エース編ですが、全編通してエース視点になります。黄昏側から見たエースではなく、エースから見た黄昏海賊団をお楽しみください。
原作入ると似たような構成になる予定です。
波の音が静かに耳に響く。
〝新世界〟の海は〝楽園〟に比べて過酷な海だ、と聞いてはいたが、今のところ嵐に見舞われる様子もない。
ドクロの海賊旗を掲げる船は魚人島から島をいくつか通り、進路は現在〝ロムニス帝国〟へと向かっていた。
甲板で誰かが読んだまま放置されている新聞には、大きく見出しが入っている。
──スペード海賊団、ポートガス・D・エース!
──王下七武海入りを拒否!
シャボンディ諸島で海軍中将を返り討ちにしてコーティング船で出航した時の記事だ。少し前の事ではあるが、船員たちは船長であるエースがまた話題になったと話していた。
誰かが付けたのか、甲板で暇そうに横になっているエースの耳に
『さァ、今日も始まったぜ! 〝ロムニス帝国〟からお送りするラジオ、〝新世界より〟!! 今日の担当はモデラートの野郎だったが、生憎義手が壊れちまったってんで急遽代役のおれ──デマロ・ブラックが担当になった。よろしく! そしてアシスタントは!』
『アシスタントのモネよ。よろしくね』
『いやァ、モネちゃん可愛いなァ……モデラートの野郎とペアでやってるのを見てる時は羨ましい限りだったが、こうして一緒にラジオやれると思うと嬉しいぜ。今夜ヒマ?』
『セクハラですよ』
『辛辣! でも可愛いから許しちゃうぜ! ……おっと、オープニングトークはこの辺で。じゃあ今日のスケジュールを簡単にモネちゃんから頼むぜ!!』
『はい。今日のラジオの予定は──』
今や大抵の船乗りが持っている受信専用の電伝虫から絶えず声が聞こえる。
〝黄昏の海賊団〟が世界的に設置している電波塔を介して、世界中どこでも誰でも受信機さえあれば情報を受け取れるようになった。かと言って新聞が要らなくなったかと言えばそうではなく、時間を合わせて聞かなければ情報を受け取れないラジオと読み手が好きな時に情報を手に入れられる新聞では共生関係が出来上がっていた。
新聞にはラジオの番組表も載っている。
世界経済新聞と手を組んだ、〝黄昏〟の意向だと聞く。
「〝黄昏〟か……」
エースとしては、〝黄昏〟は海賊と言うにはあまりにも……何と言うか、風変わりな連中だという印象だった。
商船の運営、ラジオ、海難救助。
およそ海賊がやるとは思えないようなことをやっている連中。トップの〝魔女〟は長年七武海に居座っているが、実際に誰かと戦ったのはもう何年も前のことらしい。新聞の話題になることも多くはない。
〝
ただ強さだけが求められる七武海と言う地位に、果たして金や見目だけで長年居座れるのか疑問はあるが……エースとしてはどうでもいいことだった。
「おい、エース!」
「ん」
甲板で暇そうにしていたエースに声をかけて来た。
目元をマスクで覆った男──デュースだ。
スペード海賊団の船医であり、エースの信頼する仲間である。
「また
「ああ、まァな。やることもねェし、良いだろ。シケでも来たらちゃんと働くさ」
エースが手に持った紙をひらひらと見せつける様に動かす。
ビブルカード、と呼ばれるものだ。人の爪の欠片などを材料に作る、見た目はただの紙である。
別名を〝命の紙〟と言い、元にした爪の持ち主の方へ向かって少しずつ動く性質がある。持ち主の生命力次第で紙が小さくなったりもするが、今のところその気配はない。
「〝新世界〟にいるといいな、それの持ち主」
「そうだなァ……」
誰のビブルカードかはわからない。
エースの幼少期にガープから「父親の形見だ」と渡されたはいいものの、ガープも誰のビブルカードかは知らないらしく、「自分で探せ」と言われた。
手掛かりになりそうなものと言えば、ビブルカードに書かれた「親愛なる友へ」と書かれた文字だけである。
エースの出生に関することを知る者は少ないが、スペード海賊団ではデュースだけが事情を知っていた。
「かの〝海賊王〟に対して『親愛なる友へ』なんて言える相手はそんなに多くないと思うが……誰なんだろうな」
つい先日会った〝赤髪〟にエースの事情を隠して〝海賊王〟と仲の良かった相手を聞いてみたが、〝海賊王〟の船員以外で名前が最初に上がったのが〝黄昏の魔女〟だった。
〝海賊王〟と〝魔女〟は当時から交友があったと聞いてはいたが、実際どうだったのかはわからない。〝赤髪〟が名前を上げるくらいなのだから事実だったのだろうと、まずはそちらから確かめるために〝黄昏〟の拠点である〝ロムニス帝国〟を目指している。
本来なら〝ハチノス〟に向かった方が良いのだろうが、〝赤髪〟曰く「〝黄昏〟傘下に入るか、事前に連絡を入れておかないと問答無用で沈められる」と言う話なので、まずは〝ロムニス帝国〟で情報を集めることになったのだ。
「まァ、〝魔女〟は忙しくて早々会える相手じゃないって〝赤髪〟も言ってたし、何か方法を考えねェと駄目かもな」
「直接乗り込んで、ってのはな……他の七武海とは違う相手だ。なにしろ四皇さえ凌ぐ巨大な勢力だからな」
四皇の一角である〝ビッグ・マム〟、そして同じく〝百獣〟──二つの強大な大海賊が同盟を組んでようやく〝黄昏〟と海軍の同盟と対等とされている。
二十年前に結成された同盟が崩れることなく今まで続いているのは、偏に〝黄昏〟の脅威ゆえだと言われているが……〝
エースの生まれは〝
〝
だが、〝
四皇は〝最強の生物〟だの〝最強の
「だがな、エース。ビブルカードの相手が誰であれ、お前は会ってどうしたいんだ?」
「どうしたい……」
エースは難しい顔をする。
父親──〝海賊王〟ゴール・D・ロジャーについて聞く?
自分がその子供だから仲良くしてくれと頼む?
いや、そんなことはしないだろう。庇護を求めるならもっと別のやり方があったはずだし、〝赤髪〟に打ち明ければ良かった話でもある。
今更ロジャーの事を知ってどうなるという思いもある。誰に聞いても罵詈雑言しか返ってこなかった父親のことなど──。
「……『親愛なる友へ』、か」
〝海賊王〟と言われているロジャーにも、そう呼んでくれる友人がいたのだ。
何はともあれ、一度会ってみたい。エースの中にあるのはその思いだけだった。
それからどうするかはその時決める。
「行き当たりばったりだな」とデュースは溜息を吐いた。
仕方がない。こればっかりは会ってみないことには答えは出ないだろう。
「情報を集めるのはおれより得意な奴がいるし、そっちは任せる」
「お前はどうするんだ」
「おれだってどうにか考えてみるさ」
なんとも不安になる言い草で、デュースは顔を顰めた。
☆
〝ロムニス帝国〟に着くなり、エースは港から街へと繰り出していた。
〝新世界〟最大の繁栄都市と呼ばれる国だ。見るもの全てが新しい──とまでは言わないが、物珍しい光景は確かに多い。
行き交う人々の種族も多種多様だ。魚人に人魚、手長族に足長族、ミンク族に巨人族……この島に全ての種族が集まっているのではないかと錯覚する程に人で溢れている。
様々な種族に対応するためか、建物も巨大なものが多く、こちらも目を惹くものが多い。
ウェイバーと呼ばれるボートを使ったレース場。
歌手やアイドルが公演している黄金の劇場。
何より目を惹いたのは、巨大な
「デケェな……」
巨人族同士の対戦もあるためか、入り口からして既に規格外のサイズだ。
相当人気があるらしく、入り口には多くの人だかりが出来ている。
誰が勝つのか賭けをしている者も多い。オッズの配分でどちらが有利なのかはわかるが、エースはひとまずその人だかりを避けて街の奥へと進む。
当てもなくさまよっている、という訳ではない。
偉い奴はデカい建物にいる、という実に短絡的な思考である。帝国は〝魔女〟の足元だ。いる可能性は十分あった。
「おい」
ここに〝魔女〟がいるのだろう。そう考えて城に乗り込もうとすると、当然ながら入り口で止められた。
エースの倍以上はある、見上げるような巨体の女性だ。金髪に角の生えたオッドアイの女性が、威圧するようにエースを見ている。
腰には剣を携えている。下手な動きをすれば一撃で斬られる、と思わせる威圧感があった。
「ここから先は許可ある者以外は通れない。薄汚い格好だが一応尋ねよう、アポイントメントはあるのか?」
「アポ……? 何だそりゃ。おれは〝魔女〟に会いてェんだが」
「閣下は多忙な身だ。アポイントメントも無いような相手と会うほど暇ではない」
「じゃあどうすりゃアポなんとかを取れるんだよ」
「貴様は海賊だろう。貴様が〝黄昏〟の傘下に入ると言うのなら、最低限顔を通すことになる。その時に会うことは出来るだろう」
「おれは傘下に入るためにここに来たんじゃねェ!」
「では帰ることだ。それとも、無理矢理にでも突破してみるか?」
エースは誰が相手であれ臆することは無いが、デュースに「面倒事を起こすな」と言われたことが頭を過ぎった。
仕方ないと今回は諦め、回れ右をして城を後にする。
門番をしている女性の発言から、少なくとも現在城に滞在していることはわかった。それだけでも十分だろう。
途中で二人組の男女とすれ違いながら、「どうすりゃいいんだ」と考え込みつつ港の方へと戻っていった。
☆
「今の……」
「知り合い?」
「いや……何となく見覚えがある気がしたんだ。多分、手配書か何かで見たんだろう」
「海賊っぽかったもんね」
海賊に知り合いはいないからな、と呟く青年。
エースと入れ替わりで現れた来訪者に、門番の女性──ラグネルは用件を問いただした。
「何の用だ?」
「カナタさんに会いに」
「アポイントメントはあるか?」
「無いが、手紙を渡すよう言われてる」
青年が目配せすると、後ろにいた少女が一通の手紙をラグネルに手渡した。
内容に関してラグネルが確かめることは無い。ひとまず手紙を受け取り、カナタに渡すだけになるだろう。
「確かに受け取った。だが、閣下がこれを確認してもお前たちに会うとは限らない。そこだけは了承しておいてくれ」
「ああ、わかった。だが、結果は確認したい。実際に会う日取りはともかく、会えるかどうかだけでも」
「そうだな……では明日、同じ時間にここへ来るがいい。私が閣下へ確認を取る。お前たちの名前は?」
この手の来訪者は多い。全ての来訪者を覚えることなど出来ないため、ラグネルは懐からメモとペンを取り出した。
「サボ」
「コアラです」
革命の灯火を胸に秘めた二人は、ドラゴンの指示でカナタと顔合わせをするために〝ロムニス帝国〟を訪れていた。
☆
港まで戻ってきたエースは、ひとまずデュースと合流することにした。
エースがこうして当てもなくふらふらと歩いている間にも、何か良い案が浮かんでいるかもしれない。
それに、少なくとも〝魔女〟が城にいるという情報は共有しておいた方が良いだろう。
船に戻ると、船番をしていた仲間から「近くの酒場にいる」と聞き、港にある酒場を手あたり次第探すことになった。
商船と海賊船が同じ港に停泊することは無い。
海賊船ばかりが並ぶ港には、やはり同じようにならず者が集まる酒場が出来る。
大半は〝黄昏〟のマークか、あるいは傘下の海賊の船ばかりだったが、それ以外の船も幾らか停泊している。港も大きい分だけ酒場も多い。
三つか四つほど酒場を巡ったのち、デュースが誰かと話しているのを見つけた。
「デュース、ここにいたのか」
「エース! 丁度良かった。お前の話をしていたんだ」
同席していたのはスペード海賊団の仲間の一人、スカルだった。
ドクロの仮面に骸骨のネックレスと、上から下まで悪趣味な外見の男だ。
それともう一人、見覚えのない男が同席している。
「おめェが〝火拳〟か?」
「ああ。お前は誰だ?」
椅子に座っているというのにエースよりも身の丈が大きい。
3メートルを超す身長に恰幅の良さも合わさって、一目見た印象はクマのような奴、だった。
口に物を入れたまま喋るわ、所かまわず屁をこくわと下品な男である。
「おれァティーチってんだ。おめェんとこの船員に酒を奢って貰ってるのさ」
「見返りに色々教えてもらってる。〝黄昏〟の船員らしいが、事情を知る人間に聞くのが一番早いからな」
「この人はそれなりに古株らしいんで、エース船長に必要な情報を持ってると思いますぜ」
「へェ……」
エースもテーブルに着くと、ティーチはウェイトレスにミートパイを頼んでいた。
四人で適当に料理をつまみながら話を聞く。
「で、何が聞きてェんだ?」
「〝魔女〟に会いてェ。どうすりゃいい?」
「ゼハハハハ!! 姉貴に会いてェと来たか!! そりゃあお前、今は城にいるんだ。正面から乗り込んでやりゃあ嫌でも出てくるさ!!!」
時期的にもうすぐ〝
ティーチは大口を開けて笑いながら襲撃してみろと言うが、エースは呆れたように椅子へもたれかかった。
「……お前んとこの船長だろ。危ねェとは思わねェのか?」
「そんな簡単に落とせる首ならビッグマムもカイドウも手こずってねェよ!」
そういうもんか、と首を傾げるエース。
とは言え、襲撃は難しい。デュースは腕組みをしてティーチへ尋ねる。
「城はそれなりに防衛が敷かれているだろう。たとえ〝魔女〟がどれほど強くとも、護衛無しってのは考えられない」
「そうだな。この時間なら……確か、ラグネルの奴が門番を担当してるはずだ。あいつはタフで厄介だぜ。正面から乗り込んでも返り討ちが関の山だろうな!」
〝黄昏〟の船員は古株を除いて懸賞金がかかっていない。船長である〝魔女〟が七武海であるため、その船員には懸賞金をかけられないのだ。
しかも、昔からいる〝六合大槍〟や〝赤鹿毛〟に〝巨影〟など……並以上の金額を付けられた賞金首も、20年ほど前に懸賞金を取り消されて以降そのままである。年を取れば衰えることもあるだろうし、成長して強くなることもある。懸賞金の変動が無いので外部からはその辺りがわからない。
七武海になって以降に活躍した船員たちも同じだ。懸賞金がかけられていないため、客観的に誰が強いのか、誰を脅威と判断すればいいのかの指標がまるで無かった。
目の前にいるティーチも懸賞金はかけられていない。
城の門番と聞いてピンと来たのか、エースは「あいつか」と先程会った女性を思い出す。
「そのラグネルって奴には会ったな。お前よりデケェ女だろ?」
「ああ、胸も尻も背丈も態度もデケェ女さ。頭も腹筋も硬ェ」
「まァ真面目そうなやつだったな。アボカドはあるかって聞かれたぜ」
「アボカド……? アポイントメントか?」
「そう、それだ」
エースはミートパイを口に運びながら頷く。
ティーチは酒をぐびぐび飲みつつ、ラグネルの事を思い出す。
「弱くはねェ。3億くらいの首ならあいつ一人で難なく潰せるぜ」
「3億の賞金首をか……」
今のエースの懸賞金もそう離れてはいない。もちろん金額だけで実力を判断するのは難しいが、ある程度の指標にはなる。
ラグネルを正面から突破するのは難しいだろう。
「他に方法はねェのか?」
「ある」
「あんのかよ」
それを先に言え、とエースは呆れた顔をする。
ティーチは上機嫌に大口を開けて笑うと、「そう難しい話じゃねェ」と言う。
「姉貴は強い奴が好きだ。港から街の方に行って、少し外れたところにデケェ
「ああ、見た。デケェ建物だったな。ここにあるのは人も建物も軒並みデケェ」
「ゼハハハ!! ここに住んでる巨人族も少なくねェからな! で、だ。あの闘技場では何日かごとに試合をやってるんだよ。飛び入り参加も出来るし、素性も経歴も問わねェ」
「試合? ……まさかそれに出ろって言うんじゃねェだろうな」
「その
〝黄昏〟の船員は非常に多い。
傘下の海賊が3万、本隊だけでも5万を超える船員がいる。だが、本隊の多くは戦闘員ではなく、商船で働く労働者だ。
実際に前線で戦うのは1万人にも満たない。
傘下の海賊団は30を超えない程度だ。〝黄昏〟は傘下の海賊団を丸ごと吸収することも多く、傘下の海賊団はあまり増えない。普通に働いた方が金になると、海賊稼業を止める海賊もゼロではないのだ。
本隊で戦闘員に分類される者たちは多くの場合、世界中の海で商船の護衛に就くか、〝黄昏〟内部でより上の立場を目指して己の力を磨くかの二つの道がある。前者を選んで働く者には相応の給金が与えられ、後者を選んだ者には相応の試練を課して鍛え上げられる。
その中で、更に選りすぐりの精鋭部隊が二つ。
一つは、女性だけで作られた部隊〝
もう一つは、男性だけで作られた部隊〝
「普段は下っ端共の鍛錬を兼ねた賭け試合をやってるが、こいつらが時々
「……そりゃ身内の話だろ? おれに関係あんのか?」
「焦るなよ、ここからが本題だ」
戦うのは身内が多いが、外部から飛び入りの参加も出来る。
もちろん倒すのは容易ではないが、もし倒せれば傘下として入る際、あるいは普通に海賊団に入るよりも優遇してくれる。負けたら何も手に入らないが、精鋭の実力を身をもって知ることが出来る。
一度でも勝てれば再び挑戦権を得られ、より強い精鋭と戦える。勝てば勝つほどその後に有利になるわけだ。
望むなら倒した相手に応じて賞金も出る。
「4、5回も勝てば幹部が出てくる。もしこいつらに勝てれば、姉貴が直々に実力を見に来るってシステムになってんのさ」
「それ、一度でも機能したことあるのか?」
「ねェな!」
ねェのかよ、と三人が一斉に突っ込む。
最初の一人でさえ精鋭なのだ。勝つのは容易ではない。それを4、5回も繰り返すのは難しいだろう。
しかも最後に出てくるのは幹部。〝六合大槍〟か〝赤鹿毛〟か〝巨影〟か……あるいは、七武海になって以降に増えた実力者かもしれない。
とは言え、〝黄昏〟の巨大な勢力の全てを敵に回さず、〝魔女〟と己との距離を測るにはうってつけの場でもある。
エース達三人はうーむと腕組みして考え込むが、これ以外に方法が無いのも事実。
どうあれ、海賊の〝高み〟を目指すなら将来必ずぶつかる相手だ。今のうちに距離を測っておくのも悪くはない。
「確か今日、丁度入れ替え戦やってるはずだ。あれこれ言うより見てみたほうが早ェだろ」
ティーチはのそりと立ち上がると、酒場の入り口に向かって歩き出した。
デュースは慌てて支払いをし始め、スカルとエースはティーチの後ろについて歩いていく。
「なんだか妙なことになりやしたね、船長」
「そうだなァ……でもまァ、これしか無いみてェだし、仕方ねェだろ」
色々有用な情報があった。ティーチの言うことに嘘は無いのだろう。
熊のような大男の背中を眺めながら、エースは帽子を目深に被りなおした。
備考
ドナルド・モデラート
ONE PIECE FILM STAMPEDEにて登場。片腕片足が義肢。
デマロ・ブラック
原作新世界編にて偽麦わらの一味を結成した男。〝三枚舌〟の異名を持つ。
モデラートとは同期。
デュース
novel Aにて登場。スペード海賊団船医兼エースのアドバイス役。
スカル
novel Aにて登場。スペード海賊団の情報屋。