ヒエヒエの実を食べた少女の話   作:泰邦

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各勢力の説明回だけで何話使ってるんだ感。


第百五十六話:サボ

 

 〝ナノハナ〟──海軍臨時駐屯所。

 ルフィたちを取り逃がしたスモーカーは、考え事をしながら葉巻を吹かしていた。

 そこへ、スモーカーと同じように臨時招集された大佐であるヒナとスモーカーの部下であるたしぎが入ってきた。

 

「こんなところでサボり?」

「サボりじゃねェ。仕事はやってる」

「そうかしら。追ってた海賊にまた逃げられて不貞腐れているようにしか見えないけど」

 

 スモーカーとヒナは同期であるためか、互いに気安く話す。

 ヒナもタバコに火を付けて席に座ると、たしぎが居心地悪そうにスモーカーの隣に座った。

 共に白煙をくゆらせると、スモーカーはおもむろに口を開く。

 

「ヒナ。お前、こっちの海で〝覇気使い〟を最近見たか?」

「〝覇気使い〟? いいえ。楽園(こっち)で見るのは稀じゃない?」

「そうだな……おれもほとんど見た事がねェ」

 

 強力な海賊ほど覇気を扱えるものだが、中には能力一辺倒で覇気を使えずとも新世界まで辿り着く海賊もいる。

 新世界でさえそうなのだ。楽園側ならばその傾向はより強い。

 東の海(イーストブルー)が担当だったスモーカーは元より、アラバスタ近辺をナワバリとするヒナでもそうそう見る事の無い相手である。

 

「だが、さっき()()んだよ」

「〝覇気使い〟が? 珍しいこともあるものね」

「〝麦わら〟と共に行動していた……おれが見失ってる間に仲間にした可能性もあるが、問題はそこじゃねェ。〝(ソル)〟を使ったことだ」

「六式を!?」

 

 驚いてヒナが目を見開く。

 たしぎは良く分かっていないのか、視線はヒナとスモーカーの間を行ったり来たりしている。

 

「じゃあ、まさか……」

「政府関連ってことはねェだろう。海賊と組む理由がねェ。十中八九〝黄昏〟だ」

 

 似たような移動技を使う者は海賊の中にも幾らかいる。それ一つを使ったからと言って断定出来ることでは無いが、政府関係者以外で六式を使えるのは〝黄昏〟の関係者がほとんどだ。

 それゆえ、消去法で可能性が高いのはやはり〝黄昏〟の関係者に絞られる。

 それが在野の海賊と協力しているというのが、二人にとっては驚きだった。

 〝黄昏〟の目は厳しい。

 どんなに巧妙に潜入してもあっという間に露見し、始末されることは海軍内でも有名だ。故に内部の者は互いに信用しているが、外部の組織に対する信用はほぼ無い。

 相手が海軍であっても同じだ。

 それ故に、在野の海賊と手を組んで何かをしているという時点で疑問が残る。

 

「驚愕よ。ヒナ驚愕」

「あの女が動けば四皇でさえ真正面から止められる。目的地が分かっているから念のために配備しているだけなら堂々としてりゃいい。そもそもの話、あいつらならそこらの海賊を利用する必要はねェ。戦力が桁違いだからな」

 

 海軍でも詳しいことはわかっていないが、少なくとも海軍抜きで四皇の一角と真正面から衝突出来る程度には戦力があると推測されていた。

 麦わらの一味はわずか数ヶ月前に立ち上げられた海賊団だ。

 〝黄昏〟の傘下なら堂々とマークを掲げれば海軍に追われることは無いし、町で受け入れられないという事も無い。

 それをしない時点で〝黄昏〟の傘下では無いのだろう。

 在野の海賊と手を組んで、海軍にさえコソコソと手の内を隠して何をしようとしているのか──スモーカーはきな臭いものを感じ取っていた。

 

「長いこと七武海として貢献してきたことと、あれだけの戦力を政府が失いたくねェと思うのも理解は出来るが、海賊は海賊。信用なんざ出来るはずもねェ……特に〝魔女〟は政府と何度も衝突してる。いつ手を切ってもおかしくはねェだろう」

 

 アラバスタに百獣・ビッグマムの海賊同盟が向かっている理由は〝ニコ・ロビンの捕縛〟のためだ。

 そこは海軍もわかっているし、出来る事なら海軍が捕まえたいくらいである。現状はそちらに回すだけの戦力が無い、と言うだけの話。

 〝黄昏〟は海賊王の残した秘宝に興味が無く、また古代兵器にも興味を示さないのでニコ・ロビンを手中に収めようとする動きも無い。政府がこの点に関して〝黄昏〟を信用してアラバスタに戦力を幾らか駐留させるのも、それに監視を置かないのも、スモーカーは理解出来ないし納得も出来ていない。それでも立場上呑み込むしかなかった。

 

「この戦いにも裏があると?」

「いや、四皇同盟がニコ・ロビンを狙っているのは本当だろう。それを止めるために〝黄昏〟が動いているのもな」

 

 だが、この内乱が起こっているアラバスタにロビンがいる理由と、新世界に居を構える四皇の二人が楽園にいるロビンの所在地をどうやって知ったのかと言う疑問は残る。

 スモーカーたちの知らない裏で何かが起きている。

 きっとただの佐官に過ぎないスモーカーたちに知らされることは無い。もっと上の者達が色々と動いている事だろう。

 スモーカーとしては、それは気にくわなかった。

 

「……地位が足りねェな」

「あら、権力欲が出て来たのね」

「組織の中で自由にやるにゃ地位がいる。政府が海賊に配慮する事にも、海軍が海賊と歩調を合わせる事にも、物申すにゃァ今の地位じゃ出来ねェ」

「そうね。上官に噛みついたり素行の悪さでクビになりかけた貴方にしては進歩したじゃない」

「バカにしてんのか?」

「そういう訳ではないわ。ヒナ謝罪。学習したって言ってるのよ」

「やっぱりバカにしてんだろ」

 

 額に青筋を浮かべるスモーカーに笑うヒナ。たしぎは剣呑な雰囲気になりつつある両者の間を視線が行ったり来たりしながら声を上げる。

 

「け、喧嘩は駄目ですよっ!?」

「喧嘩なんざしねェよ、バカ」

「それなりに長い付き合いだものね」

 

 先程までのにらみ合いは何だったのか、二人とも特に何かすることも無く互いに灰皿へと灰を落とす。

 たしぎがホッとした様子で背もたれに体を預けると、三人が話しているところへ伝令がやってきた。

 

「バスティーユ中将よりスモーカー大佐、ヒナ大佐の両名へ招集が掛けられております!」

「ああ、わかった」

「すぐに行くわ。でも、何用かしら」

 

 ある程度の事はヒナたちも聞いている。

 ()()()()()()()()百獣・ビッグマムの海賊同盟に関することは確実なはずだが、事が起こっているのは新世界だ。

 アラバスタに海兵が集められたのは万が一のための配備で、ともすれば仕事など無いと考えてもいた。

 

「詳しいことは小官も聞いておりません。ですが、緊急事態になり得ることだと……」

「緊急……そう。あまり良くないことが起こってるようね」

 

 こういう時に集められた場合、大抵ロクでもないことが起こっている。

 何となくそんな予感を覚えながら、スモーカーとヒナはバスティーユの下へと足早に歩き始めた。

 

 

        ☆

 

 

 一方、〝カトレア〟。

 号泣するルフィを宥め、ひとまず落ち着けるところで話をしようと一行は町の外縁部まで移動していた。

 ルフィは相変わらず号泣しており、涙と鼻水で顔面が酷いことになっていた。

 

「うぉおおおおお……よ゛か゛っ゛た゛ァ……サボォ~~!!」

「ハハハ……泣き虫は相変わらずみてェだな。ある意味安心したよ、おれは」

 

 近くの岩場に腰を下ろしたサボは、ルフィの様子を見ながら笑っていた。

 それに対し、事情が何も分かっていない一行は互いに顔を見合わせるばかりである。

 一番混乱していたのは、コーザと話して戻ったらルフィが号泣していた場面に出くわしたビビとイガラムであろう。

 

「ルフィさん、一体どうしたの?」

「わかんない。なんかあの人がルフィに話しかけてきたんだけど……いきなりルフィが泣きだしちゃって」

「……お前ら、あの男の事知らねェのか?」

 

 状況が呑み込めない麦わらの一味と違い、ゼポとペドロは警戒感をあらわにしていたし、ジェムは冷や汗を流してサボから視線を外さないようにしていた。

 ミキータも険しい表情をしている。

 それに気付いたゾロは、いつでも戦えるように刀に手を置いて目を細めた。

 

「お前ら、あいつが誰だか知ってんのか?」

「麦わらとの関係性は知らねェ。だが、あの男の事は知ってる」

「誰なんだ?」

「革命軍の参謀総長──つまり、()()()()N()o().()2()だ」

 

 ジェムの言葉にサンジやナミは驚き、ビビは目を見開いてジェムの方を見る。ゾロは良く分かっていない顔をしていた。

 

「革命軍……!? じゃあ、まさかコーザが言ってた『弟を探しに来た』革命軍の人って」

「ああ、おれだ」

 

 ビビの言葉にサボが首肯する。

 その言葉とこの状況を見るに、まさか──と誰もが唖然として口を開く。

 

「改めて……おれはサボ。ルフィの兄貴だ。(ルフィ)がいつも世話になってる」

「や、まったく」

 

 ぺこりと頭を下げるサボ。それにつられてウソップやサンジたちも頭を下げた。

 ジェムやペドロは身内に会いに来ただけだと判断して警戒心は解いていたが、それでも味方かどうかは不明のままだとやや距離を置いている。

 彼らは麦わらの一味ではない。サボとも一線を引いておくべきだろうと考えたのだ。

 

「でも、なんで急に泣き出したの? しばらく会えてなかったにしても、そんな号泣しなくても……」

「ああ、おれは小さい頃に死んだと思われてたからな。生きてることに驚いているんだろう」

「死んだと思われてた? 何かあったのか?」

「色々な……数年前まで記憶喪失だった」

「記憶喪失!?」

 

 それまでは革命軍としてずっと行動していたが、2年前にエースと再会し、そこでも色々あって記憶を取り戻した事をざっくり説明する。

 エースの名前を聞いてルフィが懐かしそうにする一方、ジェムたちはまた冷や汗を流していた。

 かなり聞き覚えのある名前だったからだ。

 

「エースって……まさか、〝白ひげ〟の二番隊隊長か……?」

「良く知ってんな」

 

 なんつう兄弟だよ、とジェムは眩暈を抑える様に額に手を当てた。

 ペドロもゼポもミキータも、ある程度新世界の情勢を知る者達は怒涛の情報量に頭が痛そうにしている。

 ルフィは既に泣き止んでおり、エースの名前に反応した。

 

「エースと会ったのか!?」

「ああ。エースも随分立派になってた」

「そっかァ……エースも強くなってるんだろうなァ……でもおれも強くなったからな。もう負けねェ!」

 

 サボがエースと直接会ったのは2年前の一度きりだが、覚えているのは共にカナタに歯向かって拳骨で沈められたことだけである。

 なので「あー、まァそうだな」とお茶を濁す。

 弟に対しては見栄を張りたいのが兄というもので、サボもまた例に漏れずそうだった。

 

「おれはルフィを探すっていう個人的な理由でアラバスタに来たが、他に理由が無い訳じゃない」

「……この国に革命軍が何の用かしら?」

 

 ビビがやや敵意の籠った視線でサボを見る。

 サボはビビの正体に気付いているが、目的はこの国に革命を起こすことではないため、向けられる敵意に苦笑した。

 

「おれの目的は……詳しいことは話せねェんだが、概ねそっちと同じなんだ」

「おれ達と? ってことは、クロコダイルを倒しに来たのか?」

「近いが、ちょっと違う。()()()()()()()()()で、ルフィとビビ王女が一緒にいるって聞いてな。革命軍としては……まァ、反乱軍に手を貸すべきだって意見もあったんだけどな」

 

 革命軍は世界政府を打倒することを目的としている。

 当然、世界政府加盟国であるアラバスタでも革命の兆しがあるならそれを支援すべきだとの意見はあった。

 しかし、ドラゴンもサボもアラバスタにおける()()()()()を知っている。これを理由に革命を行うべきではないと判断し、これまで手を出してこなかった。

 クロコダイルが恣意的に火種を作って国をひっくり返そうとしているのを、革命軍が手伝うわけにはいかない。

 

「クロコダイルがこれまでやってきたことはおれ達も知ってる。だから、この国で革命は起こさねェ」

 

 サボはビビの目を見て、はっきりと断言した。

 

「じゃあサボは何しに来たんだ?」

「さっきも言ったけど、概ねルフィたちと目的は同じだ。アラバスタを救う事……なんだけど、おれは念のために来てるだけだ」

「念のためって……」

「簡単に説明しよう。今、この国は二つの危機に襲われてる」

 

 サボは指を二本立てた。

 一つは王下七武海のクロコダイル。

 もう一つは百獣・ビッグマムの海賊同盟だ。

 

「ルフィ。お前、四皇って存在がどれくらい強いかわかるか?」

「分かんねェ」

「ハハハ、だろうな」

「笑い事じゃねェぞ、麦わら」

 

 正直に言ったルフィにサボは笑い、ジェムは溜息を吐いた。

 

「──偉大なる航路(グランドライン)の後半の海に、まるで皇帝のように座する四人の大海賊を四皇と呼ぶんだ。百獣海賊団、ビッグマム海賊団も四皇の一角を占める大海賊でな。その二つの海賊団が同盟を組んで黄昏の海賊団と海軍の同盟に対抗してる」

 

 海軍と海賊が手を組むことは基本的に無いが、七武海は政府が認めた海賊である。この七人であれば話が別だった。

 もっとも、政府はカナタとミホークを除く5人には大して期待もしていない。

 政治的な理由があるジンベエは七武海の席にいるだけで意味があり、くまも色々と理由があって七武海にいる。クロコダイル、ドフラミンゴ、モリアの三人は本当に()()()()()()()()()()海賊である。

 ともあれ、その辺りの事情は今は関係ないので割愛し、サボは地面に簡単に図解する。

 

「大まかに言って、外部から今回の戦争に参戦しようとしてる勢力は四つ。百獣海賊団、ビッグマム海賊団、黄昏の海賊団、海軍。偉大なる航路(グランドライン)後半の海で今まさに衝突してるわけだが、百獣・ビッグマムの海賊同盟の狙いは知ってるか?」

「知らねェ」

「いや聞いただろ。ニコ・ロビンって女だ。電伝虫で話してただろうが」

「しかも〝ルネス〟で助けられただろ」

 

 ウソップとサンジがルフィに突っ込み、サボは「知ってるなら話が早い」と頷く。

 ロビンは革命軍にとっても重要な人間だ。四皇のうち二人を敵に回すことになっても、守ることには意味がある。

 

「彼女を狙って動いてる。けど、黄昏と海軍が共同で止めてても完全に止めきれるとは限らない」

 

 裏をかかれる、あるいは何らかの方法で出し抜かれる可能性がある。黄昏と海軍がどれだけ網を張っても絶対では無い。アラバスタで迎え撃つのが確実だが、その場合アラバスタの被害の桁が増えることになる。カナタはそれを嫌って海上で迎撃に出たのだ。

 それらを考慮して、サボはコアラを連れてアラバスタを訪れた。

 カナタから援軍の要請があったこともあるし、サボ自身がルフィの危機とあらば乗り込むつもりだったからだ。

 

「おれたちが海軍と共同戦線ってのは色々とあれなんだが……この二つの海賊団、四皇の中でも特に過激な勢力でね。下手すると止めきれずに辿り着いた勢力だけで、ニコ・ロビンを捜索しつつこの国を更地にする、なんて無茶苦茶な事をやりかねない」

「そんな滅茶苦茶な……!?」

「そう言う連中なんだよ、あいつらは」

「そいつらもぶっ飛ばしたらいいのか?」

「相手にもよるが、お前にゃ無理だ」

「何ィ!?」

 

 ビビが顔を青くしている横でルフィがやる気満々で拳を構えるが、ジェムが諭す。

 新世界の海賊だ。少なくともルフィたちよりずっと年季の入った海賊だし、下手すると四皇の幹部が来る可能性もある。

 ジェムだってどこまで食い下がれるか分からない相手だ。

 少なくとも、今のルフィたちが戦いを挑んだところで勝てはしない。

 

「強さ云々の前に、お前はクロコダイルだけ見据えておけばいい。他の奴に目移りしながら倒せるほど易い相手じゃないぞ」

「でも、電伝虫で『大したことない』って言われてたぞ」

「カナタさんの評価は当てにするな。あの人、大抵の奴は『強くない』ってひとくくりにするんだ」

 

 ジェムは過去にそれで痛い目を見た事があるのか、やや遠い目をしている。

 サボもカナタの常軌を逸した強さは身を持って体験したことがあるので、カナタを基準にするとおかしなことになるのは理解していた。

 

「まァ、そういう訳だ。万が一のためにおれは東の港近くで待機してる。ここじゃ海軍の駐屯地が近すぎるからな。ルフィ、クロコダイルの事は任せていいか?」

「おう! おれは強くなったからな!! クロコダイルをぶっ飛ばして、サボにも強くなったところ見せてやる!!」

「ハハハ! そりゃ楽しみだ!!」

 

 サボが聞いた限りでは〝黄昏〟の精鋭も動いている。

 ルフィの事は心配だが、兄貴分としては見守ることも大事だと考え……名残惜しくはあるが、話をここらで切り上げることにした。

 コアラには「ルフィを探してくる」と書置きをしているが、あまり長いこと待たせるのも悪い。

 最後に、サボは一枚の紙を取り出してルフィに渡した。

 

「なんだ、これ? 紙切れ?」

「ただの紙切れさ。だが、それがまたおれ達を引き合わせる」

「へー」

「要らねェか?」

「いや……いる」

 

 変哲もないただの紙切れを貰ったルフィは、それを大事そうに持つ。

 死んだと思っていた兄弟分と再会できたのだ。その兄弟分から貰ったものなら、何であれ捨てる理由は無い。

 ジェムやペドロたちはその紙に心当たりがあったが、本人が言わないのならと黙っていた。

 

「出来の悪い弟を持つと、兄貴は心配なんだ……ルフィの仲間たちも、コイツにゃ手を焼くだろうが……よろしく頼むよ」

 

 サボはルフィの仲間にそう告げ、町へ戻る前にルフィへ声をかける。

 

「じゃあまたな、ルフィ。この騒動が終わったらまた会おう」

「おう、じゃあな!」

 

 サボが町に戻り、ルフィはサボが見えなくなるまで手を振っていた。

 麦わらの一味の面々は、ルフィの兄弟があれほど常識のある人間であることに心の底から驚いていたが。

 サボを見送った後で、一同は目的を再度確認する。

 

「クロコダイルをぶっ飛ばせば良いんだろ」

「そのためには〝レインベース〟ってとこに行く必要があって」

「移動するために一度〝ナノハナ〟まで戻るのか?」

 

 サンジが疑問を抱き、ビビの方を向く。

 どのルートでも時間はかかるが、一度船に戻ってサンドラ河を遡り、上流まで移動するのが早い。

 反乱軍は一時的とはいえ止まっている。数日の猶予の内に倒せればいいが、早いに越したことは無いだろう。

 

「そうね。一度メリー号まで戻って移動した方が良いと思うわ」

「時間はどれくらいかかるんだ?」

「今から〝ナノハナ〟に戻って……サンドラ河の上流まで行ったら、一度休息を取るべきだと思うわ」

 

 既に時刻は昼を回っている。ここから移動するとなると、サンドラ河の上流まで辿り着くころには夜だろう。

 そこで一度休息を取り、早朝から〝レインベース〟へと移動を開始する。

 少なくとも反乱軍とは接触出来た以上、国王軍と戦って多くの血を流すという結末は回避出来たはず。ビビはそう考え、この場にいる面々の顔を今一度見回す。

 

「もう少しで、きっとアラバスタを救える……だから、お願い。皆、力を貸して!」

 

 自分一人ではどうにもならないことは他人を頼ればいい。

 ルフィの生き方を見て学んだビビは、皆に頭を下げて頼み込む。

 もちろん──返答など、言うまでもない。

 




イガラムが生きててちょっとだけ心理的負担が減ったおかげで視野が広がったビビの成長がわかる回。

次回はお待ちかねカナタさん大暴れの回です。

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