ヒエヒエの実を食べた少女の話   作:泰邦

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第百四十五話:兵器のカタチ

 突如現れた女に対し、全員が険しい顔つきで戦闘態勢に入る。

 この状況で現れたのだ。友好的とは言い難い以上、こうなるのも仕方がない。女性と見れば鼻の下を伸ばすサンジも、今は真面目な顔で何時でも動けるようにしていた。

 剣呑な雰囲気を察したのか、女性はおどけたように肩をすくめて「止めた方が賢明ですよ」と忠告する。

 

「今時こんなところをうろうろしている新人(ルーキー)の皆さまでは、わたくしに挑んだところで勝ち目などとてもとても」

「やってみなきゃ分かんねェだろうが……!」

「分かりますとも。わたくし、これでも人を見る目はそれなりにあると自負しておりますので」

 

 ピンク色の髪をなびかせ、獰猛な捕食者の笑みを浮かべながら食いかかるゾロへと視線を向ける。

 思わず息が詰まるほどのゾッとする視線だ。

 肌で感じる圧倒的実力者の圧力に、刀にかける手に汗がにじむ。

 

「わたくしはアルファ・マラプトノカ。どうぞお見知りおきを」

 

 ──もっとも、生き残ることが出来ればの話ですが。

 マラプトノカは悪辣な笑みを浮かべたままそう告げ、次の瞬間には岸から離れつつあるメリー号の側面へと何かが撃ち込まれていた。

 

「なっ、なんだ!?」

 

 ぐらぐらと揺れる船にしがみつくウソップは、岸辺からメリー号へ撃ち込まれた何かを見る。

 返しの付いた銛……大きさを考えれば捕鯨砲(ハープーン)とでも呼ぶべき兵器が、メリー号の側面へと大きく突き刺さっている。

 ともすれば攻城兵器にも扱えそうなそれの出処を確認すると、ウソップは目を疑った。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんだありゃあ!!? クマの腕から銛が飛び出てる!!」

「は?」

「クマの形した兵器ってことか!?」

 

 訳が分からな過ぎてサンジも頓珍漢なことを言いだす。ルフィも首を傾げて自分の目を疑っていた。

 マラプトノカはやれやれとでも言いたげな顔で講釈を垂れる。

 

「おやご存じない? 偉大なる航路(グランドライン)で行われている最近の研究の結果ですよ──()()()()()()()()()()()()()()、という研究のね」

 

 マラプトノカの視線につられて、全員がクマの方を見る。

 つまり、あれもそうなのだろう。

 兵器に悪魔の実を食べさせることで動物の力を得させ、より強力な兵器として利用する。

 クマの強靭な腕力に引っ張られ、岸を離れつつあった船は強制的に岸に接舷させられた。続々と迫ってくる動物たちもいる。このまま見ているわけにはいかない。

 

「テメェ、攻撃を止めさせろ!」

 

 ゾロは刀を抜き、マラプトノカ目掛けて斬りかかる。

 しかしマラプトノカは大して気にした様子もなく、ゾロの攻撃を指先で受け止めて見せた。

 人体ならば簡単に切り裂く斬撃も、彼女の前には通用しない。

 鋼鉄を思わせる強度の肉体を前にしてはゾロと言えども歯が立たないのだ。

 

「どうなってんだ、テメェの体は!! テメェも能力者か!?」

「これは別に悪魔の実の力など関係ありませんが……さて、抵抗するだけ無意味ですけれど。抵抗、してみます?」

「当たり前だ!!」

 

 ルフィがゾロの後ろから腕を伸ばして殴りかかる。

 マラプトノカは軽く避けて船から陸地へと飛び降りた。雄たけびを上げる動物たちは彼女に従っているらしく、次々に船へとしがみついて登ろうとしていた。

 

「ヤベェ!! 船がやられたら本当に逃げられなくなるぞ!?」

 

 背中に迫撃砲を背負った虎や鋼鉄の装甲を纏ったライオンが一息の内に船の上へと上がり込み、近くにいたウソップへと襲い掛かる。

 すぐさまサンジが虎を蹴り上げ、無防備に見せた腹目掛けてルフィが〝ゴムゴムのバズーカ〟を放つことで二匹を一度に船の外へと追い出した。

 岸へと吹き飛ばされた二匹は、ルフィの攻撃を受けてもピンピンしており、再び船の上へと上がろうとしている。

 

「キリがねェぞ!」

「なんとかあの銛外せねェか!?」

「やってみる!! ここは任せた!!」

 

 ウソップが一目散に船の中へと入って行き、ルフィ、ゾロ、サンジの三人で何とか猛獣たちを追い払う。

 ナミも武器を持って何とか小型の動物たちを追い払っているが、こちらが相手をしているのもまた動物の力を得た兵器。

 手足に細かい傷を作りながら何とか奮闘しているが、数の暴力は如何ともしがたい。主戦力の三人も強力な猛獣の相手で手一杯であり、こちらまで手が回らないのだ。

 ビビが戦えるとも思えないため、船室に避難させているが……このままでは遠からず船を沈められてしまう。

 ナミの苦境を知ってか、ビビは船室を飛び出して近寄っていた動物たちを弾き飛ばす。アクセサリーのような刃物を付けた糸に付け、小指に着けて振り回すことで攻撃している。

 ビビが孔雀(クジャッキー)スラッシャーと呼ぶ武器だ。

 

「ナミさん、大丈夫!?」

「ビビ!? あんた、船に隠れてなさい!! 危ないでしょ!?」

「お世話になる船が危険なのに、隠れてるわけにはいかないわ!」

 

 ビビと一緒に隠れていた超カルガモのカルーもまた、出来ることをしようと両手に旗を持って応援している。戦う気は無いらしい。

 

「ふーむ……中々粘りますのね。案外、有望株でしょうか?」

 

 マラプトノカは頭の中でソロバンを弾きつつルフィたちの奮闘を観察する。

 一週間前にこの島に来た新人(ルーキー)はマラプトノカの襲撃を辛くも退けて逃げ出したが、そちらに並ぶくらいには有望かもしれない、と考えていた。

 まぁ、だからと言って手を抜くことは無いのだが。

 これは動物の力を得た兵器たちの運用試験でもある。評価するならば複数回は運用しなければ話にならない。

 ルフィやゾロの個人としての力はそれなりに見るべきところもあるが、猛獣たちの軍団の前には太刀打ちできないだろう。

 何者も数と言う力の前には敵わない。

 銛を外そうと奮闘するウソップ。

 小型の動物たちを追い払うナミとビビ。

 大型の猛獣たちを何とか撃退し続けるルフィ、ゾロ、サンジ。

 

「ここまで、でしょうか」

 

 3000万の大型ルーキーと言う割には期待外れだ。

 マラプトノカは後方に待機させた巨大なカタパルトを備え付けた亀に準備させ、船を沈める準備を進める。

 船を沈めてしまえば、もはや逃げることも出来はしない。

 合図を出そうとして──その直前に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「〝四本樹(クワトロ・マーノ)〟──〝スパンク〟」

 

 多数の腕が寄り集まって巨大な腕になり、亀を下から押し上げて引っ繰り返したのだ。

 続いてルフィたちのところに集まっていた猛獣を二人の戦士が次々に倒していき、戦況が逆転していく。

 

「な、なんだ!? また新しい動物兵器か!?」

「おれたちは味方だ!」

「喋った!!?」

 

 ジャガーのミンクと、白熊のミンクの二人だ。手から発する雷撃と覇気を使い、硬質な装甲を纏った猛獣を一息に倒している。

 ルフィたちは新手の兵器かと思ったが、対話が出来て味方だと言う彼らをひとまず信用することにした。と言うか、しなければどのみちここで全滅なのだ。選択肢は無かった。

 味方が現れて何とか対処が追い付きつつあるルフィたちとは対照的に、マラプトノカは目を細めて期待外れと言わんばかりの表情をしていた。

 

「ペドロさんにゼポさん……それにニコ・ロビンさんですか。いえ、今はミス・オールサンデーと呼んだ方がよろしいでしょうか?」

「どちらでも構わないわ。私とあなたの関係なんて大したものではないでしょう」

「そうですね。ですが、貴女がわたくしの邪魔をする理由など無いはずでは?」

「いいえ。あの船を沈めて貰っては困る理由があるの」

「おや、そうなのですか? それは組織として、でしょうか?」

「そうね。あそこの青い髪の女の子。彼女、アラバスタ王国のビビ王女なのよ」

「まあ」

 

 マラプトノカはわざとらしく驚き、ビビの方を見る。

 彼女はロビンの立場を知っているし、クロコダイルとも取引がある。クロコダイルの目的は知らないが、アラバスタ王国で何かしようと言うのなら王女の身柄を確保しておいて損は無い。何かの際に使えるカードとしては上等な部類だ。

 そういう事ならば仕方がないと、指笛を吹いて動物たちを撤退させていく。

 

「海賊の方まで生かしておく理由はありませんが……まあ良いでしょう。こういうトラブルも良くあること。試験はまたの機会に、ですわね」

 

 銛を外してクマの手に戻し、マラプトノカは動物たちを内陸へと移動させる。

 既にこの島は動物たちの支配する島。人間などお呼びではない。

 

「早く穴を塞いで! これ以上ここに留まっても良いことは無いわ。事情は説明するから、まずは一度海へ出ましょう」

 

 ロビンは手早く指示を出す。

 メリー号の側面に開いた穴は内から板で塞いで浸水を防ぐ処置をして外海へと出ていく。マラプトノカが余計な気を起こさないうちに出てしまおう、という事らしい。

 ロビンたちもルフィたちに付いて島を離れていく。彼女の用はそちらにあるらしい。

 メリー号が島から離れていくのを見送っていたマラプトノカの懐の鞄から、電伝虫のコール音が鳴る。

 

「はい、こちらアルファ・マラプトノカです」

『おれだ──クロコダイルだ』

「これはこれは、どうされました?」

『うちの部下と連絡が取れなくなった。テメェが引き取ったってことで良いんだな?』

「ええ。きちんと受け取りましたとも。〝人間200人〟の前払い、ありがとうございます」

『代金分はきちんと働くんだろうな?』

「それはもちろん。わたくし、契約はきちんと守りますので」

 

 それを確認するためだけの連絡だったのか、クロコダイルはすぐに電話を切ってしまった。

 気の早いお方です事、と言いつつマラプトノカは受話器を戻す。

 

「とは言え……〝黄昏〟の目を一時的に他所へ向けさせる、などとは。どうしたものでしょうか」

 

 本来ならいくら積まれてもやらない仕事だが、今回は少々事情が異なっていた。

 

「この島に住んでいた住人に加えて〝バロックワークス〟の元社員、全員でおよそ500人と言うところでしょうか。十分ですね」

 

 〝黄昏〟は海賊でありながら世界中の物流を牛耳る巨大な貿易会社の側面を持つが、取り扱わないモノが二つある。

 〝奴隷〟と〝武器〟だ。

 裏社会ではその二つだけが海運業者に残されたパイであるため、昔から取り合いが多発していた。

 マラプトノカも例に漏れずその二つを重点的に扱い、今や裏社会でもある程度の地位を得るまでになっている。

 今回は前者が必要だったため、少々割に合わないと思いつつもクロコダイルの依頼を受けていた。

 

「……人間200人で〝黄昏〟の相手をするなど、割に合わないどころではありませんわね」

 

 直接戦うのはもちろん、下手な関与も目を付けられかねない。なるべくならまだ目を付けられたくは無いのだが……と、そこまで考えて気付く。

 〝黄昏〟の相手をするならやはり海の皇帝が相応しい。

 幸いにも彼らを動かす材料はある。高値で情報を流してやれば信用するだろう。

 あれこれと考えた末、それが一番確実性があると判断すると、マラプトノカは再び電伝虫へと手を伸ばした。

 そこで。

 

「襲撃は終わったのか?」

「マーティンさん。生きていらしたのですね」

「おかげさまでな」

 

 ルフィたちが助けた少年──マーティンが現れた。

 ただし、その姿はルフィたちが見たものとはまるきり違う。

 黒かった髪は白い髪に変わり、白い肌は浅黒く、何より背には()()()があった。

 

「その能力、どうです?」

「悪くは無い。だが、子供の体ではな。ルーキーにも押し負ける始末だ。これに調整した意味はあったのか?」

「特には。単なる時間の短縮です」

「時間の短縮なら仕方ないな」

 

 肩をすくめて同意する少年は、引きずってきた男をマラプトノカの前に放り投げる。

 Mr.11と呼ばれていた男だ。

 全身至る所に火傷の痕があり、幾らか殴られた跡も見て取れる。

 

「こいつも〝バロックワークス〟だ。逃げられないとはいえ、また探すのは面倒だからな」

「ありがとうございます。余計な手間が省けました」

「瓦礫一つまともに退かせられない身体能力は不便だ。調整しなおしてくれ」

「文句の多い方ですね……しかし、貴重な種族の血統因子も必要ですからね。ついでにあれこれ採取させてもらえれば、ええ。喜んで」

 

 マーティンは元の黒髪に白い肌になり、翼も消えて普通の少年の姿へと戻る。

 その眼光は鋭く、普通の少年でないことは見て取れた。

 

「おかしな種族もいたもんだ。翼はあるし発火する、なんてのは御伽噺だけのモンかと思ってたぜ」

「今では歴史の彼方に消えたとも言われる種族ですもの。政府の研究所に彼の生体データが丸々残っていたのは幸運だったと我ながら思いますわ」

 

 二人はそう言い合いながら、撤収作業を進めていた。

 船はもうじき到着する。バロックワークスの社員を回収して運んでいたので昼間はいなかっただけだ。

 ルフィたちに見つからなかったのは、単に見通しの悪い夜に離れた場所へ接岸したから気付かなかっただけのこと。

 二人はルネスと呼ばれていた島を動物たちの島へと変え、次の目的へ向けて動き出した。

 

 

        ☆

 

 

 何とかルネスから逃げ出したルフィたちは、ひとまずの小休止を経てロビン達三人を前に質問する態勢を取っていた。

 もっとも、いの一番に口を開いたのはビビだったが。

 

「なんでアンタが私を助けたの?」

「貴女に死んでもらっては困るから。私は〝バロックワークス〟の一人だけど、私の目的は別にあるもの」

「だったら、なんで私の事を……!」

「ちょっと待って、ビビ」

 

 畳みかける様に質問するビビをひとまず宥め、ナミは落ち着くようにサンジにお茶を用意させる。

 何かしらの事情があるのはわかるが、自分たちにもわかるように説明してくれとウソップが疲れた顔で言う。

 ロビンはそれに頷き、順を追って話すことにした。

 

「まず、彼女──ネフェルタリ・ビビ王女が〝バロックワークス〟に潜入したの。護衛と一緒にね」

「えらいアクティブな王女様だな……」

「それしかなかったもの。国がこのままどうにかなるよりはと思ったの」

「その後、私を尾行してボスの正体を知った。そして私はそのことをボスへ告げ口した」

「何だよお前敵じゃん」

 

 ルフィがさっと拳を構えると、ロビンは「早まらないで」と片手で制する。

 そもそもボスが誰なのかもわかっていないので、そちらを先に説明することにした。

 だが、ロビンが説明するよりも先にビビが口を開く。

 

「ボスはクロコダイル……〝王下七武海〟の一人よ」

「また七武海か……何かと縁があるな」

「? クロコダイル以外の七武海と会ったことが?」

「ああ、まァな……〝鷹の目〟のミホークと〝海侠〟のジンベエに会ったことがある」

 

 しみじみと言うウソップの言葉にサンジが補足すると、ビビとロビンたちは目を丸くした。

 普通はそう会える相手でもないし、海賊が会っても狩られるだけだ。生き残っているだけでも奇跡に等しい。

 しかし、今回の話に関係は無いので一旦置いておく。

 

「クロコダイルは当然怒ったわ。正体が知られた以上、不確定要素が混じると。だから当然、彼女を殺そうとした」

「だから私は、襲撃してきたMr.5ペアから逃げてルネスへと辿り着いたの。足止めに護衛のイガラムを一人残して……」

「ちゃんと生きてるわよ、彼」

 

 一人囮に残してきたイガラムの事を思い出して唇を嚙むビビだったが、ロビンは何でも無いことのように告げる。

 

「Mr.5ペアは元々私が引き入れた手勢だったもの。町にいた〝バロックワークス〟の社員はほとんど片付けたし、あとは彼らと合流して国に戻るべきね」

「……それは、本当なの?」

「ええ。本当。無事だし、合流するためにルネスに向かっていた途中だったの」

 

 もっとも、ルネスがあの有様なので合流場所を変える必要がある。

 ここから近い島なら──と意見を言おうとしたところで、ばたりと誰かが倒れる音がした。

 

「……ナミ?」

 

 音に気付いたルフィが不思議そうに首を傾げる。

 振り向くと、ナミが顔色を悪くして倒れていた。

 

「おい、ナミ!」

「ナミさん!?」

 

 ウソップとサンジがすぐに近寄り、ぐったりとした様子のナミを抱え上げてどうしたんだと肩を揺らす。

 ナミは質問に答えることは無く、意識が朦朧とした状態で視線も定まっていない。

 

「どうしたんだ、一体!」

「ゼポ!」

「任せろ!」

 

 すぐさまゼポが近寄り、ウソップが抱えたまま顔色や血色、体のどこかに傷の痕が無いかを確認していく──すると、足に小さな切り傷が出来ていることに気付いた。

 傷口の周りが変色している。恐らく、毒だ。

 ゼポは小さなナイフを取り出し、傷口を抉る様に軽くナイフを刺して肉を削ぐ。その後で血を口で吸いだし、包帯で固定して動かせないようにする。

 水で口をゆすぎ、ひとまずの手当てを終えてもう一度ナミの症状を診る。

 

「……駄目だ、毒が体に回ってやがるな。この船に医者はいるのか?」

「いねェ」

「医療器具は?」

「最低限載ってるが、薬品とかはあんまり……」

「ゆガラらこの海舐めすぎだろ!」

 

 ゼポの叱責が飛ぶ。

 ゼポはロビンたちが乗っていた船に一度戻り、いくつか薬品を持ってくる。

 ある程度の処置を終えると、ナミをベッドに寝かせて甲板に戻ってきた。

 

「白熊、ナミは無事なのか!?」

「毒の処置はあらかたやったが、どうも上手くいかねェ。あガラらが元々動物(ゾオン)系の悪魔の実を食べた兵器ってことを考えると、おれの知らねェ毒が使われてる可能性が高い」

「ここでの治療は難しいという事?」

「そうだな。町できちんとした医者に見せたほうが良いし、どのみち薬品も足りてねェ」

「そう……ここからだと、一番いいのはドラムかしら?」

「……あそこはあんまり勧めねェが、この際仕方ねェかもな」

 

 サングラスを掛けたまま、ゼポはロビンの意見に賛同する。

 

「この船の航海士は?」

「ナミだ」

「じゃあ、最低限看病が出来るくらい医療の知識がある人は?」

「ナミだ」

「……あなたの船、大丈夫?」

「大丈夫じゃねェ! 医者を早く探そう!!」

 

 思わずロビンも呆れてしまうが、もうそんなことを言っていられる状況ではない。

 ペドロが船から永久指針(エターナルポース)を持ってくると、それをビビに手渡す。

 ドラムへの永久指針(エターナルポース)だ。

 

「その島へ行って、航海士さんに治療を受けさせなさい。腐っても医療大国と呼ばれていた国よ、探せば医者の一人や二人はいるでしょう」

「そこへ行けばナミは助かるのか!?」

「多分ね。確実なことは言えないわ」

 

 ロビンは医者ではないので、ナミの症状などに関して無責任なことは言わない。

 それに、航海士である彼女はどちらにしてもアラバスタへ行くために必要な人材だ。死んでもらっては困る。

 ロビンがビビを連れて行くのは少々面倒事になりかねない。クロコダイルはロビンの事を信用しているが信頼しているわけでは無いのだ、アラバスタに入れば監視の目があるだろう。

 

「ゼポ、ペドロ。あなた達はこのまま彼らの手助けを」

「ゆガラは良いのか、ロビン」

「大丈夫。私だって何も出来ない子供じゃないわ」

 

 それに、航海士と医者は必要だろう。どちらも担っていたナミが倒れた以上、補う人材がいる。

 ついでなのでイガラム達もそちらで合流出来るように手配する、とロビンは言い、彼女は船に戻った。

 

「また逢いましょう、麦わらの子。運が良ければアラバスタへ辿り着けるでしょう」

 

 そう言って彼女は自分の船でどこかへと行き、ゼポとペドロが残された。

 

「世話になる。ゼポだ」

「しばらくよろしく頼む。ペドロだ」

「おう、よろしくな!」

 

 ルフィは二人を簡単に受け入れ、一路〝ドラム王国〟を目指す。

 ナミが侵されている毒をどうにかするために。

 




時系列が分かりにくかったので補足。
キッドがルネス到着→翌日に町を破壊→その最中にマラプトノカ到着→キッドとマーティンが交戦。キッド辛くも勝利し逃走。
その二日後にビビ到着。町が壊滅状態なのを知る。
翌日にBWの追手が到着。ビビを捜索中に船が全て沈没。
更にその翌日にルフィたちが到着。

ちなみに船を沈めたのは全部マラプトノカの仕業です。メリー号が沈められなかったのはBWの社員を回収するのに忙しかったから(夜の間ずっと一人で回収していた)。
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