。

 貴重な文献や本が無数に収められた場所だ。燃えて無くなるのは惜しい。

 すぐに学者たちが立ち上がって火を止めようと動き始め、カナタは手持ち無沙汰に立ち尽くすことになってしまった。

 

「私も、火を消しに行かなきゃ」

 

 オルビアもロビンを離し、立ち上がって〝全知の樹〟を見る。

 政府の役人たちはカナタが全員気絶させている。邪魔をする者はいないが……激しく炎上を始めた樹を鎮火させるのは難しいだろう。

 それに、〝バスターコール〟の発令こそ止めたが、逃げたCP9はそのままだ。遠からず砲撃が始まる。

 時間が無い。

 

「時間が惜しい。手荒に行くぞ」

「何を──」

 

 言って、と。

 続ける前にカナタが〝全知の樹〟へと掌を向けると、炎上していた部分が一瞬で凍り付いた。

 蔵書も凍り付いてしまうかもしれないが、炎上して失われるよりはいい。

 唖然とするオルビアを尻目に、遠くから近づいてくる巨人へと視線を向ける。

 一度見たことのある顔だ。

 

「……巨人族の中将、サウロか」

 

 ドラム島沖でフェイユンと戦った巨人族の中将だ。もう何年も前だが……一度会った以上顔は忘れていない。

 すわ敵かと敵意をにじませると、ロビンとオルビアが彼の名を呼んだ。

 

「サウロ!?」

「サウロ! どうしてここに!?」

「オルビア! ロビンも無事だったか……それに、そっちは」

「何の用だ、海軍中将。一人先行して様子でも見に来たか?」

「いや……ワシは海軍は辞めたでよ。一度不信感を抱いちまったら、軍にはいられなかった」

「大丈夫よ、彼は一度捕まった私を助けてくれたから」

「……そうか」

 

 オルビアの言葉もあり、敵意を収めるカナタ。

 それよりも、サウロは別のことを気にしていた。

 

「海軍の軍艦がすぐ近くまで来てるでよ! 早く逃げねェと!!」

「島民全員を逃がす時間はない。一か所に集めて防衛するか、軍艦全てを沈めた方が良い」

 

 カナタの無茶苦茶な意見にギョッとするサウロ。正気かと言いたげな顔をしているが、カナタは自身の発言を撤回することはない。

 守りたいなら戦う以外に方法はないのだ。

 

「ゴールデン電伝虫は破壊したが、砲撃は遠からず始まるだろう。だが、学者たちは逃げるよりも本の方が大事と来た」

 

 これは流石にカナタもどうしたものかと頭を悩ませる。

 命あっての物種だが……学者たちにとって、本や文献は何物にも代えがたいのだろう。カナタにとってはオルビアがそうだったように。

 なら、この島を防衛する以外に方法は無い。

 

「駄目よ。貴女は七武海になったんでしょう? 私たちのせいで貴女の立場を悪くするのは……」

「不要な地位だと言っただろう。固執しているなら最初からここに来ていない」

「それでもよ……出来るなら、この子だけでも逃がしたいところだけど」

 

 オルビアたちは明確に法を犯した。それは自覚もあるし、政府に狙われた以上はこの結末も仕方が無いと受け入れられる。

 だが、ロビンは別だ。

 まだ幼い子供を道連れにすることなど出来るはずもない。

 

「何も知らないこの子を道連れに死ぬのは、流石に忍びないもの」

「何も知らない訳じゃ無いよ! 私だって、〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟を読める!! 考古学の試験だって合格したんだから!」

「なんじゃと!? ロビン、それは本当か!?」

 

 今まで世話を焼いて来たクローバー博士も、流石にこれには驚いたらしい。

 幼くして考古学の試験に合格するほどの頭の良さは知っていたが、これほどとは思わなかった。オルビアもまた同様に驚き、笑ってロビンの頭を撫でた。

 

「そう……とても勉強したのね。誰にでも出来る事じゃない。凄いわロビン!」

 

 これまで親族に疎まれ、仲良くなった学者たちにも受け入れられなかったロビンを手放しで褒めて……ロビンは、堰を切ったように泣き始めた。

 なだめる様にオルビアはロビンの背中をさすり、落ち着かせていると──海から砲弾が飛んできて〝全知の樹〟へと直撃した。

 爆発を起こして炎上する〝全知の樹〟を前に、カナタは急がなければと視線をクローバー博士へ向ける。

 

「防衛する。少しばかり時間を稼げば、援軍が──」

「いや……もう、いい」

「……何?」

「わしらは世界政府と戦った。奴らは、どこまでもわしらを追い詰めるだろう……お前にそこまで重しを背負わせるわけにはいかん」

「何を言う! 私は、こういう時のために戦力を整えてきた!! 誰が相手であろうとも、失わないためだ!」

「だったら! だったら……オルビアとロビンだけ助けてやってくれ」

 

 銃弾を受けて血を流すクローバー博士は、深々と頭を下げた。

 全員で助かる道など元より考えていない。自分たちの命よりも、貴重な文献を守らねばならないと考える程に。

 そこにカナタの手助けを得たところで、世界政府と海軍本部の戦力を相手にどこまで戦えるのかわからなかった。

 だから、せめて。

 ロビンとオルビアの親子だけでも、と……クローバー博士は願ったのだ。

 

「そんな! 私も残るわ! この島を巻き込んだのは、元はと言えば捕まった私のせい──」

「黙っていろオルビア!! ……後生だ、カナタ」

「…………本当に、良いんだな」

「ああ。〝歴史〟とは受け継がれるもの……ここですべてが潰えてしまうのではなく、後を託せる者がいるのなら本望だ!」

 

 正直なところ、カナタは海軍との全面戦争も辞さない構えだった。

 だが、ここまで言われてしまっては言い返しようもない。今の戦力では分の悪い戦いであることも違いない以上、クローバー博士の選択もあながち間違いではない。

 オルビアはまだ言いたいことがあるようだったが、カナタは問答無用でオルビアを背に抱き上げ、前にロビンを抱える。

 

「サウロ! お前はどうする!?」

「わしもこの島を出るでよ! だが、その二人を逃がすなら手伝おう!」

「手助けが必要なほどではないが……いや、手を借りる。東の海岸へ向かうぞ」

 

 西の海岸にはオハラに住む学者ではない人々が乗る避難船がある。当然、軍艦が近くに居るだろうからそちらは使えない。

 最後にクローバー博士の方を向き、別れの言葉を告げた。

 砲弾は既に雨のように降り注ぎ始めている。時間が無いため、簡素に。

 

「さようなら、クローバー博士。貴方のことは尊敬していた……後日、貴方達が残した文献は全て回収することを約束しよう」

「……ああ、それはありがたい。さらばだ」

「カナタ! 駄目よ、私は降ろして!」

「博士が!」

「黙っていろ二人とも! 舌を噛むぞ!」

 

 カナタは二人抱えているとは到底思えないほどの速度で走り出し、サウロもまたそれに追従する。

 道中の森も凄まじい速度で走り抜け、東の海岸へと向かう。サウロはやはり目立つのか、それとも裏切った元中将を撃てと命令が出ているのか……サウロを狙う様に大砲が飛んできていた。

 カナタは飛んで来た砲弾を的確に避けているが、サウロはそうもいかずに何発か直撃している。

 

「この砲撃、わしを狙っとるでよ! お前たちは先に行け!」

「でも、サウロ!」

「大丈夫だ! こんなもんでわしを殺せると思ったら大間違いでよ!」

 

 カナタ達が逃げるための時間を稼ぐつもりなのか、海岸近くにいた船へと近寄るサウロ。

 

「覚悟せェ……! わしを敵に回したら、ただじゃすまんでよ!!」

 

 巨人族さえ乗せられるほどのガレオン船を一息に持ち上げ、そのまま海に叩きつけて破壊する。

 流石は中将まで上り詰めたほどの実力者と言うべきか、その膂力はすさまじい。

 今のうちに東の海岸へ、と思った瞬間──横合いから斬撃が振るわれた。

 カナタはすぐさまそれを回避しようとして、背に乗せたオルビアが回避しきれないことを察して斬撃を脚で受け止めた。

 

「チッ」

「む」

 

 剛腕で振るわれた斬撃は普通なら受け止めた足ごと真っ二つにするが……カナタの足を切ることが出来ず、バリバリと覇気が衝突して木々が薙ぎ倒される。

 続く二撃目は距離を取って回避し、森の中から海岸線の砂地へと場所を変える。

 見覚えのある顔だ。何度も戦ったことのあるその顔を見て、思わずカナタも辟易した。

 

「その仮面……まさか〝残響〟とは。随分な大物が出てきたな」

 

 海軍中将の中でも取り分け高い実力を示す銀髪の美丈夫──ベルクだ。

 

 

 

 




ノルマ達成(幼女抱えて森を疾走。実績解除)

ちなみに気絶した政府の役人たちはばっちりバスターコールに巻き込まれております。
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