ヒエヒエの実を食べた少女の話   作:泰邦

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幕間 ドレスローザ

 

 新世界、ドレスローザ。

 とある海賊によって王位を奪われ、罪を擦り付けられていたリク王家が僅か数日前に再び王位についた国である。

 カナタはマリージョアでの会議から帰る途中で寄り道し、このドレスローザへと足を運んでいた。

 港には海軍の軍艦が停泊しており、民間船と海軍旗(カモメ)海賊旗(ドクロ)が並ぶ異様な状態になっていた。

 ラグネルと千代を伴って船を降りると、真っ直ぐに臨時の海軍駐屯所に向かう。

 当たり前の話ではあるが、今の海軍にカナタの顔を知らぬ者などいない。ほぼフリーパス状態で奥へと通され、臨時の駐屯所の最奥にいた将官と顔を合わせた。

 

「これはカナタ殿、お初に。私はルーカスと申します。階位は准将です」

 

 案内の下現れたカナタに対し、ルーカス准将は挙手の敬礼で応対する。

 七武海とは言え海賊に対する反応では無いが、カナタは当然のように簡易な答礼を行って返した。

 

「ここの責任者はお前か?」

「いいえ、責任者はトキカケ中将です。……ですが、中将殿は現在報告のために席を外しておりまして」

「海楼石で作られた工場があると聞いたが、現場には入れるのか?」

「可能です。案内しましょう」

 

 既にトキカケから話は行っているのか、ルーカスはきびきびと天幕を出て王宮のある台地へ向かい始めた。

 台地の下部には交易港が作られており、あらゆる裏取引がそこで行われていたと言う。

 入口は通称〝おもちゃの家〟と言われており、ドレスローザにいるおもちゃたちが夜な夜な帰っていく家なのだと。

 

「とは言え、それも方便のようでして……おもちゃたちは夜中の間、交易港でひたすら荷運びをさせられていたと報告を受けています」

「……〝ドンキホーテファミリー〟か……」

 

 ドンキホーテと言う名前には聞き覚えがある。

 1人はカナタが殺害した天竜人。

 もう1人は天竜人殺しの罪を着せられて聖地から追放された元天竜人。

 最後に、魚人島の件でカナタと手を組んでいる天竜人である。

 前者2人は既に故人になっている上、最後の1人はカナタとある種の同盟関係にある。関連性は無いと見るべきだが……カナタはどうにも釈然としない顔をしていた。

 

「交易港の一角に工場が建てられており、こちらが今回問題になっている場所です」

 

 〝おもちゃの家〟から地下へと降りた先、交易港の一角を占める建物。

 円柱状になっており、上部はドームのようになっていて外からの明かりを入れられるようになっている。内部を見る限り、横開きの扉を閂に近い形で引っ掛けて閉ざされているらしく、力づくでは開けられないのだとルーカスは困った顔をしていた。

 外から開けるには鍵が必要だが、当然ながら鍵はドンキホーテファミリーが持って行った。開けるには鍵を作り直さねばならない。

 

「ふむ。ちょっと下がっていろ」

「はあ」

 

 軽く触って扉を確認すると、カナタは3人を後ろに下がらせる。

 この辺かと当たりを付けると、頑丈な海楼石の扉目掛けてヤクザキックをブチかました。

 ドゴンッッ!!! と見た目に反してすさまじい音がする。扉を壊したのかとルーカスは声を上げるも、表面上は特に変化もない。

 すわ失敗かと思ったが、カナタは横開きの扉を開けてさっさと中へ入った。

 

「え~~~~っ!? 開いた!?」

「驚いてないで入るぞ」

 

 ラグネルと千代もカナタの後に続いて工場へ入ろうとすると、先に入ったカナタが出てきて制止した。

 

「今はまだ入るな。中の換気が必要だ」

「換気? 何故です?」

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 目を丸くしたルーカスはすぐさま扉を閉めると、「ガスマスクを用意してきます」と走って臨時駐屯所へ戻っていった。

 カナタは臭いですぐに気付いて出て来たので影響が出ることは無いようだった。

 

「しかし、何故毒ガスなど……」

「中の小人族が全滅していた。働かせていた奴らを始末するためだろうな」

「惨いことするのう」

 

 監督していたであろうドンキホーテファミリーの一員も倒れていた辺り、余程急いで始末したと見える。

 外から鍵をかけてしまえば内部に入る方法は極めて限られ、中の物が奪われる可能性は低くなると考えたのだろう。

 実際はこうしてカナタが鍵だけをピンポイントで破壊して扉を開けてしまったのだが。

 そこまでして見られたくないもの、あるいは奪われたくないものとなると限られる。

 

「シーザー・クラウンが作ったという〝SAD〟と言う薬品と、農場のようなものがあった。作っていたのは〝smile〟の果実だろうな」

「ってことは、百獣海賊団が増やしてた人造悪魔の実の能力者はこれ以上増えないってコトかのう?」

「可能性としてはな。他に作れる奴を確保していれば話は別だが、そう簡単に行くようなものでもあるまい。仮に増やすのを止められなかったとしても、供給量を絞れただけでも価値はある」

「まァこれ以上増えないならええんじゃないのか。あれ以上増えると面倒そうじゃったし」

「ルーカス准将はガスマスクを取りに行ってしまったが、私は船に戻る。もう用はないからな。中の薬品類と残っていた〝smile〟は出来る限り回収して〝エッグヘッド〟へ持ってきてくれとベガパンクが言っていたから、後は海軍任せだな」

 

 薬品を運ぶ都合上、普通の軍艦や商船ではなく薬品が漏れないタンカーを用意する必要がある。

 〝パンクハザード〟にあったタンカーは海軍が接収しているハズなので、センゴクに要請して人員を整えた上で現在ドレスローザへと運搬して貰わねばならない。

 まだ数日はかかるだろうし、〝エッグヘッド〟へはカナタも用事があったのだが……少々ハチノスを空けすぎている。仕事が溜まっているので、〝エッグヘッド〟へはラグネルを派遣してベガパンクを締め上げる予定である。

 マラプトノカの件で色々疑惑が吹き上がっているので、一度きっちり清算しておかねば筋が通らない。

 

「誰かが来て開けないとも限らないからな。どちらかは残ってルーカス准将が来るまで見張ってもらうが、どうする?」

「……」

「じゃんけんで決めるか」

 

 無言で「貴女が残りなさい」と睨みつけるラグネルの視線などどこ吹く風。千代は笑いながら片手を出すと、ラグネルも溜息を吐いて片手を振り上げる。

 ラグネルが残ることになった。

 

 

        ☆

 

 

 船へ戻って来たカナタは、なるべく防音に気を使った部屋で電話をかけていた。

 相手はフェイユンである。

 

『──はい。なんでしょうか?』

「上手くいったか?」

『もちろんです。聞きたいことがあるんですか?』

「戻ってからでも良かったが、丁度〝ドレスローザ〟にいるのでな」

『わかりました。少し待ってください』

 

 とは言ってもフェイユンが連れてくるわけでは無いのか、電話の向こうでフェイユンが指示を出している声が聞こえるだけだった。

 程なくして現れたカナタの目的の人物は、大声で泣き喚きながら助命を嘆願していた。

 〝パンクハザード〟を襲撃して拉致してきた科学者、シーザー・クラウンである。

 

『頼むよォ~~!! 殺さないでくれェ!! 何でもするからよ!!! 武器だって兵器だって作れるし、言われりゃあなんだって作る!! だから殺さないでくれェ~~!!』

「……少々うるさいな」

『ごめんなさい。ちょっとだけ時間をください』

 

 電話の向こうで何かを殴打する鈍い音と悲鳴が聞こえる。聞いていて心地いいものでは無いが、あのまま放置していたところで話は進まない。

 まぁ電話で時間をくれと言ったのはフェイユンだが、実際にシーザーを殴打しているのは別の人物だろう。フェイユンがやっていたらどれだけ手加減してもシーザーの首が圧し折れそうだ。

 そう時間も経たずに静かになったのを確認すると、カナタは手早く聞きたいことを訊ねる。

 セニョール・ピンクから得た情報の裏付けを取る意味も込めて、基本的なことを確認しておく必要があったからだ。

 

「〝SAD〟を作ったのはお前だな?」

『……あい、そうれふ……』

「〝smile〟の作り方も知っているな?」

『知ってまふ……』

「その辺りの事を洗いざらい吐けば、ひとまず殺すのは止めておいてやろう」

『ありがとうございます……』

 

 半泣きと言うか、ほぼ泣いてるシーザーはカナタの疑問に一切抵抗する様子もなく答える。

 〝パンクハザード〟に残されていた資料類もあらかた回収しているハズだが、実際に作っていた男がいれば解析も早くなるだろう。

 〝smile〟の影響を取り除く可能性は出てくるかもしれない。

 ……実際は相当厳しいと考えているが、ゼロではないならやる価値はある。

 

「お前、誰に指示されてやったんだ?」

『指示してきたのはドンキホーテファミリーだ……〝smile〟はカイドウに流してたと聞く。他所からも流れて来る〝smile〟の方が性能が良いせいで、カイドウからなじられてるって……あれ? これは誰から聞いたんだったか……?』

「〝smile〟を作れる奴がもう1人いるのか?」

『おれは詳しいことは聞いてねェ。おれが聞いた誰かは知ってたみてェだが、名前は出してなかった……気がする』

 

 シーザーは下手に名前を挙げると躍起になってやらなくていいことをしかねないので、名前を言わなかったのはその誰かの判断なのだろう。

 ……シーザーがコンプレックスを刺激される存在など、おおかたベガパンク関連の誰かなのだろうけれど。

 と、そこまで話したところで部屋のドアがノックされた。

 

「詳しいことは後ほど話そう。〝ハチノス〟までの護送は頼んだぞ、フェイユン」

『はい! 任せてください!』

 

 張り切るフェイユンの言葉を最後に電話を切ると、部屋のドアがもう一度ノックされた。

 カナタが部屋のドアを開けると、部下の1人が何やら伝令を持ってきたようだった。

 

「何かあったのか?」

「ハッ! 海軍中将トキカケより、相談事があるとのことです!」

「トキカケから? ふむ……船の外にいるのか?」

「はい。いかがされますか?」

「立ち話もなんだ、ここまで連れてきていい」

「了解しました!」

 

 見られて困るような書類は手早く机の引き出しに片付けていると、それほど時間もかからずトキカケが部屋を訪れた。

 一応機密扱いなのか、部下も連れずに一人で来たらしい。

 トキカケは気安く片手をあげて挨拶すると、部屋に用意されたソファにそそくさと腰かける。

 

「ようお姉ちゃん。久しぶりだな」

「相変わらずだな、トキカケ。女と見れば誰彼構わず声をかけているのか?」

「妬いてくれてんのか? 可愛いモンだな! ……まァ実際のとこ、ちょっと頭のいてェ問題に直面しちまってな。知恵を貸して欲しいワケよ」

「センゴクではなく私にか?」

「あー、まァなんだ。センゴクの社長にも相談はしてあるんだが……今回の件はちっとばかし特殊っつーか、言っちまえば変なんだよ」

 

 ポリポリと頭を掻くトキカケ。

 事の発端は〝ドレスローザ〟が海賊の支配を受けていたことにある。

 七武海でもない一海賊が国を乗っ取り、世界政府加盟国として現在も存在している……と言う事態に、少々政府内部でも混乱が起きているらしい。

 これまでの証拠を見る限り、海軍とてこれに気付かないはずは無い。「これは海軍の怠慢である」と主張する政府に対し、海軍は海軍で政府からの正式な通達が公文書として残っているので「政府の指示である」と真っ向から対立している状況だという。

 責任を押し付けたい政府と、それを回避しようとしている海軍の水面下での政治闘争である。

 

「政府からの指示が公文書として残っているなら勝ち目は無かろうに、五老星は何を考えているんだ?」

「存在しない海賊の名前と手配書が前提になってるから、捏造されたものだって主張してるんだと。聞いたことあるかい? ドンキホーテ・ドフラミンゴって名前」

「聞かないな」

「だろ? 3億を超えるような賞金首なんて大抵誰でも知ってるもんだ。誰に聞いても知らねェ賞金首が過去に七武海として存在してた……ってなってると主張しても、そりゃ社長通らねェだろっておれは思うワケ」

「……そう、だな」

「? なんか気になるところでもあるかい?」

 

 カナタは言い知れない違和感に眉根をひそめ、トキカケはそれに首を傾げて不思議そうにしている。

 自分の記憶力にはそれなりに自信があるカナタとしては、覚えていることを思い出せないもどかしさに不愉快な気持ちになっていた。

 だがそれをトキカケに言っても仕方がない。

 現状、政府と海軍の内部対立が激しくなっている状態だ。ここ最近は四皇同盟が活発に動いていることもあって、こちらの動きが制限されるのはあまりよろしくない出来事と言える。

 

「つまり、私にこの対立を取り成してくれと」

「まァ言っちまえばそうなる。お姉ちゃんなら何とかしてくれそうだしな」

「お前な……海軍が海賊に頼むことでは無かろう」

「ハッハッハ。お姉ちゃん、海賊って言ってもアンタ、海軍内じゃほとんど身内みたいな扱いだぜ」

 

 今でも強く警戒しているのは大将やセンゴク、ガープやおつるくらいのものだ。海賊嫌いの一部の海兵も同様だが、基本的には〝黄昏〟は好意的に取られていた。

 何しろやってることは単なる海上運送屋である。ついでのように治安維持に貢献しているのなら、海軍としても文句を付ける気はない。

 そんな彼女なら、今回の件も何とかしてくれるのでは……と、トキカケは思っているらしかった。

 問題を投げつけているとも言う。

 センゴクがわざわざ他人に意見を求めるとは思わないが、状況が特殊ゆえに一つの意見として言うだけ言ってみることにする。

 

「……この国の王はどうなっている?」

「リク王は戻ってるが、国民感情はあんまりよくねェな。過去にやったことがやったことで、それが原因で海賊に乗っ取られてるからなァ。政府も首を挿げ替えたいだろうぜ……それに、娘のヴィオラ王女はドンキホーテファミリーの幹部だったようだしな」

「父親の助命嘆願のためにファミリーに入ったと聞いているが」

「耳聡いな。その通りさ……同情の余地はあるが、一度海賊になった上に父親が追い落とされてる。見る奴が見りゃァ……」

「父親を追い落として王位につこうとしたようにも見えるな。ドンキホーテファミリーの方もそう見せることが目的だったんだろうが」

 

 トキカケが言いにくそうに言葉を濁した部分をカナタはサラッと口にする。

 こうなると、リク王が起こしたという凶行も何かしらの原因があるようにも見える。当時の状況を知らないカナタとしては何とも言えないが、一度凶行に走った王をそのまま戻すのは色々な意味でリスクが高いのも事実だ。

 近場の島でおかしなことを起こされても困る。

 となれば、色々根回ししておくしかないだろう。

 

「〝ドレスローザ〟は私の統治下に置こう」

「……〝黄昏〟のナワバリにするって事かい? 世界政府加盟国を?」

「お前、私の勢力圏で加盟国がどれだけいると思ってる」

「まァそりゃそうなんだが」

 

 海上運送と言う仕事柄、加盟国も非加盟国も構わず航行する。〝黄昏〟の船が寄港する島を勢力圏と呼ぶのなら、加盟国のほとんどは既にカナタの勢力圏である。

 だが、統治下にある国はほとんどない。

 影響を及ぼせる国、あるいは内政に多少なりとも干渉出来る国はいくらかあるが、完全に統治下となると数は限られる。

 その中の一つに〝ドレスローザ〟を組み込もうというのだ。トキカケの警戒も分からないではない。

 

「表向き政府が問題視しているのは『これまで七武海ですらない海賊が加盟国を統治していた』ことで、海軍が問題視しているのは『それが政府の指示だった』ことにある」

 

 つまり政府は気付いていて対処しなかった海軍が悪いと言いたいワケで、海軍は海賊に肩入れした政府に不信感を抱いている状態にある。

 センゴクがこれをカードとして何を政府から引き出したいのかにもよるが、四皇同盟とのゴタゴタがあった中で内部の対立が激しくなるといざと言う時動きにくくなる。

 あまり当てにはしていないとしても、それはカナタとしても困ることだ。

 互いに落ち度はないと言い張っている以上、第三者が間に入って取りなすのが一番ではあるだろう。

 

「〝ドレスローザ〟は今後七武海の私が管理する。これまで在野の海賊による傀儡政権だったということにして、政府はこの事実を元に加盟国から外すだろう。その後で加盟国に戻りたいと国民やリク王が考えるなら再び私の統治下でそれを申請すればいい。海軍の落としどころは……そうだな、捏造は無いと監査を受ける代わりに政府が裏で関わっていたものを切ると言ったところか」

 

 センゴクがやりたいことはいくらかあるだろうが、〝ドレスローザ〟に根を張っていたドンキホーテファミリーは〝北の海(ノースブルー)〟出身だ。

 センゴクが現場に出ていた時代から北の闇を暴こうと色々動いていたことは知っている。これを機に一斉摘発、乃至掃討したいと考えていた可能性が高い。

 政府は失点を一つ回避する代わりに北の闇による利権を失う。海軍は公文書の捏造をしていないと政府の監査を受ける代わりに北の闇を暴く。

 落としどころとしてはこんなものか。

 政府の方がダメージとしては大きくなるが、公文書が本物であればの話。センゴクも文書が正式なものかどうかは分かっているだろうから強気なのだろうし、どのみち今回の件で北の闇は芋づる式に暴かれるだろう。トカゲの尻尾切りと思えば安いものだ。

 〝ドレスローザ〟が加盟国から外れた瞬間に海軍は守る義務がなくなり、エサと見た四皇同盟が寄ってくるのは目に見えているのでこちらは〝黄昏〟の統治下におかねばどうにもならない。

 

「国の統治など金を食うばかりで旨味はあまりないのだがな」

「そう考えるのはアンタくらいだぜ。大抵海賊ってのは地位や金に目が眩むもんだろうに」

「地位や名誉、金に力……欲しがる者を否定はしないが、そういったものには大抵虫が寄ってくるからな」

「……いやな思い出でもあんのかい?」

 

 カナタには嫌いなものが3つある。最たるものは〝売国奴〟……帰属する組織ないし国家に対する裏切り者だ。

 寄ってくる虫を潰すのも楽ではない。

 今はフェイユンが大抵見つけて潰してくれているし、構造的になるべく虫を入れないように考えてはいるが、ゼロにはならないものだ。

 

「……お前の要望はこれで全部か?」

「……ああ。ありがとよお姉ちゃん。助かるぜ」

「お前からセンゴクに相談して、この方向でいいと言えば私の方でも動こう」

 

 センゴクはセンゴクで色々考えているだろう。下手に独断専行しては足を引っ張ることになる。

 ノースの闇は深い。

 40年続く戦争に武器だけは潤沢に手に入る状況。貧富の格差は拡大するばかりで奴隷狩りも増えている。

 海軍だけで解決するのは難しいだろう。こちらにもセンゴクから手伝いを頼まれる可能性は十分にあった。

 トキカケは立ち上がって猫背を伸ばし、腰をトントンと叩いて問題に目途がついたと満足そうに笑っていた。

 

「じゃ、おれは戻るぜ」

「ああ。今度は私にとっていい話が聞ければいいがな」

「ワハハ、そうなることを祈ってるぜ」

 

 上機嫌で部屋を出るトキカケ。

 数秒程で戻ってくると、「忘れてた」と言って追加の情報を寄越す。

 

「この国、小人族もいるんだがよ」

「知っている」

「その小人族のお姫様が行方不明のままなんだと。海軍で捜索中ではあるんだが、まだ見つかってねェ。ともすると連れていかれた可能性もある。それだけ留意してくんな」

 

 言うだけ言うと、トキカケはバタンと扉を閉めて船から出て行った。

 相変わらず騒がしい男だと思いつつ、カナタは手元にメモを残していく。

 また仕事が増えてしまう。〝ドレスローザ〟に関してはまだおもちゃのことなど分からないこともある。統治するにはリク王の手を借りる必要があると考えていた。

 リク王の人となりはまだわかっていないが、カナタ自身も忙しい。凶行に走る可能性が無いように監視役を置いてしばらく様子を見つつ、経過観察しなければならないだろうと思い。

 行き過ぎない程度に準備はしておこうと思うのだった。

 




次回はセンゴクさんの話の予定
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