ヒエヒエの実を食べた少女の話   作:泰邦

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第百二十七話:怒りと恨み

 フールシャウト島まではそれほど時間はかからない。

 魚人の船員たちは故郷に帰りたがるコアラに優しくしていたし、元奴隷だったコアラはむやみに誰かを殺そうとしないタイガーたちに感化されて少しずつ心を開き、体に染みついた奴隷の生き方を拭うことが出来ていた。

 ……アーロンは変わらず人間を憎み、見下していたが、コアラを相手に手をあげることは無かった。無抵抗の相手を殺すことが趣味という訳でもなく、何よりタイガーが決めたことを破るつもりも無かったからだ。

 一方で、ジンベエはカナタの言葉が気になって時折考え込んでいた。

 

「ジンベエ、こんな時間までどうした? 眠れないのか?」

「アラディンか。まァな……」

 

 コアラと同じ元奴隷だった、人魚の男──アラディンが食堂でジンベエの前に座る。

 もう夜も遅い。明日にはフールシャウト島に着くだろう。

 アラディンは考え込むジンベエの前に酒を置き、「寝る前に少しくらいは付き合え」と笑いながらコップを傾けた。

 

「何をそんなに考え込んでいるんだ? この間の七武海のことか?」

「そうじゃ。あの人には昔、世話になったことがある……今も忙しい人である以上、何の意味もなくタイのアニキに会いに来たとは考えづらい」

「お頭への忠告、って奴か」

 

 ジンベエはいくら考えてもわからないのか、疲れた様子で目の前に置かれたコップを傾けて酒を飲む。

 タイガーの力になろうと思ってネプチューン軍を退職し、海賊になった。強さという面では確かにタイガーの役に立てていると自負しているが、それ以外の面ではどうか。

 ネプチューン軍で働いていたので戦いに関することであれば助言は出来るだろう。だが、多くの海を渡って多くの知見を得たタイガーに助言できることなどそう多くはない。

 だから、これを機にジンベエも色々なことを学ぶべきだと思っている、のだが……。

 

「さっぱりわからん。お前さん、わかるか?」

「……恐らくは、だが。あの女はコアラを故郷の島に連れていくことを〝罠だ〟と言いたかったんだろう」

「罠? 何故じゃ?」

「偶然おれたちが立ち寄った島に、偶然元奴隷の子供がいて、頼み込んだら故郷の島に送ってくれるという……これ自体は罠でも何でもないだろうが、おれ達にコアラを預けた()()()()()()()()()ならコアラの故郷に罠を仕掛ける可能性は十分ある」

 

 大海賊時代に入って以降、海賊に対処する戦力は常に不足している。とは言え、タイガーのように世界政府に真っ向から立てついた海賊を放置することなど出来るはずがない。

 情報提供者にはある程度の謝礼金が支払われる。日々の生活だけで精一杯な、困窮している島であれば……僅かな謝礼金を求めて情報提供をすることは考えられた。

 世界政府に支払う莫大な天上金は海軍に勤める海兵の賃金やこういった場合の謝礼金にも充てられている。忠告に来たカナタ率いる黄昏の影響か、天上金で破滅する国は減ったが、その分潤沢に資金を使えるようになった海軍は謝礼金などを配ることで高額賞金首の居場所を常に把握していた。

 タイガーたちの行先がバレているなら、海軍が包囲網を敷いている可能性は十分あるだろう。

 

「なら、すぐにでもお頭に……!」

「伝えてどうする。お頭も気付いてはいるはずだ。それに、気付いていたとしても島に行かなきゃコアラは故郷に帰れねェ」

「ぐ……!」

 

 目的の無い旅ではあったが、今はコアラを故郷に帰すことを目的に動いている。フールシャウト島に罠があるとわかっていても、いつまで待てば海軍が引き上げるかわからないのだ。

 いつまでもコアラを乗せて海を彷徨う訳にもいかない。慣れない船旅は体調を崩す可能性もある。

 それが子供ならなおさらだ。

 

「カナタさんは〝自分が何とかする〟と言っておったが……」

「おれはお前やお頭と違ってあの女の事を知らない。どこまで信用出来るかわからないから、何とも言えねェな」

 

 七武海という立場もある。彼女はタイヨウの海賊団の敵であるはずなのだ。

 アラディンは腕を組むジンベエを前に、コップを傾けて酒を飲み干す。

 ……彼もまた、奴隷だった過去がある。人間など信用できないと思う一方で、タイガーのように相手が人間でも分け隔てなく救う人を尊敬している。

 カナタの事を信用すべきか、信用せずにいるべきか。

 

「お前はどうするんだ、ジンベエ」

「わしは……あの人を信じたい」

 

 かつて、タイガーと共に旅をして世界を巡った人間だ。タイガーはどうしてか頑なな態度を取っているが、ジンベエにとっては大海賊時代が始まった直後の件で恩義もある。

 悪く思うことは出来なかった。

 

「そうか……それもいい。おれに出来るのは、何も起きねェ事を祈ることだけだ」

 

 アラディンは空になったコップを片付け、食堂から出ていく。

 明日も朝早い。ジンベエは一息に酒を飲み干し、同じように寝室へと戻っていった。

 

 

        ☆

 

 

「うおおおおおん……オメェいい子だぜコアラァ~~!! 一緒に旅しようぜ~~!!」

 

 ボロボロと涙をこぼしながら船員の一人──マクロがそんなことを言う。

 「泣くなお前ら」と呆れられつつも、船を降りたコアラを無理に引き留めようとはしなかった。

 魚人、人魚の船員たちは手を振ってコアラを見送り、タイガーはコアラを村の近くまで送っていくために同じように船を降りた。

 

「私、村の皆に言うよ! 魚人には良い人もいっぱいいるって!!」

 

 別れは惜しいが、今生の別れではない。きっといつか、縁があればまた会える日も来るだろう。

 コアラは村に向かう道すがらタイガーの腕に抱き着き、タイガーは何度か引き剥がすもそのたびにコアラは抱き着いてくる。最終的にタイガーが折れ、好きなようにさせることにした。

 しばらく無言で歩く二人だったが、ふとタイガーが視線をコアラに向けた。

 

「コアラ」

「? なに?」

「……おれ達との旅は、楽しかったか?」

「うん! みんな良くしてくれて……村まで送ってくれて! 旅も楽しかった!!」

「そうか……それは良かった」

 

 「さァ、ついたぞ」とタイガーは視線をコアラから目的地である村へと向ける。

 村人たちは誰もが驚き、コアラが帰ってきたことを喜んでいた。

 タイガーはそれを見て一安心し、僅かに笑みを見せた後……振り返って船へと戻り始めた。

 コアラはその背中を見て声をかけようとして──タイガーの雰囲気が先程とは一変していることに気付き、声をかけられなかった。

 顔は見えなかった。

 けれど、どうしてか……コアラには無性に不安になる背中だった。

 

 

        ☆

 

 

 タイガーが船へと戻る道中。

 その惨状を目にして、思わず目を丸くした。

 

「存外早かったな」

 

 辺りには倒れ伏した海兵たちがいる。誰一人傷を負っている様子はない。武器を持ったまま、泡を吹いて気絶しているだけだ。

 その中で、倒れた海兵の背中を椅子にして座っている女が一人。

 つい先日も会った女──カナタだ。

 椅子代わりにしている海兵だけが怪我を負っているところを見るに、彼一人とだけ戦ったのだろう。カナタに怪我の一つも見えない辺り、結果など言うまでもない。

 

「……カナタ。お前」

「罠だとわかっていても無策で来るのか。お前らしくないな、タイガー。あるいは捕まってもいいと考えていたのか?」

 

 カナタは立ち上がり、埃を払う様に服をはたく。

 服装は彼女にしては珍しいスタイリッシュなパンツスタイルで、周りに倒れ伏す海兵がいなければどこかへ遊びに出かけるつもりなのかと問うていたかもしれない。

 武器の類も一切なく、その身一つでこの島を訪れていた。

 

「こんなことをして、立場が悪くなるんじゃないのか?」

「私の立場など気にするな。大したことは無い──それよりもお前の事だ」

 

 赤い瞳が真っ直ぐにタイガーを射抜く。

 かつて魚人島で別れた時と変わらない。時が止まったのかと思うほど容姿の変わらない彼女に、あの時から変わってしまったタイガーは静かに口を開いた。

 

「……おれが、なんだ」

「私が知らないとでも思ったのか? 海軍に通達されたフィッシャー・タイガー捕縛の命令。罪状は〝襲撃〟と〝逃亡〟──」

「…………」

 

 タイガーは何も答えない。

 カナタは政府への嫌悪感を隠しもせず、吐き捨てるように続けた。

 

「知っていれば対処できた。だが、連中は決して私にこの事実を知らせようとはしなかった。知ればマリージョアを襲撃することはわかり切っていたからだろうな……お前は、私が助けにも行かず政府の手先になったことに怒っているのか?」

「……おれは、かつて人間を見た」

 

 嵐の中でも輝く、消えることのない一条の星のような人間を見た。

 差別と侮蔑にまみれた、悪意なく悪事を働くヘドロのような人間を見た。

 見たのがどちらか片方だけだったのなら、タイガーの思いはこれほど複雑化することは無かったのだろう。

 どちらも人間というくくりで見れば同じだ。けれど、同じ人間だとはどうしても思えなかった。

 

「お前のことは今でも嫌いじゃねェ。友人だと……そう思っているつもりだ」

「つもり、か」

「おれは……奴隷だったんだ……!! 天竜人を見て! お前は違うと、そうわかっていても!! おれは……人間と言うだけでお前を警戒しちまう……!」

 

 ギリギリと歯を食いしばり、タイガーはそう告げた。

 沸き上がる怒りは果たして誰に対してのものなのか、もはやタイガー自身にもわからない。

 人間以下の扱いをされたことに対してなのか。人間扱いをしない天竜人に対してなのか。それを受けて人間に怒りを抱いてしまう自分自身に対してなのか。

 こんなものが正しいはずがないとわかっていながらも、怒りを抱かずにはいられなかった。

 

「おれは……どうすりゃあいいんだ……!!」

「……怒りに呑まれるのは弱いからだ。一時の爆発的な力にはなるだろうが、続くものでもないし、怒りに任せて解決することなど無い」

 

 カナタだって怒りに任せて戦ったこともある。タイガーの件だって知った時は怒りを覚えたが、それだけでは解決しないとわかっているから抑えた。

 世の中は感情で動いて解決することなどそう多くはない。タイガーだってそれはわかっているだろうが、それでも抑えきれない怒りがあった。

 マリージョアには、それほどの人間の〝狂気〟があった。

 

「お前はあの場所を知らねェからそう簡単に言えるんだ! あの場所は、狂気に満ちていた……!! 人間扱いされねェ奴隷たち!! 奴隷を笑って虐げる天竜人!!! あの地獄を、お前は知らねェから!!!」

「そうだな。私はあの場所を知らない」

 

 今ではあまり語られることも無いが、カナタもまた天竜人に反抗している。

 その後にセンゴクに負けていれば。あるいはどこかで海軍に敗北していれば、インペルダウンではなくマリージョアで恥辱と凌辱の限りを尽くされていたかもしれない。

 リンリンやシキに敗北していれば。他の海賊にどこかで敗北していれば、また別の地獄があっただろう。

 同じ人間だからと手加減をするような連中ではない。カナタの血筋を知っていたことを考えればより凄惨な末路を迎えていた可能性もある。

 カナタはタイガーの血を吐くような叫びを受けても、感情を乱すことなく静かに答える。

 

「どれほどの危険があったとしても、どれほど凄惨な目にあったとしても、それを分かっていながら海に出たのはお前の意志だ」

 

 遠くから砲撃音が聞こえる。

 海軍はタイヨウの海賊団を捕まえるために包囲網を敷いていた。タイガーに奇襲が成功したことをきっかけに船への襲撃をするつもりだったようだが、こちらを指揮する少将が倒れたことで連絡が行かず、魚人たちに見つかって交戦が始まったのだろう。

 海軍の作戦は失敗だ。じきジンベエ達もここに来る。

 

「お前の行動はきっと正しかったのだろう。多くの奴隷を救い、天竜人に反抗するという世の道理を破った。だが、魚人島の立場を弱くし、魚人と人間が手を取り合う未来を先延ばしにしたのもお前なのだ」

「だったら!! おれはどうすりゃあ良かったってんだよ!!」

 

 タイガーは怒りのままにカナタの胸倉をつかみ、顔面に拳を叩きつけた。

 カナタは痛痒を感じた様子もなく、何度も振り下ろされる拳を無抵抗に受ける。

 

「おれは奴隷になって、他の奴隷たちを見た!! それを見過ごせねェと思って、マリージョアを襲撃して解放した!! それのどこが間違ってるってんだ!? 大人しく天竜人に従えってのか!! あのクソッタレな連中を見て、まだそんなことが言えるのか!!?」

 

 何度も、何度も何度もカナタを殴りつけるタイガー。

 技術も何もない、ただ力任せに叩きつけるだけの拳だ。こんなものを受けてもカナタはよろめきもしない。

 やがてタイガーは疲れ果てたのか、顔を俯かせ、膝を突いてカナタに縋りつくように両手で胸ぐらをつかんだ。

 

「……本当はわかってんだ。おれは天竜人に逆らって奴隷たちを解放したが、そんなのは一時的なものでしかねェ。あいつらはまた金にものを言わせて奴隷を調達するだろう……それに、オトヒメ王妃の夢も邪魔しちまった……平和を目指す、あの人の正しい願いを」

 

 タイガーは涙をこぼし、懺悔するように言った。

 

「おれは……どうすりゃよかったんだ……!」

 

 正解などない。

 奴隷たちはまた集められる。タイガーのやったことは一時しのぎに過ぎない。魚人島が世界会議(レヴェリー)に参加出来なくなることを考えれば、トータルではマイナスだったのかもしれない。

 でも、だけど。

 タイガーのやったことは決して、間違いなどでは無かった。

 たとえまた集められる奴隷であっても、それまで奴隷だった者たちを救った事実は消えはしない。

 

「お前の行動が間違いだったかどうかなど誰にも分らない。それはこの先の未来で歴史家が勝手に決めるだろう──お前に今できるのは、今後どうするかだけだ」

 

 奴隷になるかもしれない者たちを救うためにシャボンディ諸島付近に潜むのもいい。

 オトヒメ王妃の邪魔をしないようにどこかで身を隠すのもいいだろう。

 あるいは他の道があるかもしれないが……今回は時間切れだ。

 カナタは胸倉をつかんでいたタイガーの両手をほどき、タイガーに背を向ける。興味を無くしたのではなく、新しく現れた男──海軍中将ボルサリーノに対応するためだった。

 煙草をくわえ、帽子をかぶった長身の男。

 カナタは腕組みをしてボルサリーノを見据え、ボルサリーノは周りに海兵が倒れ伏している厄介な状況に思わずため息を零した。

 

「全く勘弁してほしいよねェ~……いくらアンタでも、これは大問題だよォ~?」

「そうだな。七武海にもタイガーの捕縛命令は出ている。問題と言えば問題になるだろう」

「わかってるなら大人しく引き渡して欲しいんだけどねェ……」

 

 わかり切っていることを聞くのは質問ではなく確認と呼ぶ。

 ボルサリーノの言葉を聞いても、カナタはボルサリーノの前に立ち塞がるばかりだった。

 

「無理だな。大人しく帰るがいい、ボルサリーノ」

「こっちもそういう訳にはいかないって、アンタならわかってるでしょうよォ~。今回の件は天竜人からの命令でもあるし、政府の指令とあっちゃァわっしらも無視するわけにはいかないからねェ~」

「天竜人なら私が黙らせる。センゴクにはそう伝えろ」

「……それを信用しろってェ? 怒られるのはこっちだよォ~?」

「どうしても捕縛したいというなら止めはしないがな。その場合、誰が最後まで立っているか……試してみるか?」

 

 カナタは片手で拳を作り、僅かに黒い雷を纏う。

 ボルサリーノは自然(ロギア)系ピカピカの実の光人間──次期大将候補に推薦されるほど、中将の中でも実力は高い。

 だが、カナタを相手にサシで挑むほどの無謀さを備えてはいなかった。

 あるいは同じ大将候補のサカズキやベルクがいれば話は別だったかもしれないが、たらればの話などそれこそ意味がない。

 

「アンタの相手なんて御免被るよねェ~……」

 

 ボルサリーノはやる気を見せず、両手を挙げて降参のポーズをとる。下手に話がこじれるのも厄介だし、相手がカナタともなればボルサリーノではどうしようも出来ない。

 センゴクか、あるいは五老星との間で協議が必要になるだろう。

 近くに迫ったタイヨウの海賊団の船員たちのこともあるし、今回は退くしかないと判断した。

 カナタは「なんだ、やらないのか」と纏った黒い雷を霧散させる。

 

「タイガー」

 

 カナタは後ろにいるタイガーに向けて声をかける。

 

「お前はしばらくうちで身柄を預かる。天竜人の件もあるからな」

「……いいのか。お前のところに居ても迷惑をかけるだけだぞ」

「構わん。私はお前を友人だと思っているから、私の勝手でそうするだけだ」

 

 カナタにとってタイガーは良き友人だ。それだけで十分。

 タイガーが天竜人の奴隷だったが故にもう人間に対して良い感情を持てなくなっていたとしても。それでカナタの方からタイガーを拒絶する理由にはならない。

 

「平和がいいのだろう。オトヒメ王妃のことは詳しく知らないが……私に出来ることがあるなら手伝おう」

 

 魚人島は白ひげのシマであるため、干渉するとなると少々厄介だが不可能では無い。

 天竜人を黙らせることも、魚人島を再び世界会議(レヴェリー)に参加させることも、あちらこちらに根回しが必要になるが十分実現できるだろう。

 〝怒り〟も〝悲劇〟も、誰かに伝えたところでどうにかなるものではない。

 これから先の未来に繋がる〝希望〟だけがあればいい。

 

「……ああ。そうだな」

 

 カナタはあくまで()()()だけだ。

 未来に繋げる意思は、タイガーやオトヒメこそが持つべきもの。魚人島をより良くするために、魚人や人魚たちがいつか地上で暮らせるようにするために努力を続けるのは彼らの役目だ。

 タイガーは立ち上がり、拳を握る。

 

「カナタ。一発おれを殴れ!」

「は?」

「さっき散々お前のことを殴っちまった。だから、おれを殴れ」

「別にあの程度では痣も出来ないが……まぁ、構わんか……しっかり構えろ。痛いぞ」

 

 ある種のけじめでもあるし、カナタに殴ってもらう事で心機一転しようと考えたのだろう。

 タイガーはカナタが殴りやすいように屈み、カナタはタイガーは頑丈だし多少は大丈夫だろうとやや力を込めて振りかぶる。

 

「あっ」

 

 カナタが思わず声を出し、鈍い音と共にタイガーが錐揉み回転をする。強烈な衝撃で吹っ飛んだのだ。

 タイガーは薄れゆく意識の中、「そう言えばこいつは小柄なくせに巨人族よりも怪力だったな」とどこか他人事のように思っていた。

 

 


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