ヒエヒエの実を食べた少女の話   作:泰邦

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第百五十七話:迎撃戦

 

 ──新世界某所。

 ルフィたちがアラバスタに辿り着く数日前の事。

 ビッグマム海賊団は本拠地であるホールケーキアイランドを出航し、やや曲線的に〝赤い土の大陸(レッドライン)〟を目指していた。

 直線ではないのは単に風と海流の問題で、遠回りをしてでも風と海流をつかめれば直線航路を使うよりも早いと判断したからである。

 シャーロット・リンリンの乗る〝クイーン・ママ・シャンテ号〟を含む船団は──海軍と真正面から衝突していた。

 

「ハ~ハハハママママ!!! カナタのやつが来るかと思ってたが、お前らとはね!!」

 

 リンリンは高笑いをしながら正面に立つサカズキへと殴りかかり、サカズキもまたリンリンに正面から立ち向かう。

 海軍大将であるサカズキはマグマグの実を食べた溶岩人間──肉体をマグマに変えられる能力者である。

 当然、マグマの拳などまともに受けては大火傷は免れないのだが……。

 

「こンのババア……!!」

 

 リンリンは素手でサカズキと殴り合っているにも関わらず、マグマによる火傷を負った様子もない。

 自身の覇気もさることながら、素の肉体の頑丈さが常人の比では無いのだ。

 

「そこを退けよサカズキィ!! おれはニコ・ロビンが欲しいんだ……! 海賊王になるには、あの女の力が必要だからねェ!!!」

「退くわけなかろうがァ……!!」

 

 四皇と称される実力は伊達ではない。

 如何に海軍大将であっても勝機は薄く、一瞬たりとも気を抜くことが出来ない。

 軍艦の上で味方への被害を考慮しなければならないが、そんな余裕さえないのだ。

 ボコボコと沸き立つマグマから海兵たちは一斉に退避しており、リンリンも一人で自身を止めようとするサカズキに笑みを浮かべて(ナポレオン)を抜いた。

 

「良い覚悟だ。だったらまずはお前の寿命から貰っていくとしようじゃないか!!」

「お前にくれてやるもんなんぞ一つもないわァ!! くたばれ、ビッグマム!!」

 

 覇気を纏った剣を振りかぶるリンリンに、サカズキは直撃を受けないよう回避しながらマグマの拳を叩き込む。

 それを尻目に、ベルクはカタクリと戦っていた。

 

「こうも迎撃態勢が万全とはな。こちらが行動してからそれほど時間はかけていないはずだが」

「緊急事態ゆえ、色々手続きをすっ飛ばした。貴殿らに楽園側へ抜けられると被害の規模が拡大するのでな」

「なるほど、良い判断だ。手強いな」

 

 ビッグマム海賊団の誇る最高幹部──四人の〝将星〟のうち三人は同じ海軍大将であるベルク、ボルサリーノ、そして七武海として招集を受けたミホークによって止められている。

 残る一人はこの場にいない。ナワバリを空にすることは出来ないと、防衛に残されたと海軍側は考えていた。

 やる気も無く適当にあしらうだけのドフラミンゴ。カイドウの方に行きたそうにしつつも不承不承に戦うモリア。そしてリンリンの子供たちを迎撃するくま。

 ジンベエは万が一抜けられた時のために魚人島付近で待機しており、海中で戦うことになっていた。

 招集され、それに応じた七武海の五人はそれぞれの事情を持ちつつも戦っている。

 ……もっとも、応じなければ七武海の地位は剥奪される。この地位を持つことで得られる利益を考えれば、招集に応じない理由は無い。

 自身の勢力を使い単独で百獣海賊団を相手するカナタと、半ば地位剥奪が決定しているクロコダイルだけが特別である。

 

「それに、時間が無かったのはそちらも同じだろう」

 

 ベルクが指摘した通り、ビッグマム海賊団も船団を組んではいるが全戦力とは言い難い。

 傘下の招集が間に合わなかったのは言うに及ばず、国外に出ていたリンリンの子供たちや部下たちが戻る間もなく出航している。

 とはいうものの、各支部にいる海兵を一斉にかき集めた海軍よりも戦力は多い。このまま押し潰すことも可能だろうが、招集された七武海と続々と集まってくる海軍の援軍部隊が鬱陶しい。

 

「ニコ・ロビンに逃げられては敵わないからな。こうしてお前たちの相手をしている時間も惜しい」

 

 これまで足取りが掴めなかった女の居場所がようやくわかったのだ。この機を逃す手はなく、それを阻むために海軍が動くのも理解は出来る。

 些か動きが早すぎるのがカタクリは気になったが、それは後で考えればいい。

 目の前の男は強く、油断すればやられかねない。カタクリは懸賞金10億を超える男だが、海軍大将ともなればカタクリの動きにも当然のように対応してくる。

 戦場が不安定な船の上という事もあり、双方全力とは言い難いが……それでも厄介なことに変わりはない。

 

(……出来ればおれ達もアラバスタに到達できれば良かったが)

 

 これは無理そうだな、とカタクリは腹を決めて目の前の男と戦うことに集中した。

 

 

        ☆

 

 

 一方、同時刻。

 新世界から楽園へ向けて、ワノ国から出航した百獣海賊団とハチノスから出航した黄昏の海賊団が真正面から衝突していた。

 ビッグマム海賊団と海軍の戦いと違い、こちらは辺り一面が凍り付いて足場が作られている。

 カナタの能力によるものだ。

 

「船を攻撃せい! 足を奪え!!」

 

 陣形を組んで構える船団に向け、千代が電伝虫を使って伝達する。

 勝利条件は〝ニコ・ロビンの逃走〟である以上、時間稼ぎさえ出来ればいい。大規模な衝突による戦力の低減はカナタの望むところでは無いと、千代も理解している。

 遠目に見えるフェイユンはクイーンの首根っこを掴んで鈍器のように振り回しており、暴れ回るキングはラグネルが正面から止めている。

 幹部さえ抑えてしまえば、とも思うが、百獣海賊団には近年〝人造悪魔の実(スマイル)〟によって大幅に増えた能力者がいる。普段から鍛錬を重ねる精鋭を有する黄昏と言えども、油断すれば食い破られてしまうほどだ。

 

「あの馬鹿か小紫の奴がいれば楽なんじゃがなー……」

 

 あの馬鹿(ティーチ)は現在休暇中の上、電伝虫を忘れて行ったので連絡が取れない。

 小紫は重要な仕事のために呼び戻せず、カイエは新世界にいないので呼び戻す時間が無かった。

 戦闘員の数はほぼ同数ながらも、スマイルによって増えた能力者の数は黄昏のそれを上回る。広域に攻撃可能なティーチや小紫がいれば随分戦いが楽になったが、いない相手のことを考えても仕方がない。

 ──別の場所では、百獣海賊団の幹部、〝飛び六胞〟の一人であるうるティとページワンが目の前の相手に苛立っていた。

 

「ふざけやがって……!」

 

 うるティ、ページワンは共にリュウリュウの実の能力者である。

 共に口元を布で隠し、頭部に二本の角がある姉弟だ。動物系古代種の頑強な肉体と本人の強さがあり、若くして飛び六胞の地位にまで上り詰めた。

 その二人が、一人の男に翻弄されていた。

 〝戦士(エインヘリヤル)〟と呼ばれる、黄昏の精鋭だ。

 

「テメェ……なんで全裸なんだよ!!?」

 

 ──そう。二人と対峙する男は、あろうことか全裸だった。

 それでも剣一本で飛び六胞二人を抑え込んでいる辺り、実力者であることに変わりは無いのだが……相手をしている二人は非常に不本意だった。

 

「ペーたんに粗末なモン見せてんじゃねェぞコラァ!!」

「そう、粗末なモン見せてんじゃ……それはおれの台詞だろ!?」

 

 ページワンが突っ込む横でうるティがキレながら人獣形態へと変形し、飛び上がってエビ反りしつつ狙いを定め──男目掛けて強烈な頭突きを見舞う。

 

「喰らえ変態!! 〝ウル頭銃(ズガン)〟!!!」

 

 人獣形態に覇気を集中させたうるティの攻撃を、男はあろうことか()()()()()()()()()対抗して見せた。手に持っている剣を使う素振りすら見せていない。

 共に武装色を纏っているため金属がぶつかり合うような轟音が響き、衝突する覇気で足元の氷にもヒビが入るほどの衝撃が散った。

 まともに受ければ頭をカチ割られてもおかしくないが、男は僅かに額をさするだけで特段ダメージがあるようにも見えない。

 

「……効いた。悪くない威力です」

「この野郎……! 真正面から受けてその程度だと!?」

「いや、実際効きました。これほどの衝撃──時に、貴女の名前をお聞かせ願いたい」

「あァ? うるティだパキケファロ」

「姉貴その語尾止めろよ」

「や・め・ろォ~~!!?」

 

 あちらこちらに噛みつくうるティに思わずページワンが深いため息を吐くと、戦っていた男はジッとうるティを見つめていることに気付く。

 眉をひそめて未だギャーギャーと騒ぐうるティを引き剥がし、獣形態へと変化した。

 まだ戦闘中だ。遊んでいる暇はない。

 ページワンの真剣な表情にうるティも視線を男へ戻し、いつでも飛びかかれるように姿勢を低く保つ。

 

「うるティ……気の強さもまた良い。良ければお付き合いなど──」

「嫌に決まってんだろ変態クソ野郎」

「…………」

 

 考える素振りすらなくフラれ、男は気落ちしたように肩を落とす。

 それを隙と捉えたページワンは即座に噛みつくが、男は反射的に武装色で腕を硬化しページワンの噛みつきを受け止めた。

 一度剣を落として両手でページワンを持ち上げ、その腹部目掛けて強烈な蹴りを叩き込む。

 衝撃に息を吐き、弾き飛ばされるページワン。

 

「ペーたん!! テメェよくもペーたんを!!!」

 

 入れ替わる様に襲い掛かるうるティには、即座に剣を拾い上げて頭突きを受け流しつつ斬りつける。

 言動も行動もあれだが、男は〝戦士(エインヘリヤル)〟の中でも上位の実力者だ。飛び六胞二人がかりとは言え、易々と落とされる実力では無かった。

 

 

        ☆

 

 

 砲弾が雨のように百獣海賊団の船へ降り注ぐ。

 新世界へ行くほどの海賊ならば大砲への対処法は心得ている。多少数を増やしたところで大砲で落とせる船は多くは無い。

 もっとも──カナタがフリーになっている状態ならば話は別だ。

 

(……カイドウが居ない? あの男が本船にいないとは考えにくいが……)

 

 最大の目的であるカイドウの姿が見当たらない。

 リンリンにせよカイドウにせよ、個人の武力でこのどちらかを止めることは難しい。倒すつもりならガープ、あるいはセンゴクが前線に出てこなければならないが、前者は現在〝東の海(イーストブルー)〟へ出張中。後者は元帥と言う立場柄容易に動けなかった。

 それゆえ、〝この世の最強生物〟と名高いカイドウの相手はカナタに回ってきたのだが……当のカイドウ本人がどこにも見当たらない。

 百獣海賊団の最高幹部──大看板のキング、クイーン両名は確認されている。

 大看板に次ぐ実力者である飛び六胞も確認されている。

 カイドウだけがいないことが奇妙だった。

 

「スカされたか……?」

 

 龍は〝焔雲〟を掴み、空を駆ける。

 カイドウ単身であれば海中を通ることなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 その場合、アラバスタにいる戦力でカイドウを相手する必要が出てくる。

 それは、少し不味い。

 

(……あまり頼りたくは無いが、バレットを焚きつけるしか無いか)

 

 被害が加速度的に増えることを考えれば、あの二人をぶつけるのはあまりやりたくないのだが……カイドウ一人いれば国一つなど簡単に落ちる。四の五の言っている場合では無いだろう。

 手に持った槍を無造作に振るって百獣海賊団の船を真っ二つに割断しながら、カナタは子電伝虫で連絡を入れておく。

 待機させている伝令からバレットに伝わるだろう。

 今カナタに出来るのは、カイドウのいない百獣海賊団を壊滅させることだ。

 

「──!」

 

 再び槍を振るって船を沈めようとしたところで、横合いから高速で飛来する何かを感知する。

 氷の大地すれすれを滑空する黒い影──プテラノドン、即ちキングである。

 キングは高速でカナタへと突撃し、カナタが突撃を防ごうとした腕を咥えたまま黄昏の船の側面へと突っ込んだ。

 フリーにしておけば被害が拡大する一方だと考え、カナタを止めに入ったのだ。

 カナタを抑えつける様に腕を咥えたまま、キングはカナタを睨みつけている。

 

「ラグネルを振り切ったか」

「速度じゃおれの方が上だ。あの女におれは止められねェ」

 

 キングは背中の炎を煌々と燃え上がらせ、人獣形態のままカナタへと連続で攻撃を仕掛ける。

 

「〝刃裏双皇(バリゾウドン)〟!!」

 

 至近距離で両翼を振るい、距離を取りつつ斬撃を飛ばして牽制する。

 カナタはそれを一切避けずに受け、斬撃で砕けた体は氷の破片となって即座に修復されていく。

 

「この程度じゃダメージにもならねェか!」

「仕掛けてきた割には腰が引けているな。そら、もう少し気張れ」

「ッ!!」

 

 咄嗟に上空へと移動し、カナタの斬撃を回避するキング。

 背の炎は噴出したまま、厄介そうに切り裂かれた氷の大地を見る。

 あれをまともに受けるべきではない。カイドウやリンリンもそうだが、四皇クラスの存在はまともな物差しで測れるような相手では無いのだ。

 

「〝火龍皇(かりゅうドン)〟!!」

 

 マグマのような炎が龍の形を取り、カナタ目掛けて襲い掛かる。

 極めて高温の炎は氷の大地すら容易に溶かすが、カナタは事も無げに槍を振るい、その炎を両断した。

 反撃に出る、と感知したキングは即座に距離を取ろうと背中の炎を消して高速で移動する──しかし、距離を取ったはずのカナタが既に()()()()()()

 

(こいつ、おれの速度に容易に追いついて──!!?)

「呆けている暇があるのか?」

 

 覇王色を纏った蹴りは黒い雷を伴ってキングの首に直撃し、海面をバウンドしながら百獣海賊団の船へと突っ込んで停止する。

 動物系古代種の能力者であることと生来の頑丈さゆえに耐えられたが、それでもキングは顔を歪めて首に手を当てた。

 

「クソ……あの女、馬鹿力で蹴りやがって! 首の骨がイカレちまう……!!」

「キングさん! 大丈夫ですか!?」

「下がってろ!!」

 

 治療のために近付いて来た部下にそう言うや否や、即座に横っ飛びして直後に船を切り裂くカナタの斬撃を回避する。

 

「チッ!」

 

 人形態のまま背中に炎を灯し、キングは刀を構えてカナタを迎え撃つ。

 覇気を纏った槍を刀で弾くも、カナタはそれを見越してかキングの体勢を崩すために二度三度と連続して斬りかかる。

 あっという間に隙を晒すことになったキング目掛け、カナタは強烈なアッパーカットを繰り出す。

 6メートルもあるキングの体を十数メートル上空まで浮かすほどのパンチをまともに受け、さしものキングも動きが硬直していた。

 その、目の前に。

 吹き飛ばした張本人であるカナタの姿があった。

 咄嗟に防ごうとしたキングの刀を即座に槍で弾き、覇王色を纏った蹴りを叩き込んで凍り付いた海へと落とす。

 

「……〝声〟が消えないな」

 

 キングの外皮の硬さは良く知っている。

 なので、斬撃よりも打撃で内臓へのダメージを与えることを優先した。

 かなりダメージは蓄積しているはずだが、まだ意識はあるらしい。

 カナタが海面に降り立つと、血を吐きながらも立ち上がるキングの姿があった。まだ睨みつけるだけの気力は残っているようだ。

 

「ゴホッ! クソが……!!」

「まだ立てるだけの気力があるとは。想定以上だ」

 

 百獣海賊団もビッグマム海賊団も、黄昏の海賊団との小競り合いは多い。直接キングと戦うことは無いが、ラグネルや小紫と戦って間接的に実力を知る機会はある。

 想定していたよりも随分頑丈だ。

 

「カイドウはどこだ?」

「……素直に教えると思ってんのか」

「思っていないとも。それはそれで構わないしな。ここでお前たち全員を潰して、カイドウの守りを丸裸にするだけだ」

 

 ここであらかた潰しておけば、後々百獣海賊団を滅ぼす時に楽になる。その程度の認識だ。

 キングは頑丈な男だが、カナタの前ではそれも絶対では無い。

 槍に覇気を纏わせ、次でキングの首を落とそうとして──空から異様な気配を感じ取る。

 覚えのある感覚だ。

 太陽を遮る暗雲が増え、曇り空の中から巨大な龍が姿を現す。青い鱗に強烈な覇気、絶対的な存在感を示す四皇の一角──〝百獣〟のカイドウ。

 

「──カナタァァァァァ!!!!」

 

 龍が、吼えた。

 ゴロゴロと暗雲から雷鳴が響き、カイドウの咆哮と同時に海へと落雷が発生する。

 

「来たか、カイドウ!」

 

 もはやキングのことなど眼中にない。

 カナタは薄く笑みを浮かべ、空から姿を現したカイドウへと意識を向ける。

 

「おれの部下をよくも可愛がってくれたじゃねェか……!! 覚悟は出来てんだろうなァ!!!」

「抜かせ。今日は保護者(リンリン)抜きで私の前に現れたんだ、生きて帰れると思うな!!」

 

 カナタが空へと駆けあがり、暗雲から落ちる雷を槍で受け止めた後に覇気と共に叩きつける。

 カイドウは即座に人獣形態へと変わり、愛用する金棒〝八斎戒〟を頭上で振り回したのちに回転しながら下から上へ勢いよく振り上げる。

 

「〝万象砕く雷(トールハンマー)〟!!!」

「〝雷鳴八卦〟!!!」

 

 互いに覇気を纏わせた一撃が空中で激突し、余波だけで暗雲を吹き飛ばした。

 二人は共に海上へ降り立ち、カイドウはキングを庇う様に立ち塞がる。

 

「すまねェ、カイドウさん……!」

「いいや、よくやったぜキング。怪我の治療をして来い──あいつの相手はおれがやる!」

 

 カイドウは高揚感を隠しもせず、金棒を肩に担いで笑みを浮かべた。

 

「テメェと直に会うのも久々だ……しばらく会ってねェ間に鈍ってねェだろうなァ!?」

「さて、どうだろうな。私もここのところロクな相手が居なかったから、多少は鈍ったかもしれん」

 

 カナタは先の一撃でカイドウがかなり強くなっていることを確認しつつ、そんなことを(うそぶ)く。

 思っても無いことをしれっというものだから、カイドウも思わず大口を開けて笑う。今の一撃が鈍った奴の攻撃か、と。

 

「ニコ・ロビンは欲しいが、おれァテメェと戦えると思って急いで戻ってきたんだ。楽しませろよ、カナタァ!!!」

「……()()()()()()

 

 姿の見えない大看板のジャック。それに飛び六胞の数名。〝ギフターズ〟と呼ばれる能力者の集団も幾らかを含め、アラバスタに向けてカイドウが楽園まで運んだのだろう。

 ビッグマム海賊団の方は分からないが、ワノ国に近寄るコースを取っていることを考えれば合流していても不思議は無い。

 

「保険をかけておいて正解だった」

 

 カイドウはその強さだけが取り沙汰されることが多いが、頭が悪いわけではない。

 リンリンと同盟を組んでいることもある。魚人島を通るコースは船をコーティングする必要があるため、短時間で使えるルートではない。であるなら、何らかの策を練って楽園側に越える可能性は考えられた。

 ジュンシーとリコリスもカナタの保険である。

 

「ウォロロロロロ!! さァ、始めようぜ!!!」

「相も変わらず喧しい奴だ──どの程度強くなったか、確かめさせてもらおう!!」

 

 互いに覇王色の覇気を纏い、武器は触れることなく衝突する。

 その衝撃は氷の大地を割り、空気を震わせ、天を割った。

 




 ちなみに村正は置いて来たので手持ちにありません。
 ……しかし、なぜカナタはこんなラスボスムーブが似合う女になったのか…カイドウも何故か主人公っぽさ出てるし…謎過ぎる…。

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